表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様のサウナ ~神様修行がてらサウナ満喫生活始めました~  作者: イタズ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/182

五郎が島にやってきた

『魔法国メッサーラ』で購入した魔道具は非常に役に立っている。

メルルは料理の火付けに火の魔道具を使い。

水の魔道具は食器洗いに使っている。

照明の魔道具は寮と俺の家で各自二個づつ使っており、もう一つは外での食事の時に使っている。

筆の魔道具は勉強会で使用している。

魔道具はとても役立っている。

余裕が出来たらもっと購入したいぐらいだ。


魔道具は島の持ち物なので、保管場所は徹底され、各自使用後は保管場所に戻すことが義務付けされている。

借りパクは許さんよといった処だ。


便利になったと皆な喜んでいる。

今度はどんな魔道具を買うか、皆の意見を聞いてみようと思う。


俺は魔道具を使えないので能力の開発を行った。

『照明』は電球の原理、電熱線に電気を流すことをイメージし難なく獲得できた。


手の平を上に向け、その上に電熱線があるところをイメージする、そこに自然操作の雷を微量発生させる。

大事な事は流す電気に電熱線が抵抗して光が発生するということ。

なので流す電気に対して抵抗を強くイメージする。

手の平に神気を集めて出来上がり。

といった感じだった。


火と水は自然操作で出来るから必要ない。

筆に関しては既に作成済であり、炭から墨汁を作ってあるので問題ない。

ただ魔法筆の様に消すことは出来ないが、それは出来なくてもいいと考えている。


あれから一ヶ月経つが、ゴンとルイ君は元気にやっているのだろうか?

今度様子を見に行ってやろうと思う。




俺とギルは納品を終え五郎さんの執務室にいる。

最近では納品後に執務室に通され、世間話をすることが多い。

『温泉街ゴロウ』はとても賑わっており、売上も鰻登りとのこと。

旅館によっては予約が三ヶ月先まで埋まっている処もあるらしい。


五郎さん曰く、

「空前の大ブームだ、洒落になんねえ」

と言うことだった。


それに加えてなんちゃって冷蔵庫の販売も順調で、毎週発注を頂いている。

俺達は『温泉街ゴロウ』に貢献出来ているようだ、なんだか俺も嬉しい気分になる。


突然扉が空けられた。


「五郎さん、元気にしてた?」

席を立ち上がり五郎さんに駆け寄るギル。


「おお、ギル坊元気にしてるぞ!」


「お前はどうでえ?」

ギルの頭を撫でる五郎さん。


「うん、僕も元気にしてるよ」

ギルは五郎さんが大好きだ。

五郎さんもギルを可愛がってくれている。

まるで祖父と孫の関係に見えてしまう。


「五郎さん頂いています」

俺はお茶の入ったグラスを掴み上に挙げた。


「おお、なかなか相手出来なくてすまねえな」


「いえいえ、お忙しそうでなによりです」


「本当だな、忙しくてなによりだ、だがちっと忙し過ぎるな」


「そんなになんですか?」


「何言ってやがる、お前えの影響でこうなっちまってるんじゃねえか」


「俺の?」


「ああそうさ、考えてもみろよ、野菜が変わっちまって、料理に手を加えなきゃなんねえし、お地蔵さんは管理しなきゃなんねえ、味噌と醤油がまた料理を変えちまって、挙句の果てにはなんちゃって冷蔵庫なんていう発明品まで現れちまった。忙しくなるにきまってらあ!」

ハハハ、それ全部俺案件ですね。

なんだかすいません。


「分かるってもんだろうが、まったく!」


「すいませんね、でも五郎さんも儲かってるんでしょ?」


「ああ、お陰さんで儲かってる。そこは感謝している、にしてもここまで立て続けだと疲れちまうな」


「五郎さんマッサージしてあげる」

ギルが五郎さんの肩を揉みだした。


「おっ、ギル坊上手えじゃねえか。気持ちいいぞ」

五郎さんの眼がトロンとしていた。


「ほんとう?やった!」


「ギル、力加減を間違えるなよ」


「分かってるよ」

ギルが楽しそうにしていた。


「そういえば五郎さん、いつ島に来てくれるの?僕、楽しみに待ってるんだけど?」


「ああ、悪い悪い。今言ったように、ちと忙しくてな」


「ええー、そうなのー」


「だが、それももう少しで何とかなりそうだ」


「本当?やったー!」


「五郎さん何とかなるって、どうしてですか?」


「ああ、人を増やしたんだ」


「いいですね」

羨ましいなー、俺も人を増やしたいなー。


「ああ、噂を聞きつけて雇って欲しいって奴が随分現れてな。あと、修業に出してた奴なんかも帰って来てな。ありがてえ話だ」


「そうなんですね」


「ああ、人は財産だ。大事にしなきゃなんねえ」


「分かります」

そういえば、五郎さんが来るとして、どこに泊まって貰おうか?

ほとんどの部屋が埋まってるな。

この際だ、新しく作るか?

この後、世間話を終え俺達は島に帰ることにした。




島に帰るとマークとランドに新たに家を作る指示をした。

イメージとしてはロッジ、五人ぐらいが寛げるサイズだ。

五郎さんの為に造るというのではなく、休日に気分を変える様に皆に使って貰うのもいいかと考えた。

後はメルルとアイリスさんは、他の男性陣と一緒に寮で暮らしているので、この際だからこっちに移って貰うのもありかなと。


丁度、遊戯場が完成間じかの為、タイミングもちょうどいい。

マークとランドには申し訳ないが、引き続き頑張って欲しい。




それからだいたい二ヶ月後、再び五郎さんの執務室に俺とギルはいた。


「五郎さん、相変わらず忙しいですか?」


「おお、まあな」


「まだ、来れないの?」

ギルが尋ねた。


「それだがな、来週辺りどうかと思ってな」


「本当?やった!」

ギルが喜んでいる。

待ちに待ったといった感じだ。


「いい加減、島野が言うサウナってやつも体験してえしな」

五郎さんがギルの頭を撫でている。


「サウナはいいですよ、是非堪能してください」


「ああ、そうさせてもらうさ」


「パパ、その日はさ、ピザ作ってくれるよね?」


「ピザか、そうしようかな」


「ピザってなんでえ?」


「お楽しみということで」


「おお、これは楽しみが増えたようだな」


「ピザはねー、すごく美味しいんだよ!」


「そうか?それはいいな」


「ギルの大好物だもんな」


「ギル坊が食べたいだけじゃねえのか?」

五郎さんにはお見通しのようだ。


「そうだけど、五郎さんに食べて欲しいんだよ」


「そうか、ハハハ!」

五郎さんは豪快に笑っていた。


「そういやあ島野、二人ほど連れていっていいか?」


「二人ですか?」


「ああ、儂のお付きみたいなもんだ、一人はお前えも知ってる奴だぞ」


「誰ですか?」


「『漁師の街ゴルゴラド』で屋台で寿司を出してた奴がいただろ?」


「あの大将ですか?」


「ああ、今はこの街に帰ってきて、儂の下で働いてる」


「そうなんですね」


「ああ、もう修業はお終めえだな。うち一番の戦力だ」


「そんな人を連れてって大丈夫なんですか?」


「だからこそ連れていくんだ」


「何でですか?」


「どうせお前の島なんてビックリ箱みたいなもんだろうが、奴にとってもいい勉強になるんじゃねえかと思ってな」

ビックリ箱って、五郎さんにとって俺達の島はどんな印象なんだ?

笑うしかないな。


「ハハハ!」


「ビックリ箱って何?」

ギルが不思議そうな表情をしている。


「ギル坊知らねえのか?こう箱の中からな、ビヨーンと飛び出してくるんだ」

五郎さんが手を動かして説明している。


「それが僕たちの島なの?」

ギルは分かっていない様子。


「ギル、一つの例えだよ。島が面白い所ってことだよ」


「へえー、そうなんだ」


「で、五郎さんもう一人は?」


「ああ、もう一人はちょっとな、今は言えねえな」


「え?身元は確かな人物なんですか?」


「それは間違えねえ、儂が保証する」

なんか嫌な予感がするな。


「五郎さん、騙し討ちは止めてくださいよ」


「お!察しがいいな。とは言っても大丈夫だ、儂を信じてくれや」

なんだかなー、気になるな。


「まあ、五郎さんがそこまで言うなら信じますよ」


「すまねえな島野、よろしく頼む」


「そうだ五郎さん、前もって言っておきますけど、島のサウナと水風呂ですが、男女共用ですので水着を着用しますが持ってますか?」


「水着か?大丈夫だ」


「他の二人にも伝えといてくださいね」


「ああ、分かった」

なんだかな、大丈夫なのか?

やれやれだ。




島に帰ってきた。

ロッジはほぼ完成していた。

マークとランドに感謝だ。


今は最後の仕上げを行っている。

俺は『合成』で隙間を埋めていく。

ほどんど隙間は無いのだが念の為の処置だ。


他の皆は前もって作っておいた家具を運び込んでいる。

ベットやタンス、椅子やテーブル等。

一応キッチンもあるので食器なども運んでいる。

メルルが鼻歌を歌いながらカーテンを設置していた。


「メルル、ご機嫌だな」


「ええ、新し家ってなんだかワクワクします」


「そうだな、試しにここで住んでみるか?」


「試しにですか?」


「ああ、例しに住んでみて使いずらい箇所や、改善した方がいいところが無いか確認してみて欲しいんだ」


「なるほど、実際に住んでみて使い勝手など体験してみるということですね?」


「ああ、五郎さんが来週辺りに島に来れるみたいなんだ。せっかくだからちゃんともてなしたいからさ」


「そうですか、私一人ですか?」


「いや、アイリスさんにもお願いしようと考えている」


「女性二人ってことですね」


「五郎さんが来てる時は今の寮に戻ってもらうが、その後は何なら、ここに二人には住んでもらってもいいと思っている」


「ちょ、ちょっと待ってください。贅沢すぎますよ!」


「そうか?よく考えたら、いくらハンター仲間とはいえ、同じ家に男女が住むのはどうかと思ってな」


「それは嬉しい気遣いですが、でも・・・」


「無理にとは言わない、考えておいてくれ」


「分かりました、試しに住む件ですが、女性二人だけですか?もっといろいろな目で見た方がよいのでは?」


「ありがたい意見だが女性二人がいいんだ。こういうのは女性の方が気がつくもんだからな」


「そうですか」


「あとは他の皆を信じて無いわけじゃないが、ガサツに扱われて傷が付いたら嫌だろ。五郎さんには最高のもてなしがしたいからさ」


「確かに、レケとかうちの男性陣はガサツなのが多いですからね」


「だろう?だからさ」


「いつから住みましょうか?」


「備品が全部揃うのは明日になりそうだから、明日からでどうだ?」


「分かりました」

メルルはカーテンを掛け終え、次の作業に向かっていった。




細かな打ち合わせが行われていく。

先ずはノンとギル、エルには五郎さん達がいる間は『黄金の整い』は行わないように指示した。

サウナ自体に入ることは構わない、と言うと三人とも胸を撫で降ろしていた。

こいつら相当サウナに嵌ってんな。


メルルからは実際に住んでみての改善点が、マークとランドに伝えられていく。

それを踏まえてマークとランドが微調整をおこなっている。


時折俺にも注文が入る。

主に備品についてだ。

調理具や食器に関しての注文が多い。

そつなくこなしていく。


因みに五郎さんには俺とギル、ノン、エル、メタン以外は直接会ったことはない。

ただ『ロックアップ』の皆は、五郎さんに直接会ったことは無いが『温泉街ゴロウ』へは行ったことがあるらしい。

屋台寿司の大将は、レケ以外の皆は屋台を利用しているのでおそらく面識はあるだろう。

レケに関してはよく分からない。


それにしても帯同するもう一人が誰なのかが気になる。

五郎さんは顔が広いからまったく想像がつかないが・・・

困ったもんだ。


晩御飯時に当日のメニューについての打ち合わせが始まった。

本日の晩御飯のメニューはカレーだ。

パン派とご飯派両方に答えれるようにどちらも用意されている。

俺の本日の気分はパンだ。


「ピザは確定だよね、パパ!」

ギルが喜々として言っている。


「ああ、そうだな、五郎さんとも約束したからな」


「それは、晩御飯ですか?」

メルルが尋ねてきた。


「そうだな、そうしよう」


「なにピザですの?」


「エルはなにピザが良いと思う?」


「私はマルゲリータが好きですの」


「マルゲリータは鉄板だな、他はどうだ皆?」


「俺はシーフードが好きだな」

ロンメルが口にした。


「今食べているカレーも良いんじゃないか?」

ランドはカレー押しのようだ。


「カレーピザもいいな」


「はい、はい、はーい!味噌汁ピザ!」

ノンがこれを言わない訳がない。


「あれは旨いな」

ロンメルが後押しをする。


「分かった、分かった、絶対言うと思ったよ」


「えへへ」

何故か照れるノン。


「私はホワイトソースのベーコンが乗ったピザが好きですな」


「俺もあれ好きだな」

メタンとマークはホワイトソース押しのようだ。


「そうか、まあだいたいピザにする時にするトッピングでいこうかな」


「賛成!」

ギルは本当にピザが好きだな。


「あと昼飯だが何がいいと思う?この島ならではの物ってなんだと思う」


「やっぱりツナマヨ丼では?」

アイリスさんが言った。


「実はツナマヨ丼は翌日の朝に小サイズでと考えていたんですよ」


「なるほど、小サイズならありですね」

メルルが答える。


「ボス、俺あれが好きだな。鉄板焼き」


「鉄板焼きかー、悪くないな。五郎さんは知ってるかな?」


「どっちのこと?」

この島では肉のコース料理と焼きそばやお好み焼きのことを鉄板焼きとしている。


「ああ、お好み焼きのほうだ、時代的にはどうなのか?」


「俺達が『温泉街ゴロウ』に行った時には見かけなかったですよ」

マークが言った。


「私も見かけませんでしたな」


「そうか、まあ今では鉄板屋台も二台あるし、両方ってのもありだな」


「無茶苦茶豪勢だな旦那」


「やっぱ、そうなるよな」


「でも五郎さんにはお世話になってますから、良いのでは?」

流石はアイリスさん、大人の意見だ。


「よし、せっかくだから豪勢に行こう。」


「「「おお!!!」」」

皆が盛り上がっている。

そりゃそうだろう、こいつらも食べるんだからな。


「そうだレケ、ロンメル『漁師町ゴルゴラド』では伊勢海老は手に入るのか?」


「伊勢エビってなんだ?」


「こんなサイズの海老だよ」

俺は手でサイズを見せて説明した。


「ああ、それなら手に入る筈だ」

ロンメルが頷いている。


「そうか、今度買い付けにいこう」


「わかったぜ、ボス」


「あと皆、当日は俺とギルが五郎さん達に島を案内するから、いつも通りに仕事をしてくれていいからな」


「「「了解!!!」」」


「料理番のメルルとエル、ギルは大変だろうがよろしく頼む」


「分かりました」


「任せてくださいですの」


「OK」

こうして一通りの打ち合わせは終わった。

さて、おもてなしさせて頂きましょうかね。




五郎さんの所に迎えにきた。

いつもの執務室で五郎さん達を待ってる。

お迎えは俺とギル、ギルは朝からウキウキでずっとそわそわしている。


ドアがノックされた。

ドンドン!


「どうぞ」


「失礼します」

大将が入ってきた。


「大将、お久ぶりです!」

俺は立ち上がって大将に近づいた。

右手を差し出す。


「島野さん、こちらこそお久しぶりです!」

握手を交わした。


「ゴルゴラド以来ですね」


「ええ、あの後急いで『温泉街ゴロウ』に戻ったんですよ、今ではここの料理長をやらせてもらってます」


「もう屋台は引かないんですか?」


「ええ、師匠から修業はお終いだと、戻ってこいと言われまして」


「そうなんですね、おめでとうございます」


「ありがとうございます!でもまだまだです、醤油に加えて味噌まで加わってから、料理の幅が広がってしまいまして、やることだらけです」

なんだかすいません。

それ俺案件です。


「今回は勉強の為に同行しろと師匠に言われまして、島野さんの島にはこれまで以上の料理が眠ってる筈だと仰ってました」

ハハハ・・・

また五郎さんからはいろいろ言われるんだろうな。


「そうかもしれないですね・・・」


「こちらは?」

ギルの方を見ていた。


「ああ、すいません紹介します。ギルです」

ギルが立ち上がる。


「ギルです。よろしくお願いします」


「こちらこそ、確か屋台に来てくれていたね?」


「はい、大将の寿司は美味しかったです」


「そうかい、それは良かった」


「でも、パパのピザ程じゃなかったけどね」


「ギル、おまえ何言ってるんだ?」


「ピザとは?」

ああ、もうほんとにまだまだ子供だな。


「ええ、晩御飯で出しますので、楽しみにしててください。俺には大将の寿司の方が美味しいと思いますよ」


「いやいや、子供の舌は正直です。勉強させていただきますよ」

真面目な人だな。

なんだかごめんなさい。


ドアが開かれた。

五郎さんともう一人が入室してきた。


デカい魔人がいた、引き締まった体をしている。

ランドの様に角が頭に二つあるが、牛の獣人のそれとは違う。

鋭い眼つきにきっちりと刈上げられた髪、そして何故か甚平を着ており、足元は下駄を履いていた。


「島野、紹介させてくれや、ガードナーだ、警護の神をやってる。よろしく頼む」

警護の神?確かタイロンの神様だったな。


「島野さん、始めまして、ガードナーです」

野太い声をしていた。


「私が五郎さんに無理を言って、付いてこさせて貰いました」


「こいつがな、例の件のお礼がどうしてもしたいと言って、きかなくてな」


「はい、タイロンの街をいや国を救っていただきありがとうございました」

ガードナー様は深くお辞儀をした。


「いやいや、ガードナー様止めてくださいよ。顔を上げてください。ハンターとしての義務に従っただけなんですから」

ガードナー様は顔を上げた。


「そう言って貰えると助かります。私のことはガードナーとお呼びください。本当は国を挙げて感謝の意を伝えたいところなのですが、五郎さんが島野さんはそういうのは嫌がるから辞めておけと、今回もハノイ王も連れてこようと考えたのですが、これも嫌がるから辞めろと言われまして」

五郎さんナイス!いい仕事してくれてます。

王様なんて面倒臭いの嫌だよ。

断固拒否!


「五郎さんありがとうございます!助かります!」

五郎さんがガードナーさんの方を向いた。


「な?ガードナー、言った通りだろ?こいつは目立つのは嫌がるんでえ」


「そのようですね、真の勇者ですね」

勇者って・・・この人も何か勘違いしてそうで、怖いんですけど。


「ここで立ち話もなんですので、さっそく行きませんか?」


「そうだよ五郎さん、いろいろ準備したんだからね」


「そうかギル坊。そりゃあ楽しみだな!」


「じゃあいいですか、行きますよ」


ヒュン!




島に到着した。


「こっ、これはいったい?」


「これは強烈だな、聞いちゃあいたが・・・」


「何が起こって・・・」


『転移』でいきなり島にやってきたことに驚いている様だ。

その内慣れますよってね。


「五郎さん、島にようこそ!」


「おお!久しぶりにビビったぞ、ここがお前えの島か?」

徐々に落ち着きだしている一同。


「へえ?これが島野さんの島か」

大将が景色に見入っている。


「なんと、この様な島があるとは・・・」

ガードナーさんはまだ少し上の空だ。


「島野、良い島じゃねえか」


「ありがとうございます、一先ず荷物を置きに行きませんか?」


「ああ、そうさせて貰うぞ」

三人は周りをきょろきょろしながら後を付いてきた。

ロッジに荷物を置きに行く事にした。


「島野、立派な家じゃねえか。ええ!」


「ありがとうございます、内には優秀な大工がいますからね」


「そうなのか?これはスカウトしねえとな」


「勘弁してくださいよ、内の大事な戦力なんですから」


「ハハハ!冗談だ!」

豪快に笑っている。


「でも実際、こういう家もいいもんですね」

大将が家の中を見回しながら言った。


「ロッジというものなんですが、広々として好きなんですよね」

実はこのロッジは大きなスペースを意識して、天井高も高く作ってある。

メッサーラの家を見てこの造りを取り入れる様に、マーク達には注文したのだ。

高い天井はそれだけで家の中を広く感じる印象を与える。


「樹の匂いが気持ちいいですね」

ガードナーさんもロッジを褒めていた。


「じゃあ先ずはこの島の自慢の畑から見てもらいましょうかね」


「おお、見させて貰おう」


「勉強させていただきます」

俺達は五郎さん達を伴って畑に向かった。

畑に向かうと既に午前中の畑作業が終わったのだろう、アイリスさん以外は居なかった。

アイリスさんに五郎さん達を紹介する。


「あんたがアイリスさんかい?」


「ええ、アイリスです、よろしくお願いいたします」


「かあー、ギル坊から聞いちゃいたが、えれえ別嬪さんじゃねえか?」


「あら、お上手な方」

ギルがニコニコしている。


「あっ、そうだ、アイリスさんとやら、あんた内の饅頭のお得意さんなんだって?」


「ええ、美味しく頂いております」


「そうかい」

五郎さんは『収納』から饅頭を取り出した。


「よかったら貰ってくれないか、いつもお世話になってるお礼みてえなもんだ」


「まあ、よろしいのですか?」

アイリスさんが喜んでいた。


「ああ、貰ってくれや」

アイリスさんは五郎さんから饅頭を受け取り、軽くお辞儀をしていた。


「ありがたく頂きますわ、ごちそう様です」

アイリスさん・・・素敵な笑顔です!


「島野さん、立派な畑ですね、凄いです」

大将が関心していた。


「この畑はアリスさんが管理してくれているから上手くいっているんですよ、アイリスさんが居なければここまでのレベルは保てないです」


「流石だな、これはプロの仕事だな、凄えなアイリスさん」

五郎さんが褒めている。

やはり分かる人には分かるものなのだな。


「いいえ、私は畑が大好きなんです。作物が育っていくこと、そしてそれを皆さんが美味しく頂いてくれることが私には嬉しくて・・・本当はもっと拡張して欲しいですわね」

だからこれ以上は無理ですって。


「アイリスさん、勘弁してくださいよ」


「どうやら島野でもアイリスさんには適わねえようだな」


「ほんとですよ、じゃあ次行きましょうか」

これ以上いるとアイリスさんが何を言い出すか分からない。

はい、次!




農業用倉庫を拡張しているマーク達のところに来た。


「マーク、ランド、ちょっといいか、五郎さんだ」

マーク達は作業を止め俺達の所にやってきた。


「紹介します、建設部門のマークとランドです」


「初めましてマークです」


「ランドです」

二人は汗を拭うと一礼した。


「おお、ごついあんちゃん達じゃねえか、儂は五郎だ、よろしく頼むぞ!」


「こちらこそ、あれ?寿司屋の大将?」


「ああ、二人とも食いに来てくれていたな、よろしく」


「私はガードナーだ、よろしく頼む」


「えっ、ガードナーって警護の神様?」

マークはガードナーを知っていたようだ。


「ああ、縁あって来させて頂いている」


「そうですか・・・」

マークが俺に意味ありげに視線を送ってきた。

んん?何だろう?

後で聞いてみるか。


「では、島野さん俺達は仕事に戻りますね」


「ああ、よろしく頼む」

マーク達の所を離れた。

あの視線の意味は何だったんだろう?




次に向かったのは養殖場だった。

前もってギルに指示し、ロンメルとレケには伝えてある。

岸に着くとロンメルが船を準備して待っていた。


「ロンメル、待たせたか?」


「いや、今丁度帰ってきたところだ」


「そうか、紹介するよ」


「儂が五郎だ、よろしく頼む」


「俺はロンメルだ」


「俺はレケだ、あんたが五郎さんか、待ってたぜ」


「私はガードナーだ、よろしく頼む」


「俺は・・・」


「あれ?寿司屋の大将?」

大将の言葉を遮ってロンメルが言った。

結局大将の名前って聞いたことがないよな・・・


「ああ、あんたも屋台に食いに来てくれていたな。よろしく頼むよ」


「大将の寿司は上手かったぜ、また食いてえな」


「そう言って貰えると有り難いな」


「今日は養殖場を見せればいいんだよな?旦那?」


「ああ、そうしてくれ」

船に乗り込む一行。


すると獣化したギルが、

「五郎さん、僕の背中に乗ってよ」

と言い出した。


「おっ!ギル坊、儂を乗せてくれるってか、そりゃあいい、おい島野!儂はギル坊に乗っていくぞ!」


「ご自由にどうぞ」

ギルは五郎さんを背中に乗せたかったんだろう、嬉しそうにしている。


「じゃあ、いくぜ!」

帆を扱いだしたロンメル。

俺は帆に自然操作で風を当ててやる。

船が推進力を得て進みだす。


ギルはというと五郎さんを背に上空にホバリングしている。

俺は『念話』でギルに、

「程々にしろよギル、ゆっくりな」

と伝えた。


「分かってるよ」

返事が返ってくる。


船に追随するようにギルは上空を進んでいた。

五郎さんも空の移動を楽しんでいるようだった。




養殖場に着いた。

今では二十匹近いマグロが養殖場にはいる。

二メートル以下のマグロを捕まえて、二メートル半以上になったら出荷する。

そうやって養殖場は運営されている。

もちろん出荷先は五郎さんの所だ、今のところ順調にいっている。


村の皆はツナが大好きなのでこちらでも消費はある。

ツナをパンに挟んで食べたり、おにぎりの具にも使用している。


「なるほど、こうやってマグロを養殖しているんですね」

大将が関心していた。


「ええ、始めは試行錯誤しましたが、今ではだいぶ落ち着いてきましたよ」


「それは苦労したんでしょうね?」


「そんなことはないぜ、ボスが出来ねえことなんてねえからな」

レケが有頂天になっている。

頑張りが認められて嬉しいのだろう。


「じゃあ、そろそろ島に帰って昼飯にしましょうか?」


「そうですね、お世話になります」

俺は『念話』でギルに島に帰る事を伝えた。




鉄板用屋台に皆が集まっている。


「さて、お待ちかねの昼飯としましょうか」


「おっ!何を食わせてくれるってんだ?」


「それはお楽しみだよ」

ギルが俺の横に並んで五郎さんの正面に位置どった。


「じゃあ始めようか」

俺とギルの鉄板ではコース料理が作られていく。

メルルとエルの鉄板ではお好み焼きと焼きそばが作られる。

皆な喜々としてその様子を眺めている。


炒めた野菜に軽く塩を降って、五郎さん達の皿に振り分けられていく。

「うん、旨いです」

ガードナーが頬を緩めていた。

その隣でギルは肉を焼いていく。


「五郎さん、これからが見せ所だよ」


「ほう、何を見せてくれるってぇんだい?」


「行くよ!」

ギルがフランベを行ったが、勢いよくアルコールを入れ過ぎた。


「熱っちい!」

五郎さんが叫んでいる。


「ごめん、大丈夫?」

ギルが心配そうにしている。


「ビックリした!ああ、大丈夫でえ、何ともねえ」


「ごめん、力が入り過ぎた・・・」


「いやあ、参った。大迫力だな、ガハハハ!」

何ともなかったようで、五郎さんは豪快に笑い飛ばしている。


「ギル、五郎さんの前だからって、恰好つけ過ぎ」

ノンにツッコまれていた。


「いや、ギル坊気にすることはねえ、驚いちまっただけだ」


「ありがとう・・・」


「「「ハハハ!!!」」」

笑いが起こっていた。

ギルは肉を切り分けて提供していく。


「旨え!ギル坊最高じゃねえか!」


「本当?よかった!」

その横では俺が伊勢海老の仕上げに取り掛かっている。

真っ二つにしマヨネーズをかける、最後に自然操作の火で表面を焼き上げる。

その作業にガードナーさんが眼を剥いていた。


「伊勢海老とは贅沢じゃねえか」


「五郎さんにはお世話になってますので」


「しかし師匠、こういった料理の見せ方もあるんですね」


「ああ、そうでえ、寿司も握るのを見せることが、味を更に上手くする秘訣だ、これも同じだな。肉や伊勢海老でやるとは感心するぜ、まったくよう」

大将はまだまだ勉強モードの様子。


「こちらも出来ましたの!」

エルがこちらの屋台に声を掛けてきた。


「おお、あっちのも頂こうじゃねえか」


「そうしましょう」


「んん?これは・・・どんどん焼きか?」


「ええ、今ではお好み焼きといって、大衆食として日本では食べられています」


「かあー!懐かしいじゃねえか!どれ、一つ貰おうじゃねえか!」

エルが切り分けて五郎さんの皿に乗せた。


「どれどれ、これに付けるのか?」


「ええ、この島ではそうしてます。日本ではソースが一般的だと思いますが・・・」


「おお!こりゃあ上手え!日本人の舌にはもってこいだな!」


「本当だ!この付けたタレは・・・醤油と何かを混ぜたものですか?」


「はい!マヨネーズという調味料を混ぜてあります」


「マヨネーズ?」


「はい、これです」

『収納』からマヨネーズを取り出して大将と五郎さんの皿に乗せた。

箸の先に付けて味見する二人。


「これはいけるな・・・」


「ええ、そうですね・・・また料理革命が始まりますね」

料理革命って大げさな。


「すいません、私にも一口いいでしょうか?」

ガードナーさんがすまなさそうに皿を持ち上げた。

皿にマヨネーズを付けてやる。


「おお!これがマヨネーズ、これだけでも上手いです!ずっと食べられそうだ!」

太るから辞めておきなさい。


「島野、分かってるな?」


「はいはい、マヨネーズも卸しますよ。ただ消費期限が分からないので、使う前に『鑑定』してくださいね」


「ああ、分かってらあ」

五郎さんが物思いに耽っている。

多分何にかけようか考えているんだと思う。

その隣では大将がなにかぶつぶつ呟いている。

似たもの同士の子弟だな。

こうしていろいろありつつも昼飯は終了した。




皆で和気あいあいと話が弾み、そろそろいい時間を迎えようとしていた。

そういえば大将の名前が判明した。

大将の名前はダンだった。

ダンさんと呼ぶべきか、大将と呼ぶべきか悩み処だ。


「さて、そろそろ風呂とサウナの時間にしましょうか?」


「おっ!いよいよか!」

手ぐすね引いて待ってたぞと言わんばかりの五郎さん。


「行こう、行こう!」

五郎さんの手を引っ張るギル。

俺達は風呂場へと向かった。

準備を済ませ露天風呂へと向かう。


「島野、良い解放感だな、この眺めは」


「ええ、そうでしょ?自慢の光景ですよ」

海を眺めながらの露天風呂、最高です!

掛け湯を済まして露天風呂に浸かった。


「ふう・・・」

思わず漏れる声。


「どうですか?五郎さん?」


「ああ、最高だな、ちょっと待ってろよ」

五郎さんがお湯に手を翳した。


「うん、良い泉質だ。温泉ほどじゃねえが風呂としてはまずまずだな」


「五郎さんは、泉質が分かるんですか?」


「ああそうだ、儂の能力の一つだ『水質鑑定』っていうんだがな」

今度は目を閉じて集中し出した。

にやり顔の五郎さん。


「島野、今回のお礼といっちゃあなんだが、吉報だ」


「なんですか?」


「この島には泉源があるぞ」


「嘘でしょ!」


「本当だ、儂の能力『泉源探索』に反応があった。こりゃあ明日にでも見に行こうじゃねえか」


「やった、温泉ゲット!」

俺はガッツポーズを決めていた。


「「「ハハハ!!!」」」

笑いが起きていた。

女子風呂の方から騒めきが聞こえた。

騒いでしまってすいません。

だって、温泉ですよ!


「お前えはつくづく引きが強えな、感心するぞ!」


「ありがとうございます、嬉しいー!」


「ハハハ!いいってことよ!」


露天風呂を出て塩サウナへと向かった。

塩サウナのやり方を教えて実践中。


「これは、部屋の密閉が重要そうですね」

ガードナーさんが話し出した。


「おっ!ガードナーさん目の付け所がいいですね」


「ありがとうございます、しかし私は素人ですけど、この塩はとても純度が高いのでは?」


「ええ、その通りです」


「これは海水から作ってますか?」

大将、ダンさん、ああもう、どっちでもいいや、が疑問を口にした。


「そうです、俺の能力で作ってます」


「島野、これもだな」


「分かりました・・・次回の納品に持っていきます」

なんだか島の食材の品評会みたいになってないか?


「じゃあ出ましょうか?」


「おう!」

塩サウナを出て体の塩を洗い流した。

そしてサウナへ向かった。




蒸されている・・・五郎さんが蒸されている。

大将もガードナーさんも蒸されている・・・。

おじさん達が蒸されている。


「これは強力だな」


「ええ、じんわりときますね」


「なんだか食材になった気分です」


「もう少し頑張りましょう」


「まだか?」


「ええ、もう少しです。この先が大事なんです」


「そうか、もう汗びっしょりだぞ」


「あと少しです・・・」


「なかなか忍耐力を試されますね」


「よし、じゃあ行きましょうか」

皆我先にと一斉にサウナ室を飛び出した。

水風呂に入る前に掛け水をすることを指導した。

水風呂に飛びこむおじさん達。


「ああ、冷たいけど気持ちいい!」


「おお、体が引き締まる!」


「何も考えられない!」

等と口々に感想を述べている。


「さあ出ましょう」

インフィニティーチェアーへと誘導した。

気持ちよさそうに横になるおじさん達。

各自余韻を楽しんでいるようだ。

解放感と爽快感に包まれているおじさん達。

多幸感を満喫している。


サウナっていいね。

最高だな!


「島野、いい経験をさせて貰ったぞ」


「ええ、こんな解放感が得られる方法があるとは知りませんでした・・・」


「島野さん、これ以上ない満足感です!」

各自、想い想いを口にしている。


「島野、これはあれだな。ご褒美だな。儂らに許された最高のご褒美だ・・・」

五郎さん語りますねえ。


「ええ、俺が人生をかけているのも分かって貰えたようですね。ここから後二セットはいきますよ、もっと整いますよ」


「まだ行くのか?」


「お供いたします」


「喜んで!」

そこからサウナを二セットを行い。

更におじさん達は整っていった。

サウナジャンキーがまた増えたようだ。




夕食の時間を迎えた。

五郎さんにとってはギルから先刻された時間。


「ギル坊、遂にってことなのか?」


「五郎さん、いよいよだよ」


「そうか、いよいよか、楽しみにしてるぜ」


俺は集中している、既にある程度のトッピングを終え、ピザ釜の温度の調整に入っている。

島の皆はここからは俺に話掛けるのは厳禁と分かっている。

その緊張が伝わったのか島に訪れたおじさん達も口を噤んでいる。

釜の温度を確かめ、マルゲリータを釜に入れる。

状態を確認しながらピザを回していく。


あえて焼きムラを意識しながら、特性のピザの下にある網を回していく。

既に身体強化でいつでもどの様な動きでもできる状態にしてある。


今だ!

時計周りにピザを回し仕上げを確認する。


「メルル、あとは頼む」


「はい!」

テーブルの上にピザが運ばれてくる。

それをメルルがピザカッターで八等分に切り分けていく。

それを尻目に俺は次のピザに集中する。


二枚目はホワイトソースのベーコンピザ。

ホワイトソースは改良を重ね、今ではトマトソースに次ぐ最高の仕上がりをみせている。

更にこのホワイトソースはピザのみならず、グラタンにも応用が出来る一品となっている。

まさに至極の一品と言っても過言では無いと俺は自負してる。


ピザを仕上げていく。

俺は何枚ものピザを作っていった。


「島野、儂は舐めていたかもしれねえ」


「ええ、これは格別です」


「この複雑な味、表現に困る」

評判はいいようだ。


「島野このトマトソースも卸してくれるか?」


「すいません五郎さん、これだけは門外不出なんです。五郎さんの頼みでもこればっかりは卸せないです」


「そうか、残念だな、まあしょうがねえな」


「このピザはこの島でしか食べれないんだよ」

偉そうにギルが語った。


「そのようだな。いいなあギル坊は、こんな上手い飯がしょっちゅう食えて」


「へへへ」




ここで騒ぎが起こった。

マークとロンメル、ランドとメタンがガードナーを囲んでいる。


「ガードナーさんよ、これまでは旦那を立てて黙っていたが、何であんたがこの島にいるんだ?」

ロンメルが喧嘩口調で詰め寄っている。


「ああ、そうだ、聞かせて貰おうじゃないか」

マークまで食って掛かっている。

慌てて五郎さんが止めに入った。


「ちょっと、待てあんちゃん達、何だってんだ?」


「五郎さん、すまないがどいてくれないか。こいつは『鑑定』のガードナーなんて言われている奴なんだ。なんでこの島にいるのか知らないが、島野さんに仇なすってんなら、相手が神様だろうが俺達は引けないな」

ランドがいきり立っている。


「その通りですな」

頷くメタン。

今にも演唱を始めようと身構えている。


「まあ待て!ちょっと話を聞け!」

四人を押しやる五郎さん。


「これには理由があるんだ」


俺も割って入る。

「お前達、俺の為にしていくれていることは分かってるが、ちゃんと話を聞こうじゃないか」

後ろに下がるロンメル達。


「旦那がそういうなら話ぐらい聞くが、事の次第によっては許さねえからな」


「まあ、そういきり立つんじゃねえよ、な、あんちゃん達よ」

五郎さんが宥める。


「いいか、そもそもガードナーがここにいる理由は二つだ。まずはタイロンを救ってくれた島野にお礼を伝えることだ、もう一つが」

ここでガードナーさんが割って入る。


「五郎さん、ここは私が話します」

そうかとガードナーさんを見つめ返す五郎さん。


「もう一つの理由は、島野さんに謝罪することです。どう切り出そうかずっと悩んでいましたが、良いきっかけを頂けたようです」

謝罪?どういうことだ?


「島野さんがタイロンに来られた時に、失礼を働いてしまいました。申し訳ございません」

頭を下げるガードナーさん。


「ん?失礼とは?」


「島野さんが野菜の販売をしている時に、私の部下が『鑑定』をしてしまいました、申し訳ございませんでした」


「ああ、そんなこともあったな」

何となく思い出した。

頭がチクッとした様な・・・


「実は一部の部下に鑑定の魔道具を持たせています。ただ滅多にそれを使用することはありません。あの時は島野さんが初見であったことと、ものの数分で長蛇の列を作っていることに異常さを感じた部下が疑ってしまい『鑑定』を行ってしまったのです」

確かにタイロンでの屋台の販売は凄かったからな。

とんでもない勢いで野菜が売れてたからな、疑われて当然か。


「なあ、ガードナーこの際だから、話してもいいんじゃねえか?」


「そうですね、誤解を解くいい機会です。君達よく聞いて欲しい。私は『鑑定』の能力は持ってはいないのだよ」


「はあ?」


「嘘だろ?」


「事実です、今ここで私は『鑑定』を受けてもかまいません、転移者である五郎さんと島野さんなら『鑑定』は出来る筈です」


「いや、そこまでする必要はないだろう」

俺は割って入った。


「あんちゃん達、儂は実際にこいつを『鑑定』したことがあるが『鑑定』の能力は持っちゃあいなかったぞ」

五郎さんが保証した。


「はあ?じゃあなんで『鑑定』のガードナーなんて噂が立ってるんだよ?」


「それは・・・私がその噂を広める様に部下に指示したからです」

怪訝そうな表情を浮かべているマーク達。


「何でそんなことを?」


「それは抑止力になると考えたからです。タイロンは大国です、毎日たくさんの人々が出入国します。その中には好まれない者達も多くいます。そういった者達の入国を減らすにはこの方法が良いと考えたからです」


「マジか?」

頭を抱えるロンメル。


「そういうことか、そんな噂が広まれば悪事を考える者達は近づかなくなるってことか」


「そういうことです、行き違いがありましたが島野さん、謝罪を受け入れて頂けないでしょうか?」

目立ち過ぎた俺が悪いという気もするが・・・


「ああ、勿論だ。お前達も何か言った方がよくないか?」

俺はマーク達を見た。


「すまなかった」


「申し訳ありませんでした」


「早とちりでした。すいませんでした」


「これは悪いことをしましたな」

マーク達はガードナーに頭を下げた。


「いや、疑われて当然のことです。それよりも私に向かってくる者がいるとは・・・島野さん・・・素晴らしい仲間達ですね。どうかこの者達を叱らないで下さい」


「ああ、分かってるよ、ガードナーさん」


「いえいえ、いいんです」

誤解が解けて何よりです。


でもタイロンに対しての違和感が変わらないのはどうなんだろうか・・・

まだ何か引っかかるものを感じる。

今は考えることでは無いのかもかしれない。

俺は考える事を止めることにした。

それにしても・・・血の気の多い奴らだ。

全く・・・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ