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無人島での暮らしとマイサウナ

目の前に拡がるのは広大な海、潮騒が耳に心地よい。

穏やかな波の光景が心に溶け込んでくる。

水面が輝いていて眩しい程だった。

空気が美味い。

煌びやかな海をずっと眺めていたいとの衝動に駆られるが、そうとも言ってられない。


何といってもいきなり無人島に放り出されたんだから・・・

そしてあまりの海の透明度にここが異世界である事を実感した。

日本ではこうはいかない。

この海の透明度って・・・凄い澄んでいる。


足元を見ると砂浜の上に立っているのが分かった。

手の平を見てみる、そして腕を確認する、それなりに引き締まっている。

シャツを脱いでみた。

胸の張り具合、引き締まった腹まわり、肌の張り。

おお!・・・若返りを実感した。

若い!若返っているぞ!

これはいい!

すごく良い!


念の為にシンボルを確認する・・・変化なし、残念!

よく見たいつものそれだった・・・


漲る体力と活力、その場で跳ねてみたくなった。

さっそく跳ねてみる。

軽いぞ!

とんでもなく体が軽い!

何だこれ!

それに滞空時間が長い!


無性に走りたくなった。

思わず走ってみる。

走る!走る!一気に駆け抜ける!

楽しい!無性に楽しい!

ずっと走っていられるような気がする。


もう一度跳ねてみた。

何故だか楽しい!何でだ?

背伸びをしてみる。

肩の可動域が広い!驚くほどに身体が柔らかい!

こんなに身体って伸びるものだったか?

それに慢性的な腰痛が無くなっている。

本当に若返ったみたいだ。

これは奇跡か?


「若いって最高!!!」


無限の体力と気力を感じた。

それに心が弾むようにワクワクしている。

身体が変わるとここまで気持ちが変わるものなのか・・・

心と体は繋がっているというが・・・ここまでなのか・・・


「バウ!!!」


声がしたので振り返るとそこには大きな犬?狼?のような動物がいた。

かなり大きい。

私は目を見て直ぐに分かった。

これは間違いない。

私の相棒だ!


「ノン!!!」


「お前ノンなんだろ、おいで!」


両手を広げると思いっきりノンが体を預けてきた、あまりの重さに堪えられず尻餅をついてしまった。

そして砂浜の熱気を感じる。


全身でノンのモフモフを堪能する。

ああ、楽しい!それにこのモフモフは気持ち良い!

なんて楽しいんだろう!


改めてノンを見てみる。

これまた立派になったなあ。

体が倍ぐらいの大きさになっている、そして獰猛な爪と牙。

あの爪で切り裂かれたら痛いだろうな。

ちょっと怖いぐらいだ・・・

毛皮がモフモフになっているのはいいよね。

たくさん撫でてあげようと思う。

モフモフが気持ち良いからね。


それにしても、これまた精悍な顔つきだこと・・・

姿が変わるとは聞いていたけど、ここまで変わるとはな・・・

ノンと目を合わせた。

笑っているように見えた。


ここは遊んでやりたい気持ちを抑えてと。

あぁ、いかんいかん、今はいろいろと確認するのが先だった、状況の整理が必要だ。

冷静に努めよう。

そうしなければならない。

なにせここは無人島なのだから。


先ずは周りをじっくりと観察してみようと思う。

さっそく現状把握だ。


目の前は海、風は微風、足元は砂浜、そして振り返ると森、さらにその奥に山と広がる空。

空は雲一つ無かった、気温は大体二十五度ぐらいだろうか、過ごしやすい気温だ。


ん?んん?

ちょっとまてよ・・・

もしかしてこの島って、めっちゃくちゃデカくないか!

デカいよね!

ええ、間違いなくそうですよね!

どう見てももそれなりに大きい島のようだ・・・

この光景を見る限り・・・


何故か森が騒がしいがとりあえず後回し。

そして何故か私の身体の周りが光っている。

何でだ?

スーパーサ●ヤ人かっての。

カメハメ波は出ないぞ・・・


私、否、ここでの一人称は俺にしよう。

この背格好で私というのはキザに感じるし、大人ぶって見えて滑稽な気もする。

それに身体がそう呼べと言っている気がする。

やっぱり身体に心は引きずられるよね・・・


俺の服装は日本での恰好のままで靴下姿だったが、よく見ると足元にスニーカーが置いてあった。

創造神様お気遣いありがとうございます。

足下って大事だよね。

とてもありがたい。




さて、いきなり始まったサバイバル生活、何から始めようか?

サバイバルの基本は水・火・食料の確保と、無人島を筏で脱出するテレビ番組でやっていたのを思い出した。


ということで先ずは水だ。

川があるか探してみるか?

どうしよう・・・そうだ初心者パック!ってどこにあるんだ?

周りを見渡してみたが、それらしい物は見当たらなかった。


一応ノンに聞いてみる、

「ノン、初心者パックってどこにあるか知ってるか?」

首を傾げている。

うん、分からないなと。


う~ん、ん!

そういえば自分の状態を確認できるとか言っていたな、よし、多分こういうことだろう、よく異世界ものとかであるやつだな、正直恥ずかしいがやるしかないようだ。


「ステータス、オープン!」


目の前で半透明のモニター画面のようなものが現れた。


「やっぱりそういうことですか・・・ん?そういえば、確認したいと思ったら確認できるって言ってなかったか?」

モニターが消えるのをイメージしてみた。


消えた・・・

モニターが現るのをイメージしてみた。

出現した・・・

あらま、お恥ずかしいこと!


声に出す必要はなかったってことね。

ノンを見ると何かを察したのか急に下を向いていた。

ちょっと恥ずかしい・・・

さて、気を取り直して確認しましょうかね。


名前:島野 守

種族:人間

職業:神様見習いLv1

神力:計測不能

体力:780

魔力:0

能力:加工Lv1 分離Lv1 初心者パック


預金:3102万5933円


何だこれ?

ツッコミどろこ満載!ってか初心者パックって能力なの?

思わず初心者パックの文字に触れてみると、画面が切り替わった。


言語理解 言語発音 鑑定 収納 万能種(1粒10円) 万能鉱石(鉄鉱石1Kg2000円)


あちゃ~残念、水や食料ではなかったかー、でもちょっと待てよ。

『加工』に『分離』って使えるんじゃないですか?




浜辺から森の入り口に移動した、手頃な大きさの木に俺は触れてみた。

『分離』と唱えてみた。

特に何も起こらなかった・・・


はて?

どうしたらこの能力は使えるのか?


能力の使用にはどうしたらいいのか・・・

そういえば・・・だいたいの異世界物ではイメージ力が物をいっているよな、魔法の発動とかさ・・・創造神様は俺の創造力を褒めていたような気がする・・・てことはやはり想像力なのか?

一番考えられるのは神力なのだがどう捉えれば・・・完成したイメージが必要?じゃないかな。

多分・・・


今度は完成形をイメージをしながら『分離』と唱えてみた。


俺の足元に木材と木の皮と葉っぱが転がっていた。

しめしめ・・・そういうことね・・・


能力の発動には完成形をイメージすることが大事ってことか。

そうだ!そういえば。

今度は完成形をイメージして心の中で『分離』と唱えてみた。


出来ていた。

これも口に出す必要は無いってことか・・・

くそう!またやっちまったよ・・・

あー、恥ずかしいったらありゃしない。

でも思わず口から出ちゃうんだもんなー。

何かやってます感があると無いとでは違うんだよな・・・


あと、一つ重要なことが判明した。

この能力を使う時に神力を使って能力を使用しているということだ。

能力を使用した際に体の中から微量の神力が出ていく感覚があった。


能力の使用には神力が必要だということみたいだ。

そして神力とは空気中に存在している神気を体内に取り込むことで、神力になるといったところなのだろう。


念の為、先ほど使用した後にステータスを確認してみたが、相変わらず神力は「測定不能」のままだった。


どう解釈すればいいのだろうか?・・・

「測定不能」ってどういうことだよ・・・膨大にあるってことか?

取り敢えずは使い放題ってことかな?

分からんけど・・・


何はともあれ水問題速攻解決!

幸先良好ですよ!

ええ、褒めてくれてもいいのですよ!


先ほど確保した木材から『加工』の能力で木のコップを二個作成。

片方に海水を入れて『分離』の能力を使用。


イメージとしては海水から塩を取り除き、取り除いた塩が何も入ってないもう一つのコップに移動。

さらに塩を除いた水から、不純物が取り除かれるイメージで『分離』の能力を再使用。


試飲してみると普通に水が味わえました。

普通に上手い水です!


加えて塩もゲットしました!

多分今すごいどや顔してると思う俺、うんうん。

漫画なら背景にドドン!と書いてあるに違いない。

次はノンの飲む水を作る、工程は先ほどと同じ、コップでは小さいので深めの皿を木材から造った。


水を飲み満足そうなノン、うん良かった。

念の為、深めのコップを何個も作成し、水を作っておいた。

これで最低でも三日間近くは生きていけるだろう。

多分・・・


次は火か食料か・・・

待てよ、一先ずはノンのステータスを確認してみるか。

先ほどの初心者パックの中に『鑑定』があったから見られるだろう・・・


『鑑定』


名前:ノン

種族:フェンリルLv7

職業:島野 守の眷属

神力:0

体力:2043

魔力:1532

能力:人語理解Lv4 火魔法Lv9 風魔法Lv14 雷魔法Lv12


あ~!火問題解決しちゃいました。

そしてこちらもツッコミどころ満載です!

ノンってフェンリルなの?

この世界のシベリアンハスキーはフェンリル?

本当にそれでいいのかい?

絶対に創造神様の爺さんが何か弄ってるよね?

何か頼りがいがあるからいいけどさ・・・


まぁそこはいいとして、魔法だよ魔法・・・

そういう世界なのね、俺のステータス見た時に『魔力』ってあったから分かってはいたけどさ・・・

とってもファンタジーな世界のようだ。

なんでこんな世界に放り出されてしまったのかね?

定年の爺様には過酷じゃないですか?

あ!でも今では二十歳の肉体になったんだった・・・

なかなか癖は抜けないな・・・


で、俺は魔法は使えないけどノンは使えると・・・

いいなー。

いいなー!

魔法使いたいなー!

羨ましいなー!


あとやっぱりこいつ人の言葉を理解できていたってことね。

犬がテレビを見るなんて聞いたことなかったもんな・・・

やれやれだ・・・


気分を入れ替えて俺は適当に枝や落ち葉を集めてきた。

早く火問題を解決したい。

「ノン、火魔法でこれを燃やせるか?」


「バウ!」

返事をするとノンが口から火を噴き出した。

おお~!

口から吐くのね、口の中熱くないのかな?

それなりに衝撃映像だ。

枝や落ち葉がバチバチ燃えている。

やり過ぎだな・・・やれやれ。


「ノンさんや、結構火力凄いですねー、もう少し抑えめでお願いします」


「バウ!」

分かればよろしい。

直ぐに燃え尽きてしまったので今度は多めに木や葉っぱを集めておいた。

こちらも即効で火が確保できた。

あっさりしてて良いじゅないか。

俺はこういうのを求めていたのだからね。

これで恐らく生命の危機は脱しただろう・・・多分。


さて、まだまだツッコミたいことが満載だが、最後の食料問題を先に解決しようと思う。

あったよね万能種って、多分これでなんとかなるだろう・・・

取り敢えずどこに畑を作ろうかな?


周りを見渡して見た。

確か野菜は海に近すぎると塩害で育たないって聞いたことがある。

海岸から離れた所に作る必要があるだろう。

とは言っても森の中過ぎると獣に荒らされる可能性があるよね。

さっき獣っぽい気配を感じたしね。

せっかく育てた畑を荒らされたら俺はぶち切れる自信がある。

浜辺から百メートルぐらい離してみるか。

適当だが良いだろう・・・


ここらへんかな?

どうしよう?ノンの火魔法で足元の草木を削除とはいかないよな・・・

確実に森林火災に繋がるし・・・

ノンが放火魔になってしまうのはよろしくないなと。

身内に犯罪者は出したくはない。


よし!この万能鉱石いってみましょうか?

ステータス画面の「万能鉱石」をタッチしてみた。

ドン!!

足元にそれらしき鉱石が落ちてきた。

見たところ三十センチメートルの立方体といった処。

念の為『鑑定』してみる。


『鑑定』


『万能鉱石』 思い描いた鉱石に変更可能な鉱石、但し鉱石の貴重度、又は市場価値によって鉱石のサイズが変更になる


価値によってサイズが変更か、流石に甘くはないな。

あわよくばミスリルやアマダンタイトの素材が、安々手に入るのかと思ったけど、そうはいかないようだ。

そこまで創造神様は楽をしてはくれないようだ。

ち!爺いめ!・・・俺には楽をさせないってか?


まぁいいでしょう、ここは鉄にしてみた。

サイズはほぼ変わらなかった。


『加工』鍬の先

イメージ通り鍬の先端部分が出来ていた、先ほど確保した木材と嵌め合わせて鍬が完成した。


適当に『分離』で木を伐採し、十平米の更地を造ってみた。

掘り出した根っこは薪になるので確保しておいた。

これ結構重要だと思う。

掘り出すのも『分離』で簡単に出来た。

なんて素晴らしい能力なんでしょう。

更に先ほど作った鍬で地面を耕していく。


鍬を振っていると肉体が若くなったことを改めて実感した。

鍬がとても軽く感じたのだ。

それにしっかりと地面を耕せれている。

自分の想像以上に地面に鍬が刺さる。

これが若返りか・・・


一直線に八メートルのラインを耕し、それを等間隔にて八本ほど作ってみた。

先ずはお試しなので、家庭菜園サイズで結構。

若い身体での肉体労働って気持ちいい~!

軽く汗をかいていた。

あー、風呂に入りたい。

それぐらい肉体労働をしていた。


さて、問題の『万能種』だ。

一先ず万能種を五十個手に入れた。

手の平の上でよく観察してみる。

黒くて楕円形の見慣れた種、どう見てもスイカの種にしか見えない。

スイカの種が万能?

確かにスイカは美味しいし、水分も豊富な素晴らしい野菜だ。

でもスイカだけでやっていくのはちょっとしんどいぞ。

いやちょっと待て、見た目に騙されてはいけない。

先ずはこれだろう。


『鑑定』


『万能種』 種を撒いた時に思い描いた植物や野菜、果物の種になる万能な種。成長度合いは種類によって異なり、育成方法によっては早期の収穫も可能


はい!

きました!

初心者パックの恩恵!

いやいやいや、創造神様ありがとう!

これで食料問題も解決だ~!


玉ねぎと人参とジャガイモは必須だし・・・ネギとナスとトマト・・・アスパラにブロッコリーに・・・

思いのままに俺は種を植えてみた。


その後水撒きをして、取り敢えずは様子見とした。

これでいいと思っていたのだが・・・


そして・・・

一日後、芽は出ない。まぁ早々にはね・・・そこまで期待はしていない。

二日後、芽は出ない・・・

そろそろ出てこないと万能とは言えないよね・・・

四日後、まだ芽は出ない,・・

おい!いい加減まだか!!・・・

七日後、まだ芽は出ない!!

創造神!・・・あの爺い!嵌めやがったな!!!ぶん殴ってやろうか!!!




いやはやとんでもない詐欺にあった気分です・・・

創造神様に嵌められたと思ってしまいましたよ・・・

私はまだ何とか生き延びておりますが、これはノンのファインプレイの結果でしかありません。

あーまったく。よかった、よかった。


詳しく話そう。

種を撒いてから一日後、当然お腹は空ている。

今は万能種の成長を待とうと思う。

当然畑への水やりは行っている。

既にお腹はペコペコだ。


何もしないのも何なので家を造ることを考えてみた。

想像とは恐ろしいものだ、今の置かれている状況を脇に置けるのだった。

その所為か簡易に今の状況を捉えていた。

これが間違ってるとは露知らず・・・

暇なので海中を覗いて見た。

特に魚は見つから無かった。

これぐらい俺は呆けていた・・・


種を撒いてから二日後、畑に芽すら出てこないことに多少イライラし始めている。

お腹が減ってしょうがないからなのか?

銛を作成し、海に潜ってみたものの魚は確保できなかった。

銛突きって難しいね。

どうしても身体が浮いてきて、下に潜ることが出来ない。

足につけるフィンが欲しい処だが、ゴムは流石にない。

万能種でゴムの木の種を植えようかと考えたが、やめておいた。

とてもそんな気にはなれなかった。


種を撒いてから三日後、まだ芽は出ない・・・

海を眺めると釣りでもしようかなと考える俺・・・ちょっと希望的観測に目線が広範囲を見ている・・・でも釣り道具は簡単に造れるがエサをどうすればいいか分からない。

するとノンの鳴き声が聞こえた。

「バウ!」


「バウ!バウ!バウ!」

遠い目で声のする方に目をやるとノンが何かを咥えている。


ん?大きなネズミ?

五十センチぐらいのでかいネズミっぽい獣をノンが咥えていた。

何でネズミ?


「バウ!」

えっ!これを調理して食えってことか?

ノンから伝わる意思はそう告げている。

ネズミか~、正直抵抗はあるが・・・背に腹は変えられん。

いい加減何か食わんと気が可笑しくなりそうだしな・・・


いただきましょうかのその前に。


『鑑定』

ジャイアントラット 森に生息する大きなネズミ 食用可


食用可なのね、よかった、よかった。

でもネズミなんだよなー・・・


先ずは『分離』にてネズミの血抜きを行う。

更に『分離』で皮と肉を剥がす。

そして『分離』にて内蔵を取り除く、

最後に『分離』で肉と骨を分ける。


俺の目の前になんともしがたい肉が転がっていた。

なんともしがたいって?


そう、なんともしがたいのです。

何せ臭いんですこの肉。

ならば匂いを「分離」してみては?

おお~!素晴らしいアイデアです。

だけど匂いって分離できるものなのか?


早速試してみましょう。

『分離』匂いの基。


出来た!

『分離』最強!出来るなお主!褒めてしんぜよう!

見た目はほぼ牛肉、うん!これは牛肉だ、そう思うことにしよう。

早速一口大に切り分け串に刺して焼いてみた。

焼いた匂いは何とも香しかった。

非常に食欲を刺激する。

一瞬ネズミであることが頭をよぎったが、刺激された食欲には抗えず食べてみた。


「旨い!いや凄く旨い!」

なんじゃこりゃー、無茶苦茶上手いぞ。

牛肉っぽい肉質、そういえば昔、某ハンバーガー店の肉はデカいネズミの肉だっていう都市伝説的な話があったような、なかったような・・・


「ノン、どうだ?」


「バウ!」


「そうか旨いか、うん?お替わりか、待ってろよ。もっと焼いてやるからな」


「あっそうだ!塩があったんだ」

串焼きにした肉に塩を振りかけてみる。

あ~!バリ旨!ムッチャ旨!

何これ!


「あ~ごめん、ごめん、ノンもお塩どうぞ」

目を輝かせるノン。

もっともっととせがんでくる。


まぁ待てお楽しみはこれからだと俺は不敵に笑う。

これでは終われないな・・・

と言うのも実は俺は時間を持て余し、塩について実験を試みていたのだ。


海水から得る普通の塩、確かに旨い。

あら塩といっていいのかもしれない。

目の粗さや大雑把な味の感じが実に良い。

だがこれで本当に納得していいのか?

食を極める日本人としてはそうじゃないだろう?

否!そうではない。

次に求めたのは藻塩。

海に潜った際に海藻を見つけて収穫しておいたのだ。

そして海藻についた塩を『分離』にて収穫する。

藻はどうしたって?もちろん食べるのには抵抗がある、だからと言って捨たりはしない、一応何かに使えるかもとキープはしている。


それよりも藻塩だ。

なんとミネラルに溢れた塩なのか!


「さあノンよ、これを食らうがいい!」

肉に藻塩を振りかけてやった。

そして俺の肉にも。


「旨い!」


「バウ!」

ノンが相槌を打っていた。


因みに毛皮と骨は取っておいたが血は海に返した。

海藻は肥料になるかもしれないと、細かくして畑に撒いておいた。

藻塩にして塩分を抜いたから大丈夫だろう・・・たぶん。


四日後、まだ芽は出ない。

こちらは既に深めのフライパンと箸とお皿を数枚作成し終えていた。

今か今かと植物の成長を待ち構えている。

しかしそろそろ限界。

何が万能なんだ?腹が立つ!

万能?煩悩の間違いじゃないのか?

だいたいの家の設計はできたので『分離』を駆使して木材を集める。


五日後、まだ芽は出ない。

岩場の石を裏返してみたところ、魚のエサになりそうな虫を発見。

早速何匹か捕まえて釣りを行う。


釣果:ボウズ


因みに釣り道具は『加工』にて竿と釣針を作成、糸は草を集めて『加工』を行い糸を作成した。

アタリはあったんだけどね、ダメでした。

まぁ魚はいるってことですね。


ここで俺は荒業を思いつく。


「ノンさんや、おいでおいで、海に向かって雷魔法をぶっ放なしてはくれんかね」


「バウ!」

ノンが雷魔法を海に向かって放った。


ドーーーーーン!!!!


もの凄い落雷だった。

あまりの威力に腰を抜かすかと思った。

数秒後、海面に数匹の魚が浮かんでいた。

魚を取りに行こうと海に足を突っ込んだ処。


チーン!感電した。

漫画なら多分骨が透けて見えていただろう。


「ノンさん風魔法で、お魚さんたちを集めてくれるかな?」


「バウ!」


塩焼きにして美味しくいただきました。


七日後、まだ芽は出ない。

芽は出て無いのに雑草は生えていた。

雑草を無理やり引っこ抜くと根の部分が土の中に残ってしまった。

なんか無性に腹が立ってきた。


ネズミ肉と魚のお陰で空腹は凌げている。

しかし何が万能種だ!

もう種を撒いてから一週間だぞ!

せめて芽ぐらい生えてきてもいいだろが、あー、腹が立つ!!

あーもう、いい加減にしろ!!

爺ぃコノヤロー!!!騙したな!!!!


バシュ!!!!!


俺は思わずぶっ放してしまっていた。

周り一面に大量の神気をぶっ放してしまった。

俺を中心に金色の神気が辺り一面に放出された。

そして一瞬遅れてばたばたと何かが倒れる音が遠くの方から聞こえた。


「はぁ~、すっきりした!」

なんだか気分がいい。

やっぱりストレスは良くないね、怒りの感情は良くない。

ストレスは溜めてはいけないな。


あれ?


ん?んん?


下を向いてよく見ると畑一面に植物が育っていた。

蔓が伸びているもの、大きな葉っぱを付けているもの。

中にはもう収穫出来る作物もあった。


どゆこと?


ピンピロリーン!


「熟練度が一定に達しました。ステータスをご確認ください」


「はい?」

更にどゆこと?

ピンピロリーンって何ですの?

あとさっきの声、どこかで聞いたことがある声だったような・・・

まぁいいや、確認しろってからには確認してみましょうかね。


名前:島野 守

種族:人間

職業:神様見習いLv2

神力:計測不能

体力:842

魔力:0

能力:加工Lv1 分離Lv1 神気操作Lv1 神気放出Lv1 初心者パック

預金:3102万3433円


あっ!Lvと体力が上がってる。

う!やっぱり預金は減ってるのね、確認してなかったけど。


この使ったお金は、いったいどこに支払われるのかな?

まぁ、知った所でどうしようもないのだが。

万能種や万能鉱石の生産者さんかな?

いるなら会ってみたいもんだ、多分神様関係なんだろうけど。


そして何でLvアップしたのか?熟練度?今考えてもしょうがないか。

ここは追々の考慮ポイントだろう。


あと神気操作と神気放出ってさっきのか・・・

万能種の成長には神気を与える必要があるということなんだろうか?

念の為、畑に手を翳し神気を放出してみたところ、みるみると作物が成長した。


説明書きにちゃんと書いておきなさいよ!もう!!

そういえば・・・


「ノンおいで」


『鑑定』


名前:ノン

種族:フェンリルLv8

職業:島野 守の眷属

神力:0

体力:2096

魔力:1557

能力:人語理解Lv5 火魔法Lv9 風魔法Lv14 雷魔法Lv13


あっノンもLvが上がっている。

ていうか、Lvもそうだけど体力とかノンの方が俺より高いんだけど・・・

魔力も上がっている。いいなーノン。

あー、羨ましいなー。

俺も魔法使いたいなー、エイヤー、トオーって、表現が定年を物語っているな・・・




無人島生活十日目、畑の作物が順調に育ち、やっと食うに困らなくなったので、今は本格的に家を建設中。

早く屋根のある生活をしたい。


家の建設状況はと言うと木材の確保は出来た。

屋根の表面に取り付ける予定の木の皮も揃っている。

本当は万能鉱石から腐食しずらい合金とかを使おうかとも思ったのだが、いくらかかるか分からないので、安価に仕上げることにしたのだ。

これからは木の接合部分の凸と凹の加工を行い、その後は釘をたくさん作成する。

もちろん金槌も作成済。

家のイメージはログハウス。


今の俺とノンは分業制、畑の面倒と家の建設は俺の仕事。

因みに畑は大幅に拡張した、大凡五倍ぐらい。


ノンには狩りを頑張ってもらっている。

これまでノンが狩った獣はこの通り。

ジャイアントラット・ジャイアントピッグ・ジャイアントボアの三種類。

何故に全部ジャイアント?確かにデカいけど・・・


ジャイアントピッグとジャイアントボアに関しては本当にデカかった。

二種類とも立ち上がったら二メートルはあろうかというサイズ。

二メートルの豚と猪って・・・ちょっと怖い。


なので食べきれず、ジャイアントボアに関してはほぼ丸々手つかずの状態、腐らせてはいけないと塩漬けにして樽に保管している。


そして本日の狩りはお預け。

ノンは絶賛お昼寝中。

気持ちよさそうに寝ております。

ノンのことは置いといて。


丸太を組み上げていく。

流石二十歳の肉体、三メートルサイズの丸太を軽々と持ち上げられる。

ただ、実際の二十歳の時の俺はこんなに力持ちだった覚えはないのだけど・・・異世界ドーピングってことかな?

後、よくよく考えてみたら、二十歳の時の俺ってこんなに引き締まった体だったか?

もう少し我儘ボディーだったと思うよ。

脱線してしまった。


能力を使いまくったら『加工』と『分離』がLv2に上がった。

だからなのか『加工』で最初に作っていた木材は表面がザラザラしていたのだが、今作る木材の表面はツルツルになっている。


更に『分離』がLvアップしたせいか『分離』で海水から作る水が天然水になっていた。

確かに水の味が美味くなっている。

恐らくレベルアップは、何回も能力を行ったことによるものと推測している。

そしてぶちまけた神気だが、相変わらず神力の測定不能に変わりなし。

一体どれだけ神力を身体に貯め込んだんだか、俺にはよく分かりません!

一先ずは使いたい放題でありがたいのですがね。


無人島生活十三日目、完成しました。

愛しの我が家。

ログハウス?いや掘立て小屋?倉庫?

いいじゃないか!マイハウス!・・・始めてにしては上出来!

自画自賛するしか思いつかない、トホホ。


これで屋根のある生活が出来る。

でもよく見てみたら窓が無いし・・・扉の建付けも微妙・・・


でもいいのだ!

取り敢えずの目的としては、


1 雨風を防げること

2 寝る場所の確保

3 物を保管できる場所の確保


これだけ出来ればよし!

と言うことでここは満足。

屋根のある生活がやっと始まった。

これまでは浜辺でノンを枕に寝ていたんです。

やっとまともに寝られそうです。

よかった、よかった。


これから家具をいろいろ造っていこうと思う。

先ずは木の皮から蝋燭の作成だな、そうしないと窓が無いから本当に夜は真っ暗になってしまう。




今は備品の作成中。

畑の水やりが終わったら、木材と万能鉱石を中心に様々な備品を作成していく。


調理道具は既に大体の作成が終わっている為、その他の備品を今は作成中。

ベットの木枠を作成した、本当は布団が欲しいが、糸は作れるがそれ以上の技術が無い為とりあえず断念。


椅子とテーブルを造った。

そして改めて釣り竿も造った。

やっぱりインチキ無しに魚をゲットしたい。

因みにまだ釣果はボウズのままです。

どうやら俺には釣りのセンスはないようだ。

でも負けないぞ!いつかは鯛や平目を釣ってみせるぞ!


木のコップだが、使い続けると衛生的ではないと思い、万能鉱石でアルミを使用して作成し直した。

どうしてかと言うと、口を付ける部分の色が変色し出したからだ。


ジョウロとバケツをいくつかアルミで作成した。


あと風呂代わりの大きな樽も造った。

まあ風呂とは呼べないレベルですが、水を張ってノンに火魔法でお湯にしてもらって入浴しているのだが、完成度はかなり低い。

木材の隙間があり、ちょろちょろとお湯が漏れてしまっている始末だ。


そしてバーベキューコンロ。

実はこれが一番ハイルーティーンで使っている。


ログハウスには換気口が無い。

完全な設計ミス・・・キッチンはあるのだが・・・

我ながら残念で仕方が無い。

早くも改築を検討している。

どうやら俺は詰めが甘いみたいです。

ちくしょう!


さて、今後の方針を考えてみる。

これから何をすべきなのか?

無人島からの脱出?無人島の探索?能力の向上と開発?

否!

決まっている!

「サウナの建設」これ以外に何があるというのか!

と言うことでどんなサウナを造るのかを慎重にかつ大胆に考えてみる。

ログハウスの反省をここに生かすべきだ!

そうだそうだ!


設計段階からきっちり考えてみる。

サウナの利用者は俺一人?ノンも入りたいのかな?

いやここは教えて差し上げましょう。

サウナの世界を!

この世界初のフェンリルサウナーの誕生だ。

虜になったりして・・・フフフ。


と言うことで人間一人とフェンリルが一頭入れるサイズで考えてみる。

セルフロウリュウは絶対完備。

水風呂はどうするか?これもサイズと深さについて検討が必要、広いにこしたことはないのだが・・・どうしたものか・・・


外気浴に絶対欲しいのは「インフィニティーチェア」あの人を駄目にするということで有名な椅子。

でも今の能力では作成が厳しいか?・・・

なんでこんなに楽しいのだろうか?

ワクワクが止まらない!

夢のマイサウナ!

待ってろよ!マイサウナ!


悩みに悩んだ結果、マイサウナの概要が決定した。

一番重要な部分の温度を上げる心臓部の熱源装置に使用する材料だが、鉄では難ありとの判断でアルミを使用。

ここには金は惜しまない。


いっそのこと異世界なのだからミスリルなども考えたが、性能がよくわかっていない為今回は不採用。

それにお高いんでしょう?多分・・・


サウナ内の広さは五メートルぐらいは必要と考えたが、熱の上がり具合を考えると広すぎると判断。

狭さは我慢できる為、内部の広さは四メートルあれば充分との考えに改めた。

もちろん外壁などは木材を使用。

どれだけ木材の隙間を埋めれるのかがポイントになる。


水風呂は深さ八十センチ、広さは四メートル×四メートル、水風呂は深いに越したことは無く、広いに越したことは無いのだが、利用人数を考えてこのサイズに決定。

同時に二人で入るにはこれぐらいは必要でしょう。


当初は水風呂は海にドボンとの考えもあったが。

体に付いた海水が乾いた後にベタつき感が残るだろうとのことで断念した。

やはり細部には拘るべきなのだ。


そして問題の外気浴だが、今の俺の能力ではインフィニティーチェアーは作成できないと考えていたのだが、ここにきて状況が一変した。


サウナ建設の為に木材を『加工』

水風呂作成後に水を貯める為に『分離』を多用したところ。


ピンピロリーン!


「熟練度が一定に達しました、ステータスをご確認してください」


とのアナウンス。

ステータスを確認すると、


名前:島野 守

種族:人間

職業:神様見習いLv2

神力:計測不能

体力:842

魔力:0

能力:加工Lv3 分離Lv3 神気操作Lv1 神気放出Lv1 合成Lv1 初心者パック


預金:3072万433円


『合成』って何?


取り敢えずサウナ建設を一時中断。

新たな能力の獲得は『加工』と『分離』のレベルが3にまで上がったからなのか?

これまでは能力のレベルが上がることはあったが、新たな能力の獲得は初めての出来事だ。

どういうことか・・・


『加工』と『分離』が向上したことによる発展形として、親和性のある『合成』という能力の獲得ということなのか・・・

新たな能力の獲得には現在の能力を高めた結果得られるものなのか・・・

いまいち腑に落ちない・・・

サンプルが今回以外にない為、結論は出ない。


新たな能力獲得を喜ぶべき処なのだろう。

分からないものは分からない。

次に移るとしましょう。


『合成』で何が出来るかを考えてみる。

先ず最初に思い浮かんだのは布製品。

大量の糸を植物から『加工』で作成し、その糸がタオルになるところをイメージして『合成』を使用してみた。


タオルが出来た。


素晴らしい!これはとても使える能力だ。

それは始めから備わっていた『分離』と『加工』の能力は、あくまで引き算でしかなかったからだ。

『分離』は海水を飲み水にすることは出来る、これは海水から塩を引いたからだ。

『加工』は木をカップや木材に出来る、これも木を加工した作業。又、木材を『加工』にて表面を仕上げたり、木材を切る作業が出来る。

これも引き算だ。

大量の糸を集めて『加工』でタオルを造ろうとしてみたことがあったが出来なかった。


『合成』はいわば足し算、この能力の使い処は実に多岐に渡るだろう。


これまで作れなかった布製品や石鹸などいわゆる混ぜ合わせるであったり、加える作業がこれで出来る。

とても重宝する能力だ。


こうなれば今やることはたくさんの糸の原料集め。

二日かけて膨大な糸の作成に成功した。


結果出来てしまいました。

「インフィニティーチェアー!!」


俺、泣きそうです!

イエース!イエース!

やってやりましたよ!

最高の外気浴の友を遂に造りましたよ!

あと布団も出来ちゃいました。

大変助かってます。


更にいろいろ試してみた所、衣服、座布団等文化的な物がいくつも作成できた。

布ってこんなに生活に根付いていたんだなと感心しましたよ。

又、石鹸や簡単なソファーも作成した。

一気に文化レベルが上がった気がする。

とても満足だ。


さて、改めて『合成』ついて話しをしよう。

非常に役に立っている。

何よりこの能力が無ければ、マイサウナの完成度は低いものになってしまっていたかもしれない。

と思うぐらいこの能力は万能であった。


サウナの心臓部、熱源装置であるストーブにはアルミが使われている。

当初は縦と横の接合部分には『加工』を使って、凸凹を作成しジョイントすることを考えていたのだが『合成』を使うことにより接合部分が無くなったのだ。


横から見たらL字型になっている状態、この処理を行うことで要らない隙間が無くなった。

結果、無駄な温度のばらつきが無くなる。

サウナの温度の安定と上昇にとても貢献したと言える。


更に素晴らしいのは、いくらLvが上がって来ているとはいえ、サウナ室は木組の建物である為、多少の隙間ができてしまう。

それを『合成』を使うことにより、全ての木の隙間が無くなった。


これにてサウナの温度安定にも貢献出来たし、何よりも水風呂の完成度が上がり、木材の隙間の無くなった水風呂が完成した。

とても万能な能力である。


構想から五日、いよいよ遂に念願のマイサウナが完成した。

やりましたよ、ええ、やってやりましたよ!

早くも異世界にきた目的を達成してしまった。

手に入れました『マイサウナ』!


感動です!

初めてのマイサウナ、興奮せずにはいられない。

早く入りたい!今直ぐ入ろう!


先ずはサウナストーブに薪を入れノンに火を吹かせる。

ちゃんとサウナストーブ側面には空気穴があり、酸素を取り込めるようになっている。


煙は煙突を伝って外へ出る構造なので、煙臭さは心配ない。

まだかまだかと焦る気持ちを抑えつつ、薪を入れてから十分経過、まだ充分な温度には達していない。


更に薪を投入して温度の上昇を待つ、この間に水風呂の様子を伺う。

しかしこの水風呂に水を貯めるのは大変だった。

いくら二十歳の肉体とはいえ、持てる量にも限界がある。


深めの桶を両手に持ち、何度も何度も海からの往復、おそらく三十往復ぐらいはしていると思う。

この作業だけでも汗をかき、水風呂に飛び込みたくなった。


あと水風呂の水は当然『分離』で水を天然水にした。

そして塩がたくさん出来ていた。

この塩の使い道も考えないといけないな・・・塩サウナ?

まだそこまでにはほど遠いが、いいアイデアだと思う。

後日検討としよう。


水風呂に手を入れて温度を確認、だいたい十八度前後といったところだろうか。

少し物足りないがこれはしょうがない。

今はまだ温度調節できるほどの能力を持ち合わせていない。

特に冷やすのはね。


数分待ち再度サウナの温度を確認する。

まだまだだった。

気持ちが焦っているがここは一旦落ち着こう。

マイサウナ一発目だ、一番サウナのパフォーマンスがいい時に入るべきだ。


三十分後、

そろそろだろうか?

おそらく七十度にも達してはいないだろうが、あれがあるから何とかなるだろう。


では、マイサウナいただきます!合掌!

本当であれば、体を入念に洗いお風呂に浸かって体を温めてからサウナに入るのが俺のルーティンだが、今回はサウナの完成を優先した為洗い場は無い。

そこは後日作成ということで許して欲しい。


「では改めまして、無人島生活初のサウナを頂こうと思います。ノン君!君も入りますか?」


「バウ!」

何だかやる気満々のノン、本当に何するのか分かってるのかな?


「元気な返事でよろしい!ではでは、さっそくさっそく」

俺はサウナに一礼し、全裸になりタオルを持ってサウナ室に入った。


やはり少し狭さを感じる、まだいまいち目標とする温度には達していない。

と言うことで始めましょうか。

セ ル フ ロ ウ リュ ウ!

キターーーーー!!!


前もって準備しておいた水の入った桶に杓を入れ、暖炉の上に積み上げてあるサウナストーンにゆっくりと水をかけていく。


ジューっと水が蒸発する音がする、そして蒸気が一気に発生した。

それに伴いサウナ室内の湿度が上がる、良い湿度だ。

タオルをぶん回して湿度をサウナ室全体に行き渡らせる。

サウナ室内の湿度が上がり、体感としては温度は八十度ぐらいに達したであろう。


良い熱を感じる、汗もじっくりとかき始めた。

良い感じ、良い感じ。

横を見るとノンが少し苦しそうな表情をしている。


「ノン、無理しなくていいんだぞ?」

ノンはもう少し粘るといった表情を返してきた。


全身からいい感じで汗をかいている、とても気持ちいい。

無人島生活を始めてから、サウナに入るのは何日ぶりだろうか?

遂にマイサウナを手に入れた、この世界に来る動機となったマイサウナ。

念願と言ってもいいだろう、これを毎日楽しもうと思う。

そんなことを考えながら再度横を向くと、満身創痍のノンがいた。


「ノーーーーーン!!!」


俺達はサウナ室から飛び出た。

水風呂に飛び込もうとするノンを制止して、かけ水をすることを教える。

かけ水をしてから水風呂に入る。


体から一気に熱が奪われていく。

ただ日差しが強いせいか、少し水風呂の温度が上がっており少々もの足りない。

でも気持ちいい。

俺は日除けの屋根を作ろうと決意した。


水風呂から出て軽く体を拭く。

そしてインフィニティチェアーに腰掛け、一気に横になる。

素晴らしい開放感を全身で感じる。

微風を受けて体の内側から熱が発散されていくのを味わう。


心拍数が徐々に徐々に下がっていく、そして呼吸に意識を集中する。

鼻から大きく息を吸って口から細く長く息を吐く、これを何度も何度も繰り返す。

吸い込む息は空気中にある体に良い神秘な空気を体内に取り込むイメージ。

吐く息は体の中の悪いものや疲れ、ストレスやコリを吐き出すイメージ。

これを何度も何度も繰り返す。


すると体がどんどんどんどん神聖な金色の光に包まれていく。

『黄金の整い』を終え余韻に浸った。


隣を見るとノンがとても興奮した様子で俺を見ている。


「ノン、どうかしたのか?」

何とも言えない表情でもどかしそうにしている。

するとノンが深く呼吸をし出した。


「ん?もしかして『黄金の整い』をしたいのか?」

ノンが目を輝かせて俺を見て一鳴きした。


「バウ!」


「そうか、じゃあ二セット目だな」


二セット目を終えて外気浴、ノンに説明をしながら『黄金の整い』を開始、そして余韻に浸った。

あー、気持ちいい。

あともうワンセットやろうかなと思いノンに目をやった。


「おお〜!」

思わず声が漏れていた。

ノンが神気を纏っていた。

金色の神気に包まれている。

これはどういうことだ?


『鑑定』


名前:ノン

種族:フェンリルLv8

職業:島野 守の眷属

神力:15

体力:2096

魔力:1557

能力:人語理解Lv5 火魔法Lv9 風魔法Lv14 雷魔法Lv13


神力15って、何で?

ノンも神力を貯めれるってこと?

んー、よく分からん。

分からないことは考えない。

そんなことよりも今は三セット目だ。


三セット目を終え余韻に浸る。

そして少し考える。

いい整いだったのは確かだけど、日本の時よりも神気が薄いように感じた。

サウナを行う上では、解放感を伴う最高のロケーションなのに何故だろうか?

この世界と日本では実際に空気中に漂っている神気の濃さが違うのだろうか?


あとノンが神気を纏っていた。

動物でも神力を使えるということなのだろうか。

まぁ今は考えても埒が明かない。


そんなことより今はサウナに入れた喜びを噛みしめよう。

マイサウナ一号!これにて完成!

なんだか感慨深いものがある、こっちの世界に来てよかったの・・・かな?


因みにノンだが、時間が経過すると共に神力は徐々に無くなっていった。

どういうことなんだろうか・・・

まあ気にしない気にしない、こっちの世界に来てからと言うもの、疑問だらけの為、最早気にしたら負けなのだ。

と達観することにした。

やれやれだ。

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― 新着の感想 ―
預金額最初からめっちゃ多いwww 早くもマイサウナ作れるとは思わなかった
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