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【最終話】神様のサウナ

長年に渡り本作品にお付き合い下さいまして、本当にありがとうございました。

本話を持ちまして完結となります。


俺は創造神の爺さんを伴ってスーパー銭湯に転移した。

受付のスタッフがいつも通りの笑顔で迎え入れてくれる。


今回の貸し切りに際して、俺はマークに、

「サウナ島のモットーはこれまでと変わらない、立場や地位は関係なく、皆が平等にだ、それは創造神の爺さんが相手でも一緒だ、決して跪く事や傅く必要は無い。いいな?」

と伝えておいた。


マークは、

「分かっています、全スタッフに徹底させます。任せてください!」

心強く返事していた。

こいつも成長したな、サウナ島はお前に託す!

社長、否、今では会長か。

因みに俺は相談役だ。


「ほう、此処がスーパー銭湯じゃな。うんうん、よい雰囲気じゃ」

爺さんはご機嫌の様子。

これまでに見たことがない笑顔をしていた。

実に表情が綻んでいる。


「ありがとうございます」


「にしても守よ、やっと呼んでくれたのう」


「?・・・やっととは?前に普通にサウナ島にやってきたことがあるじゃないですか、普通に来たければ来れたのでは?」


「・・・守よ・・・分からぬか?」


「・・・ああ・・・直接的な関与になりかねなかったということですか?」


「そうじゃ・・・」


「すいません・・・そこまで考えていませんでした。というより俺も創造神に成って、やっと分かりましたよ」


「じゃな、あの時はただのお知らせじゃったからな」


「なるほど・・・」


「まあよいではないか!この時を儂は待っておったのじゃからな」

爺さん・・・結構可愛いじゃないか。

こういうの嫌いじゃないですよ。


「そうですか、では大いに楽しみましょう!サウナですよ!」


「そうじゃな!そうしよう!」

俺達は連れ立って脱衣所に向かった。




先ずは身体を隈なく洗う。

最初のルーティーンだ。

そして内風呂に入る。


「ああ・・・」


「ふう・・・」

身体が解れる感覚に気分が上がる。

隣を見ると爺さんも幸せそうな顔をしていた。


次に外風呂の炭酸泉に浸かる。

「温泉が心地よいのう」

爺さんはご満悦の様だ。

でもここからでしょうが、本番は。

さて、入りましょうかね。


「では行きましょうか?」


「いよいよじゃな?」


「はい、サウナに入りましょう!」


「ホホホ」


「こちらです、どうぞどうぞ」

俺達は連れ立ってサウナ室に入った。


「ほう、結構強烈じゃな」

爺さんは驚いているみたいだ。


「アイルさんからは聞いて無かったんですか?」

俺達は最上段に座る。


「それな、無茶苦茶自慢されたわい!」


「ハハハ!そうですか」


「そうじゃ、やれこんなサウナに入っただの、あんな風呂に入っただの、楽しそうにしておるわい。極め付きはアイちゃんと呼ばれたとご満悦じゃったわい」


「ハハハ!ギルとエリスですね」


「そうじゃ、最近では時間を見つけるとあの二人に世話になっておるようじゃな」


「みたいですね、創造神様ももっと早くこれば良かったのに」


「そうはいかんわい、お主分かっておるんじゃろ?」


「まあ・・・今と成ってはですけどね」


「じゃろうな」

これはどういうことかと言うと、俺は創造神になってから気づいたことがいくつかあったのだ。


先ずはこの世界への直接的な手出しは厳禁ということだ。

これまでの様に好きに何かを造ったりすることは、あまりよくない事だと強く感じる様になったのだ。

本当は手出し出来る事も分かっている。

でもそうすることは、この惑星に住まう者達に考える事を放棄させることに繋がるから良いとは思えない。

困った時は島野様がどうにかして貰えると考える事になるということだ。

今ではこの世界の者達は神を目指さし出した。

そんな者達に直接手を出す事等、あってはならない。

自ら考え、行動し、時に失敗を重ねて、成功し実績を積む。

その道を奪うことをしてはならないのだ。

俺も変わったものだ。

あんなに現場感が抜けきらなかったのが懐かしい。

今では口も出さなくなっていた。


次に俺はともかく、創造神の爺さんはこの世界に顕現することは控えるべきだということだ。

この世界の頂点なのである。

軽々しく会える存在であってはならないのだ。

それを俺は理解したから今回は貸し切りにしたのである。

本当はメタンやプルゴブの様な信心深い者達には、会わせてやりたいものなのだが、そうはいかないという事だ。

俺はもうこの世界では超有名人となっている為、その限りでは無いのだが。


創造神とはこの世界の絶対者であるということだ。

安易に会えていい、存在ではないのだ。


「それにしても守よ、なかなかにこれは忍耐力を試されるのう」


「ここは無理は禁物ですよ、適度に楽しみましょう」


「そうか、まあお主に任せるわい」


「俺のお勧めは汗をかき出してから三分以上ですね」


「そうか、従おう」

俺達はじっくりと汗をかいた。


連れ立って水風呂へと向かう。

爺さんは俺に指導を受けることも無く、掛け水を行っていた。

たぶん神界から見ていたのだろう。

サウナマナーは分かっているみたいだ。

一気に超冷水風呂に飛び込む。


「おおー!」


「引き締まるー!」

ものの数秒で超冷水風呂から出る。

外気浴場に向かい、インフィニティーチェアーに腰かける。

後ろにチェアーを倒して呼吸に意識を向ける。

黄金の整いの時間だ。

隣を見ると爺さんも黄金の整いを行っていた。

猛烈な勢いで神気が爺さんに吸い込まれていく。

なんだこれ!流石は爺さんだ。

俺以上に吸い込んでいるぞ!

これは天晴だ。

敵わないな。


「守よ・・・気持ちいいのう・・・」


「ですよね・・・分かりますよ・・・」


「これは癖になりそうじゃわい・・・」

俺達は余韻を楽しんだ。


そして後二セットサウナを行った。

三セット目にはノンの熱波が待っていた。


爺さんは、

「ノンの熱波は強烈じゃなー!」

とご満悦だった。


ノンも嬉しかったのか、

「創造神の爺ちゃん、良い熱波だったでしょう?僕の熱波は主仕込みだからね!」

と宣っていた。

実に爺さんは満足げにしていた。




館内着に着替えて、別館へと移る。

ここに行かない訳にはいかないでしょう。

俺達は連れ立って別館へと移った。

爺さんは早速テントサウナに向かっている。

お目当てはそこですか、良いチョイスですね。

爺さんはテントサウナの前にある、セルフロウリュウ用の桶と柄杓を握っている。


「守よ、お勧めはどれじゃ?」


「そうですね、レモンなんてどうですか?」


「レモンな」

俺のお勧めに従ってレモン水を桶に入れている。

そしてテントサウナに入る。

すると爺さんは何故だか柄杓を握りしめて、離す様子が無かった。

ちょっと奪ってやろうと何度か手を出したが、手を払われた。

なんで鉄壁のガードなんだ?

そんなにセルフロウリュウがやりたいのか?


「ちょっと、そんなにセルフロウリュウがやりたいんですか?」


「そうじゃ、ここはアクアマリンに自分でやるべきと言われておるからのう


「へえー」

掛け過ぎて急激に熱くなってもしらねえぞ。

ここは黙っておこう。

いい感じで汗をかきだしたので声をかける。


「そろそろいい頃ですよ」


「そうか、いくぞい」


「どうぞ!ドバっといって下さい!」

俺は被害を受けたくないので、身体の周りに『結界』を張った。

爺さんが勢いよくアロマ水をサウナストーンにかけた。

勢いよく蒸気が発生し、一気に室内を満たした。


「熱っちい!なんじゃこれは!熱っちい!」

爺さんは脱兎の如くテントサウナから『転移』して飛び出していった。

俺も『転移』してテントサウナから出る。


「アハハハ!アクアマリンさんに嵌められましたね!」


「その様じゃな、ホホホ!」

爺さんは笑っていた。


泳げる水風呂では爺さんははしゃいでいたな。

頭から滝で水を浴びて喜んでいた。

気持ちは充分に分かるよ。


最後にバレルサウナに入る。

いい感じに熱を感じる。

今日も絶好調の様子。

不意に爺さんから話し掛けられた。


「守よ・・・」


「どうしましたか?」


「一つお願いがあるんじゃがよいか?」

変な事頼むんじゃないぞ。


「なんですか?改まって」


「いやのう、今日ここに来て儂は確信したんじゃ」


「何を?」


「サウナは気持ちいい!」

爺さんは両手を上に突き出していた。

なんだそれ?

この人もサウナジャンキーになるんじゃん。


「当たり前です!」


「そこでじゃ、神界にサウナを造ってくれんかのう?正真正銘の『神様のサウナ』じゃ、どうじゃ?」


「いいですけど、創神神様は自分で造れますよね?」


「出来る、でもここはお主に頼みたいんじゃよ」


「はあ・・・まあいいですけど」


「神界なら能力を存分に使って作業出来るしのう」

この一言が俺に火を付けた。


「なっ!」


「お主、うずうずしておるんじゃろ?」


「・・・まあね」


「分かっておるぞ、神界なら直接手を出すことは許されておるからのう」


「そうですか!・・・やってやりますよ!造って見せますよ。正真正銘の『神様のサウナ』を!」


「ホホホ!期待しておるぞ」


「お任せあれ!」

俺達は連れ立ってバレルサウナを出た。




黄金の整いで最高のリラックスを味わっていた。

そして俺はふと気になった事を思い出した。

もう少し余韻を楽しみたかったが、興味が勝ってしまったのだ。


「そういえば、前にやってくれたなと言ってましたけど。あれは何ですか?俺いけない事しましたか?」


「ん?それな・・・今と成ってはどうしようも無いわい」


「というと?」


「お主、惑星に名づけおったな・・・」


「ええ」


「それじゃよ・・・」


「はい?」


「そんな事はせんでもよかったんじゃよ」


「嘘でしょ?・・・」

あんなに苦労したのにか?


「本当じゃ、そんな事はせんでも、アカシックレコードには辿り着けたのじゃ」


「マジかよ・・・」

命がけだったのにな・・・


「なんであんな命がけの事をしたのじゃ!儂でも流石に肝を冷やしたわい!」

そんな事言われても・・・そうすべきだろうと思ったんだもん。


「・・・」


「それにその所為でこの惑星の所有者はお主に変わっておる。もう儂の物では無くなったのじゃ」


「マジか・・・勘弁してくれよ・・・」


「それはこっちの台詞じゃ!!!」

本気で怒られてしまった。


「すんません・・・」


「まあよいわ・・・全く、やれやれじゃわい!」


「それを言いますか?」


「言わせたのはお主じゃ!」

だね・・・すんません。


「うう・・・」


「ということで、こうなると儂は新たな世界を造らんとならん。そこでこの世界はお主が面倒をみるんじゃぞ!よいな!」


「はい・・・」

ん?あれ?それは・・・

まさか!やったぞ!

ここは最後の交渉が必要だと高を括っていたが、その必要は無かったみたいだ。

まだまだサウナ満喫生活は続けれそうだ。

家族とも一緒に居られるぞ!

命を懸けて名づけを行って良かったみたいだ!

まあ・・・結果論だけどね。




俺は肩を回していた。

久しぶりのサウナ建設である。

これが興奮しない訳が無い。

神界にサウナを造りに行くと告げたところ、カノンとティナが観たいという話となり、アンジェリも連れて神界に行くことになった。

神界に来たティナに創造神の爺さんはデレデレだった。

ジイジと呼んでくれと目尻が緩みまくっていた。

爺さんがこうも骨抜きにされるとは・・・ティナは怖い子。

アイルさんもアイちゃん呼ばわりされて嬉しがっていた。

流石の処世術だな。

ティナにはもう敵いませんがな。


そして俺は能力全開でサウナを建設した。

実は何度も神界に転移しては視察を繰り返し、どういったサウナにするかを入念に考えていた。

草案を纏めるのに一ヶ月も掛かってしまった。

でも無茶苦茶楽しい一ヶ月間だった。

本当は万物創造で一瞬で造れたのだが、敢えてそうはしなかった。

にしてもこんなに嬉しいことは無い。

そして能力全開で喜々としてサウナ建設を行う俺を、ティナとカノンはビビりまくって眺めていた。


ティナに関しては、

「パパって、こんなに凄かったんだ・・・」

と感心していた。


おい!父親を舐めんじゃねえよ!

まさか父親越えを果たした気でいたのか?

まだまだ負けないぞ!

カノンに関しては、始めはビビッていたが、そこはサウナ好きが功を奏したのか、手伝いを買って出ていた。

着工してから僅か一週間、最高のサウナ施設が出来上がっていた。

そして遂に完成した。

正真正銘の『神様のサウナ』が。

我ながら最高の出来だった。

幸福感が止まらない。

そして俺はサウナ島と神界を転移扉で繋げた。




サウナ島に俺は全ての神を招集した。

創造神島野守の名の元に。

数名の神が跪こうとしていた。

それを俺は手を挙げて制する。


「これまで通りの関係でいきましょうよ」

この発言に神様ズはほっとした表情をしていた。

いまさら傅かれてもねえ、返ってやりずらいよ。


俺は神達に宣言した、

「神界に『神様のサウナ』を建設した、此処は神しか利用する事は出来ない」

そして神界に繋がる転移扉を開く。


「さあ、お披露目です!正真正銘の『神様のサウナ』です!」

皆な喜び勇んで転移扉を潜っていた。


さて、今日もサウナ満喫生活を送らせて頂きましょうかね!

整わせて貰うよ!

黄金の整いと共にね。

今日も神気が上手いなあ!

『神様のサウナ』オープンです!




                           完


約1年半に渡り、執筆をさせて頂きました。

本当に楽しい日々を過ごさせて貰いました。

これも本作品の更新を、心待ちにしてくれていた方々がいらしていてくれたからに他なりません。

処女作で長編の執筆と、結構な挑戦を行ってしまいましたが、無事に話を完結することが出来ました。

本当にありがとうござました。


次回作は・・・たぶん書きます。

時間は頂きたいと思います。

では、これからサウナに行ってまいります。

最高の整いを求めて。

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