次期創造神?
我が子のハチャメチャぶりに、俺はてんてこ舞いだった。
余りの規格外に翻弄されている。
どうにも俺は我が子に振り回されるみたいだ。
好き放題にされている。
でもそんな様子も愛して止まない。
本音は嬉しいものである。
既に親バカだ。
これはデレデレともいう。
性別は女の子、生まれながらにして神である。
俺の予想通りだった。
所謂女神だ。
赤ん坊の女神なんて・・・聞いたことが無いな。
アンジェリ曰く、胎児の頃から『念話』で話し掛けてきたらしい。
いい加減にして欲しい。
そんな赤ん坊は聞いたことが無い。
本当は俺は普通に子育てがしたかったのだが・・・こうなってしまっては受け止めざるを得ない。
本当にやれやれだ。
もはや俺には普通の人生なんてあり得ないのだ。
俺は妻のアンジェリと共に名づけについて何度も協議を重ねた。
だがアンジェリ曰く、
「守に任せるよ、だって私よりも守の方が良いに決まってるじゃんね。それに私は名づけなんてしたことないもん」
とのこと。
これの一点張りだった。
まったく協議に成らなかった。
いい加減にして欲しい。
面倒な事は俺に丸投げってか?
結局俺が一人で考えることになってしまった。
結構名づけは大変なんだよ。
何なら体験してみるかい?
分かって貰えるかな?
俺は三日三晩寝ずに考えた。
というのも、本当に俺が名付けて良いのかと考えてしまったからだ。
その理由は余りに我が子のステータスが高かったからだ。
驚くなかれ、こんな感じである。
名前:
種族:中級神
職業:時期創造神候補?
神力:77777
体力:77
魔力:777
能力:念話魔法Lv2 念話Lv2 赤ちゃんパック
空いた口が塞がらなかった。
生まれながらに中級神である。
でも確か創造神から生まれた存在は中級神以上だと、前にドランさんが言っていたような気がする。
それにこの赤ちゃんパックだが、かなり高性能だった。
言語理解や言語発言は当たり前に備わっており、収納は勿論の事、更には演算も加わっていた。
いい加減にして欲しい。
こんな存在に名づけを行っていいのだろうか?
それに職業になんでハテナが付いているのか?
理解に苦しむ。
それに魔力も備わっている。
ある意味俺以上じゃないか・・・
俺の加護が付いたらハテナが採れるとか?
分からない・・・
もう名付ける必要なんて無いんじゃないか?
でも・・・そういう訳にもいかないよな。
それに・・・なんで神力や体力が7揃いなんだよ!
ふざけんな!
フィーバーかよ!
確変でも起こってるのか?
てかさ・・・万の位でも数値は計測出来るんだね。
俺は結局どれぐらいの神力を持っているのだろうか?
もうどうでもいいや。
考えるだけ無駄だな。
そんな感じなのである。
どうしたものか・・・
もうどうとでもなれだ。
少々投げやりになりそうだった。
結果、真剣に悩んで決めた名前は『ティナ』になった。
日本語にすると、輝名。
可愛く育ってと言う意味が有り、多言語化すると有能、陽気、フレンドリー、幸運、気分が良い、クリエイティブ、アクティブ等の多岐に渡るプラスな意味がある。
それに単純に光輝く名前と言う意味だ。
この世界にとっては名前は重要だからね。
これ以外に考えられなかった。
加えて異世界の名前には響きが良いと感じてしまったのだ。
俺はアンジェリにこれにしたいと相談すると、
「いいじゃんね!流石は守!」
と二言返事で了解を得てしまった。
てかさ、我が妻よ・・・あんた何も考えていないよね?
完全に丸投げだよね?
夫婦関係ってこれでいいのだろうか?
まあ愛しているからいいのか?
もうなんでもありだ。
俺の苦労を分かってくれているのだろうか?
甚だ疑問だ。
どうせ分かってないんだろうな。
先日アンジェリからもう一人子供が欲しいと言われてしまった。
勿論努力は始めた。
また直ぐに出来てしまう気がする・・・
俺は引きが強いからね。
一回につき一人、そんな気がする。
それにしてもティナ誕生後の騒動は凄かった。
どこからこんなにも人が集まってきたのか。
話を聞きつけた人達が大挙して俺の家の周りに集まっていた。
それは恐怖を感じる程の賑わいだった。
その原因となったのは、ティナの誕生に興奮した島野一家が総出で騒ぎ出したからだった。
ギルは獣スタイルで空を飛んでティナの誕生を声高に叫び。
ノンは生まれたと言いながら変てこダンスを踊りまくっていた。
エルは歯茎剥き出しで、俊足で飛び回っていた。
レケは宴会だと叫び出し。
エクスはゴンガスの親父さんに真っ先に報告しにいっていた。
クモマルまで獣スタイルで興奮して叫んでいて。
アイリスさんまで浮かれていた。
エアーズロックも興奮して叫んでいたらしい。
まったく手が付けられなかった。
新たな神の誕生を祝おうと、あり得ないぐらいの人々が集まって来ていた。
家の中にいても外の喧騒が凄まじい。
「島野様!おめでとうございます!」
「新たな神の誕生!素晴らしい!」
「アンジェリ様!おめでとう!」
「万歳!」
「やったぞー!」
祝宴ムードが半端ない。
でもこれは凄すぎる。
恐怖すら感じる程だ。
現に軽く地響きが起こっている。
これはなんとかしないとな。
勘弁してくれよ。
加減てものがあるでしょうよ。
俺はサウナ島上空に転移した。
なんだこれは・・・あり得ないぞ!
街を埋め尽くす程の人の山が出来上がっていた。
これは不味い!返って危険だ!
俺は興奮して飛び回るギルを捕まえて、拡声魔法を掛けて貰った。
俺は上空から大声で群衆に話し掛けた。
「お前達!!!祝いに来てくれてありがとう!!!でもこのままでは人の波で押しつぶされる人が出てしまう!!!後日改めて報告をさせて貰うから、今日の所は帰って貰えないか?!!!すまない!!!人命第一だ!!!それに数日でいい!!!家族の時間をくれ!!!」
その声に観衆は反応した。
「分かりました!」
「絶対に祝わせて下さいよ!」
「一先ず帰って宴会だ!」
「違う街で宴会をするぞ!」
「これは返って失礼だったか?」
「申し訳ありません!興奮してしまいました!」
好きに騒いでいた。
数時間後にはいつものサウナ島が帰ってきていたが、街の至る所で宴会が催されていた。
これ以上は咎められないよな。
やれやれだ。
数日後、
俺はなんちゃってテレビで全世界に話し掛けた。
数日前には番組が放送される事は、ゼノンとエリカによって番宣が行われている。
この放映に際して、俺はギルにとある指示を与えていた。
それはティナの体力を配慮した宴会にしれくれよというものだった。
はっきり言って丸投げである。
でもギルは鼻息荒くこれを受け止めていた。
何が何でもやり遂げると連日『マモール』の参加国と会議を重ね、そして実行部隊への支持が飛んでいた。
俺は高みの見物である。
そしてギルは神様ズと南半球の主だった国の上層部を集めて会議を行った。
ギルにはゼノンとエリス、そして五郎さんの手助けが成されていた。
ここは俺は自ら行う事ではないと判断した。
それに俺は祝われる側なのである。
でもそれなりの配慮は求めたい。
そうなると適任者はギル以外考えられなかった。
エリカという手もあったが、既に彼女は働き過ぎなのだ。
それになんちゃってテレビの放送を取り仕切らなければならない。
これ以上は過剰労働になる。
いい加減働き過ぎて倒れないか心配になるぐらいだ。
ギルならば北半球でも南半球でも顔が広い。
それにそつなく熟すセンスもある。
ここはギルに任せるしかなかった。
そして全世界に対して放送が行われることになった。
魔水晶が俺に向けられている。
最近では慣れてきた所為か、俺は緊張しなくなってきていた。
「皆、待たせたな!紹介しよう。俺の妻アンジェリと我が子のティナだ!」
俺の隣にアンジェリがティナを抱えて着席する。
放送ではあるのだが、視聴者の反応が手に取る様に感じられた。
初見の我が子にこの惑星の全住民が興奮しているのが分かる。
どうやら我が子は絶大な存在みたいだ。
そしてティナが話し出した、
「世界の皆、始めまして!ティナだよ!」
赤子が話し出した事に驚く者が続出した。
中には卒倒した者もいたらしい。
でも何故だか当たり前と受け止める者もたくさんいたみたいだ。
そしてこれが世界を揺るがせた。
まあそうなるでしょうね。
ほとんどの者達がこれに興奮していた。
そこらじゅうで騒ぎが起こっているのが把握出来た。
「皆、我が子を可愛がってくれたら嬉しい」
「よろしくね」
アンジェリも言葉を添える。
「ティナは喋れるが、まだまだ生後間もない、決して無理が出来る状態ではないんだ。お披露目をギルが計画してくれてはいるが、その辺を配慮して貰えると助かる」
「ごめんね、気持ちは嬉しいのよ」
「皆!ありがとう!」
「では宴会場で会おう!」
簡単な放送ではあったが、恐ろしい視聴率だったみたいだ。
後日エリスとゼノンからそう言われてしまった。
ギルの手配は完璧だった。
宴会会場は計十四カ所。
午前一時間と午後一時間のみ、お酌は禁止。
飲み食いは好きにしてくれと。
騒いでも良いが程々にしろよと。
特設会場が設置され、そこに向かって特別な馬車に乗った俺とアンジェリとティナが手を振って向かう。
要はパレードだ。
警備は厳重になされ、安全は担保されていた。
警備の責任者は勿論ガードナーだ。
あいつは無茶苦茶気合が入っている。
不届き者は許さんと肩を回していた。
特設会場に着くと、国の重鎮達や神様が数名挨拶を行うという内容だった。
ギルは頑張ってくれたみたいだ。
ティナはまだ生後間もない為、すぐ寝てしまう。
何度かパレードの最中でもこっくりとしていた。
でもその様が可愛いと黄色い声が挙がっていた。
このパレードの様子はなんちゃってテレビで連日放送され、誰もが釘付けであったみたいだ。
都合一週間に及ぶ顔見せは後日記念日とされ、大型連休として全世界共通の祝日となった。
ティナは無茶苦茶人気者になってしまった。
赤子にして最強のアイドルである。
この人気はオリビアさんも超える。
流石のオリビアさんも負けを認めてしまっていた。
というより、ティナにデレデレのオリビアさんがそう仕向けた節もある。
連日なんちゃってテレビで、オリビアさんはティナを紹介していたのである。
ここはティナの処世術が勝っていたと記しておこう。
ティナは甘え上手である。
オリビアさんも骨抜きにされていたのだ。
とにかく甘え処を分かっている。
それも作為的に・・・
どこでこれを学んだのだろう?
俺には分からない。
どこに出してもティナは人気者だった。
当然俺の影響もアンジェリの影響もある。
でもそれだけではあり得ない程の支持を受けていた。
処によっては俺よりも信仰されていた。
人気は留まることを知らない。
正に次期創造新候補であった。
そして名づけを行った結果。
やっぱりティナは進化した。
本来神は進化しない。
でも俺は創造神なのである。
創造神であれば神を進化させることは出来る。
ティナは上級神になっていた。
こうなるだろうなと思ってはいた。
赤子にして母親越えである。
でもアンジェリは悔しがる処か喜んでいた。
だろうなとは思っていたが・・・
でもアンジェリも何故か下級神から中級神に進化していた。
それも出産を機に。
美容の神から美の神になっていた。
俺にはいまいち違いが分からなかったのだが・・・
まあいいだろう。
そしてティナだが能力が・・・チートだった。
赤子にして『念動』と『浮遊』を覚えていた。
我物顔で宙に浮きまくっている。
いい加減にして欲しい。
ティナはあり得ないぐらいに賢い。
生後一週間にして読み書き計算が出来た。
『演算』があるから当たり前か?
でも少々嬉しかったのは、身体の成長は急激にとはいかなかった。
生後数日は首が座らなかった。
でも生後三ヶ月にして既にハイハイしているのだが・・・
いきなり歩かれるよりは増しである。
まあ『浮遊』で浮かんでいるのだが・・・
どう受け止めようか?
ここは異世界・・・大らかに受け止めよう。
何でもありだと・・・
そしてハテナは無くなっていた。
やっぱりか・・・
まあ我が子が次期候補であることは嬉しくはあるのだが・・・
ちょっと複雑な想いだった。
だってまだ赤子だよ?
島野一家のティナの可愛がり様は凄かった。
あのゴンまでデレデレだった。
そしてノンとギルの二人に関しては、実際に眼に入れても痛くは無いのかもしれないというぐらい可愛がっていた。
異常な程の愛情を注いでいた。
暇さえあれば島野一家はティナを見に来た。
また来たのか?と言いたくなるぐらいだった。
あのレケすらもティナに御執心だった。
クモマルは常にティナの安全を気遣っており。
エルは歯茎全開だった。
エクスは照れるばかりで、アイリスさんは異常に赤ちゃん言葉で接していた。
そしてあの好青年のエアーズロックすらも目尻が歪みまくっていた。
ある日何気なくティナに近づこうとしたゴブオクンを、ノンが回し蹴りで撃退していたこともあった。
なんのことやらである。
まあ愛されているということだろう。
そう受け止めよう。
まだまだティナフィーバーは続きそうである。
やれやれだ。