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プレオープンに向けて

分身体を得たエアーズロックだが、何をして貰うかと考えた結果、先ずはサウナ島の受付業務を手伝って貰うことにした。

と言うのもいい加減北半球での転移扉ネットワークを構築しなければいけないからだ。

エアーズロックには行く行くはその転移扉ネットワークの責任者兼扉の運営者になって貰おうと考えたのだ。

エアーズロックは何でも熟す器用な一面があるから大丈夫だろう。

それに『シマーノ』に連れて行ったのだが、それなりの人気者になっていた。

こいつも神様扱いされている。

厳密には違うみたいだが似たような者だろう。

実際にアイリスさんと違ってこいつは神力が使えるからね。

それに俺が認めている奴だと首領陣に話した処、その影響力は絶大であった。

噂の中にはファンクラブが立ち上がったというものまであったからね。


現在の構想は先ずは拠点となる受付を『シマーノ』に設置する。

そして転移扉を繋げる予定の国はルイベント、ドラゴム、ドミニオンとなる。

ドラゴムはもう繋がっているけどね。

まずは北半球のみでしか基本的には繋げない。

因みにエアーズロック本体は南半球扱いの為このネットワークには加えない。


現在も北半球から南半球に渡ることが出来るのは『シマーノ』の魔物達と一部の認められた者達のみとなっている。

一部の認められた者とはダイコクさんとポタリーさんのことだ。

この二人が稀にお付きの者を連れてくるのだが、ここは申し訳ないのだが厳重に対応させて貰っている。

それは『鑑定』の魔道具にて『鑑定』を受けて貰うことだ。

今はまだ全面的に認める訳にはいかないし、こちらとしても一切の隙も見せるつもりはない。

というのもまだイヤーズの残党が紛れ込む可能性がゼロではないからだ。

もう実質あの国はただのイヤーズでありラファエルの影響下には無い。

しかし過去にラファエルが無慈悲に行った指令が生きている可能性が否定できないのだ。

俺としてはあと半年以上は解放するつもりはない。

というのもエリカの様に『隠蔽』の魔法を使える者もいるからだ。

それにゴンが得意とする『変化』の魔法もある。

紛れ込むことは出来なくはないのだ。

まぁそこまでする事は考えづらいのだが・・・念には念を入れておきたい。


先日スターシップをサウナ島で見かけたが、ちゃんと受付では『鑑定』を受けたみたいだ。

この重要度をランドは熟知している為、受付サイドとしても相手が国王で会ったとしても譲らなかったみたいだ。

特にサウナ島は立場や地位に関係なく皆が平等にがモットーである。

特別扱いなんてあり得ない。

スターシップ相手でも気は一切使わない。

家のスタッフ達はそれを熟知している。

もしスターシップがゴミをその辺に捨てようものなら間違いなく注意されるだろう。

下手をすればガードナーに連行されるかもしれない・・・

それはダイコクさんやポタリーさんも同様である。

ここのコンセプトは変わらないし、今後も変えるつもりは全く無い。

それは仮に相手が創造神の爺さんであったとしても同じである。

おそらくマーク辺りは始めはビビるかもしれないが、慣れればすぐに扱いは一般人のそれになるだろうと思う。

俺は始めから特別扱いするつもりは全く無いのだけどね。


そしてこの北半球の転移扉ネットワークに関する構想は、既にダイコクさんとポタリーさんには共有済である。

ダイコクさんからは今の直ぐにでも南半球と繋げて欲しいとは言われているが、そうは問屋が卸さない。

この人は自分が暗殺未遂や誘拐未遂になったことを知らないのだからしょうがないが安全第一である。

ポタリーさんに関しては、

「旦那に全て任せるよ」

の一点張りである。

俺はポタリーさんから全幅の信頼を受けているみたいだ。


話は脱線するのだがポタリーさんはやはり俺の睨んだ通り、ゴンガスの親父さんと相当仲が良くなったみたいだ。

二人は直ぐに打ち解けていた。

神としての親和性があるのだろう。

実際陶磁器に関しては親父さんも造っていたからね。

お互いの技術交流も進んでおり、赤レンガ工房でポタリーさんをしょっちゅう見かける事になった。

またポタリーさんもそれなりの酒豪の為、たまにスーパー銭湯の大食堂で宴席を開いているのを見かける。

それにその豪胆な性格が受けているのだろう。

ポタリーさんはドワーフ達とも仲が良い。

流石は陶磁器の神様だ。


一方ダイコクさんはよくエンゾさんと会談を開いているみたいだ。

場所は迎賓館の個室だ。

その為二人がどんな交流を行っているのかは不明だ。

俺の予想としては経済の話を喧々諤々と行っているに違いないだろうと思う。

今でも北半球と南半球の間の金貨の相場は定まっておらず、二人は頭を悩ませていた。

その為、金貨の両替はあまり上手くいってはいないのが現実だ。

それでは良く無いとここは暫定処置として金の含有量で両替は行われているが、本当はそうであってはならないとエンゾさんが言っていた。

こないだ相談された所としては、問題点は北半球からの輸入があまり進みそうにないということだった。

南半球の商品の質が高く、北半球からして見ると輸入過多になりそうだという話だったのだ。

唯一北半球から輸入を行えそうなのは『シマーノ』ぐらいだと言う話だった。

その他の国からの仕入れとなると、ポタリーさんの陶磁器以外は今のところ見当たらないらしい。

そういった経済的な不健康状態を気に要らないエンゾさんがそれを許す訳が無く。

打開策の無い現状に二人は頭を悩ませていた。


最近は減ったが、このサウナ島にお金が集まってきている現状にも未だエンゾさんは不機嫌なのである。

俺が娯楽を南半球の国々に広げたことで少しは解消されたみたいだが、まだまだこの不健康状態は解消できそうもない。

そこに輪をかけてエアーズロックが現れてしまったのだ。

俺はもしかしたらいつかはエンゾさんに首を絞められるのかもしれない。

それも後ろから・・・

まぁでも今では多少は諦めてくれている様で、今は自分が今後経営する喫茶店に全力を注いでいるみたいだ。

その為顔を見かけると、新たなスイーツのレシピを教えろと俺はしょっちゅう連行されてしまう。

俺はそんなに暇ではないのですがね・・・

勘弁して下さいよ・・・


話を戻すが北半球の転移扉ネットワークは、エアーズロックの開発が落ち着き次第着手しようと考えている。

分身体のエアーズロックも既にダイコクさんとポタリーさんには引き合わせてあり交流は始まっている。

エアーズロックは体育会系の好青年の為直ぐに馴染んでいた。

こいつは相当に使える。

正直言ってありがたい。

実にいい人材を確保できたと思う。




そしていよいよスーパー銭湯の別館のプレオープンを迎えることになっていた。

ここは考え処である。

というのも遠慮を知らない神様ズ、熱気に沸いている『シマーノ』の魔物達、空気を読まない上級神、参加メンバーに困ってしまったのだ。


スーパー銭湯の時は簡単だった。

神様ズに何人連れて来てくれで済んだからだ。

今ではそのネットワークが広がり過ぎている。

それに使用後のアンケートにも真面に応えてくれるとも思えない人達が多い・・・

正直困った・・・


そこで俺は裏技を使う事にした。

ある意味奥の手とも言える。


それを分かってはいるのだが、俺は問答無用で念話を繋げることにした、

「もしもし、アイルさん。聞こえていますか?」


「ええ、聞こえていますよ。守」


「よかった、アイルさん。サウナを楽しんでみませんか?」

正に禁じ手である。

時の神アイルさんを俺はサウナ島に呼び込むことにしたのだ。

察しの良いアイルさんなら俺が何も言わずとも状況を理解してくれるに決まっている。

それに神界から見ているに違いない。

他の者達を黙らせるには打って付けの神選だ。

これで不要な申し入れも無くなるだろうし、皆な襟を正してくれるだろう。

フフフ・・・

俺を舐めて貰っては困る。

いつでも他人の褌で相撲を取る準備は出来ていますのでね!


「あら、嬉しい申し入れね。じゃあお言葉に甘えようかしら」


「どうぞサウナを楽しんで下さい」


「あの人もサウナに入りたいかしら?」


「えっ!創造神様ですか?」

マジか?遂に爺さんもサウナに入るのか?

これは面白いことになってきましたよ!


「そうよ、興味があると以前言っていたのよ」


「へえー、誘ってくれてもいいですよ」


「そうねえ、そこは考えとくわ」


「そうですか、ではお待ちしておりますので近く起こし下さいね」


「そうね、じゃあ明日伺おうかしら?」


「了解です!」


「じゃあ明日ね」


「お待ちしています!」

しめしめだ・・・これで少しは神様ズや他の面々も背筋が伸びることだろう。

フフフ・・・




スーパー銭湯の別館プレオープン初日。

スーパー銭湯には緊張が走っていた。


俺は前もって、

「神界からゲストが来るから」

こう宣言しておいたのである。


察しのいい神様ズは戦々恐々としていた。

特にオリビアさん達女神一同の緊張感が半端ない。

通常運転は五郎さんとウィンドミルさんとアクアマリンさんぐらいだ。

珍しくアースラさんまで強張っている。

何でそんなにアイルさんに身構える必要があるのだろうか?

俺には分からんな。

面倒見のいい女神さんですよ。

まあスパルタだったけど。

それにここはサウナ島ですよ?

特別扱いはしませんけど?


そしてその時は突如訪れた。

スーパー銭湯の受付にアイルさんが転移してきたのだ。

息を飲む一同。

まるで時が止まったかの如く静まり返っている。

ん?んん?

あらま、本当に時を止めてんじゃんよ。

何をやってんの?アイルさん。


「アイルさん何をやっているんですか?」


「守、久しぶりね」


「ええ、で、何で時を止めたんですか?」


「少し守と話したいなと思って」


「話ですか?」

こっちは特にありませんが・・・


「そうよ、今後についてね」

やっぱりか・・・


「・・・」


「担当直入に聞くけど、この先どうするつもりなの?」


「どうするって、それは何についてですか?」

本当は分かっている、何を聞かれているのかは。

しまったな・・・呼ぶんじゃなかったな?

藪蛇だったか?


「・・・分かっているんでしょ?」


「はい・・・」


「まだ、心の整理がついて無いみたいね」


「そうですね・・・まだ、何とも・・・」


「ふう・・・急かすつもりはないけど、時間は有限よ」


「はい・・・」


「あなたの修業も、もう終着点は見えているんだからね」


「分かっていますよ・・・」


「ならいいけど・・・まあいいわ、今日はサウナとサウナ島を目一杯楽しませて貰うわね!」

アイルさんは表情を改めてにこやかになった。


「ありがとうございます!」

要らぬ心配をかけてしまっていたみたいだ。

でも・・・ここは俺のペースでやらせて欲しい。

まだやりたいことが沢山あり過ぎる。

まだまだサウナ満喫生活を捨てきれない。

それに俺には・・・


ここは気分を変えよう。

「じゃあ時間停止を解除しますね」


「お願いね」

俺が指パッチンすると時が動き出した。

俺以外の者達からは単にアイルさんが転移してきたように見えたことだろう。

一瞬の間の後に大歓声が挙がった。


「うおお!女神降臨!」


「時の神来たー!」


「無茶苦茶美人!」


「おお!神々しい!」

好きに騒いでいる。

満更でも無いみたいでアイルさんは手を振って答えていた。

ナイスな笑顔を添えて。

この人結構楽しんでんじゃん。


「さて、アイルさん。先ずはこの衣服に着替えてください」


「守、それはいいけど、スーパー銭湯を先に堪能させて貰えない?」

おお!分かってんじゃないですか。

勿論結構です!


「いいですよ、じゃあ一時間後にここに集合しましょう」


「もうちょっと時間が欲しいわね、二時間後にしましょう」


「分かりました、お待ちしております!」

スーパー銭湯を楽しむ気満々じゃないですか!

良いですねー、うんうん。


「ウィンドミル、アクアマリン、教えて貰えるかしら?」


「いいよー、母様」


「着いて来てー」

通常運転の二人がアテンドしてくれるみたいだ。

三人は連れ立って二階に続く階段を登っていった。

その後を女神一同が一定の距離を置いて着いて行った。

やれやれだ。


五郎さんが俺の側に近寄って来る。

「で、島野。あの別嬪さんは誰なんでえ?」


「時の神、アイルさんですよ」


「ほう、てことは創造神の嫁ってことだな」


「ですね」


「後で挨拶しねえとな」

五郎さんも通常運転だ。

この人は誰が相手でも変わらないな。

五郎さんらしいとも受け取れる。

なんとも心強い。

頼れるのはよき隣人ということか?

他の男神達は眼をハートにしていた。

ランドールさんに至っては鼻血を流していた。

何でだよ!

ゴンガスの親父さんの眼がハートマークになっているのはちょっと笑える。

さてさて、俺も先ずは風呂とサウナを満喫しましょうかね。


男神達と連れ立ってスーパー銭湯の風呂場に向かった。

一通りスーパー銭湯を堪能し、約束の集合場所に向かうと既にアイルさんは俺を待っていた。

後日聞いたのだがマッサージ機にド嵌りしていたらしい。

気持ちは良く分かる、気持ち良いよねーマッサージ機。


「すいません、待たせてしまいましたか?」


「今来た所だから大丈夫よ」


「それはよかった、後言い忘れていましたが今日はプレオープンですし、こちらからお呼びしましたので俺が奢りますが、次からは料金は貰いますからね」


「あら?そうなの?」


「はい、それにここサウナ島では立場や地位に関係なく皆が平等にがモットーですので、アイルさんもそれに従ってくださいね。一般人扱いです」

俺の発言にざわつく神様ズ。

何人かが引いているのも肌で感じる。


「分かったわ、そうね。従いましょう・・・そうだ守!ちょっといいかしら?」


「どうしましたか?」

そう言い終わるや否な、俺は備蓄倉庫の前に転移していた。

ん?どうしてだ?


アイルさんが俺の隣に立ち、

「倉庫の中に入ってもいい?」

何故だか備蓄倉庫の中に入りたいみたいだ。


「いいですけど・・・」

アイルさんは問答無用で備蓄倉庫の中に入り、備蓄してある食料品に手を翳した。


「時間経過」

そう呟いていた。

対象となる食材の時間が経過していくのが分かる。

というのも俺だから分かるのだろう。

時を意識できるからね。

これが他の者ならば何のことかさっぱり分からないだろうと思う。

これはもしかして・・・


「これでいくら貰えるかしら?」


「なんと!『熟成』の上位能力ですか?」


「ウフフ、秘密よ」

やってくれる。

俺が『熟成』で行っているアルコールや醤油、味噌や肉の熟成まで全ての作業が一瞬にして行われていた。

流石は時の神だ。

時間経過とは素晴らしい!これはパクらなければいけない。

これは恐らく食料品だけに関わらず、物質全てに適用できる能力だ。

にしてもこれはいくら差し上げたらいいんだろうか?

全く分からん。

でも時間を買ったということになるよな。

いったいどれだけの価値になるのだろうか・・・


「ちょっと金額が妥当かは分かりませんが、金貨三十枚でどうでしょうか?」


「金貨三十枚?まあそれぐらいでいいでしょう」

俺は『収納』から金貨を取り出して渡しておいた。

後で会社に請求しよう。


アイルさんが指パッチンを行うと皆が待つスーパー銭湯に転移した。

では、別館に行きましょうかね。


「じゃあ行きますよ」


「楽しみね」

俺は別館に繋がる転移扉に手をかけてアイルさんと共に別館に向かうことにした。




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