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残念な上級神

エアーズロックの開発が行われようとしていた。

既に水資源についての確保は出来ていた。

実験を行った結果を得て、俺は転移扉と浄化タンクのセットを三つ完成させた。

稼働確認は済んでおりこの後はエリスが取り扱うことになっている。

これで水資源は問題無くなった。


そして俺とランドールさんは建設工事の着工を始めることにした。

草案から図面は出来上がっている。

これまでに無い仕上がりになるだろうと俺達は興奮していた。


俺は適時エアーズロックと会話している。

こいつも何が行われるのか気になってしょうがないみたいだ。

事あるごとに俺に念話をしてくる。

正直面倒臭いぐらいだ。

というより会話できることが嬉しいのか、たまにどうでもいい事を聞いてくる。

それなりのかまってちゃんだ。

思わず世界樹と繋がった時の事を思い出す。

毎朝天気について話をしたものだった。

随分と懐かしい思い出である。


でも実際の問題はここからなのだ。

どれだけの重量にエアーズロックが耐えきれるのかは重要な要素である。

浄化タンクは既に設置済みだが、今後建造物が沢山造られてかつ人が出入りすることになる。

以前に神力を分けてはみたがその後どんな状況なのかはエアーズロックにしか分からない。

いきなり耐えきれないと沈下されてしまったら、こちらとしてはどうにも出来ない。


等と考えていたらエアーズロックがこんな事を言い出した。

(守よ・・・南半球は神気に満ちているな・・・これならばもう神力を貰う必要はなさそうだ・・・)


(そうか・・・それはよかった・・・)

これは一安心だな。


(して守よ・・・何故にここはこれほどの幸せな気に溢れておるのだ?・・・それに世界樹もいるようだ・・・)

俺はこの発言に違和感を覚えていた。

世界樹を感じることができるのか・・・もしかして・・・


(なあ・・・エアーズロック・・・お前・・・もしかして分身体を造れるんじゃないのか?・・・)


(可能だ・・・でも・・・今の直ぐは無理だ・・・もうちょっと力を蓄えたい・・・)

やっぱりな・・・だと思ったよ。

どうにもその存在感が世界樹の雰囲気に似ていたからだ。

この存在をどう表現したらいいのか俺には分からないのだが、大自然には意思がありそして個性を持っている。

人と同意とまでは言わないが間違いなく自我があるのだ。

それを俺は見過ごすことは出来ない。

同調で繋がったからこそという部分はあるのだがそれだけでは無い。

大自然には必ず意思があるのだ。


そしてエアーズロックはこんな事を言い出した。

(あと数ヶ月だな・・・お前の元に訪れようぞ)

マジか・・・来てくれなくてもいいのだが・・・

でも来るなとは言えないな。

好きに使わせてもらっているしね。


(待ってるよ・・・)

こう言うのが精一杯だった。


(そうだった・・・守よ・・・大空の神が近々顔を出すと言っておったぞ・・・)

マジか?もう上級神は要らないっての。

何しにくるんだよ?


(遠慮したいのだが?・・・)


(連れないではないか・・・)


(はあ・・・もう神様は足りてるっての・・・)


(そうは言うが・・・守よ・・・向うから勝手にやってくるぞ・・・スカイクラウン様はそういう神だ・・・)


(そうか・・・)

拒否権はないみたいだ。

大空の神スカイクラウンさんね。

はいはい、やれやれだ。


エアーズロックの事は一先ず置いておいて、俺とランドールさんは建設工事の着工を始めた。

ランドールさんの所の大工総勢三十名、サウナ島の大工は俺とマークとランドだ。

建設となるとどうにもこのメンバーになってしまう。

そしてここには新たな戦力としてオクボス率いる魔物大工軍団が勢揃いしている。

本当はマークは社長業に忙しくしているのだが、ここぞとばかりにエリカに丸投げして大工作業に交じってきた。

こいつめ、ついに丸投げを覚えやがったな。

俺の専売特許だったのに・・・

マークは楽し気にニコニコしている。

そうとう身体を動かす仕事がやりたかったみたいだ。


このメンバーはスーパー銭湯を造った時のメンバープラスアルファだ。

俺にとっては信頼のおけるメンバーだ。

全員が顔見知った間柄であり、阿吽の呼吸で作業を進めることができる。

要は勝手知ったる仲ということだ。

それにオクボス達はランドールさんの弟子であり俺に従順だ。

最高戦力になるに違い無い。


ランドールさんは大工に指示を出しつつも丁張とレベル測量を行っていく。

俺もそれに負けじと指示を飛ばしていく。

自分も負けるかとオクボスも着いて来ようと額に汗をかいていた。


今回の水資源の運用はこれまでとは大きく違う、その事を全員が理解している。

だが実際の造りは水道とあまり変わりは無い。

要は川から水を引くのではなく、巨大な浄化槽から水を引き込んでいるだけに過ぎない。

構造そのものは大して変わらない。

先ずは土魔法を駆使して地面を抉っていく。


そして俺に声が掛けられる。

「島野さん、お願い出来るかな?」


ランドールさんがここからここまでと分かり易く地面を抉る位置を指し示している。

「了解!」


俺は自然操作を発動して一気に地面を穿つ。

「「「おおー!!!」」」


ランドールさんの所の大工達が声を挙げている。


「島野さんの能力を見るのも久しぶりだな」


「相変わらずえげつないな」


「反則だろ!」

好きに騒いでいる。

オクボス達は自慢げだ。


「騒いでないでお前達も働け!」

俺は大工達に檄を飛ばず。


「はいはい!」


「よく言うよ、俺達の仕事を奪っておいて」


「間違いないな」


「お前達、煩いんだよ!」

こんな掛け合いも楽しい。

やっぱり俺は現場が好きなんだなと感じる。


「さあ、島野さんこっちもお願いしますよ」

ランドールさんも楽しそうだ。


「了解!」

こうして俺達は楽しく作業を行っていった。




来なくていいのに・・・

エアーズロックから話を聞いてから三日後、建設作業をしている俺達の元に大空の神スカイクラウンが現れた。


「よう!島野だな!」

雰囲気としては飄々としているお兄ちゃんといった感じだった。

髪を靡かせた男神が俺達の上空に浮かんでいた。

風が吹いていないのに・・・何故に髪が靡いているの?

特徴的な視線を漂わせて、俺達を真上から見つめている。


「ああ・・・」

ちょっと立ち寄ったよ、とでも言いたげな雰囲気で上空から降りてきた。


「エアーズロックが世話になったみたいだな。助かったぞ」


「まあな」

何となく敬語を使う気にはなれなかった。

いい意味でね。

不思議と少し親近感があった。

これはなんだろう?

リラックスした雰囲気が妙に似合っている。

そんな気配を漂わせていた。


「それで、俺の許可なく南半球にエアーズロックを連れてきたみたいだがどうしてだ?」


「ん?許可が必要だったのか?」


「・・・いや、要らない」

俺はずっこけそうになってしまった。

なんだこいつ?天然か?


「お前スカイクラウンだな?」


「そうだ」


「本当に来たんだな・・・」

来なくてもいいのに・・・


「そうだ、何となく立ち寄りたくなったんだ」


「あっ、そう・・・」


「これからも立ち寄ってもいいか?」


「好きにしてくれ」


「そうか、それで?俺には何のバイトをさせてくれるんだ?」


「はあ?お前もバイトをするのか?」


「ああ、そうしないと飲み食い出来ないとフレイズから聞いたからな」

フレイズから聞いたんだ・・・

変なこと吹き込まれてないといいけど・・・


「そうか・・・ところでお前は何が出来るんだ?」


「ん?色々・・・」


「・・・」

ちゃんと説明しろよ!

駄目だこいつ、マイペースが過ぎる。

こいつはまるで雲だ、掴み処が無い。

やはり癖が強かったか・・・

だと思ったよ、全く。


「色々で分かる訳がないだろ?ちゃんと説明しろよ!」


「説明か・・・面倒臭いな」

お前が面倒臭いっての。


「あのなあ、何が出来るか分からないと何のバイトを任せればいいか分からないだろうが?」


「そうか・・・そうだな・・・俺は・・・浮かんだり・・・浮かんだり・・・・浮かんだり・・・」

浮かんだり以外を言えよ!


「もしかしてお前・・・浮かぶ以外は何もできないのか?」


「いや、転移と結界は張れる・・・それ以外は・・・浮かぶことだな・・・ほとんど・・・」

なんだこいつ・・・ほぼ浮かぶことしか出来ないじゃないか・・・

まあいいだろう。

浮かぶって・・・何がある?

そうだな・・・サウナ島では特に仕事は無さそうだな・・・

てか浮かぶ?

特に何も思いつかないな・・・

強いて言えば・・・今ではないな・・・

でも・・・よし!こうしよう!


「なあ、今の直ぐではないがお前向けのバイトを考えておくよ、それでいいか?」


「ああ・・・ここに・・・アースラはいるか?」

何で意味深な顔をしてるんだ?


「サウナ島にいるけどどうしてだ?」


「ん?アースラは俺の嫁さんなんだ・・・」


「はあ?」

嘘でしょ?マジで?


「島野、何を驚いているんだ?エアーズロックと世界樹は俺とアースラの子供なんだがな」


「マジか!」


「ああ・・・」

なんだか聞いてはいけない事を聞いてしまった気分だ。

俺の隣でランドールさんは固まっていた。

その気持ちはよく分かる。

てかアイリスさん、否、世界樹はアースラさんの権能で生み出されたものと勝手に思っていたのだが間違いだったみたいだ。

まさか父親が居ようとは・・・

それにエアーズロックはアイリスさん、もとい、世界樹の兄弟なんだ・・・

流石に驚きが止まらないな。

どうなってんだよ、いったい・・・。


俺は現場を離れてアースラさんの所にスカイクラウンを連れていった。

スカイクラウンを見るやいなやアースラさんが叫んだ。


「この人でなしが!」

怖っわ!

アースラさん、青筋立ってるよ。


「あんた!今更に何しに来たんだい?!どうせまたそこら辺をフワフワ浮かんでたんじゃろう?」


「よお、アースラ。久しぶりだな、元気だったか?」

アースラさんの激怒もお構いなしにスカイクラウンは飄々としている。


「久しぶりだなじゃと?!何しに来たんだい?!」

アースラさんの怒りは収まらない。


「何しにって、お前の顔を見に来たんだよ、愛する嫁の顔を見に来てはいけないのか?」

恥ずかしげも無くスカイクラウンは言う。


「なっ!・・・そうなのかい?」

アースラさんは一気に女性の顔になっていた。

マジかよ!

アホ夫婦なのか?


「もう!嬉しいじゃないかえ」

アースラさんは柄にも無く照れていた。

何だこれ?・・・

アースラさんはスカイクラウンにベタ惚れなのか?


「お父様!」

横からアイリスさんが混じってきた。


「よお、世界樹・・・そうだった、今はアイリスだったな」


「この人でなしが!」

そう言うとアイリスさんが思いっきりスカイクラウンをぶん殴っていた。

綺麗に顎に入ったみたいだ。

脳が揺れてスカイクラウンが前のめりに倒れ込んでいた。

アイリスさん・・・ナイスな一発です!

介抱しようと滲みよるアースラさん。

わらわらとして戸惑っている。


「お母様!止めて下さい!」


「そうは言うが・・・アイリスや・・・」

アースラさんは慌てふためいている。

この人があたふたする姿なんて始めてみるな。


「駄目です!この馬鹿親父は許せません!」

アイリスさんは本気で怒っていた。

ここまで怒るアイリスさんを俺は見たことが無い。

怖っわ!

怒らせてはいけない人が本気で怒っているぞ。


「ああ・・・アイリス・・・・」

スカイクラウンは呟いていた。


「この糞親父は私のピンチにも駆けつけず、お母様が神罰で神界から出られない時に何もすることなく、フワフワと浮かんでいただけだったんですよ!」

何だそれ!

それは殴られてもしょうがないな。

スカイクラウンお前が悪い。


「そうでは無いのじゃ、アイリスよ!」

アースラさんは必死だ。


「お母様何が違うと?この糞親父はフワフワ浮かんでいることしかしていないじゃないですか?」


「そうでは無いのじゃ、この人も枯れてしまったお前を心配して何度も何度も見に行っておったのじゃ、じゃが・・・何も手立てが無かったのじゃ・・・この人は浮かんでいることしか出来ないのじゃよ・・・」

はあ?・・・見には行ってはいたが、何も出来ずにいたって事なのか?

スカイクラウンはフラフラしながらもなんとか起き上がりつつあった。


「ああ・・・いい一撃だった・・・」

スカイクラウンは何とか立ち上がるもヨロヨロとふら付いていた。

首を振っている。

何だこの家族・・・相手してられないな。


「そうだったのですか?そんな・・・知らなかった・・・」

アイリスさんは口を押えていた。


「この人なりにお前を心配していたのじゃよ、許しておくれ。アイリスよ・・・」


「すまなかったな・・・アイリス」

スカイクラウンは一度立ち上がるも、もう一度地面に沈んでいた。

相当な一撃だったみたいだ。


「そんな・・・お父様・・・ごめんなさい」

アイリスさんはスカイクラウンに歩み寄っていた。


「でも御主人も良く無いのじゃ、いつもフワフワ浮かんでばかりで何もしてない様に見えるのじゃから」

アースラさんは腰に手を当てていた。


「そうなのか?」

再び立ち上がろうとするスカイクラウン。


「御主人この話、何度目かえ?」


「数えて無い」

いやそういう事ではないだろう。

駄目だこいつ、掴み処が無い。

正に雲だ。

会話すらも真面では無い。

ていうかフワフワ浮かぶばっかりじゃないか?

何なんだこいつ?


「それで、御主人や。久しぶりに現れて余に何の用なのじゃ?」

何とか立ち上がったスカイクラウンは事も無げに言った。


「それがな、俺もこの島で飲み食いしたいと思ったのだが、島野がバイトは後日というから、金を借りようと思って・・・」


「・・・」

あーあ、こいつ死ぬな。

あっ!神だから死なないか。


「この糞親父が!」

アイリスさんが収穫したばかりの人参を片手に、スカイクラウンの眉間を殴打していた。

再びスカイクラウンは倒れ込んでいた。

駄目だこりゃ。

次行ってみよう。



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