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落ちた信念

ラファエルはポタリーによって神の世界の一端を知る事になった。

彼にとってはこれまで彼の知る世界感を覆す出来事だった。

そもそもラファエルには神が現存する世界なんて、おとぎ話でも聞いたことが無いのだ。

到底直ぐに受け入れられる物では無かった。


でも神に成ると決めたラファエルは先ず実績と技量について考察した。

両方ともその言葉の通りであろうと。

ポタリーであれば陶芸の技量と陶芸の実績ということになる。

そのまんまということだ。

そしてポタリーは下級神であるということを知った。

こうなると一芸に秀でなければ下級神にはなることは出来そうもない。

そしてそれはラファエルにとっての最終目標とする創造神になるには、遠回りではないかと考えた。

それに何かに秀でるには、今からではあまりに時間が掛かるのではないかとも思われた。

それぐらい道を究めることが大変であることを、ポタリーの話からラファエルは汲み取っていた。

ラファエルにとって一芸に秀でているものは催眠しかない。

そして異世界の知識を有しているぐらいだ。

次のアプローチに迷うラファエルであった。


更にポタリーからはこの世界には神気という物が存在しており、それを神が体内に蓄えることで神力になるという事を教えられた。

神はその神力を使って能力を行使しているのだと聞かされた。

察しのいいラファエルは魔法の理屈に近いと感じていた。

魔法は空気中に含まれている魔素を体内に取り込み、魔力として魔法を行使している。

原理はほとんど一緒と考えられた。

そして魔石と同様に神石が存在することも知った。

これもラファエルは同様の物であると捉えた。


だがラファエルはこの神気と魔素には大きな違いがあること知った。

それは発生理由である。

魔素は未だどういった経緯で発生するのかは解明されていない。

だがポタリーから聞かされた神気は二通りの発生理由が存在したのだ。

それは自然発生する物と信仰によって発生する物だった。

そう『聖者の祈り』である。

これにラファエルは興味を覚えた。


ラファエルはこの神気が信仰によって発生することに大きな価値を見出していた。

これは即ち自分自身が信仰の対象になれば、神気が沢山集まってくるという事を意味している。

それはラファエル自身が神になるという事に他ならないからだ。

ラファエルは崇拝され信仰の対象となった自分を夢想する。

それだけで悦に至るのではないかという程に。

ラファエルは歓喜していた。

そして自己顕示欲が爆発していた。

この考えが後に新興宗教国家『イヤーズ』を誕生させることになる。


それはラファエルにとっては夢の国であった。

崇拝を受ける自分を想像するだけで心が躍ったのだ。

そしてラファエルは徐々に精神を崩壊させていくのであった。

なにせラファエルは自分が認められることに最大限の喜びを感じてしまう。

ラファエルの本性は自己顕示欲の塊なのだから。

ラファエルの本能がここに来て頭角を現してきていた。

傲慢で過剰に自信家なラファエルが戻ってきてしまっていた。

残念な事にそれを唯一止められるザックおじさんはもうこの世には居ない。

そしてそのザックおじさんへのラファエルの想いも、ここに来て薄れ出してきていた。


ポタリーから神の世界を教わった後のラファエルは『イヤーズ』への帰還を早々に決めた。

ポタリーへの挨拶もそこそこにラファエルは行きとは違い、急いで帰国を目指した。

ラファエルは揺られる馬車の中で神について考える日々を過ごした。

行きとはあまりに違う旅の工程に、ハンター達は文句の一つも言いたいところであったが、真剣に考察を重ねるラファエルの表情を見ると文句は言えなくなってしまった。

それ程までに鬼気迫るものだったからである。


ラファエルは迷っていた。

それは先ずは下級神に成るべきでは無いのか?

ということだった。

先にも述べた通りこれは遠回りに感じた。

だが他に神になる方法が今のところラファエルには見当たらない。


それに催眠に関してはその実績を考えた時に、これまでラファエルは自分自身の為にしか催眠を行使したことがない。

これは実績として認められないのではなかろうか?と本能的に感じたからだ。

その本能は間違ってはいない。

実績とは他者を幸福にする実績に他ならないのだからだ。

神の資質とは実はここにある。

五郎でいうならば、温泉街を造り上げたことが実績ではないのだ。

そこで暮らす人々や施設を利用する人々を幸せにした事が実績なのである。

あくまでその想いは他者に向けられているのだ。


ここに来てこれまでのツケをラファエルは支払わなければならなくなっていた。

自分の為だけではなく、他者を幸福にするような催眠を行ってきていればこんな事にはならなかった筈だ。

もしラファエルがその自尊心を捨て、その道のプロに教えを乞うていたらまた違っていたであろう。

だがしかし、それはたらればでしかない。

ラファエルは他人を不幸にする催眠しか知らないのだから。

他者を誘導し自分に都合が良いように操作する。

そんな催眠しか知らないのだ。

ラファエルは守とは正反対の位置にいるのである。

守の催眠は他者の幸せを中心に置いているのだから。

その想いも行動もあまりに違っているのだ。


ラファエルは考察を止めない。

否、止める訳にはいかない。

ラファエルのザックおじさんに会いたいという想いが、まだ彼を突き動かしていた。

そしてラファエルは一つの仮説に思い至った。

これが不味かった。

それは「自ら神に成るのではなく、神に祭り上げられれば神に成るのではないか」という荒唐無稽な仮説だった。

要は道を究めて神に成るのではなく、信仰を集めて神として称されれば、おのずと神に成るのではないかというものだ。

正に都合のいい解釈である。

傲岸不遜がここに極まっていた。

ラファエルの自尊心が、彼が神に成れないという事実を認められなかったということだ。

そしてイエスキリストも元は人間であり、神と祭り上げられたから神に成ったと理由付けを行っていた。

ガンジーもブッタもそうであると。

世界の偉人すらも言い訳の種に仕立て上げていたのだ。


そしてその仮説をいつしかラファエルは仮説としてではなく、そういう物だと本気で思い込む様になってしまっていた。

彼の性格からしたらそうなるのも時間の問題であった。

彼は自分に都合が良いように受け止める自己都合主義な性格をしているのだから。

ここに来てラファエルは神に成ることに憑りつかれ始めていた。

それは前世で金銭欲に憑りつかれ出した時と同様に。

残念な事に次第にラファエルは当初の目的をどんどんと見失うことになる。

本来の目的であったザックおじさんの蘇生という崇高な想いは、徐々に色褪せ始めるのである。

その目的が次第に塗り替え得られていくのであった。

自分が讃えられ崇められる存在になることに。

そこに悦を感じていたのだ。

それこそが俺が生れた理由であると。

ラファエルは狂い始めていた。

俺は崇められて当たり前であると本能の儘に身を委ね出していたのであった。

それが全てであるとラファエルは自らを見失っていたのである。

こうしてラファエルの信念は落ちていくのであった。




『イヤーズ』に到着したラファエルは宗教を立ち上げることに専念した。

その眼は狂気に満ちている。

先ずはその為の下地作りからだと思慮する。

ラファエルはこれまで以上に『イヤーズ』に根を張ることにした。

事実上自分の国にしてしまおうと動きだしたのだ。

ラファエルにとっての動機は単純なものである。

国の支配者になれば崇められるだろうと・・・

安易な考えであった。


でもラファエルは国王にはなれない。

それは国王の血族ではないからだ。

『イヤーズ』は代々世襲制である。

ラファエル自身が国王になることは不可能なのである。

でも国王でも頭の挙がらない存在に成ればいいと彼は考えた。

都合の良い事にラファエルは上下水道の権利にて足掛かりは既に出来ている。

ここから更に手を拡げればいいだけだ。


ラファエルは行動に移った。

まず手掛けたのは馬車の定期便だ。

分かり易くいう処の市バスである。

国内の道路を自らの資金で整備し、馬車と御者を雇い入れ、定期便を造り上げたのである。

これは国内の流通を握ったということだ。

国の許可は簡単に降りた。

国王は既にラファエルに頭が上がらない状態になっていたからだ。


それはそうだろう。

この時水道というインフラは『イヤーズ』の根幹を担っていたのである。

前にラファエルが国王に言った通り、これ目当てに他国からの移住者が後を絶たない状態になっていたのだ。

国王はラファエルに首根っこを押さえられていた。

一部反対を口にする貴族や大臣も居たが、そんな者はラファエルに簡単に潰されていた。

その資金と立場を利用して遠くに追いやられていたのである。

それを知った他の貴族や大臣達は口を噤むことになる。

皆が皆、自分とその家族を守らなければと貝になることにしたのである。

それがラファエルを助長させる。


そしてインフラと流通を抑えたラファエルは、遠くに追いやった大臣や貴族達の土地を安く買い取らせろと国王に迫った。

流石に反発を覚えた国王ではあったが、最終的にはラファエルのその案を受けいれるしか無かった。

それはこの国に他の国には無い、独自の文化を造り上げると言うラファエルの言葉があったからだ。

国王はその言葉にしがみ付いた。

否、そうせざるを得なかったとも思われた。

それに加えて水道以上にインパクトのある物になると、ラファエルが大見えを切ったからである。


この時国王はラファエルに対して疑心暗鬼になっていた。

余りに強欲過ぎると。

でもその甘い囁きと、なんとも言えない誘惑を断ることが国王は出来なかったのである。

そう、この時ラファエルは自ら禁じ手としていた催眠魔法を国王に行使していたのである。

その効果は覿面であった。


その後ラファエルは事ある事に催眠魔法を行使する事になる。

自分にとって都合が悪くなると事も無げに行使することになった。

一度箍が外れたら最後、際限なく行使することになる。

最早罪悪感など有はしない。

そして質が悪い事に魔法を使えば使う程、その催眠魔法のレベルが上がっていくのである。

気が付くと催眠魔法のレベルはLV8を超えており、新たに集団催眠の魔法を取得していたのだ。

催眠魔法の効力に絶大の力を感じたラファエルは既に狂っていた。

全てが意の儘に出来ると有頂天になっていた。

ラファエルの高笑いは止まらない。


こうしてラファエルは『イヤーズ』を自らの国にする下地は整えた。

後は仕上げに入るだけである。

先ずは買い上げた土地にラファエルは神殿と自らの居城を建設した。

国民達にとっては何が行われているのかさっぱり分からない。

国王が新たな城を建設しているとすら勘違いしている国民までいたぐらいだ。

そして『イヤーズ』に宗教という他の国にない新たな文化が誕生するのであった。


ラファエルはこれを境に自らの名前を封印することにした。

理由は簡単だ。

契約魔法で縛っている契約を無効にされない為であった。

そして人々の前に立つ時には仮面を被り、顔を隠すことにした。

裏に身を翻しつつも利は全て自らの物にすると。

その傲岸不遜な態度は決して変わらない。




ある日、突如国王から全国民に通達がなされた。

それは『イヤーズ』はこの後、国名を『信仰宗教国家イヤーズ』に改名すると。

そして国民は義務として半年に一度は神殿に出向き、あの人に信仰を捧げる様にとお達しがなされた。

あの人はこの国の偉大な人物である。

あの人なくしては今の『信仰宗教国家イヤーズ』の発展は無いと、我々の偉大なる父に祈りを捧げなさい。

更に毎食事の前にもあの偉大なお方に祈りを捧げるようにと。

急なお達しが国民に告げられたのである。


国民はなんのことだがさっぱり分からなかった。

あの偉大な人とは誰なのか?

なんで何も知らない人に信仰を捧げないといけないのか?

その事に反発すら覚える者達が多数いた。

でもこれは国民の義務であり、それを行わない者は国外追放にするとまで言われてしまっては、何も言い返せなかった。

どうしてもそれを認められず国を離れる者も少なからずいたが、それは微々たる人数だった。

ほとんどの国民が生活を脅かされるぐらいなら、祈りぐらい捧げてやると捉えていた。

それも実はラファエルの目論見通りだったのである。


そしてラファエルへの拝謁が始まった。

実に三千名近くの国民が神殿に集められ、跪いてラファエルを待っている。

ラファエルは遂にこの時を迎えて悦に浸っていた。

俺は信仰されるのだと。

いよいよ俺はこの国の神に成ったのだと錯覚していた。

彼の目尻は緩んでいた。

口角は上がり裂けそうなほどに上がっている。

その眼には狂気が入り乱れていた。

幸福感を噛みしめるラファエル。

拝謁を求める国民の前に歩を進める。

神殿の中心に優雅に歩を進め、足取り軽く歩んでいた。

そしてラファエルは万遍の笑顔で宣言する。


「余が教祖である!余を崇めよ!!愚民共よ!!」

神殿に静寂が訪れた。

国民達は自分達に向けられた言葉に耳を疑った。

でも事態は一変する。

ラファエルは集団催眠の魔法を行使した。

空間が歪んだかの様な錯覚を参列者達は覚えた。

自分の意識が刈り取られたかの様な気分を感じた者達もいた。

そして次第に声が挙がり出した。

催眠に掛かった国民達から次第に声が挙がる。


「祈りを捧げよ・・・」


「祈りを捧げよ」


「祈りを捧げよ!」


「祈りを捧げよ!!」


「祈りを捧げよ!!!!!!」


「祈りを捧げよ!!!!!!!!!!!!」

爆音と歓喜が会場を支配していた。

その中心でラファエルは両手を広げて悦に浸っている。

実にラファエルは射精していた。

股間を恥ずかしげもなく濡らしていた。

性的興奮だけではなく五感の全てで喜びを、そして多幸感を感じていた。

俺は神に成ったんだ、俺はこの世界の征服者に成ったのだと、そう彼は感じていた。

彼は快楽の全てを感じている様な恍惚感に浸っていた。

この快楽がラファエルの精神を完全に捻じ曲げていく。

ラファエルはもはやザックおじさんの知らない怪物に成り変わっていた。




その後もラファエルへの拝謁は続く、ほとんどの国民がその責務を全うしていた。

その結果ラファエルには神気が集まってきていた。

でもラファエルは神ではない。

その神気を身体に取り込むことが数時間しか出来なかった。

拝謁後ラファエルの身体には神力が溜まっている。

でも数時間後には身体に取り込んだ神気は霧散して消えてしまうのだ。

『黄金の整い』後の聖獣のそれと同じである。

ラファエルにとっては何が何だか理解が出来ない。


(俺に向けての信仰心が何で消えてしまうんだ?あり得ないだろう!!くそぅ!!俺は神なんだぞ!!)

ラファエルは苛立っていた。


ここでラファエルは思いつく、

(そうだ!神石があったな・・・魔石と同様に神石には神力を蓄えることができるんだったよな・・・これに神力を移すことができれば・・・いつでも俺は神力を扱う事ができる)

こうしてラファエルは神石を集めることになった。


神石は案外簡単に集めることが出来た。

でもその数は限られる。

というのも、神石は魔石同様に有用性は高いのだが、それは神に限られる。

魔石はある意味誰にとっても有用だ。

だが神石は神にとってしかその有用性は無い。

その為その辺に落ちていても誰もそれを気に留めないのだ。

なんだまた転がっているなという程度である。


数個ではあるが神石を集めたラファエルは実験を始めた。

それは神石に神気を集められるのか?というものだった。

魔石に魔力を込めるかの如くラファエルは神石に神力を蓄えようとした。

でもそれは出来なった。

それはそうだろう。

ラファエルは神では無いのだから。

でもラファエルは諦めない。

何度も何度もトライする。

そしていつしかラファエルは神石に神力を蓄えれる様になっていた。


それはラファエルが仙人に到達していたからなのか、天性の熟せる感性なのかは分からない。

事実ラファエルは神石に神力を蓄えれる様になっていたのだ。


その後ラファエルは霧散するぐらいなら、この世の全ての神気を神石に蓄えて俺の物にしてやろうと企て出す。

そしてラファエルは神石に一時的に神力吸収の能力を付与できるようになっていたのである。

そう、これが神気減少問題の原因だったのだ。




ラファエルは考えていた。

神石が足りないと・・・

でも集めようにも国民達には無用の産物である神石である。

どうすれば一挙に集められるのかと・・・

ラファエルの身勝手でどす暗い一面が、此処に来て顔を出し始めていた。


神石は地中に埋まっていることが大半だ・・・

地面を掘り起こせばいい・・・

とは言っても既に『イヤーズ』の国土のほとんどは俺の手中だ。

土地開発で発掘された物は全て俺の元に送り届けられている。

ではどうする・・・

他国に眼を向けるしかないか・・・


ラファエルは暗い視線を空中に漂わせていた。

・・・なんだ・・・簡単なことだ・・・自国に無いなら・・・他国から掘り起こせばいい・・・ん?・・・高額な金額で買い取るとするか?・・・それはよくないだろう・・・教祖である俺がそんな事を言い出す訳にはいかないだろう・・・要らん期待を生み出しかねないし、注目を浴びるべきではないだろう・・・ならどうする?・・・そうか・・・そうなのか・・・簡単なことじゃないか・・・そうだ・・・そうしよう・・・この手があったか!!

ラファエルはこの世界において、否、彼の人生においても、下してはならない決断をする。




ラファエルは国王に命じて国王の使者としてオーフェルン国を訪ねることになった。

ラファエルは文官に化けて親交を深めるための一団に紛れ込んでいる。

王の間に入るとラファエルは突如その牙を剥き出しにした。

集団催眠でその場を支配するとサファリス国への不信感を植え込むことに成功する。

親交国であった両国のバランスは一気に崩れ去ることになった。

不審感を露わにオーフェルン国は一方的にサファリス国に対して宣戦布告を行ったのであった。

余りの出来事に北半球は揺れた。

突然の事に世界は困惑するしかなかった。


それを受けて天地が引っ繰り返ったサファリス国は『イヤーズ』に協力を仰いだ。

これがいけなかった。

ラファエルはそうなると予想していたのだ。

意気揚々とサファリス国に乗り込むラファエル、ここでも当たり前の様に集団催眠を行使したラファエル。

この時既にラファエルの集団催眠魔法のレベルはLv5に達している。

これを抵抗するとなると相当の精神力が必要となる。

強いて例を挙げるのならば、ゴブオクンは到底抵抗は出来ない。

マーヤで何とか抵抗出来るレベルだ。

要は『シマーノ』の首領陣がやっと抵抗出来るレベルであるということだ。

それぐらいに強力な魔法なのである。

そして遂に戦火が開かれてしまったのであった。




丘の上で優雅にその様子を眺めるラファエル。

既に両国の兵士に対して集団催眠魔法は行使済みであった。

最早この惨劇を凄惨な出来事と感じられるラファエルはいない。

人の生き死にすらもどうでもよくなってしまっていたのだった。

狂気に身を委ねたラファエルは精神を崩壊してしまっていた。

早く戦争によってこの広大な土地に風穴を開けてくれ!

もっと多くの神石を俺の元に持ってこい!!

これが彼の思考だった。

ラファエルの狂気は戦争すらも享受できるものになっていたのだ。

その脇に控える五人の老師も興奮を隠せない。

世界が引っ繰り返るその様に恍惚の笑みを漏らしていた。


そしてあろうことかこの無意味な戦争を止めに来た下級神とドラゴンにさえも、その想いは同じであった。


(お前達が死ねば、無駄に神気が減ることも無くなる、そうすれば俺に神気が集まってくる。さらばだ神獣、平和の象徴よ、そして他の神達よ、お前達は邪魔な存在だ。消えて貰おうか)

とすら考えていたのだ。

ラファエルはもうザックおじさんが愛したラファエルでは無くなっていたのだ。

ラファエルは狂気に身を委ねた怪物となり果てていた。

ラファエルの神に成るという想いは、抵抗を受ければ受ける程、より強固にねじ曲がったものに成り変わっていった。

もうラファエルは神に成ろうとする崇高な動機すらも忘れてしまっていた。

そして膨大な数の神石がラファエルの元に届けられた。

ラファエルは神石に神気吸収の能力を付与する。


(これでこの世界の神気は俺の物になった・・・)

こうしてラファエルは世界中の神気を独占し出したのである。




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