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ドラゴンを祭る村に向かって

俺の転移に寄って先ずはルイベント国内へと移動した。

場所はルイベントの中心街。

様々な商店が立ち並び宿屋も豊富にある。

屋台からは食欲をそそる香ばしい匂いが立ち昇っていた。

この屋台はシマーノの魔物達が経営を行っている。

その種類は様々だが特にたこ焼きが人気があるみたいだ。

長蛇の列が出来上がっているところもあった。

売上は順調、今ではその調理技術を学ぼうと人族が弟子入りしているぐらいだ。

両国の交流は深化している。

今後更に交流は深い物となっていくだろう。




これから目指す方角は北方面。

次はベルル山脈に向かうことになる。

歩き出すとダイコクさんが待ち構えていた。

どうやら送り出してくれるみたいだ。

律儀ですね〜。


「島野はん、遂に行くやな」

笑顔でダイコクさんが迎えてくれた。


「はい、行かせて貰います」


「さようか、ほなこれを持ってってくれるか?」

ダイコクさんから選別の品であろう品物を渡された。

形状からして通信用の魔道具であろうか?


「これは通信用の魔道具ですか?」


「いや、ちとちゃうで、通信用の神具や」


「神具?」


「そや、わての通信の能力が付与されてるんや、これなら南半球にでも行かん限り通信可能やで、どや?便利やろ?」

それで神具ということね。

ということは転移扉も神具ということになるな。

通信の能力か・・・この神具を使用する時に能力をパクれそうだな。

でも念話の延長線だよね。

今の直ぐにでも開発出来そうだけどな。

この神具はパクらせて貰おう。

そして神様ズに配ってあげよう。

便利になると喜ばれるに決まっている。


「なるほど」

それにしてもどうして?

そうか、ダイコクさんにとっても神気減少問題は深刻な問題なんだ。

行く末が気になるのだろう。

それにダイコクさんに何かあった時にはこちらから駆けつけることが出来るしな。

ここはありがたく受け取っておこう。

もし『シマーノ』に何かあれば、ダイコクさんは真っ先に俺に連絡を取ろうとするはずだ。


「では、遠慮なく頂きますね」


「そうしてくれるか?島野はん達なら大丈夫やろうけど、念の為ドラゴンを祭る村に着いたら交信してくれるか?これでも心配しとるんやで」


「分かりました」

心配か・・・よく言うよ。

どうせ社交辞令だろう。

まあ悪い気はしないけどさ。


「ほんまはボンも来たかったんやけどな、執務が多忙でこれんかったんや、堪忍やで」


「そうですか、スターシップ殿下によろしくお伝えください」


「任しとき」


「じゃあ行きますね、どうせしょっちゅう帰ってきますので」


「さようか、ほな気い付けてな」


「ではまた」

俺は頷くと『転移』の能力を発動した。


ヒュン!


ルイベントの北門の外側に移動した。


「じゃあ移動を開始するぞ!」


「「「了解!」」」


「「「は!」」」

俺は瞬間移動を開始した。




一時間後。

リザオから、

「ちょっと休ませて下さい」

と言われてしまった。


転移酔いである。

もしリザードマンが人族であったら青い顔色をしていただろうが、リザードマンは元から青色っぽい肌色をしているので顔色は変わっていない。

だが数名のリザードマンは嘔吐していた。

汚ないなあ・・・

しょうがないか。

だから俺は同行を許さなかったのにな。

正直足手まといだ。

はあ、やれやれ。


その後一時間進んでは三十分休憩を繰り替えして進むことになった。

想定よりもペースが遅い。

困ったものだ。

三十分の待ち時間では、ノンとギルが待ちきれないのか狩りを始めていた。

ちゃんと三十分で戻るように釘は刺してある。

ギルについて行こうとしたリザードマンもいたが、案の定再び嘔吐していた。

だから汚いって!


まだまだベルル山脈は遠い。

本来であるならば今日の夕方にはベルル山脈に到着する予定であった。

ルイベントからベルル山脈までは穏やかな平原地帯と森がある。

今は森に入っておりここからの瞬間移動は短距離の移動となる。

森に入ったからノン達は狩りが出来ると思ったのか?

ノンの鼻に獣の匂いがヒットしたのか?

俺は『探索』を行おうとしたが止めておいた。

あいつらにとっては狩りは遊びみたいなものだろう。

外っておいて構わない。


転移酔いの薬があるのかエルフの薬屋に聞いてみようかな?

俺一人でサウナ島に戻ろうかな?

原理としては乗り物酔いみたいなものだろうが、そもそもこの世界では乗り物は馬車ぐらいしかない。

あ!自転車を発明したか。

まあ乗り物酔いの薬はないだろうな。

等と考えていたら。

ノンとギルが帰ってきた。


「パパ、大物が狩れたよ!」

ニコニコしながらギルが報告をする。


「楽勝ー!」

ノンはいつも通りのマイペース。


「それで何が狩れたんだ?」


「魔獣化したワイルドパンサーだよ!それも三体も!!」

おお!あの美味だったワイルドパンサーか!

やったな!今日はステーキだな。

にしてもこいつらどれだけ強いんだか。

魔獣化したワイルドパンサーは確実にSランクだ。

それが三体だぞ。

こいつらに狩れない魔獣は無いんだろうな。

島野一家の強さは盤石だな。


「そうか、それはいいな!今日は豪勢な晩飯になりそうだな!」


「あの肉美味しかったよねー」

ノンが目をトロンとさせていた。

分かるぞ、分かるぞ。


「じゃあとりあえず解体するから、出してくれ!」


「了解!」

ギルはマジックバックからワイルドパンサーを三体取り出した。

俺はそれを受け取ると『収納』に二体を入れて、一体をサクッと解体した。

これはエンシェントドラゴンへの手土産になるかもな。

さあ、そろそろ先を急ごうか。

その様子をリザードマン達は驚きの眼差しで見つめていた。


「そろそろいいか?」

俺の問いにリザードマン達が頷く。

リザオは申し訳なさそうにしていた。


早速移動を開始した。

何とか日が暮れるまでに森を抜けることが出来た。

今日は転移で『シマーノ』には帰らずキャンプの予定だ。

俺は『収納』からテントや寝袋、魔道コンロ、バーベキュー道具を取り出し各自に渡していく。

前以って話しておいたため、手分けして準備は行われていく。

ここぞとばかりにリザードマンがきびきびと動いていた。

足を引っ張ってしまった為、ここで取り戻そうと思ったのだろう。

リザオが的確に指示を出していた。

張り切ってるねー。

ここぞとばかりに点数稼ぎを行っているな。


準備は整った。

本日の晩飯はワイルドパンサーのステーキだ。

バーベキューの網を鉄板に変えて準備は万全だ。


「パパ、焼いてくよ」


「任せる」

ギルが鉄板に油を引いて肉を焼きだした。

エルが米を炊き、味噌汁を作っていく。

リザードマン達は料理が出来ない為、食べ専だ。

ギルに作ってもらうことに抵抗があるのか、全員がすまなさそうに下を向いていた。

鉄板焼きのコース料理の要領で調理を進めていくギル。

実に様になっているな。


こんなギルを見てエンシェントドラゴンはどう思うのだろうか?

ギルは何でも上手に熟す万能タイプだ。

俺を参考にしてきたから当然か?

まあ器用貧乏とも言えるな。

何でもそつなく熟すが突き抜けたものはない。

でも俺はそんなギルが大好きだ。

エンシェントドラゴンに対しても、ギルを立派に育て上げたと俺は胸を張れる。

俺にとっては誇れる息子だ。

何処に出しても通用するはずだ。


そんなことを考えていたら俺の皿にステーキが盛られていた、ちゃんとガーリックチップも添えられている。

ステーキを見ると焼き加減が絶妙だった。

早速口にする。

やっぱりワイルドパンサーは旨い!

口の中で肉が解けていく。

リザードマン達もがっつくように食べていた。

それをニンマリとギルが眺めていた。

してやったりといったところか?

このドヤ顔まで俺を真似ているな。


食事を終え俺は一人まったりとワインを嗜んでいた。

キャンプにはワインも悪くない。

そこにギルが混じってきた。


「パパ、今日の晩御飯はどうだった?」


「美味しかったぞ、ギルはまた腕を上げたな」


「やった!エンシェントドラゴンも食べてくれるかな?」


「ああ、こんな旨いステーキを食べないなんてあり得ないだろう?」


「だね」


「ギルも飲むか?」

ギルは周りを見渡した。

リザードマン達が止めに入らないか気になるようだ。


「じゃあ貰うよ」

俺はギルにワインを注いだ。


「じゃあ乾杯だな」

俺達はグラスを重ねた。

ギルと差しで飲むのは始めてだ。

ちょっと嬉しいな。

何だろうこの気分。

擽ったいような照れるような・・・


「パパ、ドラゴンを祭る村にエリスは居るかな?」

ギルはいきなり直球を投げてきた。


「どうだろうな・・・まぁ居なくてもヒントぐらいはあるんじゃないか?」

俺はそんな気がしている。


「そうだね、エンシェントドラゴンってどんなドラゴンなんだろうね?」


「こればっかりは会ってみないとな・・・」


「だよね・・・」


「どうであれ、ギルにとってはある意味ドラゴンのルーツを探る村になるだろうな」

ギルは徐に一点を見つめていた。


「だね、結局の所ドラゴンって何なんだろうね?」


「俺には分からんな、平和の象徴とか語られてるみたいだが、そんなことは気にする必要はないだろう。ドラゴンであれ、人族であれ、魔物であれ、結局は同じだと俺は思うぞ。要は心の有り様じゃないかと俺は思うんだ」


「うん」

ギルは頷く。


「心が何を求めて、何をしたいのか?そしてその心は健全であるのか、そうではないのか?本当の正解なんて俺には分からない。でも俺の基準は実は単純で、俺の周りにいる者達が楽しいのか?嬉しいのか?幸せを感じることが出来るのか?それぐらいでしかないんだよ」


「そうなんだね、僕は幸せだし楽しいよ、パパ」

嬉しい事を言ってくれるじゃないか。


「それはよかった」


「パパはどうなの?」


「俺か?最高に楽しいさ」


「エへへ」

ギルは眩し過ぎる笑顔をしていた。

こうして楽しい夜は更けていった。

親子の語らいは至福の時間だった。




朝食を終え今後について検討することになった。


「俺の転移だと休憩を挟むぶん、返って遅くなってないか?」


「そうかも、僕とエル姉が飛んだ方が早いかも」

ギルの冷静な一言だ。


「これだけの人数を乗せれるか?」


「どうだろう?背中で動かれるとちょっと無理かも」

そこで俺は閃いた。


「そうだ!荷台を造って、そこに乗せたらどうだ?」


「良いかも?」


「よし!ちょっと待ってろよ」

俺は適当に森の木を伐採し荷台を造っていく。

これならリザードマン達を乗せることが出来そうだ。


「どうだ!これならギルの後ろ脚で掴んでいけるだろ?」


「なんとかなりそうだね」

エルの背にはゴンが跨り。

ギルの背にはノンとクモマルが乗り、リザードマン達は荷台に乗せて運ぶことにした。

リザードマン達は一瞬不満気な表情をしたが、自分達が遅れの原因であることを思いだし表情を改めた。

俺は並走する形で飛んで行くことにした。

疲れたらエルにゴンと二ケツだな。


リザードマン達は、

「ウヒョー!」


「飛んでる!」


「下を見ちゃ駄目だ、下を見ちゃ駄目だ!」

等と騒いでいた。

残念ながらリザオは失神していた。


飛ぶこと一時間。

ようやくベルル山脈の麓にやってきた。

少々肌寒い。

『収納』からジャケットを取り出して羽織る。

ノンとゴン、クモマルにも上着を渡した。

リザードマン達は外っておいた。


実際、目を覚ましたリザオは、

「寒さには強いんです」

どや顔で話していた。

なぜどや顔?

こんなことで点数は稼げませんよ?

ベルル山脈は連山であり所々に雪を被っていた。

山頂はもっと寒いかもしれない。


こんなこともあろうかと、俺の『収納』にはスキーウェアーが入っている。

俺のしか無いけど・・・

まあ結界を張れば寒さは凌げるから要らないんだけどね。

お遊び用にスノーボードも入っている。

下山には使えるかもしれないしな。


空の移動を再開した。

一気に山頂を目指すことにした。

ギルは気合が入っておりグングンと飛ばしている。

その為リザードマン達は漏れなく失神状態になっていた。


ノンからは、

「主、寒いから結界張ってよ」

おねだりされてしまった。


俺は結界を張りノンは呑気にギルの背中で昼寝を始めていた。


クモマルは終始興奮気味で、

「島野様、絶景です!感動です!」

一人感極まっていた。


クモマルよ、世界は広いぞ。

もっといろんな景色を楽しんでくれ。


山頂に着くと昼飯を取ることにした。

ギルのブレスで雪を溶かして座れるようにする。

朝食時に用意しておいたおにぎりを皆に配っていく。

山頂で食べる食事はおにぎりでしょうよ!

それも昨日のワイルドパンサーの肉の残りが具に入っていたりする。

肉にはニンニクチップと塩胡椒で味付けされている。

なんてワイルドなおにぎりなんだろう。

ステーキおにぎり、素晴らしい!

俺が造ったから自画自賛なんだがね。


でも反響は良く、

「島野様!最高に旨いです!」


「主、これはせこいですの!」


「パパ、これは反則だよ!」

高評価を得たのだった。

それにしても景色が壮観だ。

山頂からの眺めは圧巻だった。

連なる山々に広がる平原。

世界の果てまでも見て取れる、そんな景観だった。

そんな景色を眺めて食べるステーキおにぎりは最高に旨かった。


昼食を終えて旅は再会された。

飛行形態での移動は続く。

早くドラゴンを祭る村に着きたいのだろう。

何時になくギルがやる気満々だ。

この調子ならば明日には辿り着けるだろう。

俺と準備を怠らなかったゴンとエルは、下山の要所でスノーボードで遊んでいた。

それをノンがズルいと騒いでいたが、準備をしてこなかったノンが悪い。

我物顔で楽しんでやった。

準備は大事なのだよ、ノン君。

準備八割と言うではないか。

クモマルは何故だか関心していた。

そして翌日。

俺達は遂にドラゴンを祭る村に辿り着いたのだった。



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