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神様ズのアテンド

アテンドはスムーズに行われた。

畑の視察から始まり各施設の案内を行っていく。


ゴブコの服飾の店に興奮したマリアさんがいつもの如く、

「エクセレントよ!」

大声で叫んでいた。

あー煩い!


ランドールさんは、

「島野さん、やはり街には上下水道は必須のようですね。この国は清潔感が半端ないです。見習わなければ」

と漏らしていた。


「ランドールさんなら上下水道は作れるでしょ?それにボルンには既に上下水道があるじゃないですか」


「ああ、そうなんだが、今建設している学校に必要かと思うのだが、実はパイプにする鉱石が不足していてね」

なるほど、ならば手を貸しましょうかね。


「なら俺の万能鉱石を使いますか?」


「いいのかい?」

今さら遠慮されてもねえ。


「勿論ですよ」


「ありがたい、メッサーラの学校でも上下水道が完備出来る。早速ルイ君達中心メンバーと打ち合わせを行うよ」


「それか万能鉱石を親父さんに所に持ち込んで、パイプに加工するまで造ってもらうとか?」


「いや、今回は自分の『加工』を使いたいんだ。大分板に付いてきたからさ」

なるほど、更にレベルアップさせたいんだな。


「了解です、決まったら教えてください。あとアラクネの糸が建築部材に使えますので一度検討してみてください」


「分かった、そうさせて貰うよ」

話しは纏まった。

俺のロビー活動ってか?


そしてロッジ建設の現場を視察したところ。

ランドールさんから、

「あの子達ですね?」

その視線の先にはゴブロウとオクボスがいた。

ちょうど二人が作業をしているところに遭遇したのだ。

二人は指示を飛ばしながら精力的に作業を行っていた。


「ええ、そうです」

ランドールさんは顎に手を置いている。


「確かに良い腕をしている、だがまだまだ足りないな。詰めが甘い、私が預かりますよ」

弟子入りのお達しを頂いた。

それを二人に伝えると大喜びしていた。

ランドールさんに抱きついていたぐらいだ。

ランドールさんは男に抱きつかれるのが嫌なんだろう、見たことも無いような忌避感満載の顔をしていた。

その様子を見て神様ズもほっこりしている。

まあ頑張ってくれ。


次に温泉を見に行った。

五郎さんが余念なく温泉を確認している。

『水質鑑定』を使っているみたいだ。

五郎さんはうんうんと頷いている。


「島野、この泉質はいいぞ。これはいうならば美肌の湯だな」

その言葉にエンゾさんが食いついた。


「五郎、美肌の湯ですって?」


「ああ、エンゾ、この泉質は肌に纏わりつき、肌にうるおいを与える効果がある。儂の所にも、島野の所にもねえ泉質だ。どうやら北半球は独自の泉質を持ってるみてえだな。これは期待できるってなもんだ」

五郎さんが褒める程の泉質とは恐れ入った。

そこまでの泉質だったとは俺は知らなかったな。

確かに温泉に入った後には肌がツルツルしていた。


「これは後で入らせて貰わないと・・・」

エンゾさんの発言に他の女神達が黙ってない。


「ちょっとエンゾ、独り占めする気?」


「そうよエンゾ、私も入るからね」

アンジェリっちとオリビアさんが続く。

ファメラはあまり関心が無いみたいだ。


「ちょっとお三方。ここの温泉は混浴ですので水着着用ですよ。水着は持ってますか?無いでしょ?」


「えー、無いわよ」


「私も・・・」


「買えないの?」

相当美肌の湯に浸かりたいみたいだ。

この三人は美意識が高いからな。


「水着はゴブコに言えば作ってくれますが、金銭がね・・・」

考え出した三人。

特にエンゾさんは南半球の金貨がここでは使い物にならないことに直ぐに気がついた様子。

頭を抱えていた。


「じゃあ、私は歌ってあげる」


「私は髪を切ってあげるわよ」


「私は・・・」

残念ながらエンゾさんは何もないみたいだ。

エンゾさんは悲壮感に暮れていた。


「残念ですが、南半球に帰って水着を持参してきてください」

こう言うしか無かった。


「うっ・・・そうします」


「やっぱそうなるのね」


「分かったわよ・・・」

流石にエンゾさんを置いてきぼりにはしないみたいだ。

仲の良い女神達だこと。

てか大丈夫なのか?

魔物達が我先にと混浴に群がる様が見て取れるぞ。

それに鼻の下を伸ばしたランドールさんがこちらをチラ見しているんだが。

もうどうとでもなれだ。

俺は巻き込まれなければいい。


ゴブスケの工房に入ると親父さんが腕を組んでゴブスケの仕事を鋭い眼つきで観察していた。

どうやら仕事モードの親父さん。


「お前さん、あ奴のことだの?」


「ええ、そうです」

いつになく真剣な表情の親父さん。


「儂が預かろう、良い腕をしておるのう。儂がもっと磨いてやる」

ゴブスケの弟子入りが決定した。

ゴブスケがこちらに気づき駆け寄ってくる。


「ゴブスケ、こちらが前に話したゴンガスの親父さんだ」


「この方が・・・」

ゴブスケは羨望の眼差しで親父さんを見つめていた。

眼がキラキラしている。


「僕はゴブスケです、よろしくお願いします!」

元気一杯に挨拶をしていた。

好感が持てるな。


「儂はゴンガスだ。お前さん、なんで腕を止めた?まだ作業中だの?鍛冶師は納得する仕上がりになるまで腕を止めてはならん、早く仕事に戻らんか!」

珍しく職人モードの親父さん。


「は!失礼しました!」

ゴブスケは頭を下げた後一目散に仕事に戻って行った。

おー怖!

ここぞとばかりに拘りを発揮している親父さん。

鍛冶作業中は話し掛けても決して親父さんは返事をしない。

それだけ集中力が凄いと思っていたのだが、それだけでは無く親父さんの拘りだったみたいだな。

にしても、ここも無事に弟子入りが決定したようだ。

よかった、よかった。


その後も施設の見学は続く。

娯楽場では遊んでいる子供達を神様ズは優しい眼つきで眺めていた。


特にファメラは嬉しかったみたいで、

「島野、ここでも子供達が楽しそうにしているんだね。よかったよ」

頷いていた。


子供達がファメラに群がる。

子供達も誰が優しいのか本能的に分かるのだろう。

ファメラは上機嫌だった。

そんなファメラを娯楽場に残して視察は続く。


次に向かったのは海岸だった。

ゴンズ様が漁船をじっくりと観察している。

ウンウンと頷いている。

そこにコルボスが駆けつける。


「ゴンズ様、コルボスでございます!」


「おう!コルボスか、この漁船はよく手入れされている。船は漁師にとっては相棒だ。大事にするんだぞ」

腕を組んでゴンズ様がアドバイスをしていた。


「は!心に留めさせて頂きます!」


「コルボス、お前今度俺の船に乗ってみるか?」


「えっ!よろしいので?」


「ああ、鍛えてやる」

ここでも師弟関係が出来上がっていた。

ていうかこうなると魔物達が南半球に来ることは完全に決定事項になったみたいだ。

まあいいか。


一通り視察が終わり各自が好きに活動をしだした。

こうなるともう収集が付かない。

好きにしてくれ。


俺は手持無沙汰になりどうしたものかと考えていると、急な報告を受けることになった。

ゴブオクンが駆け寄ってくる。

なんとも慌ただしい。


「島野様ー!ダイコク様が大群を連れて現れたべー!」


「大群?」

何のことやら。


「そうだべ、兵士が何人もいるだべ!」


「兵士が何人いるんだ?」


「たぶん三十人ぐらいだべ?・・・」

こいつはアホか?


「ゴブオクン・・・それのどこが大群なんだ?」


「・・・だべー」

何がだべーだよ!

いい加減にしろよなこいつ!


「ゴブオクン・・・君は落ち着く事を覚えなさい」


「分かっただべ・・・」

ゴブオクンは項垂れていた。

何度こいつのこの様を見たことか。

反省は無いのか?全く。


「いいからプルゴブ達と一緒に、神様ズに集合する様に呼びかけてくれ」


「了解だべ!」

ゴブオクンは一目散に立ち去っていった。

やれやれだ。


数名の神様ズが記念館に集まってきていた。

クロマルとシロマルが俺の所に報告にやってきた。

二人は俺の前で跪いて報告をおこなった。

その様はまるで殿に報告を行う忍者のようだ。


「島野様、報告いたします。ダイコク様がルイベント王国の国王を伴って参上致しました。そしてその国王の配下と護衛含めて三十名も同行しております」

クロマルは目線を合わせることも無く下を向いていた。

正に忍者だ。

何故かちょっと嬉しい。

殿様気分だな。


「そうか、良きにはからえ」

何となく言ってみた。




俺はダイコクさんに会いに行くことにした。

準備があるとルイベントに帰っていった時には、こうなるだろうなとは思っていたのだ。

これを機に国交を結ぼうという魂胆なのだろう。

それも南半球含めてだ。

でもそれはこちらにとっても願っても無い事だった。


南半球との国交を結ぶのかは置いておいて。

これで名実共に魔物同盟国が国として認められることになる。

それも北半球でだ。

既に神様ズは魔物同盟国を国として認めているが、それはあくまで南半球のことであるし、神様ズが勝手に言っていることでもある。

国家元首のルイ君や、マッチョの国王や、メリッサさんが認めた訳ではないからね。

まあ神様ズが認めたとなればあの人達も認めざるを得ないのだが。


そしてダイコクさんも馬鹿ではない。

南半球の神様達が魔物の国に大挙するということは、南半球に通じる何かしらの移動手段があると考えたに違いない。

それはイコール南半球との国交を結べる可能性が高いと踏んだのだろう。

その考えは間違っていない。

転移扉の存在はまだ北半球の誰にも明かしてはいないのだが、ソバル達も分かってはいる筈だ。


だが聞く事が憚られたのだろう。

今では俺達に移動手段の質問をする魔物は一人もいなくなった。

気を使わせてしまったか?

でもこうなってしまってはもう転移扉の存在を明かさない訳にはいかない。


遂に本当の意味で南半球と北半球が交流を始めようとしていた。

まだ島野一家が北半球に降り立ってから一年も経っていないというのに。

転移扉の運用についてはまた打ち合わせが必要になるだろう。

一部慎重派の神様達もいるのだ。


ダイコクさんは万遍の笑顔で街の入口に陣取っていた。

国王達を従えて当然の様にしている。


「ダイコクさん、随分時間がかかったみたいですね」


「ほんまやで、ボンがなかなか信じてくれへんかったからなぁ」

ルイベントの国王であろう白馬に跨ったイケメンの男性を顎で指し示し、ダイコクさんはやれやれという表情を浮かべている。


「ダイコク様・・・ここでボンはないでしょう?」

国王は嫌気がさしているみたいだ。

その顔には勘弁してくれと書かれていた。


「さようか、それで島野はん、南半球の神様達はどないしてるんや?」


「今は魔物同盟国の視察を行っています。自由な人達ですので全員集まるのは恐らく晩飯時でしょうね」


「そうか、わてらはどないしよう?」

考え無しかよ。

ちょっとは自分で考えてくれよ。


「好きにしてくれていいですよ、でもソバル達首領陣とその国王さんを引き合わせたら如何ですか?国交を結びたいんでしょ?」

それ以外考えられない。


「せや、それがお互いにとって一番大事なことやろうからな」

っていうかその国王を先ず俺に紹介しろよ。


「国王さん、俺は島野です。一応神です」

俺はしょうがないから自ら名乗ることにした。

本当はダイコクさんが橋渡しをすべきなのだが・・・そんな雰囲気はまったく無かった。

ダイコクさんも浮足立っているのかもしれない。

国王は馬上から降りると頭を下げた。

その様は堂に入っていた。


「私はルイベント国の国王スターシップです、ダイコク様から話は聞き及んでおります。あなたが島野様ですね。本当に会いたかったです。私はあなたにサウナをご教授願いたいと切望しております」

この挨拶に俺は好感が持てた。

ダイコクさんが俺のことをどこまで大袈裟に話したのかは知らないが、こちらに対して最大限の配慮をしようとする姿が伺えた。


それに俺にサウナを教わりたいとは好感以外の何物でもないだろう。

これが策士的なものであったのなら許さないのだが、スターシップにそんな雰囲気は無かった。

サウナを気に入ったダイコクさんからの入知恵かもしれないが・・・


「それは、それは、是非ご教授いたしましょう」

そこにソバルとプルゴブが走ってやってきた。


「お待たせしましたダイコク様、どうぞこちらへ」

ソバルが記念館にダイコクさんを誘導する。

スターシップとその配下もそれに続く。


「ソバル首領陣を集めてくれや、ボンを紹介させて貰うで」


「畏まりました!」

俺達は連れ立って記念館に向うことにした。




記念館に着くと会議室ではオズとガードナー、ドラン様がいた。

外の神様ズは何処かで好きにしているのだろう。

その内集まってくるに違いない。

俺達に気づき三人は立ち上がった。


「島野さん、その方がダイコクさんですね?」

オズが話かける。


「そうだ」

ダイコクさんがそれを受けて前に出た。


「わては商売の神をやっとるダイコクっちゅうもんや、よろしゅう」

ダイコクさんは軽く会釈した。


「ハハハ!私は畜産の神のドランだ。ガハハハ!」


「私は法律の神をしておりますオズワルドです」

オズは恭しくお辞儀をした。


「私は警護の神ガードナーです」

ガードナーは見極める様にダイコクさんを見つめていた。

その視線は鋭い。


「畜産に法律、それに警護かいな。なんやバラエティーに富んどるなぁ」

ダイコクさんはマイペースだ。


「ダイコクさん、外にもまだまだいますからね」


「せやったな、それで何処におるんや?」


「多分好きに国を見学してると思いますよ」


「さようか、自由人やな。知らんけど」

そこに五郎さんとゴンガスの親父さんが呑気に帰ってきた。

緊張感がまったくない。


「お!やっとるな」


「人の数が増えたのう」


「五郎さん、親父さん、ダイコクさんです」


「ほう!お前さんがそうか」


「もろだな・・・」

五郎さんは俺に視線を送ってきた。

言いたいことは分かる。

俺達の知る七福神にそっくりだからね。


「もろってなんやねん?」

どうやらダイコクさんは五郎さんの発言に引っかかったらしい。


「ああ、気にしなくていいですよ。ダイコクさんが知り合いにそっくりなだけですよ」


「ほんまかいな?」


「それはいいとしてだ、儂は五郎だ。まぁなんだ、温泉街の神をやってる」

五郎さんは自分で神というのが苦手なのだろう、苦い顔をしている。


「儂は鍛冶の神のゴンガスだ」


「温泉街に鍛冶とは・・・凄いやないか・・・」

ダイコクさんは眼を丸くしていた。

しかしそこは商売の神様だ、金の匂いを嗅ぎ取ったのだろう。

みるみるとその表情が変わっていた。


その顔はまるで、

「みつけたでー」

とでも言いたそうだった。

明らかにこの二人は商売向きの神様だからな。

反応して当然か。




首領陣が全員集まった。

国交を結ぶための会議をスターシップ始め、首領陣達が別室で行うことになった。


ここには神様達は同席しないことになった。

魔物同盟国とルイベントの間で結ばれる国交に関して、神達が口を挟む必要はないからである。

これを機に魔物同盟国が認められ、より魔物達の生活が豊かになることを俺は祈るばかりだった。

あとはソバル達に任せるしかない。

行政に関してはソバルとプルゴブがいれば問題無いだろう。

それに最近ではクモマルも積極的に行政に参加している。

最近クモマルにも統治力があることが分かってきた。

今や魔物同盟国は盤石になっているのだ。


俺は良い報告を待つばかりだ。

いよいよ俺達がこの国を離れる時が近づいてきているようだ。

俺は若干の寂しさを感じていた。

いまやこいつらの居ない生活は想像も出来ないぐらいだ。

はあ、やれやれだな。




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