いざ、あの場所へ2
駅に着き、改札を抜ける。今日の天気は曇りだ。眩しい日光はないが、体に纏わりつくような暑苦しい空気が私の一歩を鈍らせる。
『ほら、早く行くよー』
部長に背中を押されながら前と歩き出す。
先輩の実家は駅から徒歩で十五分くらいで見えてきた。丘の上にある、小さな古民家だった。
———ピンポーン
先輩が呼び鈴を鳴らす。扉の向こうから段々と音が近づいてくる。扉が開くとそこには背の高い男性がいた。
『ユウキ、帰ったか』
『おう!だだいま!こっちの二人は電話で話したノベ研の部員と部長だ』
『はじめまして、藤岡ランです』
『田辺ココロです』
『ああ、はじめまして。私の名前は松尾ユウギだ。外は暑いだろう。中で冷たいお茶でも出そう』
そう言われて、私たちは居間に通された。内装は今どき珍しい和式で、座布団を見た時の部長の驚き様が面白かった。
座ってから暫くしてユウギさんがお茶と、大きい古びた木箱を持ってきた。私たちの向かいの座布団に座り、腕を組む。
『さて、何から話せばよいか...』
『...あの、質問なのですが、ユウギさんのお父さんはやはり事件に関わっていたんですか?』
『ああ、間違いない。君の苗字は確か田辺だったな。君の祖父も恐らく関わっている。...すまんが新聞を見せてくれ』
『はい』
私はリュックから取り出しユウギさんに手渡す。ユウギさんは一読すると顔上げ、話を続ける。
『君たちはもうこの新聞を読んだのか?』
『いいや、まだだぜ』
『なぜ読まない?私が説明すべき内容はほぼここに載っているぞ』
『それはまぁ、タイミングがなかっただけだ』
『...そうか。この新聞に載っていることは父が遺したこのノートと内容は一致している』
そう言うと、ユウギさんは木箱を開け、中から黄ばんだノートをいくつか取り出した。
『じいちゃんが遺した?俺は知らなかったぞ』
『お前が知らなくて当然だ。これを渡されたのは父が死ぬ直前だ。お前に見せなかったのはその...内容が少し過激だったからだ』
『過激?』
『これには父が体験した事件の全容が事細かく書かれている。正直、あまり読んでほしくはない』
『お願いします!!読ませてください!!』
『お願いします。真実が知りたいんです』
『頼む!!』
私たちは一斉に頭を下げた。
『...君たちのいう怪奇現象を私は信じてはいないが、君たちが本気だというのは分かった。私は仕事に戻る。好きに読みたまえ』
『ありがとうございます!』
ユウギさんはそう言うと奥の部屋に入っていった。
私たちは早速、貰ったノートを開く。
それは過去に起こった"狂気"の物語を『独白』していた。




