23/30
おじさんの独白3
『ごめんね、少し話が長くなってしまった』
おじさんが話終わる頃には、外は赤い夕焼けに包まれていた。
『いえ、大丈夫です』
『...さて、そろそろ私は帰るとするよ。図書館の施錠をしに行かなくてはならないからね。ランちゃんも、もう退院していいらしいから早めに帰って今日はゆっくり休みなさい』
そう言うと、おじさんは立ち上がり、鞄を持って病室から出ようとする。その後ろ姿をみて、私は言葉にできない何かを感じた。おじさんがどこかに行ってしまうような、もう会えなくなってしまうような、そんな焦燥感を胸に抱いた。
『おじさん!今日は本当に、ありがとうございました!』
その後ろ姿に向かって大きな声で御礼を言った。病院の中なのは分かっている。それでもこの気持ちを、おじさんに伝えたかった。"後悔"のないように。
おじさんは振り返ると、ニコリと笑って病室を出た。彼がいたテーブルの上には、剥かれた林檎と、一枚の新聞紙だけが残されていた。




