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アイの独白  作者: 川口 黒子
13/30

二階の事件

 


 —————うう


 頬が冷たい


 この感覚は、、、間違いなくあの"場所"だ。

 にしても、どうして毎回手帳が浮かぶのだろうか。


『ラン、ココロ、大丈夫か』


『はい...』


 先輩と部長も今回は同じ所で目を覚ました。


『やっぱり来ちゃいましたね...』


『ああ、これで確定したな。あの手帳は、何か"トリガー"が引かれると開き出す。そして俺たちをここに呼び寄せる』


『じゃあ最初のトリガーって...』


『多分、部長が話した噂話です。多少呼び寄せられるまでに間がありましたが』


『うう...ごめんなさい...』


『まあそれは仕方ない。それより今からなにをするのかだ』


『まずはトイレの死体がまだあるか確認しましょう。多分教室の配置とかは変わってないようですし』


『うう...もうあれは見たくない...』


 教室の中は相変わらず荒れている。どうやら私が最初に起きた場所と同じらしい。綺麗な席がひとつだけあった。


 予想通りトイレは前来たときと同じ場所にあった。部長を除いた私たち二人がトイレの中に入る。何故か床に寝かせておいた死体が無くなっている。開けておいたはずの個室の扉も閉まったままだ。


『よし、開けるぞ...』


『...はい』


 そう言って、先輩は扉を勢いよく開く。しかしそこには死体はおろか一滴の血ですら残っていなかった。血を何かで拭いた形跡も無い。


『どうなってんだ...』


『やっぱりこの場所は異常ですね...』


 私たちは一旦教室に戻り今後の作戦を立てることにした。机と椅子を部室のように向かい合わせに置き、それぞれいつもの場所に座る。


『さて、まずは今わかっていることを整理しよう。各自前回の探索で気づいたことなど、何でもいいから教えてくれ』


『ではわたしから。前回はあった死体には多くの刺し傷がありましたが、どうやら死因は首を圧迫されたことによる窒息死の可能性が高いです。"彼女"が誰かは分かりません』


『俺たちと同じくらいの年だよな』


『はい、あと、ここからは私の考察になるんですが、この場所は多分、"京刻高校"だと思います』


『あの新聞の?』


『はい。根拠としてはこの場所にあった1956年の新聞の切れ端や、蔵の中であの新聞を見た瞬間ここに来たことですね』


『じゃああの死体の生徒はこの高校の人間ってことか?』


『それはまだ分かりませんが、ここで起きた"惨殺事件"と関係があるのかもしれません』


『え...そうなると私たち、過去に来たってこと...』


 そう、そこなのだ。"この場所は何なのか"、それ自体はある程度判明してきている。

 しかし"ここはどこなのか"がまたったくわからない。京刻高校にそっくりに作られた場所なのか、それとも本当に過去にタイムスリップしてしまったのか。どの答えも何かが違うように感じる。


『...実は俺、不思議に思ってることがあるんだ』


 突然、先輩が改まった態度で話始める。


『なんかさ...都合が良すぎねえか。噂話をして、偶然それに謎の手帳が反応して、目覚めた場所で偶然年号が残ってる切れ端を見つけて、そこからこの場所と関係がありそうな事件を知って、そしてまたここに連れてこられた......偶然にしては出来すぎてるように思うんだ』


『何かが意図的にここに呼んで、私たちに何か知ってもらいたいことがあるのかもしれません』


『...』


 部室にいた時とは違い、部長も先輩も深刻な顔で話し合いをしている。しかし現状、私たちの考察が憶測の域を出ることはない。だとすれば、今やるべきことは、、


 言いかけたその時、意外にも部長が声を上げた。


『もー先輩もランちゃんも考えすぎだよ!!今ここで結論が出るわけじゃないんだからさ、足を使おう!足を!』


『ココロお前...性格変わったか?』


『吹っ切れたんですよ!!もう早く解決してみんなで小説書きましょうよ!』


『...はは、そうだな!』


 言おうとしたことを全て言ってくれた。部長のいざというときの決断力には感心する。


『じゃあ、二階に行ってみませんか?前回見つけたんですよ』


『二階なんてあったんだね!』


『まあ高校だしな、あるだろ、二階ぐらい』


 私たちは早速、教室を出て二階の階段へと向かった。その階段を登ると、一階と同じように廊下と教室が並んでいる。


 一つ違う所があるとすれば、


『なんか、一階と比べて綺麗だな』


 何故か一階のように板が剥がれていたり机が倒されていたりしていない。とりあえず、階段の近くにある教室に入った。


『...ここもなんの変哲のない教室ですね』


『油断はするなよ。いつ何が起こってもおかしくないからな』


 私たちは慎重に一つ一つ教室を見て回った。前回見つけた新聞の切れ端のような、情報源になるものがあると期待していたが、これといった物は見つからなかった。


『なんもねぇな。もしかしてまたトイレか?』


『惨殺事件ってトイレでおきたんですかね』


 先輩と部長も拍子抜けな顔をしている。話ながら次の教室に向かう。扉の横の壁には2-3と書かれた板が貼られていた。


(こんなの他の教室にあったっけ?)


 疑問に思いつつも、教室の扉を開ける。

 一見他の教室と変わらないが、少し違和感がある。


『おい、あの机みてみろよ...』


 先輩はそう言って、一番前で右端の机を指差した。その机には黒い字で【死ね】【消えろ】などの暴言がそこかしこに書かれていた。


『ひどい...』


『この机の生徒はいじめられていたのかもな』


 その後、机の中などを調べたりしたが、特に何も見つけられなかった。次の教室に行こうとしたその時、


 ———ベチャ


 突然黒板に赤い字が現れた。


『...え』


 それは荒々しく太い字でこう書かれていた。


【生き残れ】


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