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愛しかった世界

愛しかった世界の終わり

作者: 雷ライ

設定がごちゃごちゃです。

一応、異世界の学園設定です。何番煎じ系のお話です。

勢いだけで書いているため、誤字脱字に注意して下さい。

なんでも許せる方のみお読み下さい。


また、あらすじにも記載しましたが、自殺描写と無意識な比較で少女を追い詰める描写がありますが、ご注意下さい。

「貴女はこの世界を愛してはいないの?」


「愛しているわけがないでしょう。

生まれた時から姉である貴女と比較され、

貴女と同じでなければ劣っている、

意地が悪い、愚かで卑しいと貶められる世界。

愛しても愛してくれなかったこの世界を、

私はもう愛していない」



淡い紫の髪を持つ女性と黒紫の髪を持つ女性が

飛行船のテラスで対峙している。


彼女たちの瞳はともに美しいアメジスト。


しかし、淡い紫は唖然としており、

黒紫が纏う空気は冷たい。



「さようなら、お姉様。

私は貴女が生きるこの世界が大嫌いよ」


黒紫の女性はその言葉を残し、

テラスから身を投げ出す。


待つのは底の見えない奈落。


淡い紫の女性が駆け出し、

黒紫の女性へと手を伸ばす。


掴んでもらえるはずがないと分かっていながら。


淡い紫の女性にとっては、

黒紫の女性はこの世にたった1人の愛する妹。


嫌われようと、避けられようと、

彼女は何かせずにはいられない。


伸ばした手は空を切る。


「ハーヴ!」


淡い紫の女性が黒紫の女性の名前を叫ぶ。


テラスから身を乗り出し、奈落を覗くと、

最後に見えたのはたった一度しか見たことがない

妹の心からの笑顔だった。














カールステッド侯爵家は、3人の子どもがいる。


長男で後継のヴァーイ

長女のタイヴァス

二女のハーヴ


青紫の髪とアメジストの瞳を持つヴァーイは

端正な容姿と後継として申し分ない頭脳を持つ

優秀な男性。


淡い紫の髪とアメジストの瞳をもつタイヴァスは

儚く可憐な容姿と聡明な頭脳を持つ女性。


黒紫の髪とアメジストの瞳をハーヴは

姉には劣るが、凛とした端正な容姿と優秀な頭脳を持つ女性だった。



多くの家族が彼らを理想とし、

幸せであると信じて疑わなかった。


「ハーヴ令嬢は、タイヴァス令嬢よりは劣りますが、とても優秀でいらっしゃるのですね」


「タイヴァス様みたいに、もっとお淑やかになれないのですか?」


「カールステッド家のご令嬢といったら、

妹なんかではなく、タイヴァス様に決まっているだろう」


「ハーヴ、こんなこともできないでどうするの?

貴女の兄と姉は貴女と同じ年頃の頃にはとっくにできていたわよ」


「ハーヴ、タイヴァスより前に出るな」


「ハーヴ、これぐらいのことで怒るな、タイヴァスのように寛容になれ」


「ハーヴ様に相手申し込まれたけど、

ハーヴ様よりタイヴァス様が良かったなぁ〜」






両親も兄も婚約者も、

誰も彼もが、姉と自分を比較する。


ハーヴにとっては敵だった。




しかし、周りには敵しかいない。

生きていくためには、敵にも笑いかけるし、

姉にだって不満はぶつけない。



息苦しい。


そう感じる日常を送るハーヴは、感情が徐々に

動かなくなる自分が恐ろしくなった。









そんなときだった、ハーヴが一目惚れというもの経験したのは。



婚約者はいるが彼はタイヴァスを崇拝しており、

ハーヴをタイヴァスが残した穢れとしてしか、

認識していない。


そんなヤツを愛せるほど、ハーヴは盲目的な愛を持ってはいない。



久しぶりに強く動く感情にハーヴはのまれる。


彼に認識されたい。


彼のそばにいきたい。


彼とお話ししてみたい。


彼の隣に立ってみたい。


彼に笑いかけてもらいたい。



そんな、人知れない恋心を抱えながら、

ハーヴは日々を過ごしていた。


婚約者がいるのだ。

これは誰にも言えないことであることぐらい、

わかっていた。




そんなある日、また、彼を見かける。


一階の渡り廊下を歩く彼を、ハーヴ以外誰もいない3階の王国歴史学研究準備室から見ていた。


太陽のしたで、友人であろう男性と話している、紺色の髪とタイコーズの瞳を持つ彼は目をひいた。


ハーヴは家では絶対に見れないような、穏やかな笑みを浮かべている。


(あぁ、今日もアールト様はカッコいいな)


彼を見ているときだけは息がしやすかった。


しかし、アールトに近寄る淡い紫が視界に入る。

嫌な予感がする。

淡い紫の髪を持つのは姉だけではない。

きっと違う。

そう思いながらも、心のどこかではわかっていた。


あれは、自身の姉、タイヴァスであると。



タイヴァスが、アールトに話しかけている。

話しかけるだけでなく、彼の腕に手を添えている。


それが視界に入って仕舞えばもうダメだ。


嫉妬、憎悪、嫌悪、悲哀、絶望といった感情が、

一気にハーヴへと襲いかかる。


(彼は私のものではない。アールト様が誰と話していても、私には止める権利なんてない)


わかっている。わかっていた。

それでも、もうダメだった。



その日からタイヴァスを避け続ける日々が始まった。


アールトを見かけても、恥ずかしいような幸福感ではなく、悲しみが胸を覆う。


タイヴァスとアールトは同じ学年だ。

接点があってもおかしくはない。


しかも、ハーヴの婚約者は既に決まっているのに、タイヴァスの婚約者はいない。


父である侯爵が、タイヴァスなら自分で素晴らしい相手を見つけてこれるだろうと考えているためだ。


何がきっかけだったのだろう。


あの日以降、タイヴァスとアールトが一緒にいるのを見かけることが多くなった。


しかも、タイヴァスは避けられていることがわかっていないのか、アールトと話している時にハーヴを見かけるとハーヴを呼ぶ。


衆人の前で姉を避けることができないハーヴは、

誰よりも近くで、タイヴァスとアールトが仲良くしているのを見せつけられた。


そんなんだから、噂もたつ。


タイヴァスとアールトは、恋人関係にあると。

近い将来、侯爵に挨拶に行くらしい。

妹であるハーヴにも紹介していたから、間違いないと。





そして、あの日がやってくる。






飛行船には、生徒や教師だけでなく、

保護者や学院の関係者も集まっていた。


飛行船では卒業パーティーが開かれている。


ハーヴは1人、テラスから夜空を眺めていた。


そこへタイヴァスがやってくる。


「ハーヴ!見つけたわ、こんなところにいたのね」


「……お姉様こそ、こんなところいらっしゃってよろしいのですか?」


興奮気味なタイヴァスに対して、ハーヴは酷く、冷静だった。


「あのね、ハーヴ、改めて紹介したい人がいるの。だから、一緒に広間に戻りましょう」


嬉しそうに言うタイヴァスに対して、ハーヴは酷く悲しそうに言う。


「紹介したい人?」

(あぁ、そうか姉とアールト様の婚約が決まったのか)


「そうなの!ハーヴも何回か会ったことがあるでしょう?ダンタール伯爵家の嫡男、アールト様よ」


(恋心を自覚したときはあんなに幸せだったのに。今となっては、姉の口からその名前を聞くだけ高鳴る鼓動にも気づきたくなかった)


「……私は遠慮します」


ハーヴの最後の抵抗だった。










この時、ハーヴが自分の婚約がすでに破棄されていることを知っていれば、あんなことにはならなかったかもしれない。





「どうして?遠慮なんていらないわ、いきましょう、ハーヴ」


タイヴァスがハーヴの腕を掴もうとする。

しかしそれは叶わない。

ハーヴは勢いよく、タイヴァスの手を振り払う。


「……嫌だって言ってるのがどうしてわからないの」


「ハーヴ?」


「いつもいつもそう、貴女は私の話に耳を傾けてくれない。善意という息苦しさを私に押し付ける」


「どうしたの?ハーヴ」


「お姉様、私は行かないと言っているのです。放っておいてください」


冷静に冷静に、ハーヴは心の中でそう唱えながら、タイヴァスを遠ざけようとする。


しかし、誰かに拒絶されたことがないタイヴァスにはそれが拒絶であるとわからない。


「放っておけるわけがないでしょう。ハーヴは愛しいこの世界で、たった1人の愛しい私の妹なのだから」


(あんなに熱かった体が冷えていく)


「愛しい世界?愛しい妹?……ハッハッ、笑わせないでくださいお姉様、私はこの世界も貴女のこと大嫌いだ」


ハーヴの言葉にタイヴァスは目を見開く。


「貴女はこの世界を愛してはいないの?」


酷く悲しそうな声が静かなテラスに響く。


「愛しているわけがないでしょう。

生まれた時から姉である貴女と比較され、

貴女と同じでなければ劣っている、

意地が悪い、愚かで卑しいと貶められる世界。

愛しても愛してくれなかったこの世界を、私はもう愛していない」


(愛していた。愛されたかった。貴方たちの妹であることは誇りだった。愛しい人がいるこの世界はひどく輝いていた。でも、もうダメ)


「ハーヴ、そんなに悲しいことを言わないで。

何か悩んでいるなら、私が力になるわ」


(あぁ、慈悲深く優しいお姉様。貴女のその優しさと善意が私を傷つける)



「お姉様、ダメよ、絶対ダメ。これだけはあげられない。この悩みは私のもの。何もかもお姉様のものなるこの世界で唯一私の手元に残っている大切な私だけのものなの」



淡い紫の髪を持つ女性タイヴァスと

黒紫の髪を持つ女性ハーヴが

飛行船のテラスで対峙している。


彼女たちの瞳はともに美しいアメジスト。


しかし、淡い紫は唖然としており、

黒紫が纏う空気は冷たい。



「さようなら、お姉様。

私は貴女が生きるこの世界が大嫌いよ」


タイヴァスが何か言おうとしていることがわかっていながら、ハーヴは言わせない。


ゆっくりと飛行船の端へと歩みを進めていたハーヴはその言葉を残し、テラスから身を投げ出す。


待つのは底の見えない奈落。


タイヴァスが駆け出し、ハーヴへと手を伸ばす。


掴んでもらえるはずがないことは、先程のハーヴの言葉からわかっていた。


しかし、タイヴァスにとっては、どんな言葉をかけられようとハーヴはこの世にたった1人の愛する妹。


嫌われようと、避けられようと、彼女は何かせずにはいられない。


伸ばした手は空を切る。


「ハーヴ!」


淡い紫の女性が黒紫の女性の名前を叫ぶ。


テラスから身を乗り出し、奈落を覗くと、

最後に見えたのはたった一度しか見たことがない

妹の心からの笑顔だった。


















手すりを掴み、手を伸ばしていたタイヴァスの横を何かが通り過ぎる。


影は迷わず、ハーヴが消えていった奈落へと落ちていく。

ここまでお読みいただきありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 救いのないところ 完全な悪人がいないところ [一言] 悲しいお話なのに引き込まれ何度も読んでいます みんなが幸せになるために、それぞれの立場でどうすれば良かったのかな?とたくさん考えますが…
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