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第20話 篠崎桜奈


 翌日の日曜日は、篠崎がうちに来る事になっていた。昨日は断って、一日ずらして貰ったんだ。

 買い物は近所のスーパーで夕方に済ませる事にしたから、それまでは篠崎と蘭子と一緒に遊んで、勉強もする予定だ。


 昨日の夜も深夜までバイトをしていたが、今日は何故か六時に目が覚めてしまった。

 仕方なく普段の日と同じように、洗濯機を回してからランニングに行く事にする。


 いや、何故かじゃないか――原因は葵の事だってはっきりしている。


 明日の朝から、葵は毎日俺の朝食を作りに来る事になった。


「私は颯太と学校が違うし、朝しか会えないんだから……お願い!」


 完全に押し切られた形だけど、一方的に世話をされるだけなのは嫌だったので。筋トレの仕方を俺が教えるって事で折り合いを付けた――ちょっと苦しい言い訳のような気もするが。


 ランニングから帰って、筋トレして、シャワーを浴びてから、蘭子と一緒に朝飯。その後は昨日出来なかったから、普段使っていない部屋の掃除をして。それでも時間が余ったので、一人で勉強をしていると――


『ピンポーン!』


 チャイムが鳴ったのは約束の11時ちょうど。ギリギリなのは、昨日バイトで遅かった俺への気遣いだと云うことは解っている。


「榊原君、おはよう!」


 ニッコリ笑う篠崎の笑顔が眩しい。昨日の葵との事があったので、俺は少し罪悪感を覚える。


「よう、篠崎。入れよ……」


「うん……蘭子ちゃんと遊ぶの楽しみ!」


「いや、『ちゃん』じゃないだろう。蘭子はオスなんだから」


「オスでもメスでも可愛いんだから良いじゃない」


「まあ、良いけど……それよりも、勉強の事も忘れるなよ」


『はーい!』


 何気ない会話をして、蘭子を二階の俺の部屋から連れてくる。


「わん!」


「わー! 蘭子ちゃん、会いたかったよ!」


 篠崎には金曜日も蘭子の世話をお願いしていたから、一日空いただけで、ちょっと大袈裟な気もするが……まあ、篠崎が楽しいなら良いかと、俺は暫く篠崎と蘭子が遊ぶ様子を眺めていた。すると――


「ねえ、榊原君……何かあった?」


 不意に、篠崎が声を掛けてきた。


「……篠崎、なんでそんな事を言うんだ?」


 俺は努めて冷静に聞き返す。


「雰囲気がね……いつもと違うから。別に、私の気のせいなら、それで良いんだけと」


 篠崎はいつも俺の事をよく見ているから、隠し事なんて出来ない。その上、気遣いもしてくれれて、全然厚かましくもなくて――だから篠崎と一緒にいるのが心地良い。


「ああ……確かにあったよ。篠崎……聞いてくれるか?」


 俺だって篠崎に隠すつもりなんてなかったんだ。タイミングを計りかねていただけで……


「うん……榊原君、聞かせて……」


 篠崎は優しく微笑む――篠崎になら、何でも話せると思う。


 だから、俺は昨日の葵との事を包み隠さずに篠崎に話した……葵の服の事までは、さすがに言わなかったけど。


 篠崎が来たいって云うのを断っておいて、葵とそんな事をしていたのだから。少しくらい文句を言われると思っていたが――


「そうなんだ……榊原君、良かったね!」


 俺の話を黙って聞いていた篠崎は、最初にこう言った。


「秋山さんとの事を、榊原君も気にしてたんだよね。隣に住んでるのに、三年近くも話せなくて……私も榊原君が秋山さんと仲直り出来て嬉しいよ!」


 篠崎は本当に嬉しそうに言ってくれた。それだけで俺は温かい気持ちになれる。


「ありがとう、篠崎……」


 俺も微笑えんで、篠崎を見つめる。


「だけど……ちょっとだけ、嫉妬しちゃうかな。秋山さんはこれから毎日、朝の榊原君を独占出きるんだよね」


 篠崎は悪戯っぽく笑う――それが凄く可愛くて、俺はドキドキしてしまう。


「だから……私も一つだけお願いしても良いかな? 私も『颯太君』て呼ばせて……私の事も……『桜奈』って……」


 篠崎は上目遣いで、恥ずかしそう頬を染める――そんな顔をされたら、断れる筈なんてないだろう?


 ホント、反則だって篠崎……いや……桜奈。



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※良かったら、こっちも読んでみてください。主人公最強チーレムモノです※
【勇者(女)を魔神から救ったら一生放さないと抱きつかれた件(仮)】
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