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第一話前編「地獄ギャンブラー皇-スメラギ-」

地獄の沙汰も金次第ー

そんなことわざがある。


人は死してなお金に支配される。


「地獄ギャンブラー皇-スメラギ-」


ここは天国と地獄の境界線。

片方の空は青白く輝き、片方の空は赤黒く沈んでいた。

現世で死に、天国で一定期間暮らし輪廻転生を許可された人たちが大きな宮殿を前に行列を成していた。


赤鬼「はい、列を乱さず〜列で並んでそこ乱れてるよ〜」


一本角が生えた赤い鬼が声を上げる。


絵本や漫画に出てくるような鬼がそこにいるのだ。皆すぐに言うことを聞く。

しかし1時間が経った頃、皆我慢しきれずそわそわし始めた。

声を上げるものもいた。


男「おい、いつまで待たせるんだ!」

赤鬼「時が来るまで静かにお並びください。」


ズイッと近づいて来たトゲトゲしい棍棒を持った赤鬼が静かに威圧する。

男は堪らず黙りこくる。

そんな様子を彼、皇 浩一[すめらぎ こういち]は列の後ろから静かに見ていた。


徐々に列は進み、眼前にある閻魔様の宮殿に人は流れていく。


赤鬼「はい!次の方どうぞ〜。」

宮殿に入るとこれまた絵本に出てくるような閻魔様がいた。

大きい机に大きな体。


閻魔様「皇 浩一、1998年7月4日18:24:31に生を受ける。2015年11月20日19:31:10、自殺により死亡。これより契約を交わす。」

皇は黙って聞いている。


閻魔様「汝、皇 浩一は天界法第十八条、輪廻転生項その1より転生処理に入る。また、天界法第三十一条、金銭移譲項に則り、転生処理期間の所持金銭が生涯所得に反映されることをここに説明する。契約しない場合は輪廻転生をせず、天国で再度暮らすことができる。」


皇は口を開く。

皇「契約します。」


閻魔様「それでは手続きに移る。」

皇は山ほどもある書類に自分の名前を記し手続きを済ました。

そのまま赤鬼に促され、大きな扉から地獄に足を踏み入れる。


目の前にある二手に分かれた橋と微かに聞こえてくる人々の悲鳴。

案内役の赤鬼が喋る。


赤鬼「ここからコースが分かれています。

   左の即時転生コースと右の地獄ギャンブルコースがあります。


   即時転生コースは即、禊に移ってもらい、転生できます。生涯所得は前世と同様です。

   地獄ギャンブルコースは、与えられる地獄マネー100万ヘルを元に暮らしいただき、賭けることができます。転生は1年後となります。1年後の最終所持ヘルに応じて生涯所得が上下します。


   決まりましたらお進みください。案内役の青鬼が待っています。」


皇はすぐさま右のコースに足を進める。

今、皇 浩一の地獄ギャンブルが始まったー。

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