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三人の少女




 太平洋を月明かりが照らす。



 眠らない海。延々と揺れながら飛沫をあげる彼らに混ざって、海面を駆け抜け夜を謳歌する、少女が三人。



 海は、空に浮かぶ見慣れた光景よりも、彼女たちの渡航を見届ける。今夜は彼女たちの喧騒を子守唄にし、夢をみたいなんて夢想する。




 空に浮かぶ月も、同じようなことを考えている。見慣れた私の顔の上を土足で駆け抜けて行くのは、礼儀も、奥ゆかしさも、可愛げもない、三人の若僧かい?





 けど、偶にはそういうのも、悪くないなんて。






 三人はそれぞれの目的で、それぞれの意志で島を抜け出し、ソコへ向かう。




 ルールを愛しながらもルールを薙ぎ払い進む。自らの故郷『奈落』へと帰る少女。

 一人の女の子と親友になりたいが為に『天国』へ向かう少女。

 一人の親友に再開する為、『すべて』に歯向かうと決意した少女。





 その領土は、そんな彼女たちを歓迎してくれるだろう。






「氷織ちゃん! あそこまであとどれくらいで着くのー!!」



 抵抗面積の広い身体で煽られながらも必死にしがみつき、船長に問いかける彼女



「アァ!? 知るか!! オイボケ共ッ根性出セッ120パーセントダヨッ」



 そういって標識を逆さに暗い水面へ突っ込み、発破をかける奈落代表兼船長。

 あぶくの立つ勢いはこれ以上膨れ上がる気配はない。しかし時速120パーセントにかわりはない。




「おぇえうぇげっげぼげぼげろゲロオロロロロロロおろろウェ」



 撒き餌を絶やさない彼女はもう既に階段に足を掛けている。早く楽にしてと涙ながらに振り絞る声はすべて掻き消され、揉み消され、吐き消されてゆく。



「...」



 そう、あともう一体いる。船長に手渡された標識オールを黙々と漕ぐ、ヒトの形を模した蔦人形の彼女、はじめ。






 月はもうそろそろ見ていられないわと裏側に引っ込もうとする。

 暗い海は、もう少しだけ夢を見させてくれと要求するように、少し高い波を寄越しちょっかいをかける。





 しかし風は、その立ち振る舞いを変えることはない。




 風は彼女たちとひとつになり、背中を押す。彼女の意志を尊重するように、彼女たちの目的地へと心良く誘うように、そして、わたしの元へたどり着いてと希うように。




「あーー!! 二人共! 朝陽が出るよっ! 綺麗だね!!」



「ア? オイボケ共、夜が明けちまったじゃねぇかクソガッ」



「ころシテ」



「...」




 もう視界にはそこを捉えている。その土地は緑に覆われ、霞んだ灰色は大地の力強さに追いやられていた。



 多種多様な生き物たちが彼女らに視線を送る。そこには人間の姿は見当たらない。彼等の世界にそれらは必要が無いのだと静かに物語るかのようだ。








「還っテ、来たネ」







 どこかの森で少女の声がする。しかしそれは歓迎しているといった色調では無く、しかし悦びに打ち震えている色合いでもある。





「氷織クン...」





 彼女の声は誰にも届かない。この声は、その小さな肉体には収まっておれず、呼吸とともに流れ出てしまうだけだ。おもわず、昂ぶってしまうのだ。一度、彼女は深呼吸を意識してみた、だが直ぐに鼻から荒い音が鳴る。






「ふぅうううウっ、ハヤ、過ぎルヨ。ダメ、だよ。今、戻ってキちゃ。ヒィ、皆、マダ鎮まっテ、ナイノニッッ」






 彼女の身体に同調し、木々が踊り狂う。





 上陸する3人(と一体)を、やはり、ここの住人たちは歓迎しなければならない。






「ミンナデ、迎エヨウ」






 木々は風の形に沿って吹き荒ぶ。静寂。もう少女の姿は何処にもない。



 その空間をあとから埋め尽くすのは、うたた寝する大地の鼾や、木々を落ち着かせる風の音。




 そして、浜に打ち上げられた彼女たちの騒々しい目覚ましが、この土地の総てを叩き起こすようだ。









「ジャングルだねジャングル! アマゾンだね! ほら! あそこに真っ赤な花が咲いてる!! おっきいね!」



「ヨシ、マァ思ったより早くツイタナ。ボケ共、カドカのゲロでイイカ?」




「...」




「モウ、デマゼン」






 わたしはもう、海を渡らないことを心に誓った。


 今はまだ花柄の、標識の奥底からゲラゲラと嗤い声が聞こえてくるようだ。さりげなくはじめがわたしの口に手を差し伸べてくるし...。もう、帰らなくていい...死んでも御免だ...。




 わたしは気分を変えようと、晶の見つけた真っ赤な花とやらを視界に収めるため地面を見回すが、赤い花は見当たらない。赤い実のようなものならポツポツ見えるけど。



 口を拭い、晶をみるとbe ambitiousという風貌だ。それは遠くの景色を指差しているらしく、彼女の目の良さでようやく捉えられる花なんじゃんと、すこしガッカリした。





「オウ、アキラ。アレがな、オレたちが黄泉ガエッテキタ花ナノサ」





 え、花から黄泉がえるって、なに?





 指の指す方向の景色を、見た。その花は、よく視線を凝らすまでもなく、陽の光で輝きを放っていて。






 そこにあったのは、わたしでも知っている、日本人なら誰でも知っている、一番高いお山の筈で。





「へぇ〜〜〜っ、花って何処にでも咲くんだね!」





 火口と呼べる筈の場所から天に向かって伸びた赤黒い茎、そこから枝分かれし、周囲の森へと繋がる細い葉に、太陽をお供えするための器かと思える巨大な花びらが満開し、一輪の華のように咲き誇っている。






「アレが、富士ノ華。奈落の底はもう、天国を見下ろしてんダゼ?」





 ゲラ、ゲラガラゲラ





 カチカチと姿を変える花柄に、わたしはもう惑わされようがない。

 あそこに、はじめがいるかもしれないんだ。あの富士ノ華は、はじめの居場所に相応しいのだと、どうしても楽観し希望する。



 わたしの趣味ではないが、はじめは花を育てるのも身につけるのも様になる。あの子がもし、魂だけだとしても、あの場所を選ぶに決まっている、とか。








「サァ、モウオレらに気がついて、ナニカ、仕掛けてきてもオカしくないゼ」







 わたしは無意識に右手をいじいじする。そこには、もうわたしの伸ばした髪の毛はないけれど。







「イイネェ、準備万端かい?カドカチャン」







 自らの『ハードプラント』で模したのは、刀ではない。わたしが、右手に収めるのに最もイメージが固まっていたのは、昨日までずっと、2年間、はじめの為に伸ばし続けてきた髪の毛だった。







 わたしの髪は今、総てが翠色ミドリに揃ってる。








「わたしだって、もう闘えるよ。氷織ちゃん」








 出港前、あのカフェでわたしは、全ての髪の毛をハードプラントに移植し替えて来た。わたしはモノを扱うには不器用すぎるから、わたしの一部なら、支配コントロールできると思い立ったんだ。





 この感覚にはまだ、慣れないけど。





 翠の髪を、優しく撫で付ける。それはしなやかで、悦びに満ちていて、はじめを驚かせるのに相応しい外観で。







「氷織ちゃんこそ、あの退屈な島で腕がなまってない?」




「言うネェ、今度ハオレガ、襲っちゃうゼ」







 わたしの挑発に翠髪が一斉に狂喜する。一本一本が、針のように鋭く、意識が直接毛先へと向かえば、斬りはらうこともできる。今なら、誰とだってやり合ってみせる。





「ちょっと二人とも、あの花に並んでたって! すぐ描くから!!」





 晶はさっそくはじめからスケッチブックを取り出して興奮気味に筆を執る。煽動し合うわたしたちに引きかえ、晶は何処にいても変わらないなと安心できる。

 既に氷織ちゃんもわたしも戦闘態勢なのに、彼女だけ観光気分だ。






「オ、イイネェ、記念撮影カッコ手書きってか。上陸記念に一枚、イッとくか? ケドヨ、俺たちだけじゃ、物足りなくネェカ? アキラチャンよォ」






 そういう氷織ちゃんは森の方を振り返る。もう、奈落スマイルだ。ミナサンも嗤ってる。










「ようこそおいで下さいました。ヒオリサン」









 聞き覚えのない少年の声がひとつ。









「やっぱりオマエだヨナァ、下っ端クン」









 氷織ちゃんの知り合いだ。つまり、あそこに立っている少年は、奈落の住人というわけだ。





 早速、お出ましか。







「この子、氷織ちゃんのお友達なの?」

「...」



「へ?」



「ア」

「あ...」





 奈落の彼も素っ頓狂な声を出した。彼の背後に既に晶とはじめが回り込んでおり、彼を縛り上げている。イ、イツノマニ? は、早すぎない...その、展開も動きも...。



 そういえばドクターが晶は速いとかなんとか言っていたけど、運動神経を超えてるよ、そのスピード。






 氷織ちゃんのオシリアイは、既に行動不能にされてしまった。






「な、なんだ!ヤ、ヤメろ!」



「...アキラ、そいつな、見た目はオトコだけどタマがねぇんダヨ」






 おもしろがってそんなことを言う。晶は一瞬で顔を紅く染めた。ダメだよ...そんなこと言ったら、彼が上陸の記念すべき一枚目を飾ってしまう(しかもヌード)。






「へ、ヘェ、君、ソーナノ...? アタシ、その、オトコノコって、ちゃんと、見れたこと、ないんだ、よね」





 彼の上半身をはじめは直ぐ包みこんだ。晶の次にやろうとすることをわたしはちょっと見てみたいとも思ったりするけど。目が、血走ってる...ホントーニやる気かもしれない。





「や、オ、お願いします! スミマセンデシタ! ちょっと、ご挨拶に伺っただけなんです! ほんとです! 氷織ちゃん! 僕と友達でしょ! この、この人ヤバイよ!!  コッチにいたっけ!?」



「マァ、お気に入りダヨ」





 氷織ちゃんいわく下っ端らしいけど、奈落の住人をもう、一人で無力化しちゃったよ...。晶ちゃん、改めて今まで生意気言ってごめん...。






「ふつうっぽい人が混じってたので、ちょっとだけ、ちょっとだけかっこつけたかったんです!!」


「マァ、コイツ、偵察か盾くらいしか能がネェからヨ。ガイドくらいに思っとけばイインダ」





 そうならそうと、始めから説明してくれればいいのに。あ...晶が下を下ろすかどうかでまた格闘してるよ...。


 奈落の住人も、氷織ちゃんのような能力を持ち合わせている存在ばかりではないらしい。





「誰の差し金ダ? 今はどいつガ仕切っテル? オマエノ横ニイル女ノ目ヲ見テ、コタエロ」





 なんて尋問の仕方だ...。晶をそんなことに使うなよと思いつつ、しかしそれは効果てきめんなのは確かで。横にいる晶も既に、奈落スマイルを会得している。






「サ、三姉妹です! この辺りはアノ三姉妹が仕切ってますゥ!! ゆ、許して、この人、ヒト? 姉貴らと違う意味でコワイヨ!!」






 つまり、あの富士ノ華周辺は、彼の言う三姉妹が取り仕切っていて、そのヒト? たちに彼は御遣いを頼まれたということか。まずはその三姉妹と顔合わせしないといけないってことかな?



 三姉妹、か。仕切るということはチカラを持ち合わせているということのはずで。丁度、三対三という構図なわけで。






「デ、アイツらナニカ、オレに言ってたか?」






 氷織ちゃんにはなにかここの住人と因縁があるのかもしれない。それに巻き込まれるのは気がひけるけど、ここまでの恩を、何かしらで返す必要があるだろう。





「え、えーと、『バカヒオリ、ワタシらのが愛されてるもんね!』とかなんとか...」



「三番目の馬鹿しか居ねーのかよ」



「ほか二人はいつも通りで...」



「ソイツもいつも通りじゃねーか」





 なんだかほのぼのするやり取りじゃない? もしかして、闘ったりとかしなくて済む感じですか?





「ア、アハハ...そろそろ、皆さんいいですかね...ボクも、その、もう片方は、失くしたくないといいますか...」





 ...。氷織ちゃん、冗談言ってる場合じゃないよ。この子、見てられないよ。

 謎の正義感みたいなものが芽生えてくる。この子も、守ってあげたい。





「相変わらず趣味がワリィことで。んじゃあ、案内頼むゼ? オレらもさっさと済ませてえんだからヨ」



「ハ、ハイ...」





 ほんとうは何事もなくはじめに会えればそれでいいんだ。けど、奈落の住人はあまり性格がよろしくないようで。






「そういえば君、お名前、あるのかな?」






 晶がそう問いかけた。生々しい会話から一気に親しみやすいものへと空気が変わる。

 先ほどからわたしは、奈落の空気感と晶の日常感に行ったり来たりさせられていて、どのような態度でいればいいのかがわからなくなる。





 わたしは、どのような心構えでいればいいだろう?

 はじめに逢うためには、どう動くべきなんだ?






「あ、名、ですか。ボク、その、生前の記憶が曖昧でして...。」




 そういえば『氷織』というのも生前の名前をそのまま使用しているらしいので、彼にも必ず名前があるはずなのだ。曖昧な記憶。よっぽど酷い目に遭ったのだろう。まぁ、そういうこともある。よみがえった今でもだいぶ扱いは酷いものらしいけど。






「氷織ちゃん、僕の名前って閻魔様から聞いてる?」






 さり気なくボスっぽい単語が出てきたけど。氷織ちゃんって、結構重役だったりするの...?







「ア? あー、なんだったっけな? オマエは下っ端のなかの下っ端だからナ。下端とかじゃねえか?」






 そんなわけあるか。少なくともそういうニュアンスで人の名前は付けられたりしないだろうに。





「一々んなモンに目ェ通してられっかヨ。なんナラ、今付けてやったっていいんダゼ? オイ、アキラチャンヨ、オマエの弟にしてやれヨ」



「え! 弟!? イイ、ね。うん。こんなに、カワイイ弟なら、欲しいかも、ね」




 なんだか歯切れが悪い。身内となると手が出しづらいからか...。






「それなら、うん。今日から君は、翔かけるくんだよ」



「あ、はい...ありがとう、お姉さん...」






 翔くんか...まあ晶にしてはマトモなセンスの発揮されかただよね。それに、二人が姉弟関係なら今までのやりとりも微笑ましい光景にならなくもない。






「そーいやァ...マは...島...アキラはお気に入りだ...交かん...た...だったか...」






 横でわたしの耳にギリギリ聴こえるほどの声で氷織ちゃんがぶつぶつ言っている。...晶が、お気に入り? 氷織ちゃん、なにを考えているんだろう?






「オイアキラチャン、教えといてヤレヨ。お前の名前も。お姉ちゃんになる普通の人間の名前をヨ。それとも下端のままでイイノカ?」






 氷織ちゃんがそんな提案をする。





「え、そうだね。じゃあ、『ここにいるメンバーで、自己紹介。互いにしときな』、なんちゃって」




 ドクターの声真似か...声質的に無理があるけど、気転も利かせられるようで。ほんと、余裕だよね。


 腕だけ耳元に翳し、あの場を再現してみせた。




「わたしの名前は百垣晶ももがき あきらっていいます! ここ、天国でも漫画家、目指してます!そして、はじめちゃんと親友になります! 趣味はフルマラソンです。よろしくお願いします!!」




 そういって目の前の彼にマイフォンを渡すそぶりをする。それに首をかしげながらも、彼は、自己紹介をはじめた。




「じゃあ、ボ、ぼくの名前は百垣翔ももがき かけるって、いいます! ここ、奈落で皆さんを案内させていただきます! 趣味は、昆虫採集です! よろしくお願いします!!」




 水彦くんよりは、気が利いていると思う。なかなか悪くない姉弟なのではないか。それに、弟となら一緒にオフロ入っても問題ないよね!! なんて。




「よろしくね! 翔!」




 晶はそういって、たった今誕生した弟に握手を求める。部屋で今までひとりだったとか言ってたのは嘘みたいに、彼女の周りには人が集まってきている。多分、この世界なら晶という存在がうまく発揮されていくんだ。これまでの世界が、晶にそぐわなかっただけなんだ。




 快く握手を交わすと、翔くんは切り出した。




「安心してください。僕が麓の本拠地に連れていくまで誰も危害は加えないはずです。それが、ここを仕切る彼女たちの要求です」




 そうか、それならまだ、観光気分でいてもいいかもしれない。




「ですが、ここには野生の生き物がいます。彼らまで統制を図ることはでき兼ねるので、もしやむを得ない場合、協力していただきたいです」



 それもそうだよね。肉食獣とか毒とかには注意しなくちゃ。


 あと、ひとつ聞きたいことが、わたしにはあるんだ。




「翔君、この辺りに、白い服を着た人間って、徘徊してたりしないかな?」





 そういうと、なぜだか氷織ちゃんが嗤った。そして、その顔を見て翔君も苦笑いする。




「白い服...はぼくも見たことはありますが...その...ここ一帯は、彼女たちがすべて御祓したといっていたので...」



 奈落の住人が、なにを祓うというのか。



「少なくとも、ここチューブ近辺には生きている人間はいないはずです。あなたがたは、そういう意味でも特別です。カントーの方にはまだ生き残りがいるらしいですが、今は目立った動きはありません」



 このあたりはもう、完全に奈落と化してしまったのだろうか。







「カドカチャン、少なくとも今一番危険なのはナ、そんな命恋しい人間様タチとはワケが違うんダゼ」






 ゲラゲラガラ。嗤うのを、止められないでいる。






「ほんとうに死んだ奴らってのは、枷が外れちまってんノヨ。しかもアノ閻魔に甘やかされ放題とキテル。その上、全員ガキのオンナドモダゼ。あの三姉妹がいなけりゃ、世界がモタネェヨ」





 ...翔君はハーレムなんだねよかったねなんて、言えるような環境じゃないんだね。ごめんね。もうすこしマトモな人を連れてくるべきだったよね。







「お前のダイスキなハジメチャンも、ナニサレテルカ、ワカッタモンジャネェカラヨ」







 右手にハードプラントが犇めき合う。モシ、ソンナコトガアッタラ、ソノガキドモ全員モウイッペンブッコロシテナラクノソコニトジコメテソレデブッコロスコロスコロスコロスシネシネシネコロスコロス






「それでイイ。翔、ワカルダロ? こいつら特別なんかじゃネェッテコトガヨ。生きててもそれなりにマシなのはインダヨ」





 どうしてかこの世界にはパワフルな男性が見当たらない。閻魔様あたりが、その役を担うのだろうか? 翔くんはこのなかで最も危害を加えなそうな存在にはじめの蔦人形を選び、その後ろに隠れている。





「わ、わかりました...上にはそのように、報告させていただくので...モウトラナイデ」


「あーーー!! 門夏ちゃんアタシの弟泣かせたな!!」




 うん、晶、その調子で場を和ませていて。わたしは、想像力が希薄すぎて、一つのイメージだけで、スグに変わっちゃうから。




「ほら、アタシが隣についてあげるから、あの怖い二人は置いてさっさとしゅっぱ―――つ!!」





 手をつないでさっさと富士のほうへと歩いて行った。そのあとに氷織ちゃん、そしてわたしと続く。


 ここまで航海をともにした、わたしを襲った生徒のソフトプラネットで模ったボートは、ここに置いてゆく。




 翠の目立つ髪を隠すため、わたしは上だけ長袖のパーカーで来た。海上では取り繕っている余裕はなかったけど、今更ながら、わたしはフードでその目立つ髪を覆い隠してその時に備える。





 まずはこの髪のコントロールだ。それはたどり着くまでに野生の生き物たちで試すことにする。それも、弱肉強食自然の摂理だ。そこまでにわたしが息絶えることがあるとしたら、わたしにその価値がなかったということになる。ソンナノ、ユルサナイケド。






「サァ、オレの故郷を愉シンデコウゼ、カドカチャン」






 改めて右腕に力を込める。ここからは天使はいない。





 あの一輪の華にはじめがいてくれることを願って。






 4人と一体は森へと侵入してゆく。





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