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血族の長

「良くないよぉ~。マカのバカぁ!」


「…うっさいな。抱き着くか罵るか、どちらかにしろ」


後日、ソウマの店に訪れたマカは、ハズミとマミヤ、そしてマリーにサクヤのことを告げた。


もしかすると、後にこの店に来るかもしれないからだった。


「婚約者候補って何だよ~。今時そんなの流行らないよぉ」


「そうは言ってもウチは代々そういう婚姻を結んできたんだ。まあとは言え、現代ではそうでなくても良いんだが…」


しかし文句を言う同属はいるだろう。


それを思い、マカは声なくため息を吐いた。


「けれど結局はそのサクヤってコも、マカの血と力、それに権力と地位が目当てなんでしょう? やぁね」


人間の女性の姿になったマリーは、眼をつり上げながら文句を言う。


「まっ、正直でいいさ。胡散臭いところは隠していないしな」


「でも結果的に言えば、その…マカが言う座敷わらし現象は、彼の力によるものだったんだろう?」


マミヤが心配そうに声をかけてくる。


「みたいだな。あれから数日経つが、クラスメート達のサクヤへの態度は変わらん」


ハズミに泣きながら抱き着かれながらも、マカはイスに座り、マリーが作ったアイスティーを飲む。


「まあ問題があるとしたら、マノンの所へ行くかもしれない可能性だが…。それも薄いかもしれんな」


「どうしてそう言い切れる?」


「お前達と同じ理由さ、マミヤ。所詮、本家に頼らなければならない存在。不興をかったところで、サクヤの一族全体の得にはならないのさ」


「まあ確かにねぇ。マノンは個人には動くけれど、団体には興味なさそうよね」


「ああ。マリーの言う通りだ。アイツは人の多いのをうっとおしいと思っているフシがある」


逆を言えば、少数を好む者には進んで手を貸したりする傾向がある。


例えば離属したシキやリウなどには、マノンは多少なりと好感を持っていた。


それは血族を嫌うからなのか、あるいは…マカへの嫌がらせなのか。


両方かもしれないとマカは考え、顔をしかめる。


「マカ、ちょっと良いですか?」


「ああ、ソウマ。今行く。マミヤ、ハズミをはがしてくれ」


「分かった」


マミヤは遠慮なく、ハズミをはがした。


「あっ、何するんだよ! マミヤ!」


騒ぎ立てるハズミから離れ、マカはソウマの元へ行く。


店の奥の部屋に入り、ソウマは話し始めた。


「血族の長から聞きました。とりあえず、サクヤさんの一族を本家預りとするらしいです。ですが婚約の話しは、当人達に任せるとのことです」


「チッ! 本当にロクなことしないな、アイツは」


忌々しく呟くと、マカはイスに座る。


「だがまあ今回の件で、新たな情報屋との接点ができた。そこだけは良しとしよう」


「カガミさんとミツルさん、ですか…。あまりかかわり合いになってほしくないタイプのお二人なんですけどね」


ソウマは深くため息をついた。


「まあクセはあるだろうが、利用はしやすい。報酬によって動くだけならば、簡単だ」


「あなたが相手の場合は、そうもいかないでしょう? もう少し、ご自分の立場を理解してください」


「へいへい。…しかしサクヤのヤツは本気で私と結婚するつもりなのか?」


「みたいですね。僅かな時間、貴方と過ごして楽しかったらしいですから」


「…腹の探りあいしか記憶にないんだが」


お互い笑顔で、それでいて一歩も引かない態度で接していたのだ。


二人から出る微妙な空気に、クラスメート達は本当に一歩引いていた。


「しかし血の匂い、か…。…始祖とはイヤな言葉が出てきたな」


マカは顔を歪め、髪をぐしゃぐしゃとかく。


「…後から調べたんですが、確かに彼の血は本家に近いものでした。ですがマカとは比べ物になりませんけどね」


そう言ってソウマはマカの向かいのイスに腰を下ろした。


「…まあ、そうだろうな」


マカの眼は、目の前のものをとらえていない。


はるか昔に戻っているような、遠い目になっていた。


「血族の誰も、私の半身のマノンですら、私とは違う」


―そう。


マカは血族の誰よりも、その血を濃く受け継いでいた。


「何せ私は…」


マカはゆっくりと顔を上げ、真っ直ぐにソウマを見た。


ソウマの表情は、苦しそうに歪んでいる。


まるでマカのその言葉の先を、知っているかのように…。


「血族の始祖。その生まれ変わり、そのモノだからな」



【終わり】


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