志願兵
「……本日正午、シュンム帝国は、自国の政治家サンドロ・モナド氏がオリジンで殺害された報復として、我が都市国家に宣戦を布告した。前回の戦争を参照すると、敵軍が都市に到達するのは早くて三日後と予想される。これを受けて、西方の平原に第一師団が進軍を開始した。また、本日午後四時より、サピエンティア城のコロシアムにて志願兵の募集を行う……」
サヤは、号外の記事を読み上げた。苦い顔をしたのはマルボルだった。
「旦那様の死が、開戦の口実に……」
「どうする。このままだとメグを救うどころの話じゃなくなるぞ」
「でも、新聞には敵が来るまであと三日と書いてありますよ? オリジンに侵略が来るとしたらもっと時間がかかるはずです」
「エマ。敵が前回と同じ戦い方をしてくるとは限らないぞ。すぐにでもメグと彼女の母親を救い出して、オリジンから抜け出すんだ」
シャーロットは、未だに押し黙っていた。
「どうした? シャーロット」
「私はオリジンから逃げない。コロシアムに行く」
「シャーロットさん!?」
驚いたのはエマだった。
「行くのか」
「ええ。私は戦う」
ジュードの問いかけに、それが当然であるかのように、シャーロットは答えていた。
「どうしてですか……!」
メグには納得できなかった。シャーロットがマギア族として苦しんできたならば、クランカーに肩入れする必要はないはずだ――エマはそう信じていた。
「シャーロットさんは、オリジンで苦しい思いをしてきたはずです! ここから逃げて、自由になれば……!」
「勘違いしないで」
「えっ……?」
「私は、マーキュリー家の当主よ。ここで生きてきたことに誇りを持ち、これからもここで生きていくの。私の土地を踏みにじる敵は、命をかけて打ち倒す。だからね、私には逃げるなんて選択肢はないの」
「そんな……」
「エマちゃん。私がピストルを渡した意味は分かる? あなたには、どこにいてもメグちゃんの支えになってほしいの。そのためには、あなたが自分一人で戦えないとでしょう? さっきは助かったけど……次はないものと思いなさい」
シャーロットは、ガレージを去ろうとしていた。すぐにコロシアムへ行くのだろう。
「エマ。これがあいつの生き方なんだ。昔から変わらない。誇りを一番にして生きていく」
エマは、遠くなる背中に一つだけ頼みを告げた。
「シャーロットさん……! もし、城でメグちゃんを見つけたら、きっと救い出してください……! お願いします!」
シャーロットは、一言も返さずに四脚のマキナに乗り込み、屋敷を出て行った。




