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空色のカナリア  作者: 山門芳彦
第四章 開戦
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志願兵

「……本日正午、シュンム帝国は、自国の政治家サンドロ・モナド氏がオリジンで殺害された報復として、我が都市国家に宣戦を布告した。前回の戦争を参照すると、敵軍が都市に到達するのは早くて三日後と予想される。これを受けて、西方の平原に第一師団が進軍を開始した。また、本日午後四時より、サピエンティア城のコロシアムにて志願兵の募集を行う……」


 サヤは、号外の記事を読み上げた。苦い顔をしたのはマルボルだった。


「旦那様の死が、開戦の口実に……」

「どうする。このままだとメグを救うどころの話じゃなくなるぞ」

「でも、新聞には敵が来るまであと三日と書いてありますよ? オリジンに侵略が来るとしたらもっと時間がかかるはずです」

「エマ。敵が前回と同じ戦い方をしてくるとは限らないぞ。すぐにでもメグと彼女の母親を救い出して、オリジンから抜け出すんだ」


 シャーロットは、未だに押し黙っていた。


「どうした? シャーロット」

「私はオリジンから逃げない。コロシアムに行く」

「シャーロットさん!?」


 驚いたのはエマだった。


「行くのか」

「ええ。私は戦う」


 ジュードの問いかけに、それが当然であるかのように、シャーロットは答えていた。


「どうしてですか……!」


 メグには納得できなかった。シャーロットがマギア族として苦しんできたならば、クランカーに肩入れする必要はないはずだ――エマはそう信じていた。


「シャーロットさんは、オリジンで苦しい思いをしてきたはずです! ここから逃げて、自由になれば……!」

「勘違いしないで」

「えっ……?」

「私は、マーキュリー家の当主よ。ここで生きてきたことに誇りを持ち、これからもここで生きていくの。私の土地を踏みにじる敵は、命をかけて打ち倒す。だからね、私には逃げるなんて選択肢はないの」

「そんな……」

「エマちゃん。私がピストルを渡した意味は分かる? あなたには、どこにいてもメグちゃんの支えになってほしいの。そのためには、あなたが自分一人で戦えないとでしょう? さっきは助かったけど……次はないものと思いなさい」


シャーロットは、ガレージを去ろうとしていた。すぐにコロシアムへ行くのだろう。


「エマ。これがあいつの生き方なんだ。昔から変わらない。誇りを一番にして生きていく」


 エマは、遠くなる背中に一つだけ頼みを告げた。


「シャーロットさん……! もし、城でメグちゃんを見つけたら、きっと救い出してください……! お願いします!」



 シャーロットは、一言も返さずに四脚のマキナに乗り込み、屋敷を出て行った。


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