追う者は
老翁がその家を見つけたのは、ジュードが28号に乗ってから暫くした後のこと。片腕に巻いた石が示した場所は、スラムの中でも一際目立つ二階建ての家だった。彼が守ろうと誓った少女が、ここにいるはずだった。
階段を上がり玄関に立つと、城の警備兵と同じ姿をした男が二名伸びていた。不可解ではあったが、とりあえず石に従って部屋に入る。
「お嬢様!」
部屋はもぬけの殻だった。潜んでいるかもしれない敵に警戒しながら、奥のドアを開ける。寝室のようだが、ベッドが大きく動かされ、床には穴が開いている。随分と荒れた様子だった。
「……!」
ベッドの横に光るものがあった。彼が少女に渡した石だった。
「お嬢様! いらっしゃいませんか!」
怒号だけが虚しく響く。ここに少女はいないらしい。
突然、遠くから震動が迫ってきた。夜の静寂を破る、蒸気機関の機動音。窓を見遣ると、二機のマキナが家の横を通り過ぎていた。デュオマキナでは見なかった武骨で重々しい姿。軍用機のようだ。
(……この魔力はっ!)
悪寒が老翁の背筋を走る。マキナの向かう先に、膨れ上がる魔力を感じた。この土地に似つかわしくない、柔らかで豊かな、それでいて大きな力。三日前のデュオマキナの事件を思い出す。この感覚は間違いない。
「お嬢様! いけませんっ!」
石のペンダントを外しているということは、彼が施した守りが消えるということだ。忘れさせていた記憶を思い出し、少女に眠る能力が働いているとすれば、オリジンに潜むヒュージマギアの人間に気取られる。
マルボルは、床を突き抜けた穴から外に出て、魔力の発生源へ急いだ。




