夜に動く人体模型 ①
まだまだ夏真っ盛りである。
蝉が鳴きじゃくり、太陽が社畜のように働いている。
ちょっとは休んだ方がええのにと思いながら私は校庭を歩いていた。
今日は登校日で仕方なく学校に来ていた。
はぁ、ほんま憂鬱やわぁ。
あれ?あの後ろ姿はユキと用務員さん?
こんなに暑いのに校庭の隅の方で真剣に話している。
ユキの交友関係の広さに最早呆れつつも何をそんなに話しているのか気になったが、私は教室に向かう事にした。
〜放課後〜
何のためにきたのかよく分からないまま放課後を迎えた。
登校日ってほんまに何のためにあるんやろ?
そんなことを考えていた。
すると、ユキが声を掛けてきた。
「なぁなぁ!
面白い話聞いてん!
ちょっと付き合って!」
面白いとかそんな期待値高めてもええんか?面白くなかったら怒るぞとか思いながら返事をした。
「どうしたん?」
「今日な、用務員さんから話聞いてんけどな。
" 理科室の人体模型 " が動くらしいで!!」
また、アホな事言い出したわ。
もう3回目やから慣れてきたわ。
どんだけ騙されるねん。
ホラーの才能無いねん、諦めてよ!
と思いつつも、ちゃんと質問してあげる。
「へぇ、そうなん。
それって骸骨のやつ?」
「そうそう!
あのよく出来た骸骨のやつ!」
よく出来たってなんやねん。
骸骨評論家か!
「それで用務員さんは何て言うてたん?」
「なんかな用務員さんが言うには、昨日の夜巡回の担当やったらしいねんけど、その時に理科室の窓辺に人体模型っぽいのがニュッと顔を出してて、慌てて行ったら誰も居らんかったらしい!」
「そうなんや。
それって理科系の先生じゃないん?」
「違うみたいやで!
昨日は職員会議の後、先生ら同士で飲みに行ったらしいから!」
なんでそんな情報まで生徒に流してるねん、あの用務員さん!!
用務員さんもきっと行きたかったんやろなぁ、悲しくなってきたわ。
「なるほどね。
学校の七不思議やね。」
「ちょっと!
七不思議やね、で終わらせんといてよ!!
まだ、話は続くんやから!」
終わらせてよ!
何するんよ、夜に学校なんか行きたくないで!!
「あー、ごめんごめん。
それで?」
「うん、それでな、今日うちらが学校の巡回の担当になったから!」
なんでやねん!!
おかしいやろ!
生徒に巡回させてどうするねん!
「そんなん先生が許してくれへんのちゃう?」
「今日の巡回の担当がうちらの担任やねんけど、今日は用事があるから変わってくれって言われてん。」
あの担任許すまじ!
どうせ飲みに行くだけやろ!用事って!!
仕事しろ、仕事を!!
「そうなんか。
担任の用事って何なんやろ?」
「んー、よく分からんけど、今日こそ落とすとかアイちゃんにドンペリ入れるぞとかブツブツ言うてたわ!」
完全にキャバクラに行く気やないか!!
教師としてあかんやろ!!
「分かった。もういいよ。
ほんなら今日の巡回一緒にがんばろか。」
「さっすがー!
ありがとう!!」
ほんまに、いつも何でこんな事になるんやろ、、、。