異世界へ続く怪談
やっとこの日を待ちわびていた。
ついに夏休みというお昼に起きても誰も何も言わない素敵な日々が始まる。
夏だからって海に行ったり、お祭りで花火観るなんてそんな面倒臭いことはしない。
楽しいボッチライフを過ごそう!
そんなことを考えながら校長先生のありがたいお話を聞いていた。
ふと、横にいたユキを見るとまた真剣な顔をしている。
あのアホのことだからどうせ寝てるんやろなと思ってたのに。
またしょーもないこと考えてるんやろなあ。
~放課後~
「ユキ、どしたん?」
「あ、うん。ちょっとね、、。」
ユキから歯切れの悪い返事が返ってきた。
また悩み事か。
「ユキらしくないで、何かあるんやったら言うたほうがええよ。」
「実はな、相談があるんやけど、、、」
やっぱり来たか。
なんやねんこのくだりは、デジャブかよ!
「どうしたん?」
そう思いつつも優しくユキに尋ねた。
「実はな、行きたいところがあるねん!」
「そうなんやぁ。どこに行きたいん?」
どうせ、海とかやろ。
ほんで、海でおぼれてレスキュー隊員に救助されるところまで読めたわ。
「うちな
異世界
に行きたいねん!!!!」
あほかあああああああ!!!!!
なんでやねん!!
一回プール入る前のあの地獄シャワーを浴びてきて!
お願いやから!!!
「とりあえず話聞くわ。」
と思ったが、冷静沈着に返事をした。
「あのさ、異世界に続く階段っていう怪談知ってる?」
何急に面白くないダジャレ言うて来てるねん!
なにちょっと照れてるねん!確信犯か!!
でも、その怪談って確か
夜中に忘れ物を取りに教室へ行き、さて帰ろうと階段を降りるが、いくら降りても1階に着かず、そのまま行方不明になってしまう。
3階建ての校舎のはずが、なぜか4階に続く階段がある。4階に行ってしまうと戻れなくなる。
wiki調べ
みたいなタイプの怪談やったよなぁ。
「知ってるけど。
それで異世界に行こうってこと?」
「そうやねん!
夏と言えば海?
ノンノンノン、ナンセンスやわ!
そんな時代は古い!
今時やったら、異世界に行くのが常識やろ!!」
真正のアホや!!!
しかも言い方なんやねん、腹立つわあ。
どこの世界の常識やねん。
「分かった、一回落ち着いて。」
一緒におったらこっちまでアホになるわ。
「落ち着かれへん!!
異世界やで!最高の夏になるで!!!」
「仮に異世界に行けたとしてもどうやって戻ってくるん?
その階段は行き先は示してるけど帰りは示してないやろ?」
「あーーーー!!!
ほんまや!!!!
どうやって帰ったらええのん!?!?」
「私は異世界に行ったことが無いから分からへんわ。」
異世界というよりも学校に囚われるって感じの怪談話やのに、なんでこんなに良い風に考えたんやろ。
ほんまに、、、。
「そうやんな!
うちの計画してた異世界旅行がぁ、、。」
旅行気分で行けるんなら誰でも行ってるわ!
何をそんなに落ち込んでるんや。
しかも、分かりやすく体育座りでいじける奴するな。
「夏休み始まったばっかりやし、海とか祭りとかに行ったらええやろ。
そんなに落ち込まんくても。」
「うう、、。
そうやね、ありがとう!
夏はこれから!楽しむ事にする!!」
単純バカで助かった。
「そうやね。」
「じゃあ帰ろっか!!」
「あ、先帰ってて。
図書館に寄るから。」
「ええー。
了解!ほんならね!」
私は夏休みの課題をしようと図書館に寄る事に決めていた。
7月中には終わらせてダラダラ夏休みを過ごしたいんや!!
〜6時間後〜
図書館って静かやしクーラー効いてるしで最高やなぁ。
しかもワークほとんど終わったし、そろそろ帰ろうかな。
外は暗くなりつつあるため、急ぎ足で校門まで向かうと、ユキが泣きそうな顔でウロウロしていた。
あの子何してるのん?
「ユキ、何してるん?」
「あ!やっほーい!!
実はな、夏休みの宿題忘れてしもてん、、
取りに来たんやけど、怖くて!!!」
明日の朝にでも取りに来ればいいのに。
ユキらしいわ。
「そうなんやね。
ほんなら一緒に教室まで取りに行こか。」
「うん、ありがとう!!」
〜教室〜
「ユキ、宿題あった?」
「あった!!
良かったぁ、盗まれたらどうしようかと思った!」
誰が宿題盗むねん!
「そうやね、見つかって良かったね。」
「うん!
そういやこの状況って異世界へ続く怪談っぽくない??」
「確かにそうやね。」
それは私も思ってたんやけど、それ以上は続けんといてよ、絶対やで、行かへんで!
フリじゃないからな!!
「なぁ、階段上ろう!」
うわぁぁあ
絶対言うと思った、絶対言うと思ったわ!!
なんで行かなあかんねん!!
「外も暗いし早く帰った方がええんちゃう?」
「ええやん、ちょっとだけ!!」
階段上るのにちょっとだけってなんやねん!
「仕方ないなぁ。
じゃあ行こか。」
「流石!!優しいなぁ、そういうところ大好きやで!!」
やかましいわ!
「分かったから。」
「ツンデレかい?可愛いのぉ。」
そのキャラなんやねん!
妙にウザ絡みしてくるユキを無視して階段に向かって歩き出した。
私たちの教室は一階にあるため、ワザワザ無駄に階段を上る必要がある。
なんでこんな面倒臭い事になったんやろ、、、。
〜階段前〜
「よし、ほんなら登ろか!!」
「そうやね。」
「ほんまに異世界に行けたらどうする?
何したい?」
アホな質問してくるなぁ。
異世界とか行きたくないし、そもそも行けへんわ!
「異世界の想像がつかへんから分からんわ。」
「想像力0か!
私はな、めっちゃふわふわのペット飼ってめっちゃイケメンが居って勉強の無い世界やと思うねん!
だからイケメンと恋するねん!」
現実世界でしろよ!
想像というよりも妄想やな。
「そうなんやね。
まぁとりあえず登ろか。」
「うん!」
〜最上階〜
「3階分階段上がってきたけど何にもないやん!
ただの教室しかないやん!!!」
当たり前やろ。
ユキは陸上部やから元気いっぱいやけど、私は帰宅部やぞ!
体力無いのに、ヘロヘロなったわ!!
「そうやね。
やっぱり異世界なんてなかったんやな。
じゃあもう帰ろ。」
「はぁ。
やっぱり異世界なんてないんか、、、!!
私の理想郷が!!」
どんだけ落ち込むねん!
喜怒哀楽激しすぎやろ!
まぁでもちょっとだけ、可哀想な気もするけどな。
「そうやな、今日は早く帰って寝よう。
それが一番やで。」
「うん、そうするわ、、、」
〜 1週間後〜
夏休みやのに部活って!!!
部活があるんやったらこの間夜に学校行かんで良かったやん!!
異世界には行けへんし部活はあるし夏は暑いしでムカムカしてきた!!
「ユキリーン!」
不機嫌に歩いていると、後ろから声をかけられた。
後ろを振り向くと、沢山の書類を抱えている同じクラスのアカリちゃんが居た。
「アカリちゃん、やっほーい!」
「ユキリンやっほーい!
ユキリンは部活?」
「そうやで!
アカリちゃんは生徒会?」
「そうなんよ〜。
生徒会室までこの書類届けなあかんのよ〜。
ユキリン手伝ってくれへん〜?」
「ええよー!ほんなら半分持つわ!」
「ありがとうなぁ。」
アカリちゃんと他愛もない話をしながら生徒会室まで書類を運んだ。
生徒会室は学校の最上階にあるため、アカリちゃんとウチはひいひい言いながら階段を登った。
「あともうちょっとやで〜。」
「うん、後一階分登ればもう生徒会室や!」
「ふふ、何言うてるん。
この学校3階建やからこの上行ったら屋上やで。」
「そうやったっけ?
忘れてたわ!」
「ふふ、ユキリンは面白いなぁ」
そんなこんなでアカリちゃんと別れ、うちは部活へと向かった。