描きたされる絵 ①
暑かった夏も過ぎ、秋になろうとしている時期。
秋には様々な秋がある。
紅葉の秋、食欲の秋、芸術の秋。
私は、断然食欲の秋派である。
紅葉は腹の足しにもならないし、絵には興味すらない。
そんな私が何故美術室にいるのかというと、相変わらずユキに付き合っているからだ。
「なぁ、まだ終わらんの?」
「まだ!
あとちょっとやから待って!
あの美術講師め!
ウチの芸術的センスが分からんのか!!」
何を言うてるねん!
夏休みの課題には絵を描けというのがあり、私も最後までこの課題が残るくらいに苦労した。
ユキも同じだと思っていたが、初日に終わらせたったわ!とドヤ顔で報告してきた時は殺意が湧いたのを覚えている。
まさか、あんな幼稚な絵を提出したとは思わなかった。
というより、思いたくなかった。
「正直、あれは無いと思うで。」
「え、なんでよ!
ピカソの絵を素晴らしく再現出来てたやん!」
どこがやねん!
ピカソのピの字もないわ!
ピカソ様に謝れ!!
「ユキは一回ピカソの絵をググった方がええと思うわ。」
「厳しいなぁ、、、
そんなに言うなら手伝ってよ!!」
なんでやねん!
美術室まで付き合ったってんねん!
それで我慢し!
「ユキよりはマシやけど、私も絵下手やから。」
「ユキよりってなんなんよー!!
ウチのピッカピカに輝いた芸術的センスが目に入らないか!!」
そう言って、先程から描いていた絵を見せてきた。
「これ何?」
「ゴッホのひまわりやで!
夏らしくてええやろ?」
どこがやねん!
ラフレシアみたいになってるやないか!
おまけに今は秋やねん!
夏らしさ出してこんでええねん!
「ノーコメントで。」
「せめて、コメントはしてよ!!」
これ、美術の先生許してくれるんやろか?
残念なユキの芸術的センスを憐れみながら、いやむしろこれを評価させられる先生に憐れみながら、ユキを見た。
「そんな憐れみの視線は要らんねん!
なんで誰も分かってくれへんねん!」
ユキは怒りながら絵の続きを描き始めた。
私は暇だったので、美術室を見渡した。
美術室には、授業で描いた絵や美術部の子達が描いたであろう絵が並んでいた。
やっぱり美術部の子の絵は上手やなぁ。
今日は本当なら美術部の部活が行われる予定だったらが、ユキの居残りのせいで部活が中止になったらしい。
なんて無駄な事を、そう思いながらユキに話しかけた。
「ユキ、この絵見て。
美術部の子が描いたんやで。」
「どれどれ?
芸術の爆発と恐れられたユキ様が直々に評価してやろう!!」
何言うてるねん!
評価する方が投げ出す、地雷源みたいな絵を描くくせに。
「これ。」
私はユキに一枚の絵を見せた。