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誰も知らない伴奏者 ④
僕は、もう一度ピアノを弾こうと鍵盤に手を伸ばした。
あれ?ドアが開いてる。
建て付けが悪いんかな、そう思いながらドアを閉めた。
さっきから弾いていた "別れの曲" について考えた。
この曲は姉さんと一緒によく弾いていた。
僕はピアノ、姉さんはバイオリンを。
僕がええ曲やね!姉さんと弾くからええんよね!
と言うと、姉さんは照れたように
やかましいわ!
べ、別に照れてるんじゃないんだからね!
勘違いしないでよね!
突然のツンデレw
と冗談を言いながら笑いあっていた。
なのに。
僕はこの曲をしばらく弾くことが出来なかった。
どうしても、姉さんを思い出してしまうからだ。
姉さんが居ないとこんなにも悲しい曲だったなんて知らなかった。
この学校では僕以外誰も知らない伴奏者を思い出しながら、もう一度ピアノを弾こうと鍵盤に手を伸ばした。