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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

鳥はどこだ?

作者: リエッタ

 つい、「どうしてこうなった」とつぶやいてしまった

 そう、始まりは1件の依頼を受けたことから、始まった

 

 冒険者ギルドに張り出されている依頼票の中で珍しいものが張り出されていた

 依頼内容としては護衛になるのだが、良くある街への移動のための護衛ではない

 なにやら、都会の方からワザワザ、こんな田舎に来て、バードウォッチングをしようという不思議なツアーの護衛だった

 本当にご苦労なことです

 勿論そのツアーにも護衛はいる……なので、おおよそは案内人に近いものではないかと思われる

 どうもちょいと遠目の森に行くということで、土地勘的なものから、俺が選ばれてそのツアーの護衛兼案内人を始めた

 森までは馬車の上に乗って移動

 とても楽チン

 森の中からは、護衛現地組……まぁ俺らが鳥がいそうな所を護衛しながら移動をするという動きだったんだが……森の中に入った瞬間に異変に気づく

 どうも静か過ぎる

 普段は風が撫ぜ、小鳥が鳴き、木々がざわめく、そんな極々ありふれた森のはずなのに……

 護衛現地組のみんなに真っ先にこの異変について聞いてみたが……残念、脳筋でした

 あまり森での生活を行ったことがない、普通のパーティでした

 まぁ俺みたいなおっさーんは、薬草採取とかやっているからどうしても森に入るけれど、若いと討伐依頼とか多いよね?

 若いっていいなーー

 ……ってか何でこの依頼を受けたんだよ!?

 ……あー、あー、受付の姉ちゃん……このパーティだけだと不安だから俺に仕事を振ってきたな??

 うん、経験が圧倒的に足りない感じだわ

 ハーレムパーティ良かったですね

 なんかもうこのパーティには諦めた

 ってことで、護衛都市組にこの異変を伝える

 

 「びびりおつ」

 「やだー、なにそれうける~~~~wwww」

 「きゃー、こわい~~~~~www」

 「おっさん、そんなびびりだから、いまだにそんな年でCランクなんじゃねぇの??www」

 「ボッチが祟って、びびりになったのか?www」

 「まぁ大丈夫だ、おっさん、何が出ても俺らがやっつけてやるからwww」

 

 ……血の気の多い若者が多いでつね

 …………まぁ何か出たらお言葉に甘えましょう、護衛都市組にお願いしましょうか

 自信満々っぽいですし

 

 

 ……と思っていた時期が俺にもありましたよ

 まぁびびりの俺と違って、勇敢なのでしょう?

 ……でもなー、あれは無理無謀ってもんでしょう?

 先行して、鳥を探していたら、はい、見つけちゃいました

 ドラゴン様です

 最強と名高いドラゴン様です

 即座に悲鳴を上げなかった俺、偉い

 

 もしかして、これは都市的ジョークなのかなと思って訪ねてみる

 バードウォッチングのバードってドラゴンかい??HAHAHA

 羽が生えていれば何でも鳥ということなのかな?HAHAHA

 都市の皆さまはそんな認識で遊びに来たのかな?HAHAHAって

 

 ツアー参加客は全員首を振る

 ですよねー!?

 ドラゴンみたい人間なんていませんよねー

 幸いにも眠っていらっしゃるので、帰りましょう!!!!

 って、提案したら、ぶーたれやがった

 依頼者様が………………

 

 「何のために、お前らを雇っていると思っているんだ

 ドラゴンがなんだ

 さっさと退治して、バードウォッチングをするぞ」

 

 ……いや、いやいやいや、最強と名高いドラゴン様ですよ!????

 …………いやいやいやいや、何でそんなにやる気なんですか??護衛都市組の方たちは??

 

 「寝ているならチャンスじゃねぇか」

 「びびりおつ」

 「俺たち【白銀の剣】の踏み台に相応しい相手」

 

 …………【白銀の剣】ってただのランクCじゃねぇか!!!!

 ドラゴン様の相手をするのってどれだけやべぇのか知っているのか??

 昔の剣聖(ランクSS)と名高い人間が戦って漸く互角だぞ??

 最近では【愚かな漢達】(ランクS)が20人越えで漸く勝てたぐらいだぞ??

 

 「大丈夫、大丈夫、おっさん、俺らはそいつらより強いから」

 

 ………………なんでそんな自信が出てくるの?

 おっさん、まじわかんない

 …………って、護衛現地組ィィッィィイィ、おまえらもかぁぁぁぁぁ!!!

 なんでぇぇぇ????なんで、そんなに皆、血の気が多いのぉぉぉぉ!!!??

 

 「いくぞぉぉぉ!!!!」「「「「「「「「「「おぉぉっぉぉぉ!!!!!!」」」」」」」」」」

 

 なんで寝た子を起こすような声を出すかなぁぁぁぁぁ???

 ツアー客はワクワクしているし

 ドラゴン?退治を間近で見られて興奮しているのかな??

 でも負けたらこちらまで被害にあうぞ??

 ささ、逃げる準備を………………いやですか?そうですか?

 あ、食べられている…………あ、燃やされている

 踏み潰されている、吹っ飛ばされている、咆哮だ……15人はいた護衛都市、現地組が残り3人、あ、逃げ出した

 …………ってこっち来んなよ!!!!!

 てめぇら腐っても護衛だろ??別の場所に逃げ込めよ!!??

 あぁ見つかった、全速力で逃げ…………ツアー客がもういないんですけど???

 …………1人やられた時点でもう逃げてた??

 俺置いて???

 薄情な………………

 まぁでも護衛だし…………やるしかないか…………ドラゴン様の足止めを…………

 何やら理由があるのかこっち側に逃げてきたのに追いかけてこない…………が、気分が変わって村に攻め込まれでもしたら大変だし

 …………はぁ、ホントに鳥はどこだ??

 

 先ずは武器を全部地面に置く

 ドラゴン様との戦いになったら、このクソ安い武器ではどうすることも出来ないし

 まずは敵意がないことを示す

 そして笑顔で話しかける

 

 あーあー、人間の言葉がわかりますか?ドラゴン様?お話がしたいんですが、いいですか?

 『わかるぞー、いいぞー』

 ありがたき幸せ、伺いたいことがあるのですが、何故先ほどの人間を追わずに見送ったのですか?

 『???人は羽虫に対して躍起になって殺すそうとするのか?

 別に人は大してうまくもないし、殺しても何の益もない』

 あー、ドラゴン様にとって、そんな感覚ですか

 それにしても人間は美味しくないですか?

 『うむ、脂ぎったヤツか骨ばかりのヤツ、先ほど食べた人間もそんなのばっかりだったぞ?

 しかもどぎつい匂いも放っていてつい焼いてしまったが、匂いが混ざって碌なことにならなかった』

 ふむふむ、ちなみにドラゴン様はどのようなものを好んだりします?

 『最近だと、赤い実の果実だな』

 こんなのですか?

 『おおーそれだそれだ……ん?くれるのか?』

 まぁ、人間が迷惑をかけたので、お詫びということで……

 『なら、ありがたく……うむ、これだこれ、あー、無駄に脂ぎったものが洗い流されていく~』

 ……普通に食べたけど、毒とか警戒しないの?

 『我々にそのような陳腐なもの効くか』

 ………………マジで?あれ?【愚かな漢達】が過去にドラゴン討伐した時は毒が効いたとかって調書が残っていたんだけれど……

 『それはきっとドラゴンじゃないぞ、多分

 ……ワイバーンを間違えたか……または特異点か……』

 …………特異点?

 『世界には魔力スポットなるものがあってだな、魔力の吹き溜まりがある

 その魔力スポットに身を何年も置いておくと、大抵は死ぬ

 だが、極稀になんだが、それに適応するやつらもいる

 ……その場合は進化するらしい

 その場合、例えばワイバーンとかだったら、ドラゴンへの進化が行われる、これを我々は特異点と呼んでいる

 ……ただ、ワイバーンの特性は残っているから、毒でも効いたんじゃないか?』

 …………なるほど、ありがとうございます、あ、こちらの果実もいかがですか

 『うむ、いただこう』

 ……ちなみにドラゴン様に毒が効かないのを試してみたいのですが、よろしいですか?

 『うん?別に構わんが……』

 ありがたき、こちらに蜂蜜飴玉があります……これに毒に付けて……こちらを舐めてもらってもよろしいですか?

 『ふむ……この姿だと食べづらいのぅ……』「よっと」

 ……よ、幼女???

 「まぁドラゴンとして生を受け300年……まだまだ若輩者だ

 人として換算するなら10歳ぐらいか?それより飴玉をよこせ

 ……毒の部分が不味いのぅ…………蜂蜜の甘さを打ち消す不味さだのぅ」

 …………幼女に毒を舐めさせるとか……なんだこの半端ない罪悪感…………

 「ん?別に気にすることないのに……」

 ……いやー、一応これでも、ちっちゃい子に生きるための術も教えたりしているから…………

 うわぁぁ…………なので、飴舐め終わったら、口直しにこちらの果実もどうですか?

 「うむ、いただこう」

 本当に毒が効いている様子がないですね…………流石です

 「だろだろ?じゃから、お主の言っていたドラゴンは所詮もどきなのじゃ」

 みたいですねぇ……ちなみにまた、教えてもらいたいことが有るのですが……

 

 

 こうして、俺はドラゴン様からいろんな情報を貰った

 対価として差し出したのは、人間が作るご飯

 マジックバックに入れてあった、各所名物、また時には食材から自分が料理をしたり

 代わりに得た情報で多分俺は一攫千金を得られると思う……生きていればだが……

 

 そもそもドラゴンは巣穴に籠もることがほとんどで、このように外に出てくるのは珍しい

 さらに、こんなに友好的なドラゴンはとても珍しい

 基本的には五月蝿くしなければ、襲うこともないから、静かに立ち去ることをオススメだと……

 んで、長命で大体2000年程度は生きることが可能

 人の姿に変身することができるんだが、その姿は30年で大体、人として1歳分年が上がるイメージである

 人の姿に変身をしたら、体重は大体年相応っぽい

 ……このドラゴンの寝相が非常に悪く、俺の上に乗っかってきた……重さが一緒だったら、一発でアウトだったぜ

 

 あと、ドラゴンには毒だけじゃなく、麻痺、酩酊など状態異常が起きない

 ドワーフ製『竜殺し』アルコール度数90%超えのやばいのもなんのその……とりあえず生きてドワーフの所まで行けたら文句を言っておこう

 ……それにしても幼女に麻痺薬やら、お酒を飲ませるのは犯罪臭がプンプンだったぜ

 そして面白いことにどうもドラゴンの血に状態異常回復の効果があるっぽい

 『竜殺し』飲んで完全に酔っ払った俺にドラゴンの血をちょこっと飲ませてもらったら、一発で正常状態になった

 まぁ血を舐める為にちょこっと指から血を出してもらったわけなんだが……幼女の指を舐めるおっさん……犯罪臭がプンプンだったぜ

 ちなみに血を飲むのにこちらのダガーだと傷一つつかなかった……幼女に向けてダガーとか……もう犯罪臭がプンプン

 人間形態といえど、防御力はドラゴン並……ドラゴンの牙ってか歯で血を出してもらいました

 種族によるものではなく、血によるものだからドラゴンに状態異常が起きないのが普通

 状態異常が起きたらそれは特異点

 ドラゴン研究の常識が変わるぜ……ドラゴン研究者にこの情報を売ってお金をふんだくろう……生きて帰れたら

 

 

 さっきから悲観的なことを呟いているが……まぁあれだ……マジックバックに入れていた食料が尽きた

 ……うん、よくもった方じゃないのかな?ドラゴンの食事量から1週間もったって

 1か月分以上の食料を持ち歩いていたはずだから……ドラゴンちゃんの食事量は大体通常の俺の4倍ぐらいかなー

 …………食料がないから、俺食べられるかなぁ

 ……情に絆されてくれないかなぁ

 

 

 ……ってことでもう食料はありません、ドラゴンちゃん

 「………………」

 そ、そんな目で見られても…………ないものはないのです

 『…………』

 俺を食べる前に1つ面白い提案をしたい

 『ふむ、なんじゃ?』

 人間の生活に紛れ込んでみないかい?

 美味しい料理がいつでも食べられるよ?

 こんな不味そうなおっさんを食べるより、人間の生活に紛れ込んで、美味しいものを一杯食べてみないか?

 『おっさん、聞きたいことがある』

 なんですか?

 『おっさんがアンマリ食べなかったのって……』

 自分の肉を落として不味そうに見させるのと、ドラゴンちゃんに一杯食べさせて人間の価値を上げるのと……後はやっぱりちっちゃい子には一杯食べて欲しいからねぇ

 そして、何より美味しそうに食べる顔はやっぱり見ていて気持ちがいいもんだ

 『……おっさん、馬鹿だな~……最後の晩餐で一杯食べればいいのに……』

 出会った時は絶望にさらされたけれど、襲われなかった時点で、生き残る可能性に全振りですよ

 「ま、人間の思い通りに動かされるって言うのも癪だけど……今回はおっさんの提案に乗るよ

 ……ホントに一杯美味しいものを食べさせてくれるんだろうな?」

 モチロン

 

 

 こうして、後に伝説となるおっさんと幼女のパーティが出来上がる

 

 

お読みいただきありがとうございました

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