ストーカー 後編
藤田朱莉は最近悩んでいた。
最近変な客が毎日の様にやって来ては、時々変なお土産やお菓子を無言で渡してくるのだ。
彼のただならぬ雰囲気から、断るの怖くいつも受けとってしまうせいか、最近ますますエスカレートしてきている気がする。
私が知っている限りだと、あのお客は私が1人の時に現れるので最近は、バイトに行くのが
なんだか怖い。
藤田「あまり考えないようにしないと!さぁ、今日も頑張ろう!あっ、エレベーターが上がってくる、今日はあの人来ないといいな〜」
藤田「いらっしゃいませ〜」
香川は藤田さんを見つけると、ニヤニヤしながら勇み足で受付へ向かって行った。
藤田(うわっ、いつもの変な客だ。またドーナッツの箱を持ってるし。)
香川「えへっ、エヘエヘ、4人でお願いします。あっ、あの、あのっ、こっ、これ、これ、フヘヘへ、どうぞ。」
香川は挙動不審になり、ドーナッツの箱を渡す。
3人はその光景にドン引きしている。
藤田「ありがとうございます。では、3階の304号室になりますね。」
藤田(やっぱりこの人なんか怖いよ。こんな何入っているか分からないドーナッツなんて食べれないよ。)
香川は満面の笑みを浮かべ、受付を後にした。
香川「さぁ、304号室だって。行こうか」
湯澤「あっ、あぁ」
4人はエレベーターに乗り込み3階の個室へ向かった。
中村「いつもあんな感じなのか?」
香川「あぁ、そうだよ。藤田さんドーナツ喜んでくれたかな〜」
井上「俺が藤田さんだったら絶対捨ててるぜ、あんな得体の知れないドーナツ」
香川「いや、それは井上の話だろ!藤田さんは喜んでくれてるし!」
香川は聞く耳も持たない様子で曲を入れた
香川「さぁ、みんなも歌おうぜ!」
湯澤「あぁ、そうだな」
香川「ところで、お腹空かないか?俺はご飯を頼むけど、皆は?」
中村「もしかして焼きおにぎりを頼むのか?」
香川「あぁ、よく分かったね。」
中村「一応、言っておくけど藤田さんの手握りじゃなくて冷凍だと思うぞ!」
香川「わっ、分かってるよ!それよりさ、焼きおにぎりを持ってきてくれた時に告白しようと思うんだ!」
香川は、取り繕う様に言った。
井上「おっ、とうとう告白か!君ならやれるさ!」
内心では無理だろうなと思いながら井上は煽った。
香川「そうだよな、じゃあ、さっそく注文するぜ!」
香川は受話器を取るとフロントに電話を掛けた。
藤田「はい、こちらフロントです。」
香川「あっ、あのっ、やっ、焼きおにぎりを握ってください!」
藤田(うわっ、あのお客さんだ。毎回焼きおにぎりばっかり。あーあ、持ってくの嫌だな。でも今日はお友達も一緒みたいだし、大丈夫かしら。)
藤田「かしこまりました!出来上がり次第お持ちいたしますね。」
藤田は冷凍庫から焼きおにぎりを取り出し電子レンジに入れた。
その頃カラオケルームでは、香川がここ連日のカラオケ通いで編み出した、歌いながらデンモクをみないで次の曲を入れるというなぞの技を披露してた。
井上「いや〜、香川くん器用だね。おっ、来たんじゃね、焼きおにぎり。」
藤田「お待たせしました、焼きおにぎりになりますね。」
香川「あっ、あの、代 よっよっよかったらこっ、これ、これに連絡してください」
香川は震えながら、可愛いキャクターが書かれた封筒を渡した。
藤田(えっ、なんで?お友達も来ているのにこんなの普通渡す?断るのも怖いし受け取るしかないかな?)
藤田「ありがとうございます。それでは失礼します。」
香川はニヤニヤしながら藤田の様子を見ている。
香川「さぁ、手紙も渡したし、この手作り焼きおにぎりを食べたら帰ろう。」
中村「だから、冷凍だろ!」
香川が焼きおにぎりを食べ終えると一同はカラオケルームを後にした。
湯澤「ところで手紙にはなんで書いたんだい?」
香川「それは秘密だよ。連絡来るの楽しみだなー。」
湯澤「なんだよ、気になるな〜」
井上「てか、返信くる前提かよ!」
この手紙は夜、帰宅後に読まれることになる。
藤田「変なお客に手紙貰っちゃったけど、どうしよう。一応読んでみようかな。」
〜 朱莉ちゃんへ
いつも笑顔が素敵ですね(笑)
初めて見たときからずっと、好きでした!
朱莉ちゃんが近くのスーパーで時々買い物をしていること、お母さんと妹さんの3人で暮らしていること、彼氏はずっと居ないこと、俺は朱莉ちゃんのことならなんでも知っています。あっ、妹さん、朱莉ちゃんに似てて可愛いよね(笑)東中学に通っていて部活はテニス部に入ってるんだよね。俺もテニス好きだから今度3人でテニスとか行きたいな。朱莉ちゃん、彼氏いないみたいだし、俺と付き合おう!お前のことは俺が守ってやるよ。だから、ここに連絡しろよ!愛してるぜ!
香川より〜
藤田「ひっ!」
怖くなり、藤田は手紙を破り捨てた。
急いで2階に上がりカーテンを開け、辺りを伺うが不審な人影は見当たらなかった。
藤田はバイトを辞めることを決心した。
その頃香川は寝ないで、藤田からの連絡が来るのを待っていたが連絡がくることは永遠になかった。