ストーカー 前編
香川は週に5回程、カラオケに通っていた。
ここのカラオケボックスの店員さんである、藤田さんが目当である。
香川は、このカラオケボックスに来ると毎回、焼きおにぎりを注文する。
理由は、藤田さんが手握りで作ってくれているんじゃないかという妄想である。
仲間内では、この焼きおにぎりに局部を入れて自慰行為をしてるんじゃないかという噂もあるがこの事実は本人のみぞ知るというものだ。
ちなみに、ここの焼きおにぎりは、手握りではなく、冷凍物だが、香川には知るよしもない。
最近、香川はカラオケボックスの近くのスーパーで偶然、藤田さんを見かけ、この時間にスーパーに張り付き、藤田さんを探している。
ここまでのことをやっていながら完全にストーカーの自覚が香川にはない。
その頃学校では…
中村「最近、香川の奴、講義バックれてカラオケばっか行ってるけどヤバいよな!」
田宮「あぁ、奴は病気だぜ!ああいうのを真性のストーカーって言うんだろう!犯罪にならなきゃいいがな!」
井上「やっぱ、ヤバいかな?面白そうでさ、ついつい、もっと頑張るように煽っちまってさ、今度連絡先交換するとか張り切ってたけど、大丈夫だよな?」
田宮「おい!奴は何をしでかすか分かんない、あんまり煽るんじゃない!」
井上「すまん、すまん」
湯澤「そういえば、焼きおにぎりでアレをしてるって話は本当なんかな?」
田宮「十分ありえそうだぜ!」
井上「おっ、グループに噂の香川くんから、連絡が入ってるぜ!明日、連絡先を渡すから誰か一緒にカラオケ行こう、奢るからだってよ。」
田宮「俺はヤベエことに巻き込まれたくないからパスで」
中村「俺は面白そうだから行くぜ!奢りだし!」
井上・湯澤「俺も!」
中村「まさよしさんにも声を掛けてみるか!じゃあ、明日はカラオケ屋に直接集合で」
湯澤「フヒヒ、藤田さんって可愛いみたいだし楽しみだな!」
井上「あぁ、俺も見るのは初めてだから楽しみだぜ!あっ、まさよしさんから行かないって連絡が来てる、残念。」
そして、当日カラオケ屋の前に集まると、香川はドーナッツの箱を持って待っていた。
井上「おっ、そのドーナッツ俺たちにかい?サンキュー、ドーナッツなんて久しぶりだなぁ。」
香川「いや、違えよ、これは藤田さんへの差し入れ、毎回いろいろ渡してるんだ!」
湯澤「へえー、どんなの渡してるの?」
香川「この前はキーホルダーあげたよ。ほらこれ写真。」
そこには、木彫りの謎のキーホルダーが写っていた。
中村「いや、これ気持ち悪いだろう!てか今日、藤田さん出勤なの?」
香川「うん、通いまくって藤田さんのシフトは殆ど把握してるんだ!」
中村・井上・湯澤(こいつ、ヤベェ…)
香川「さぁ、中に入ろうか!」
4人はエレベーターに乗り込み、2階の受付へと向かった。