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アンドロイド日和シリーズ  作者: おとなしさん
アンドロイド日和 番外編〜日和が生まれて1年間〜
9/10

アンドロイド日和番外編1〜日和が生まれて1年間〜(後編)

ある日研究所にやって来た少女、日和。最初は人見知りをして私とも話してくれませんでしたが、私が実験に連れて行かれる時、彼女はものすごい怖い表情と声色で、「友達はずっと一緒」と言って、私を止めにかかりました。あまりの恐怖に、私は初めて涙というものを流しました。そして晴れて友達になれました。

 日和と私が親友となり、半年。


「あなた、これはズボン、着るものじゃないよ。」


「え、そうなんですか。穴が二つしかないのでどうすればいいのかと……」


服の着方を教えてもらったり。


「ほら、ここにキュウリがあるでしょ。こうやって包丁を振り上げて、思いっきりストンと切るんだよ。」


「なるほど、やってみます……えい!あ、イタタ。指から赤い……血っていうものですか?アンドロイドなのに……」


「いけない、止血!」


料理の仕方や血の止め方。彼女はいろんなことを教えてくれました。そしてなにより、楽しいんです。気づいたら、彼女は私の憧れ、ずっと一緒にいたような、そんな気さえしました。


 そんなある日。彼女が暗い顔をして私のところに来ました。


「こんにちは、日和ちゃん。」


「うん……」


私は心配になりました。


「どうしたんですか、顔が暗いです。」


「……実は、私、ここを離れることになったの……」


「え、それって……」


「ごめん、両親の仕事が落ち着いて、また都会で一緒に住むことになったんだ……」


「うそ……ですよね……」


「ごめん」


言葉が出ませんでした。親友、いやきっと私の中ではその範囲を超えていたように感じます。そんな彼女がいなくなるなんて信じることができませんでした。


「前、友達ならずっと離れないものだって言ったけど、私が破っちゃうんだ。ごめん……ッ……グスッ……本当に……ごめん……」


私も、悲しくて、悲しくて、別れるのが辛い。けど、私はアンドロイド。そう、アンドロイド、なんです。誰かが決めたことは、絶対に守らないと……でも、もう……


「日和ちゃんッ!」


「へっ」


気づいたら、私は彼女に抱きついていました。そして、目からまた水滴、もう分かります。涙です。大粒の涙が、一気に溢れ出たのです。


「日和ちゃぁぁん……!いや……いやよ……別れたくないです……グスッ……一緒って……約束……」


私は泣き続けました。


「グスッ……ごめん……ごめんなさい……ごめんなさい……ずっと、一緒なのに……」


そして私たちは抱き合ったまま泣き続けました。お互い顔は見合わせていません。どんな表情かも分かりません。前も歪んで見えます。ただ、私たちは別れなくてはいけないという事実に対し、深い悲しみに襲われました。


 そして大体、抱き合ったまま1時間近く泣き続け、涙が止まり、私たちは抱き合うのをやめ、お互いの顔を見合いました。


「泣いたね。」


「そうですね。」


「ね、私はあなたのこと、親友だと思ってた。」


「え、思っていた……?」


「うん、でも少し違う気がするんだ。」


「どういうことですか?」


「……妹……かな……背はあなたの方が絶対高いのにね。」


「……妹……」


「あなたがいてくれて、楽しかった。いろんなことを教えて、いろんなことをして、本当に、楽しかった。」


この時、私は社長が言っていた、妹の意味、これの真意かは分かりませんが、少しわかった気がしました。


「日和ちゃん……私も、一緒に入られて、本当に嬉しかった。だから……お願いがあります。」


私はそう言って、姿勢を整え、真面目な顔で言いました。


「私に日和ちゃんの名前をください。」


「……へ……」


なんでしょう。変なことを言ったのか、沈黙が流れました。でもそんなもの、私たちにかかればすぐに終わってしまいます。


「ふふ……いやや、まさか真面目な顔で言うから私もつい真面目に聞いちゃったけど、名前が欲しいって……ハハ。」


「もう、私は真面目に言ってるんですから。」


「ごめんごめん……いいよ。あなたは今日から日和。私と同じ名前ね。ずっと一緒、お揃い。」


「はい!」


このあと、日和は社長に連れられて、研究所を後にしました。私は笑って去っていく彼女を、ドアの外に出るまで見送り続けました。



 これが私がお兄ちゃんに出会う前にあった出来事です。彼女との日々は本当に楽しかった。私が妹ですので、彼女はお姉ちゃんですね。さて、この番外編ですが、本編的にはこれでおしまいです。ですが実はまだ続きがあります。考えてみてください。私がお兄ちゃんのところに来た時、私は服の着方もわからないぐらいの無知になっていました。実はこの後大事件が起こってしまいます。何があったのか。それは本編second storyをまたいだ後の番外編で、お話ししますね。



end(続く)

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