女王と奴隷
目がさめると、そこは理科室だった。
保健室のシチュエーションは全部僕の夢だったわけだ。
局部にはまだ鈍い痛みが残っている。
頬はまだヒリヒリする。
そして、なぜか全身も痛い。というか冷たい。
その理由を知るのには時間を要さなかった。
「あら、お目覚めかしら?駄豚くん?
理科室のベッドの寝心地はどう?」
「う、ううっ…。」
そう、僕は理科室の長机の上に寝かされていた。
しかもパンツ一丁で。
さすがにひどすぎる…。もう嫌だ、逃げて家に帰ろう…。
さっき理想的な結衣ちゃんの夢を見てしまったせいで、残酷な結衣女王様を受け入れられなくなっていた。
僕は起き上がろうとする。
しかし…。
「って、あれっ?動けないっ…!」
「あははっ。感謝しなさい。お前が意識を失っている間に、うちがわざわざお前の全身を拘束しておいてあげたんだよっ☆
動けないから、もっと良いお仕置きができるねっ!」
そう言われてようやく気が付いた。
僕の全身が理科室の長机にロープで巻きつけられている。
「そ、そんな…。結衣様、お許しください!」
「はぁ?お許しくださいって、何?
まだ十分にお仕置きできてないんですけど〜!」
「いや、でも、僕意識を失って…。」
「そうだね。軽く叩いただけで意識飛んじゃったね(笑)。お前、弱すぎるでしょ。意識飛んでる間、うちがわざわざお前を拘束してあげたんだから、ありがたく思いなさいっ☆」
「ううっ、まだお仕置きするんですか…?」
「当たり前じゃん!うちがどれだけお前のために時間使ったと思ってんの?このまま家に帰すわけないじゃん。これからが本番だよっ。さっきは最初だから拘束し終えるまで待ってあげたけど、今度は意識飛んだら冷水かけてすぐ覚まさせるから。うちが満足するまでじっくり調教してあげる♡」
「れ、冷水…!」
この冷えた理科室の長机の上で、さらに冷水。
いくらなんでも過酷すぎる。
「い、意識が飛ぶようなお仕置きはご勘弁ください!冷水は…、きついです。」
「うっわ〜。やっぱお前、生意気な豚だね。豚がうちに文句言うなんて、どういうことだか分かってんの?」
「す、すみません!でも初めてだから…、その…。」
「ちょっ、その言い方キモいんですけどww
まあいっか。さっきみたいに噛んで起こしてあげる。
冷水かけたら後処理めんどくさそうだし。」
え、さっき噛んで起こしてくれたって、もしかして最後の噛みつきは夢じゃなかった…?
「何またキョトンとしてるの?思いっきり噛んであげたじゃん。お前、噛まれるの好きだからうちが噛んだらお仕置きじゃなくてご褒美になっちゃうよね。
だからその分、うちも7割くらいの力出しちゃった☆
思いっきり噛むとストレス発散できてきもちい〜!」
そういえば、左腕の付け根がものすごくヒリヒリしている。理科室の机にほぼ全裸で縛られている状況に驚きすぎて気付いていなかった。
首は動かせるから左腕の患部を見てみると、そこには結衣様の特大の歯形がくっきりと刻まれている。
僕の腕の皮をたっぷりと口に含み、全力で噛んだのだろう。上下左右とも6番までみっちりと歯形がついている。
あまりにも深く、穴が空く寸前という感じだ。
実際、犬歯から小臼歯のあたりは血が滲んでいた…。
やはり噛みつきだけは夢ではなかったのだ。
「ゆ、結衣様!昨日の刻印の儀式の時は本気じゃなかったんですか?」
「うん、そうだよ。いくらドMのお前でも、いきなり思いっきり噛んだら泣いちゃうかと思ってさ(笑)
うち、噛む力かなり強いから本気出したら血が止まらなくなっちゃうし。
小学生の時うちのこと馬鹿にしてきた男子がいて、ムカついて思いっきり噛んでやったら肉が千切れそうになっちゃって、後がめんどくさかったんだよね〜。
だから昨日の刻印だけじゃなくて、さっき起こした時のご褒美もまだ本気じゃないよ?」
な、なんですとっ!
「す、すごい…!こんな可愛い女の子にそんな噛む力があるなんて!」
まずい、ついつい声に出して言ってしまった…!
「ちょ、お前、声に出てるよ(笑)
見た目は可愛い女の子でも、今はあんたの主人。
わかってんの?」
「ごめんなさい!分かっております!」
「やっぱお仕置きしなきゃねっ☆」
「は、はい…!お願いします‼︎」
もう調教していただくしかない。
結衣様に奴隷にされて以来、女王と奴隷という形であっても、ずっと片想いしてきた結衣様に急接近することができた。
なのに僕は失態だらけだ…。
急激な出来事に心が追い付いていかず、妄想だと思い込んだり、ご都合主義な夢を見ちゃったり、結衣様に下心を隠せないことを言ってしまったり。
こんなんじゃダメだ。
もう覚悟して、徹底的に調教していただこう。
僕は結衣様の奴隷になる。
身も心も、結衣様の奴隷にしてもらうんだ!