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突然の呼び出し

神無月結衣はクラスで1番可愛い女の子だ。

少なくとも僕はそう思っている。

小さな顔につぶらな瞳、黄金色に輝く肌。

背は低めだけど、天真爛漫な彼女には似合っている。そして何よりも目を惹かれるのは、綺麗に並んだ真珠のような白い歯だ。

僕は彼女がその歯をニッと出して満面の笑みを浮かべているのを見て以来、彼女の虜になってしまった。

彼女の可愛さは容姿だけではない。

前述したように、彼女は明るく元気な女の子なのだ。しかも性格も良く、面倒見がいいから友達も多い。

勉強もスポーツも万能で、完全無欠な美少女だ。


僕は、というと…。

勉強が得意なくらいで、あとは何も取り柄がない地味な男子だ。

運動は大の苦手で、体育の授業がある日は憂鬱になる。

特に球技をやるときは最悪だ。

バスケとかサッカーとか、パスされても取れないし、何とか取っても味方にパスしようとしたら敵に取られちゃうし、ドリブルしようとしてもボールは飛んで行ってしまう。

カッコ悪いし、ふざけていると思われることもある。絵も下手だし、特に趣味があるわけでもない。

友達はいるけど、みんな地味な男友達だ。

勉強だって、他にできることが何もないから頑張っているだけだ。

地味で何の取り柄もないやつがまともに生きていくには、勉強してできるだけ良い高校、良い大学に行かなければならない。

もともとオタク気質で好奇心だけは人一倍強いから、勉強だけは努力に比例して結果が出ている。

そんな勉強しかできない地味な僕には、女の子とはまともに話す機会がない。

そんな僕が神無月さんみたいな高嶺の花と仲良くなることなんて、到底無理なはず、だった…。


ところが、だ。

いつも通りの平凡な1日を過ごし、帰ろうと思ったその時、後ろから僕とは無縁のはずの声が、僕の名前を呼んでいるのが聞こえた。

「田中くん。ねぇねぇ、」

突然の出来事に気のせいだと思ったが、僕のクラスに田中は1人しかいない。

振り返ってみると、その声の主は正真正銘の、神無月さんだった。

「あ、やっと気付いた。も〜、無視しないでよ〜。」

「え、えっと、ごめん。僕に何か用?」

「用があるから声かけたんだよ、当たり前じゃん。(笑)部活終わったら理科室に来てね。それじゃ、あとで!」

いきなりすぎて返す言葉も無しにとまどっていたら、彼女はそのまま走って部活に行ってしまった。

(なんで突然呼び出したんだろう。

しかも理科室なんかに。

うちの学校は理科系の部活はないから、放課後の理科室は誰もいない。

放課後に2人きりで、って、まさか!?

いや、そんなことはあるはずがない。

もしかして、呼び出しておいていじめとか?

いやいや、憧れの神無月さんを疑うなんて最悪だ。

こんなんだから僕はクズなんだ。

で、でも一体なぜ…?)

帰宅部の僕は特にやることが無いので、立ち尽くしたままずっと考え込んでしまった。

とはいえ、いつまでも廊下にいるわけにはいかないから図書室で待つことにした。

しかし、読もうと手に取った本の内容は全く頭に入らず、ついに部活動終了のチャイムが鳴った。

(とりあえず行かなきゃ。

何がなんだか考えても分からないけど、神無月さんが僕に話しかけてきてくれた。

もしいたずらでもいじめでも、それだけでありがたいことじゃないか。)

そんな風に自分に言い聞かせながら、はやる鼓動を押さえ、僕は理科室の扉の前まで来たのだった。

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