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2014年/短編まとめ

入水少女

作者: 文崎 美生

飽きた。


何にって、人生そのものに。


つまらないと感じるようになった。


学校も日常生活も。


何もかもに退屈だと思うようになった。


何時からかとか忘れてしまったけど。


ただ退屈だと思うんだ。


人生ってこんなに色のないものなのか。


透明度だけが高い何の味もしない面白みのない水みたいじゃないか。


水を馬鹿にするなと言われるかもしれない。


確かに影で支えてくれるスペシャリストだ。


でも自分の人生をそれで例えるのは忍びなくないだろうか。


影で支えるだけの人生でいいのか。


何の色も持たなくていいのか。


味わいのない毎日が楽しいのか。


そんな日々に私は飽き飽きだ。


ぐっと足場の悪い砂浜を踏み締める。


水だ。


いや、海だから塩水かな。


海鳥の鳴き声と波の音しか聞こえない。


平日の真っ昼間。


人なんて早々いないだろう。


まぁ、それをわかっていて制服のまま海に来る私も頭がおかしいんだろう。


ローファーに砂が入る。


その感覚が不快だからローファーを脱ぎ捨てて砂浜を踏みしめた。


夏じゃないから熱くはない。


空気は冷たくなってきている。


季節の変わり目の匂いがした。


あぁ、これを感じるのも最後か。


そう思いながら波打ち際へ立つ。


ニーハイに水が染み込む。


なんとも言えない不快感。


それもこの瞬間だけだろうけど。


バシャバシャと水をかき分けてドンドン海へ入ってゆく。


制服のままで。


「っあ…………!」


予期していなかった所で深くなったので驚いた。


水しぶきを上げて私の体が沈んだ。


口を開けたせいで水が入ってきた。


塩っぱい。


ゴポゴポと音を立てて気泡が上へ上がってゆく。


空気がない。


息が出来なくなる。


それでも私は重力に従って落ちてゆく。


水面に光が反射して綺麗だ。


さようなら、無機質な私の人生。


無機質な私の人生らしく透明度だけが取り柄の綺麗な海に沈んでやるよ。


最後は。


最期は色が欲しかった。


味は、まぁ、塩っぱいかな。


バイバイ。

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