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東方小神薔  作者: 菟々
一束 古き友の消失
6/7

六輪 まだ取材は始まらない

六輪目、咲きました


文………記者兼視点

紫………保護者

八代目…被保護者

「お早うございます。気持ちの良い取材日和ですね」


 食後のお茶を終えて二人で博麗神社を訪ねる。いや、訪ねると言うよりは私は落とされたに近いのですが、転ばなかったので笑い話で済まそうと思います。

正午までまだ一刻ほどありそうですね。ゆっくりお喋りしながら進めても、十二分な時間でしょう。


「改めまして、烏天狗の射命丸文です。今日はお招き頂きありがとうございます。貴女の事、一杯教えて下さいね」


「はわわわ?! ダメだよ文! そう言う事は好きな人とじゃないとダメなんだよ?!」


 笑顔で挨拶すれば顔を少し赤くして狼狽える巫女。初だけど深読みするからからかうなと紫に畳んでいる扇で叩かれた。私を叩いた扇は八代目の頭にも飛んでいくけれど、目の前で繰り広げられる二人の攻防は戯れている様にしか見えません。

 拝殿から案内されたのは、巫女が生活に使っている離れ。築年数は分かりませんが、古くても朽ちている訳ではなくて、手入れが隅々まで届いています。建て付けが悪くなり始めているのは仕方のない事なのでしょう。


「隣はまだ片付いてないから、こっちの部屋で待ってて!」


 久しく博麗神社に来ていなかったのではっきりとは覚えていないのですが、拝殿から裏山に向かって順に納戸、座敷二部屋、厨が並んでいたはず。確かこの座敷が掘り炬燵の部屋で、


「隣は囲炉裏のある部屋でしたっけ?」


「よく覚えているわね。お祭りがあったのは……一昨々日だから、一昨日の朝の献立は?」


「食べてませんね」


「……」


「烏は頭が良いのですよ?」


 一昨々日お祭りから帰宅すると直ぐに作業を始めました。植字まで終了した頃には空が白み始めていて、仮眠を一刻だけして、正午には誤植の確認も出来たのです。後は上司への報告や印刷、配達をするだけだったので、今日の約束に影響する様な事もありませんでした。そんな私の内心を知らない紫さんは、表情で詰まらないと言うのだけれど、言われても困るだけなのです。

 それはそれとして隣の部屋の話でしたね。今、離れの障子と襖の殆どが開けられているので、簡単に隣の様子も見れます。覗いてみると、部屋の中心の畳が外されて空の囲炉裏が現れていて、その周辺にまだ取り付けていない自在鉤等が置おいてありました。その横に幾つか置いてある小さな俵は、灰でも詰まっているのでしょう。


「冬支度の途中ですか。取材が終わった後、お手伝いは必要ですかね」


「物凄く喜びそうだわ。私も式達も手伝ってはいるけど、あの子は蔵まで弄り始めたから人手も少し足りなくて」


「蔵に何か必要な物があるんですか?」


「今年は大雪が降るって言っていて、それで除雪する道具を用意しなきゃ駄目だって。奥にある古い雪かきとかを探し始めたの」


「……大雪って、かなり重大な話ですよね? 里に広めても?」


「寧ろしっかり知らせて貰えないかしら?」


 呆れを分かりやすく載せた溜め息を吐いて、眉間の皺を揉みながら応える。


「遅過ぎる位ですね。……巫女の記事は二番目にして、紙面の殆どで呼び掛けましょう。例年より余分に蓄えたり冬支度をする様に書けば、ある程度の最悪からは回避されるはずです」


 里長には紫さんから言って下さいね、と余計な仕事をしないと先に線を引いた。楽しみにしていた巫女の取材の前に気分が暗くなるとか、今日は厄日ですかね。厄神様に後で会いに行きますか。


「おまたせ! って紫、文に何かしたでしょ?」


 八代目が戻ってきましたが、……そんなに私は暗い顔してますかね?


「何処で育て方を間違えたのかしら」


「貴女の背中を見せた時からでしょうね」


「あら、私背後を取られた事ないわよ?」


「藍が紫の後ろに控えるのは数えないんだね!」


「「……」」


「それで、取材って何聞かれるの?」


 ……そうですね。不穏なを目の前にしたからって、うだうだしていては時間を浪費するだけです。

 それにしても、多くの人と触れ合っていないからでしょうか。会って二回目のわたしにもう心を許してしまっています。ここは人妖問わず悪い者がいる事も教えなければいけませんね。取材と称した教育になりすぎない様気を付けましょう。

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