序章 「幼き日の邂逅」
「Floral Hearts」は、STARLIGHTによる一つのシェアワールドです。
この「純白のフリージア」の他にも、世界観や設定を共有した、複数の作者による複数の作品があるので、よろしければそちらも合わせてご鑑賞下さい。
―――今からちょうど十年前。
「~~~♪」
「やっぱり歌、上手だなぁ、奏」
「えへ、ありがとう、お兄ちゃん」
「私ね、大きくなったら歌手になりたいんだ」
「どうして?」
「ん~、特に理由はないんだけど・・・」
―――とある林の奥にある、一面の白い花畑。
パチパチパチ。
「えっ?」
振り返った所には、自分たちと同じくらいの年の兄妹が立っていた。
「とても上手でした。私も一緒に歌ってもいいですか?」
女の子は奏に尋ねた。
「え、えっと・・・」
奏は困ったように僕を見てきた。
「奏のしたいようにしなよ」
「・・・うん」
「それじゃあ、一緒に歌おう!」
「うん、よろしくね」
―――白い景色に溶け込むかのように、二人の小さな天使が歌う。
「二人とも、本当に楽しそうに歌うな」
いつの間にか、僕の横にはさっきの男の子が立っていて、歌う二人を見つめていた。
「そうだね」
僕も二人のほうに視線を向ける。奏もあの女の子も、本当に楽しそうだ。
「僕は、姫宮征一。君は?」
「僕は、柚原翔っていうんだ」
「柚原翔・・・・翔って呼んでもいいか?」
「うん、えっと・・・」
「僕のことは征って呼んでよ」
「・・・わかった。征」
「私は葉月。姫宮葉月です」
「・・・それじゃあ、葉ちゃんって呼ぶね」
「ようちゃん?」
「葉月の葉の字をとって、葉ちゃん。どうかな?」
「・・・うん、何だか可愛くて好きです。ぜひそう呼んでください」
「うん。私は柚原奏」
「・・・それじゃあ、奏ちゃん」
「なぁに、葉ちゃん?」
「私と、お友達になってくれませんか?」
「・・・うん!こちらこそ、だよ!」
―――これは 僕たち四人が出逢い 友達になった ある夏の日の光景。