何度でも、君をここに置いていく
女の園の彼視点です
そちらを先に読んでいただくとわかりやすいかなと思います。
「やっと会えた」
間に合った。
それだけで、少しだけ息を吐く。
天蓋の下で、彼女が目を開ける。
今回も、ここか。
最悪ではない。
まだ、やり直せる。
「……女の園はご遠慮したいのだけど」
やっぱり言った。
「知ってる」
君が、振り向く、
この瞬間が、いつも少しだけ怖い。
覚えているか。
覚えていないか。
「……また、あなた?」
——ああ。
少しだけ、残っている。
それでいい。
それくらいがちょうどいい。
彼女は全部は覚えていない。
覚えていない方がいい。
——そうしないと、壊れる。
「今回はまだましだ」
つい口に出る。
「前は三日で毒を盛られてた」
やめておけばよかった。
彼女の喉がわずかに動く。
覚えていないはずなのに。
体は覚えている。
それでいい。
全部は要らない。
「逃げたいか?」
分かっているのに聞く。
意味はない。
それでも聞く。
「……ええ」
知ってる。
それでも、削れる。
「なら助けて」
来た。
同じ流れ。
何度も見た。
——ここで手を引けば終わる。
何度かやった。
結果は同じだった。
彼女はいなくなった。
違う形で。
「ああ」
結局、こう言う。
「今回は、うまくやる」
何回目かは、もうどうでもいい。
「覚えてない方が、楽だ」
本当だ。
全部覚えていた頃は、
少しずつ削れていった。
名前。感情。時間。
残ったのは——
彼女がいなくなる瞬間だけ。
「何が“大事”なの」
「君がいなくなる瞬間」
言ってしまう。
少しだけ後悔する。
でもいい。
離れるよりは。
「全部、覚えてる」
毒の味も。
落ちる感覚も。
最後の言葉も。
——あの最初の夜、君が俺を笑みを浮かべながら突き落としたことも。
それでも。
「君がいない世界に行くくらいなら」
一歩、近づく。
「ここに閉じ込めた方がいい」
最低でいい。
それでいい。
「逃げたいなら、逃げればいい」
嘘じゃない。
「でも、その先に俺がいなくてもいいの?」
これだけは譲らない。
彼女は選びきれない。
優しいから。
だから、ここにいる。
「初めまして」
何度目か分からないやり直し。
うまくいかなくてもいい。
繰り返せばいい。
「もし私が、ここから出たら」
来た。
この質問。
一度だけ、違う答えを選んだ。
あの時、彼女はいなくなった。
だから。
「俺が世界ごと追いかける」
これでいい。
これが一番、マシだ。
「……女の園はもうご遠慮したいのだけど」
分かっている。
何度も聞いた。
何度でも。
「また、あなたがいるなら」
その続きも。
「まあいいか」
——違う時もあった。
逃げ切ったことも。
俺を選ばなかったことも。
だから。
何度でもやり直す。
君が、ここにいる限り。
「やっと会えた」
今度は、間違えない。
——何度でも、君をここに置いていく。
君が、そう望んだみたいに。
お読みいただきありがとうございました。
また2人の〝最初″を書こうと思っています。




