辺境へ向けて出発
私と直人さんは鍋を買ってから王宮に戻り、私はキャサリン様と人形作りをしながらお茶をした。
アランさんのカトリーヌちゃん人形も間に合いそうだ。
キャサリン様は元々手芸が得意な様で、すぐにコツを掴んで、サクサクと作っていく。
「キャサリン様のおかげで、私達が探していた物が見つかり、黒騎士団の団長も遠征にやる気になりました。本当にありがとうございました」
キャサリン様は顔を赤く染めて、
「そんな私は何も。。」
そう言った時に、ドアがノックされた。
アランさんが石の乗ったトレーを運んできた。
「なんですかそれ。。あ、魔石ですか?」
「ええ、ミキ様の人形には魔石が入っていると聞きまして、キャサリン様も入れたいかと思いまして」
「すごい種類があるんですかね。まあこの場合は殿下を守ってくれる物がいいですよね」
「そうね、迷ってしまうわ。やはり物理防御力か魔法防御力を上げるのがいいかしらね」
するとアランさんが緑の石を持ち上げて、
「キャサリン様、魔力回復をする魔石などはどうでしょうか?イグニアス殿下の防御力は高いので、魔力が枯渇しない限り大丈夫ですので」
「それはいい考えね、そうするわ」とキャサリン様はその石を受け取った。
「アランさんは何にします?」と私が聞くと
「そんな私に魔石など勿体無い。私のは何も無しで大丈夫です」
「そんな、アランさんは殿下をお守りする大事な仕事があるんですから」
「そうですよ、殿下はアランがいなければ、何をして良いか分からなくなりますからね」
「キャサリン、それは言い過ぎではないか?」そのタイミングでイグニアス殿下がやって来た。
でも。。
「殿下。。。その顔は?」とアランさんが焦っている。
どう見ても頬が腫れていて、血が滲んでる。
私は慌てて治癒魔法をかける。
「今日はあの2人が王宮から出ていく日だったんだが、手切れ金に不満だと最後に揉めてな。すがりつかれそうになって、思わず避けてしまったら、逆上されてこうなった」
これは王族に対する不敬ではないのかしら?
「遠征の前にはどうしてもあの2人をここから出しておきたかったんだ。キャサリンに対しての嫉妬が酷いからな」
「殿下、ですから私が帰るまでお待ちくださいと申しましたのに。ごねるのはわかっていたので、派手だけど価値は低い宝石も用意していたんですよ」とアランさんがやれやれという顔をしている。
「やっぱり殿下にはアランさんが必要ですね、大きめの保護魔法がある魔石を入れましょう」
「そうね、アランがいなくなったら、困るわ」
私達は大きめの紫の石を選んで、カトリーヌちゃん人形に入れた。
「はい、どうぞアランさん」
「ミキ様、ありがとうございます。すごく可愛い」アランさんはいそいそと胸ポケットにしまっている。
「殿下、私はもう少し仕上げたいので、明日の出発前にお渡ししますね」
「ああ楽しみにしている。そろそろ部屋に戻るか?私がエスコートしよう」と言ってキャサリン様を連れて行き、アランさんもそれに続いた。
さて。。私もパッキングしないとね。
服や日用品はメイドさんがしてくれたから、暇つぶしグッツや快適グッツ、そうそうお鍋も。
旅行気分で浮かれているけど、今回は本番。怪我をする人だって、出るかもしれない。私も気を引き締めないと。
直人さん人形はどこに入れようかな。聖女服って胸ポケットがないのよね。
あ。、そうだ。こうすれば。。。
そしていよいよ、出発の朝になった。
「えーー直人さんは馬車じゃないんですか?」
「ああ、俺の乗馬技術はまだまだだから、早く慣れたいんだ。代わりにアランさんが乗るから」
うーーん、なんか昨日から直人さんに避けられている気がするのよね。
「ミキ様すみません、私も殿下とこれからについて話し合う事がありまして」とアランさんも申し訳ない顔をしている。
「ミキ、直人には大事な仕事もあるんだ。あの最高にイラついている黒騎士団長を止められるのはチャールズと直人しかいないんだ」とイグニアス殿下もいう。
ジョンさんが黒髪の人形を持って何か呟いている。
今日はアイラさんの家とは反対方向に進むから、余計に機嫌が悪いそうだ。
私達はまた街の人たちに手を振りながら出発。
また人がいなくなったら、聖女服を脱いでリラックスモードに。今回はちゃんと殿下とアランさんには目を瞑って貰ったが、外で馬に乗っている直人さんにはバッチリ見られた。なんか渋い顔をしている。
直人さん、馬に乗るのも様になっていてかっこいい。
私はクッションを敷き詰め、カトリーヌちゃんとゴロゴロしていたら、そのまま眠ってしまった。
気がつくと馬車は今日の宿泊地についていた。
今回は片道4泊の旅だが、全て宿泊場の泊まり、野営はないそうだ。なので1箇所では全員が泊まれないので、騎士団の皆さんとは違う場所に泊まる事になり、直人さんもそちらにいくそうだ。カトリーヌちゃんは私と同じ部屋になる。
食事ですら別々で、一緒に食べられるのはランチぐらい。
4日目の夜、もう私は寂しいを通り越して、ムカついて来た。
光の糸をつなげる気もなくなった。ブレスレットを外そうかと思ったがカトリーヌちゃんがダメと頭を押し付けてくるのでやめたけど。
ダメだ!直人さんと話をしよう。
今日の騎士団の宿泊場所は隣の棟なので、夕食後こっそり部屋を抜け出すと、裏庭でお酒を飲むチャールズさんと直人さんがいた。
「直人。お前どうなるかと思ったけど、馬に乗るの上手くなったな」
「流石にこれだけ乗れば。。もう毎日尻が痛くて」
「だろうな。。でもいいのか?お前はミキ様と一緒に乗りたかったんじゃないのか?」
「いやーー今回は無理です。それとアランさんに頼まれたってのもあるし。近くにいたいらしい」
「えーーお前はそれでいいのか?」
「俺は構わないな。世話をするのが減るし、あいつ結構面倒くさいから。アランさんも幸せなら、丁度良いです」
え???
直人さんは私とアランさんにくっついてほしいの?
そんなに面倒くさい女だった?
もう一緒にいるのが嫌なの?
涙が出てきて止まらない。
「ミキ?何しているんだここで」
後ろからジョンさんに声をかけられる。
泣き顔を見られたくないので、私は何も言わず自分の部屋のある棟に駆け出した。
「え?ミキ?」と直人さんの慌てる声がする。
しかし、直人さんは追ってこない。まあそういう事だ。
部屋に着くと、カトリーヌちゃんが涙でぐちゃぐちゃになった私の顔を見て、じゃれついてくる。
「大丈夫、ごめんねびっくりさせて。ちょっとびっくりする事があって」
その時ドアがノックされた。
え?直人さん?
しかし、そこにいたのは遠征に一緒に来てくれている、王宮のメイドさんだった。
「聖女様、騎士団の団員が怪我をされて、一緒に来ていただけますか?」
よく見ると彼女の顔にも傷があり、手も赤くなっている。
「ちょっと待って、あなたも怪我しているじゃない」
私が治癒魔法を使うとメイドさんはびっくりした顔をする。
「そんな私には勿体無い。。。。」
「怪我しているのにほっとけないでしょ。カトリーヌちゃん、ちょっと行ってくるわね」
私は心配そうなカトリーヌちゃんに声をかけて、メイドさんに続いた。
隣の棟に向かうために、裏口から出た。また直人さんにあったらどうしようとしか考えてなかったので、誰かが後ろにいるとは考えていなかった。
いきなり口を布の様な物で塞がれ、声が出せなくなった。
「ミキ様、申し訳ございません」と泣きそうな顔のメイドさんが前に見える。
「んんんんん!!!!」
そして私は裏口にあった馬車に詰め込まれてしまった。




