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お守り人形

直人さんがジョンさんの所へ行ってから1週間が過ぎ、私は編み物ばっかりしていた。久しぶりにやると楽しい。

すでに毛糸が足りなくなってしまったので、買いに行かなきゃ。


約束通り毎晩、寝る前に私はバルコニーに立って光の糸を直人さんと繋げている。


スマホとかがないから電話もメッセージも送れないけど、こういうのも良いなと街外れの方に繋がっている光を見ながら思う。


カトリーヌちゃんもその光を見ながら、クゥーンとないている。カトリーヌちゃんもきっと寂しいんだよね。


そして討伐遠征に明後日出発すると決まったと、私を尋ねて来たイグニアス殿下から聞いた。


「なんか殿下、顔が死んでますけど。そんなに準備が大変なんですか?」


「いや。。これは妃達との話し合いが連日続いていてな、思ったより難航している」


「あら、あの2人の妃が嫌がってるんですか?」


「いや、あの2人は贅沢できればいいと、まとまったお金を貰えればいつでも離婚すると」


「え。。まさかのキャサリン妃が。。。」


「ああ、考える時間が欲しいから、それまであの2人と離婚しないでくれと」


「うわーー、微妙ですねそれ」


「もうきっと遅過ぎたんだ。私が優柔不断だったから」と落ち込むイグニアス殿下の肩を叩いて。


「まあ、押すばっかりじゃなくて、ちょっと引いてみるのも良いかもしれないですよ。この討伐遠征で少し離れるし。その間に作戦を立てましょう」


「そ。。そうだな。でもキャサリンに会えないと私が寂しい」


おやおや、いつのまにかキャサリン妃にぞっこんになっている。


「奥様なんですし、討伐遠征の安全祈願で何か貰ったらどうですか?ハンカチとか。写真は。。ないから、絵姿とか。あ、今こういう人形が街で流行ってるんですよ」


私は直人さん人形を見せる。


「恥ずかしいですが。。聖女様というか私の人形を作ってお守りにする人が多いんですって。髪の色とか目の色は自由に変えれるので、キャサリン様に似たのを作ってもらったらどうですか?」


「素晴らしい!それはどこで手に入るんだ?」


「街の毛糸屋さんでキットが売ってるんです。毛糸がなくなりそうなので、私はこれから買いに行こうと思っていたんです。買ってきましょうか?キャサリン様の色はなんですか?」


「私と同じで金髪に青い目だ。。もちろんキャサリンの方が美しい金髪で深い青だけどな」


「そっか。。青でも色味が色々ありますものね。キャサリン様の絵姿ってあります?」


「ミキはまだ会った事がなかったか?そろそろお茶の時間で庭園にいるはずだ。ほら、あそこだ」


バルコニーから下の庭園を見ると、ガゼボに美しい女性がいた。


でも目の色までは流石に見えないな。


「イグニアス殿下、ちょっとしゃがんで目の色を見せてください」


「こうか?」と目線を合わせてくれる。


「キャサリン様の色はこれより濃いんですか?」と顔を近づけて見てみる。目の部分はビーズだから、そこまで細かい色のバリエーションはない。イグニアス殿下と同じ様な色でいけそうかな。


「まあ少しだけな」


「じゃあ大丈夫です、しっかり覚えましたから」


私は庭園をまた見下ろすと、キャサリン様はもういなくなって行った。


「あれ?もうお茶は終わったんですかね?」


「何?私も一緒にお茶をしたかったのに。ではこれで失礼する。アランを同行させるから、人形キットを買ったら渡してもらえないか?」


「分かりました。ではまた」


私はまたウィッグをかぶって、アランさんと街に出た。


毛糸屋さんに近づくと武器屋さんも見えた。いるわけがないのについ直人さんを探してしまう。


アランさんは外で待っているというので、私が毛糸屋さんに入ると、

「ミキちゃん?」と誰かに声をかけられた。

「アイラさん!雅代さんも、こんにちは!」


「一瞬わからなかったけど、そうよね。ミキちゃんは変装しないとね。ミキちゃんも編み物するの?」


「鍵あみだけですけど。アイラさんは赤ちゃんに何か編むのですか?」


「それもあるけど、今流行りの人形を作って欲しいってジョンに言われて、材料を買いに来たのよ」


「あーー私もです。一回作ったんですけど、頼まれちゃって」


「今は聖女様カラーが流行っている見たいだけど、あらミキちゃんが買うのは黄色の髪と青い目なのね」


「ええ、実は。。。」


「アイラ!もう終わったか?」と後ろからジョンさんの声がした。


「あら、もう用事は終わったんですか?私も会計をしたら終わりです」


「誰と話してたと思ったら、ミキか。お前も人形キット買いに来たのか?」


「ジョンさんこんにちは、ちょっと頼まれまして。あの?直人さんは?」


「直人?後ろにいるぞ?」


え?と振り向くと、直人さんさんが私の後ろに立っていた。


「久しぶり、ミキ」という直人さんは真顔で、私の持っている人形キットを見ている。


「え?お疲れ様です、直人さん。もう訓練は終わったんですか?」


「あ。。ああ、今日は王宮に帰るよ。カトリーヌの世話ありがとう」


「え!じゃあこのまま一緒に帰れます?」


「あ、いや。ちょっと寄る所があるから、夜に帰るよ」


そっか。。。がっかり。急にしょぼんとしてしまった、私を見て。直人さんは慌てて、

「夕ご飯は一緒に食べようよ。それまでには絶対に戻るから!」


「そうですか!じゃあカトリーヌちゃんと一緒に待ってますね」


私も会計をして、外で待っているアランさんに買ったばかりの袋を渡した。


「この人形って流行っているんですか?ミキ様みたいですね」とアランさんがショーウィンドウにある人形を見ながらいう。


「髪と目の色を変えて自分の好きな人に似せたり、後は私に似せて聖女のお守りにしているみたいですよ」


「そうですか、私には作ってくれる人がいないので羨ましいです」


「えーーアランさんモテそうなのに。それとも誰か気になる人がいるんですか?」


「え?あ。。それはなんとも。でも聖女様人形をお守りっていうのは良いですね」


「でも本当ならカトリーヌちゃんのお人形にするべきよね。私は代役だから」


「カトリーヌ様の首輪についている犬のチャームは、ミキ様が作られたんですか?もしよければ、私にも作って頂けないでしょうか?」


「あれですか?あれでよければ喜んで!」


「ミキ様に人形を作っていただけるなんて、とても光栄です」


その時、後ろで何かが落ちる音がしたが、振り向いても誰もいなかった。


アランさんと私はキャサリン様が殿下にお人形を作ってくれるかどうか、イグニアス殿下がちゃんとお願いできるか話しながら王宮へ戻った。


夕ご飯の時間の前、ドアがノックされたのでメイドさんかと思っていたら、直人さんが立っていた。


私はちょうどカトリーヌちゃん人形を作っている所だった。


「あ!直人さんお帰りなさい。カトリーヌちゃん!直人さん帰って来たよ!」


カトリーヌちゃんは大はしゃぎで直人さんにじゃれはじめる。


「ただいま。ちょっと入っても良いか?」


「勿論ですよ、カトリーヌちゃんグッツもこっちにあるし」直人さんに部屋に入ってもらい、お茶でも入れようかと思ったが、テーブルの上には編みかけのカトリーヌちゃん人形がある。


「ミキ、それって」


「ああ、今片付けますね。アランさんに頼まれてて、もう少しでできるんですか」


「それってさっき買ってたやつか?」


「ちょっと違うんですけどね。。まあ似た様なもんです。ほらカトリーヌちゃん。。。」と言いかけたら、直人さんの低い声が遮った。

「嫌だ」


「?」


「俺はアランがその人形持つの嫌だ」直人さんは床を見ている。


「え?あ!ごめんない。飼い主の許可も取らずに」


「か??飼い主?俺はそんな?」


「そうですよね、カトリーヌちゃんのお人形なのに、直人さんに言わずに作り始めちゃって。嫌でした?アランさんには他の人形にしましょうか?聖女の人形なら、材料あるので作れますし」


「え?カトリーヌ?それはアランじゃないのか?」


「え?違いますよ。ああ、確かに。色の感じがアランさんとカトリーヌちゃんって似てますね」


直人さんは真っ赤になって。


「ご。。ごめん、勘違いした。か。カトリーヌ。行くぞ」


カトリーヌちゃんはバウっと直人さんに吠えた。


「わ。。わかってるよ。ちゃんとするから。ミキ、ありがとう。夕飯の時にな」


えっと。。カトリーヌちゃんの人形はこのまま作ってもいいのかな?




カトリーヌ「何勘違いしてるの?このヘタレ!」


カトリーヌちゃんが吠えている時は大抵直人さんを怒っている時です。

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