第69話 「黒雷牙と白雷牙」
お疲れ様です!
さあさあ、【影葬の追跡】も佳境を迎えていますッ!
エンジン全開で戦いに挑んでいる【無銘の牙」たち!!
彼らの戦いもついに終盤戦へと向かっています!
「影葬の追跡」開始そうそうお互いで高度な知能戦が繰り広げられております!
二の牙の挑発に乗らず、【無銘の牙】の面々はやつを出し抜くことができるのか!!!
彼らがどこまで「一の牙」&「二の牙」に己の牙を突き立てることができるのか!!!
こうご期待ください!!!
また、頭の中でイメージしながら読み進めると物語とシンクロして面白いですよ(^^♪
最弱と呼ばれた従魔たちがどこまで進化するのか――
牙の刻が、これからも続いていきます!
荒野を抉る黒雷の閃光が、天空を真昼のごとく白く焼き上げた。
大地は瞬時にひび割れ、砂粒ひとつすら帯電して宙へと跳ね上がる。
耳をつんざく轟音が、空と地を区別なく震わせていた。
二の牙――《忘逆の魔影》。
その姿は、もはや人の影を完全に脱ぎ捨て、古き荒野の猪神の化身として顕現していた。
その巨躯は雷雲を纏い、黒々とした毛並みの間からは絶え間なく稲光が奔る。
四肢が踏み込むたび、大地は抉られ、漆黒の雷柱が天へと突き抜けた。
鼻面から吐き出される息は砂塵すら電離させ、空気を白熱化させる。
まるで大地そのものが焼き払われるかのような熱気が荒野を包む。
そして、さらなる絶望の言霊が二の牙から紡がれる。
「――《雷嵐絶界ッッ!!」
◆ ◆ ◆
低く轟くその声は、天と地を揺らす呪詛のように響いた。
直後、黒雷が荒野一帯を覆い尽くし、無数の稲光が縦横無尽に奔る。
影の軍勢は触れた瞬間、肉も骨も残さず灰と化し、風に散った。
荒野全体は“黒雷の牢獄”に閉ざされていた。
ナナシたちを中心に、球状の嵐が描かれ、すべてを消し去る雷嵐の結界が完成していく。
「きぅぅぅ!?……これは……っ!」
リザードのルルカが鋭い鱗に焦げ跡を浮かべ、尾を振り払う。
炎の息を吐こうとするも、吐息そのものが雷に焼き切られ、ただの火花となって散った。
「うぎゃあ! あ、足が……熱いっ!」
コボルトのミミが悲鳴を上げる。
焦げ付いた大地は、踏むたびに足裏を焼き、皮膚を裂いた。
それでも彼女は短剣を抜き、仲間を庇うように前へ飛び出す。
足を震わせながらも、背中だけは決して引かなかった。
「ぷるぅぅ……っ!」
スライムのプルリは、雷に焼き切られながらも全身を広げ、必死に黒雷を吸収して拡散させる。
だが容量を超えた稲光は何度も彼の体を弾け飛ばし、ゼリー状の欠片となって荒野へ散らした。
それでも、仲間の声を呼び水脈に集まるかのように、ひたすら自らを再生させては前へとにじり寄る。
――そして。
嵐の外縁で、さらに獰猛な咆哮が轟き渡った。
「グゥゥゥアアアアァァァァァアア――――ッッ!!」
空そのものを割るかのような咆哮。
荒野に君臨するもう一頭の獣――一の牙【白雷ヴァルグ・ゼオグレイン】。
その姿は白銀の巨狼のごとく、天を仰ぎ、全身から暴嵐を解き放つ。
竜巻が唸りを上げ、雷雲と絡み合い、二の牙の黒雷と共鳴する。
嵐と雷が重なり合ったその瞬間、大地と空とを隔てる二重の暴嵐が形成され、天地そのものが敵となった。
「……これが……二つの牙の全力かッ……!」
ナナシは剣を握る手を焦がしながら、見上げた。
稲光と竜巻が交錯し、天地の理が塗り替えられていく。
あまりの奔流に、呼吸すらままならず、肺が焼かれる。
――隙が、ない。
誰もが悟った。
荒野は今や二頭の伝説的な獣によって完全に制圧されている。
“黒”と“白”の牙が並び立つとき、逃げ場など存在しない。
影の軍勢でさえ灰燼と化すのだ。
ただ立つことすら命を削る行為。
「諦めろ。これが絶望だ。」
黒雷の巨猪――二の牙《忘逆の魔影》が冷酷に宣告する。
その瞳には、一片の慈悲も揺らぎもしなかった。
「いいや、抗って見せろ。まだやれるだろう?なァ、【無銘の牙】たちよ。」
一方で、白雷の巨狼――一の牙《白雷の大銀狼》は楽しそうに宣告した。
無銘の牙。
ナナシ、プルリ、ミミ、ルルカ――。
彼らは今まさに、伝説を超えた暴嵐のただ中に立たされていた。
――続く――
ここまでお読みいただきありがとうございます!
さらに加速する“牙の伝説”をどうぞお楽しみに!
次話の投稿は、明日夕方17時10分の予定です!('ω')ノ
引き続き『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』
略して『ナナクラ』をよろしくお願いいたします(^^)/