第66話 「黒雷と肉弾の咆哮――《忘逆の魔影》の突進」
お疲れ様です!
さあさあ、【影葬の追跡(シャドウ・レクイエム】も残り10分!
エンジン全開で戦いに挑んでいる【無銘の牙」たち!!
彼らの戦いもついに終盤戦へと向かっています!
「影葬の追跡」開始そうそうお互いで高度な知能戦が繰り広げられております!
二の牙の挑発に乗らず、【無銘の牙】の面々はやつを出し抜くことができるのか!!!
彼らがどこまで「一の牙」&「二の牙」に己の牙を突き立てることができるのか!!!
こうご期待ください!!!
また、頭の中でイメージしながら読み進めると物語とシンクロして面白いですよ(^^♪
最弱と呼ばれた従魔たちがどこまで進化するのか――
牙の刻が、これからも続いていきます!
荒野を包む空気が、再びざわめいた。
巨大な黒雷を纏った猪――その完全体《忘逆の魔影》が、大地を踏み鳴らしたのだ。
その一歩ごとに、地面は抉れ、岩が裂け、雷鳴のような轟きが空へと響き渡る。毛皮の一本一本が黒雷を帯び、鋭い牙からは紫黒の電流が迸っていた。
その姿を前に、ナナシは冷たい汗を背中に伝わせた。
だが、退くことは許されない。仲間を守る――それが、彼が「無銘の牙」として立つ理由だった。
「……クク……。お前たちは……。言葉では揺らがぬことがよ~~~くわかった。だが、それだけだ。こっからは、言葉なんて無用の長物。貴様ら全員、打ち倒すのみッ!!」
低く唸るような声が雷鳴に溶け込む。
一の牙は内心
「クク♬(おやおや、いつも飄々としている彼女が今回はえらく感情を剥き出しにしているじゃないか。これは、もしや、もしかするか?えぇ~無銘の牙よ♬)」
新しい盤面へと変化することを一人ほくそ笑んでいた。
◆ ◆ ◆
二の牙は、さきほどまでの冷静さを失いかけていた。
自らの過去――十二聖王座から追放された亥刻の悲劇。忘れた去ったと思った記憶が怒涛の流れで蘇ってきた。彼らにその虚像で塗り固められた己の弱さを見抜かれ、心の奥底の傷を暴かれた。
それは、彼女が誰にも触れさせまいと封じ込めていた痛みだった。
「……人の姿は弱さの象徴と言ったな」
ナナシが低く言い放つ。
「だが、獣の姿だって同じだ。お前が強がりで纏った“仮面”に過ぎない!」
「――ッ!」
黒雷が迸る。
二の牙の瞳に宿る光が激しく揺らいだ。
その動揺を隠すかのように、巨躯の猪は地を踏み割り、黒雷を纏った肉体を前傾させる。
呼吸は荒く、獣の本能に近づく。
言葉では抑えられぬ心を、肉体の力でぶつけようとする――肉弾戦への転換だった。
「来るぞ! 全員、構えろ!」
ナナシが声を張ると同時に、二の牙が大地を蹴り、黒雷を纏った突進を仕掛けてきた。
雷の奔流と共に迫るその巨体は、まるで雷そのもの。
その速度、その威力――大地が爆ぜ、空気が裂ける。
「《黒雷衝牙》――ッ!」
轟音と共に、牙から迸る雷が衝撃波となって押し寄せる。
「くっ……!」
ミミが素早く跳躍し、影のように身を翻す。
短剣を交差させて雷をいなし、稲妻を削ぐ。
「速い……! けど、避けきれないッ!」
「《スラッシュ・スケイル》!」
ルルカが鱗を煌めかせ、尾を振り抜いた。
斬撃が雷の奔流に弧を描き、僅かな隙間を切り拓く。
だが、それでも押し寄せる衝撃波は強大だ。
「ボクがっ……! 《スライム・ボディーシールド》!」
プルリが空気を大量に吸い込み体を張り、大きく膨張して前へと飛び出した。透明な膜が盾のように展開し、黒雷を受け止める。
「う……うううぅぅぅぅッ!」
稲妻が膜を焼き焦がし、プルリの身体がひび割れるように揺れる。
それでも踏み止まるその姿に、ナナシの胸が熱くなる。
「よくやった、プルリ!」
「ボ、ボク……まだ大丈夫ッ……!」
◆ ◆ ◆
衝撃波を防いだ刹那、二の牙は距離を詰め、巨体を旋回させる。
雷を纏った蹄が大地を抉り、尾が閃光を放ちながら薙ぎ払う。
「ぐあっ!」
ルルカが弾き飛ばされ、鱗に火花が散る。
「ルルカ!」
「大丈夫……! 剣は折れてない!」
呻きながらも立ち上がり、ルルカは牙を食いしばる。
続けざまに、二の牙が咆哮を放つ。
「《黒雷咆哮》――!」
雷鳴が空を裂き、衝撃波が四方に奔る。
「耳を塞げ! 衝撃が来る!」
ナナシの叫びに合わせ、仲間たちが即座に反応する。
ミミが短剣を交差し、稲妻を裂くように舞う。
「《双牙影舞》!」
影のような連撃で雷を削ぎ、進路を切り開く。
プルリがその隙間から飛び出し、伸びる身体で二の牙の前足に巻き付いた。
「ボクだって……やれるんだぁぁぁ!」
その一瞬の拘束に、ルルカが剣を振り上げる。
「《スケイル・バースト》!」
鱗の輝きと共に、剣閃が黒雷を弾き、獣の肩を切り裂いた。
「……ぐぬッ!」
二の牙の咆哮が荒ぶる。
だが、その痛みは怒りに変わり、さらに強大な雷が全身を覆っていく。
「お前の黒雷……確かに強い!」
ナナシが吼える。
「だが俺たちは、仲間で力を繋げる! それがお前には無い力だ!」
拳を固め、地を蹴る。
雷の奔流を裂き、真っ直ぐに二の牙へと突き進む。
「牙連衝破ッ!」
無銘の牙の技が炸裂する。
ナナシの拳が黒雷の壁を突き破り、二の牙の巨躯に叩き込まれた。
衝撃で大地が裂け、砂塵が巻き上がる。
「――ッ!」
二の牙が後退し、雷を纏った体を揺らす。
巨体を誇るその姿が、僅かにたじろいだのだ。
砂塵の中で、二の牙は低く唸る。
「……仲間の力、だと……? そんなもの……幻だ……!一瞬で木っ端みじんに砕け散る。負けたら全てを失う。信頼も好意もッ!! 結局は裏切りと、絶望しか待たぬわ……!」
その言葉は、己に言い聞かせているように響いた。
ナナシは、はっきりとそれを感じ取る。
「違う!」
拳を再び構え、仲間たちを振り返る。
「昔の俺だったら頷いていたかもしれないが、今は違う。仲間っていうのは、すごく温かいものだ。お前が思っていたのは仲間じゃない。それは都合のいい道具として見ていなかったからそいつらもお前から離れたんだ!違うか!?」
「黙れ!」
「プルリ、ミミ、ルルカ!コイツらと出会って、俺はさらに強くなった。最初は委縮していたが、一の牙も二の牙の覇気にも順応できた。これも、仲間がいたから乗り越えられた。だから、今の俺たちが見せてやる! “牙は二本だけじゃない”ってことをな!」
「うん! ボク、仲間を信じる!」
「牙は連なる! お前には渡さない!」
「ルルカの剣は、仲間のためにある!」
三者三様の叫びが戦場に響く。
その声は雷鳴をも超え、黒雷の獣の心に突き刺さった。
二の牙の瞳に、揺らぎが走る。
忘却の影を纏うその魂に、光が差し込む――。
「……黙れェェェェェェッ!」
二の牙が狂ったように咆哮し、黒雷が荒れ狂う。
黒雷はさらに濃さを増し、荒野全体を覆う嵐へと変わっていく。
肉弾戦は続く。
雷と雷、牙と牙、拳と剣と短剣と――仲間たちの絆と、孤独の獣の絶望が、正面からぶつかり合っていた。
【影葬の追跡】終了まで、
残り八環(8分)。
――続く――
ここまでお読みいただきありがとうございます!
さらに加速する“牙の伝説”をどうぞお楽しみに!
次話の投稿は、明日夕方17時10分の予定です!('ω')ノ
引き続き『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』
略して『ナナクラ』をよろしくお願いいたします(^^)/




