第58話 「影葬の追跡・牙の迷宮突破 ――二の牙の痕跡と心理戦」
お疲れ様です!
「影葬の追跡」開始そうそうお互いで高度な知能戦が繰り広げられております!
二の牙の挑発に乗らず、【無銘の牙】の面々はやつを出し抜くことができるのか!!!
彼らがどこまで「一の牙」&「二の牙」に己の牙を突き立てることができるのか!!!
こうご期待ください!!!
また、頭の中でイメージしながら読み進めると物語とシンクロして面白いですよ(^^♪
最弱と呼ばれた従魔たちがどこまで進化するのか――
牙の刻が、これからも続いていきます!
赤黒い月が結界の上空に垂れ下がり、瘴気に染まった空間を照らす。
影狼の群れに続き、ゴブリン、オーク、さらにはボアまでが黒影の姿を取り、まるで意志を持った闇の軍勢として戦場に展開する。
その中央に立つのは、ヴァルグ・ゼオグレイン――影を操る魔の牙。
またの名を【獣王子】。
一振りの手の動きとともに、影は生き物となり、牙を剥き、ナナシたち
《無銘の牙》を取り囲んでいく。
「行くぞ、無銘の牙――覚悟を決めろ!」
ナナシの声に、仲間たちが応じる。ルルカの尾が地を叩き、振動が仲間の感覚を研ぎ澄ます。プルリの光が戦場の影を割き、ミミの耳が空間を震わせる微細な音を拾う。
彼らの視界に映るのは、ただの闇ではなく、牙と爪の意思ある影――生きた殺意の形だ。
*******
ヴァルグの唇が黒煙のように震える。
「来たれ、影の従者たちよ――朧に生まれ、漆黒を纏いしもの、ここに集え!
牙狼も、森の獣も、闇に溶けた者たちも――我が言霊に応え、牙と爪を研ぎ澄ませ!」
その言葉が空気に溶け込むと同時に、戦場の影がうねり、光と影の境界が崩れた。
ゴブリンの影は鎌を振るい、オークの影は大盾を構え、ボアの影は突進し、影狼と共にナナシたちに襲いかかる。
影はただの幻ではない。触れれば実体の如く痛みを伴い、攻撃を受ければ刃が跳ね返る。
「くっ……これだけの数を一度に……!」
ルルカが尾を振り、オークの影を足止めする。
プルリはスライムボディーを光沢化させ発光して影の浸食を抑えつつ、ゴブリンたちの動きを捕らえ、跳躍してくるボアをスラストライクで迎え撃つ!
だが、戦場の一角に、異質な空気が漂う。
ナナシは瞬時に察知した――
――二の牙の痕跡。
小さく、しかし確実に戦場に刻まれた痕跡。
「奴か……!まだ名は不明、だが、存在はここにあるよ!」
プルリの光が揺らぎ、痕跡を浮かび上がらせる。しかし次の瞬間、影の中で光は乱れ、痕跡は微かに歪んだ。
「フフ……見つけたと思ったか?」
どこからともなく笑い声が響く。それは戦場全体に溶け込み、誰が笑ったのか、どこにいるのか、感覚を狂わせる。
ナナシは剣を握り直し、体全体で空間の歪みを読み取る。
「ただの幻ではない……心理を試す罠だ。痕跡の真偽を混ぜ、こちらの思考を読んでいる」
ルルカが低く吐き、尾で微細な振動を戦場に走らせる。
「油断するな。虚実を見極めろ、全員!」
*******
二の牙は、姿も名もまだ完全には現さない。
その代わり、痕跡と幻影、そして声を巧みに散らし、ナナシたちの感覚を操作する。
足跡は半分偽り、壁に付いた爪痕は反転し、瘴気に浮かぶ赤い光は敵の数を多く見せる。
「まさしく……心理の牙……!」
プルリが光を集中させ、偽痕跡と本物を判別しようと試みる。
ミミは耳を立て、微細な空間の振動で痕跡の方向を推測する。
ルルカの尾が地面を叩き、振動の反射で敵の動線を逆算する。
「奴は、こちらの予測を読んでいる……か……!」
ナナシの胸中に熱が走る。二の牙の痕跡は罠であり挑発でもある。
だが、逆に言えば、痕跡の出方から二の牙の心理のひだを読み取ることも可能だ。
「……逆手に取る……!」
ナナシは刹那に決意する。影の軍勢を押さえつつ、痕跡を追い、二の牙を炙り出す。
プルリは光をより細かく分割し、痕跡の微細な揺れを炙り出す。
ルルカは尾の振動を強め、敵の心理的揺らぎを探る。
ミミは雷紋の範囲を巧みに操作し、痕跡と影の距離を測る。
戦場の中で、心理と物理の両方の戦いが同時に進行する。
影狼やゴブリンの群れを斬り、跳ね返し、捕縛しつつ、同時に二の牙の痕跡の真偽を読み解く――その複雑な戦闘に、全員の感覚は極限まで研ぎ澄まされる。
「行くぞ――光と影を斬り裂け!」
ナナシの号令と共に、《無銘の牙》の連携が炸裂する。
プルリの光が影狼を分断し、ルルカの尾がオークとゴブリンの連携を寸断する。
ミミの雷紋が跳躍するボアを捕らえ、ナナシの剣が影の塊を切り裂く。
牙を受け、尾を受け、牙狼を受けつつ――彼らは噛み返す。
一度受けた攻撃を跳ね返し、数的不利を巧みな連携で凌ぎ、さらに痕跡の探索を同時に行う。
「くくっ……こいつは驚いた!!えぇ!!楽しくなってきたな、二の牙よ!俺らが驚いたのはいつぶりだ!?」
ヴァルグが影の中で嗤い、二の牙の幻影が同調する。
「フン、少しはやれるようだな。少しは、奴らに向き合ってやろう」
その声を聞き、ナナシは微笑む。
「牙はまだ折れていない……名を知らずとも、牙で示してやる」
戦場は混沌とした嵐の中、無銘の牙たちの光、尾、雷紋、剣が渦となって影を斬り裂く。
しかし同時に、二の牙の痕跡は戦場の別の方向に姿を現し、心理的圧迫をかける。誰が幻影で、誰が本物か。瞬き一つが命取りとなる、緊張の連続。
「ご主人様、右側、痕跡が動いたよ!」
ミミが耳をそばだてて警告する。
「了解……光を合わせて、尾を広げて伸ばす!」
ルルカが反応し、プルリが光を繊細に分散させる。
ナナシの剣は、瞬間の裂け目を見極め、斬撃を放つ。
影狼の群れが押し寄せる。ゴブリンの影が跳びかかる。
だが、無銘の牙たちの牙もまた押し返す。
斬撃、尾、光、雷――戦場は嵐そのものの音で満たされる。
そして、その刹那――痕跡のひとつがはっきりと形を変える。
二の牙の名は未だ明かされずとも、存在が確実に炙り出される瞬間だった。
ナナシは深く息を吸い込み、牙を研ぎ澄ます。
「……名を知らずとも、牙は牙に届く――行くぞ、全員!」
影の軍勢と心理戦の渦中、無銘の牙たちは噛み返し、影の牙を押し返し、二の牙を炙り出す戦いを続ける。
戦場は未だ終わらず、痕跡と幻影が入り混じる中で、読者はその緊迫と連携の鮮やかさに息を呑むことだろう。
――続く――
ここまでお読みいただきありがとうございます!
さらに加速する“牙の伝説”をどうぞお楽しみに!
次話の投稿は、明日朝方6時30分の予定です!('ω')ノ
引き続き『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』
略して『ナナクラ』をよろしくお願いいたします(^^)/