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『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』  作者: 焼豚の神!
第2章:『雷牙の狩場 ―覇雷獅王との邂逅―』
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第56話 「《影葬の追跡》――牙の迷宮突破」

お疲れ様です!


「影葬の追跡シャドウ・レクイエム」開始そうそうお互いで高度な知能戦が繰り広げられております!


二の牙の挑発に乗らず、【無銘の牙】の面々はやつを出し抜くことができるのか!!!


彼らがどこまで「一の牙」&「二の牙」に己の牙を突き立てることができるのか!!!


こうご期待ください!!!


また、頭の中でイメージしながら読み進めると物語とシンクロして面白いですよ(^^♪


最弱と呼ばれた従魔たちがどこまで進化するのか――


牙の刻が、これからも続いていきます!

岩壁の裂け目に潜む微かな痕跡――それは二の牙が巧妙に仕掛けた幻影であった。


 目に見えるものが真実とは限らない。進む者の意識を攪乱し、仲間同士の信頼さえも揺らがせる。結界内は静かだが、空気は厚く、重く、あたかも牙同士の心理戦を映す鏡のように圧迫していた。





*******





 プルリの光が裂け目を照らす。光は一瞬の閃光となり、微かに揺れる魔力の波が結界内を反射する。影狼の影と痕跡が重なり、道は二つに分かれたかのように錯覚させる。岩壁に反射する赤黒い月光と相まって、幻影は実体を持つかのように見える。


 ルルカが尾を床に叩きつけ、振動を拡散させる。細かく分散する波動が幻影の奥行きを測る。


「……ここは幻。右へ曲がるべき!」


 その声は冷静であると同時に、決して断定ではない。心理の罠を理解している者は、確信に潜む不安をも知っている。



 一瞬立ち止まるナナシ。視線は仲間を順に確認する。

「……引っかかるな。相手は俺たちの疑念を狙っている」




 ミミは耳を研ぎ澄まし、空間の微細な揺れを読む。魔力の微かな波動と呼吸の間にある隙間を解析し、虚実を見抜こうとする。

「右か……いや、左も微かに揺れている。これは……仕掛けだ!」



 プルリ、ルルカ、ミミ、ナナシ――四つの感覚が互いに補完しあい、疑念の罠を逆手に取る準備を整える。




 互いの呼吸のリズム、尾の振動、光の反射、耳で捉える微細な空気の揺らぎ。心理の罠を攻略する鍵は、感覚の総動員にある。


 時間はゆっくりと、しかし確実に流れる。結界内の静寂は、あえて間を作り、精神を試す。

 仲間の一挙手一投足、微かに震える指先、呼吸の変化――すべてが心理戦の材料となり、二の牙の目論見は絶妙に張り巡らされている。






 ナナシが剣を軽く握り直す。刃の冷たさが掌を通して心拍と同期し、決意を静かに高める。


 プルリは光をぎゅっと圧縮し、幻影に対抗する青白い閃光を結界に走らせる。揺れる魔力の波に光が走ると、幻影は裂け、視界の奥に本物の影狼の姿がわずかに現れる。




 ルルカの尾が床を叩き、振動を空間に波及させる。痕跡を偽装した影狼を押し戻す微細な力の制御は、尾の柔軟性と振動精度の賜物だった。



 ミミは耳で魔力の揺れを解析し、雷紋を設置する。電流が微細な空気の揺れを伝い、幻影の影狼を捕捉する。跳躍の軌道を読んだ雷紋が、敵の瞬間的な加速を封じる。



 ナナシが低く唸り声を漏らし、「行くぞ!」と叫ぶ。剣が舞い、空気を切り裂く。虚ろな影狼たちは次々と切り裂かれ、幻影と現実の境界が揺らぐ。

 《無銘の牙》たちは、静かにしかし確実に反撃を開始したのだ。





 プルリの触手が絡め、敵の動きを拘束する。ルルカの尾が振動で分断し、攻撃の流れを制御する。


 ミミの雷紋が予測軌道に電撃を走らせ、虚像を貫く。ナナシの剣が赤黒い影を切り裂くたび、敵の咆哮は錯乱の叫びへと変わる。


 影狼の群れは互いに衝突し、心理の迷路に陥ったまま攻撃の軌道を失う。

 結界内で光と影、振動と魔力が波打ち、四人の連携がまるでひとつの生命のように同期する。


 冷静さを保つ《無銘の牙》の動きが、攻勢を逆手に取り、心理罠をも崩す。


 赤黒い月光が結界の奥底を照らし、戦闘の嵐は瞬間の美学として浮かび上がる。刹那の光と影が重なり、振動が空気を切り裂き、魔力が電流となり舞う――四者の意識と体が完璧に交錯していた。





*******




 痕跡を突破した瞬間、ナナシの目が岩壁の奥に潜む気配を捉える。

 誰も姿は見えない。しかし、微かに魔力が揺れる――二の牙はまだ隠れている。


 プルリが光を最大まで放ち、岩壁の影を照らし、潜む魔力を可視化する。

ルルカの尾は警戒を維持し、空間の変化に即応する。ミミの雷紋は追跡軌道を補強し、未来の攻撃予測を読み取る。


 ナナシが剣を前に突き出す。赤黒い月光が刃に反射し、彼らの牙が再び剥かれる瞬間を鮮烈に示す。


「来い……噛みつかれるだけでは終わらん。俺たちも噛み返す」


 《無銘の牙》の反撃は、戦闘の波と心理の迷宮を一気に制圧する勢いで進む。

 影狼の群れは押し戻され、幻影の迷路は裂かれ、結界内には静かな緊張だけが残った。





*******




 残るのは、まだ正体を明かさぬ二の牙の痕跡だけ。

 ナナシたちは互いの眼差しで確認し、刹那の呼吸で次の波に備える。


 結界の時計――「時の紋刻(クロノス・ルーメン)」が静かに告げる。

《残刻五十一環(51分)》


 影狼の咆哮は完全には収まらず、心理罠も完全には解除されていない。

 だが、噛みつかれた者たちは、噛み返す。


 赤黒い月光の下、《無銘の牙》の反撃は、これからさらに牙を研ぎ澄ますことを示していた。


 互いの感覚を信じ、連携を研ぎ澄まし、心理の迷宮を突破した者たちは、

次なる戦いへの一歩を踏み出す。


 そして、結界の奥深く、二の牙の潜む暗闇は、まだ牙の試練を待ち続けている。



――続く――



ここまでお読みいただきありがとうございます!


さらに加速する“牙の伝説”をどうぞお楽しみに!


次話の投稿は、明日夕方17時10分の予定です!('ω')ノ


引き続き『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』

略して『ナナクラ』をよろしくお願いいたします(^^)/

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