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『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』  作者: 焼豚の神!
第2章:『雷牙の狩場 ―覇雷獅王との邂逅―』
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第54話 「《影葬の追跡・顕現せし魔の影狼》――暗闇の駆け引き」

お疲れ様です!


「影葬の追跡シャドウ・レクイエム」開始そうそうお互いで高度な知能戦が繰り広げられております!


二の牙の挑発に乗らず、【無銘の牙】の面々はやつを出し抜くことができるのか!!!


彼らがどこまで「一の牙」&「二の牙」に己の牙を突き立てることができるのか!!!


こうご期待ください!!!


また、頭の中でイメージしながら読み進めると物語とシンクロして面白いですよ(^^♪


最弱と呼ばれた従魔たちがどこまで進化するのか――


牙の刻が、これからも続いていきます!

赤黒い月光は結界の奥底を淡く照らし、瘴気の霧がそれに揺らめく。


先ほどまでの戦闘の熱気はすっかり消え、空気は鋭く冷たい。だが、この静寂は欺瞞に満ちていた。



影狼の群れは完全には退いたわけではなく、暗闇の中に獲物を狙う牙の気配が漂う――まるで結界そのものが呼吸しているかのように、漆黒の波動が微かに震えていた。


 ナナシは剣を片手で握り、もう一方の手で結界の歪みに目を配る。筋肉に残る戦闘の疲労を感じながらも、頭の中は次の行動を計算していた。


「……二の牙の痕跡を確認しながら、安全な道を選ぶ」


 言葉は小さくとも、声の芯には冷徹な決意が宿る。


 プルリは体を細く伸ばし、光を最小限に抑えて結界内を滑るように移動する。触手が地面に触れるたび、微かな振動が返ってきて、先行する影狼の気配を察知する。


「……前方、影が二つ……でも、どちらが先に動くかはわからない」


 青白い光を控えめに発しながら、プルリの体は結界の隅々まで敏感に反応していた。


 ルルカは尾を地面にそっと押し付け、振動板のように空間の波動を読み取る。尾先に微細な振動が伝わり、足跡の断片を拾い上げる。


「右側の通路は微細な足跡……しかし、一部は消されている。誰かが意図的に痕跡を隠したな」


 尾先の震えが微妙に伝わる。誰が、何のために――ルルカの頭の中に疑念が膨らむ。もし、この痕跡が罠なら、油断は命取りになる。


 ミミは耳を最大限に立て、空気の震えを解析する。


「……ナナシ、プルリ、ルルカ、全員、警戒しろ。二の牙はここに潜むかもしれない」


 声には微妙な震えが含まれ、緊張がほとばしる。互いを信じるしかないが、同時に警戒の目を解くことはできない。






*******





 影狼の気配は森の暗闇に潜む獰猛な息吹となり、四人を取り囲むように

迫る。


 ナナシは一歩一歩慎重に足を置く。剣先で結界の微細な歪みを感じ取り、

障害物や隠れた敵を読み解く。


「……ここを抜ければ、一旦は安全圏……か」


 プルリは触手を周囲に巡らせ、光を瞬間的に散らして影狼の侵入を防ぐ。


「……でも、油断はできない……まだ全員じゃない」


 結界の暗闇は深く、いつ牙が再び飛び出すか予測できない。


 ルルカは尾を前後に振り、地面の微細な振動から影狼の位置を割り出す。


「……追ってくる気配……だが、こちらも痕跡を見逃せない」


 影狼の咆哮が遠くから響く。振動が結界全体を伝わり、全員の神経が研ぎ澄まされる。逃げながらも、常に攻撃の可能性を意識し、二の牙の痕跡を最短距離で追う必要がある。





 朽ちた岩壁、瘴気で霞む森の床、擦れた尾跡、微かな魔力の残滓――ナナシたちは見逃さず拾い上げる。


 しかし、それぞれの動作の裏には、互いへの疑念が潜む。


 ナナシはふと、ルルカの尾先の微細な振動が、自分の動きを先読みしているかのように感じた。


「……ルルカ、何を考えている……?」


 少しでも油断すれば、立場は逆転する。剣の振りよりも鋭く、心理の駆け引きが心を刺す。


 プルリもまた、ナナシの目つきの冷たさに気づく。


「……やはり、全員、警戒している……でも、あえて素早く動かないと、二の牙に先を越される」


 ルルカは尾先でわざと微細な振動を混ぜ、他の二人の意図を探る。


「……ナナシ、プルリ、反応はどうか……少し探ってみる」


 尾の振動は微妙にずれ、疑念と信頼の狭間を測る心理戦だった。


 ミミは耳を尖らせつつ、二の牙の残した魔力痕を読み取る。


「……あの符号……意図的に残されている……?」


 残された痕跡は、「追え」と囁くようでありながら、同時に罠の匂いも含んでいた。




 影狼の遠吠えが暗闇に響き渡る中、四人は互いの動作、呼吸、視線を微妙に読み合う。


 誰が先に二の牙に辿り着くのか――知りたい、しかし知られてはならない。


 ナナシは内心で計算する。


「……プルリは光で敵を欺く……でも、俺を欺く可能性もある……」


 プルリは思う。


「……ナナシは剣の振りで判断する……尾の動きで揺さぶるか……」


 ルルカは尾の微細な振動に混じる心理を読み取りつつ、自身の疑念を巧妙に隠す。


「……誰が本当に味方で、誰が先に動く……?」


 ミミは耳を澄まし、他の三人の呼吸や視線を解析する。


「……見極めなければ、二の牙に先を越される……」


 信頼と疑念が混ざり合う微妙な空間で、互いを試しながら、確実に前へ進まねばならない。






*******





 赤黒い月光が揺れる結界の中、四人の影と足跡が交錯する。


 影狼の気配は迫り、二の牙の痕跡は揺らぎ、信頼と疑念は複雑に絡み合う。


 ナナシたち《無銘の牙》は互いの一瞬の視線で意思を確認し、刹那の呼吸で次の行動を選ぶ。


 影狼が迫る中、二の牙の謎は深い。しかし追跡の手は止められない――


 四人の心理戦は、戦闘よりも鋭く、密やかに空間を切り裂いていた。


 森の影、瘴気、微かな魔力の残滓――それらは、戦いを終えたはずの四人に、さらなる試練を与え続ける。


 刹那の沈黙の中、微細な足音、尾の触れ合い、呼吸の変化――全てが意味を持つ。


 互いを試し、騙し合いながらも、目的は一つ。二の牙に辿り着き、結界の支配を取り戻すこと。


 赤黒い月光の下、《無銘の牙》の追跡は、静かに、しかし確実に続いていた。





――続く――



ここまでお読みいただきありがとうございます!


さらに加速する“牙の伝説”をどうぞお楽しみに!


次話の投稿は、明日夕方17時10分の予定です!('ω')ノ


引き続き『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』

略して『ナナクラ』をよろしくお願いいたします(^^)/

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