第54話 「《影葬の追跡・顕現せし魔の影狼》――暗闇の駆け引き」
お疲れ様です!
「影葬の追跡」開始そうそうお互いで高度な知能戦が繰り広げられております!
二の牙の挑発に乗らず、【無銘の牙】の面々はやつを出し抜くことができるのか!!!
彼らがどこまで「一の牙」&「二の牙」に己の牙を突き立てることができるのか!!!
こうご期待ください!!!
また、頭の中でイメージしながら読み進めると物語とシンクロして面白いですよ(^^♪
最弱と呼ばれた従魔たちがどこまで進化するのか――
牙の刻が、これからも続いていきます!
赤黒い月光は結界の奥底を淡く照らし、瘴気の霧がそれに揺らめく。
先ほどまでの戦闘の熱気はすっかり消え、空気は鋭く冷たい。だが、この静寂は欺瞞に満ちていた。
影狼の群れは完全には退いたわけではなく、暗闇の中に獲物を狙う牙の気配が漂う――まるで結界そのものが呼吸しているかのように、漆黒の波動が微かに震えていた。
ナナシは剣を片手で握り、もう一方の手で結界の歪みに目を配る。筋肉に残る戦闘の疲労を感じながらも、頭の中は次の行動を計算していた。
「……二の牙の痕跡を確認しながら、安全な道を選ぶ」
言葉は小さくとも、声の芯には冷徹な決意が宿る。
プルリは体を細く伸ばし、光を最小限に抑えて結界内を滑るように移動する。触手が地面に触れるたび、微かな振動が返ってきて、先行する影狼の気配を察知する。
「……前方、影が二つ……でも、どちらが先に動くかはわからない」
青白い光を控えめに発しながら、プルリの体は結界の隅々まで敏感に反応していた。
ルルカは尾を地面にそっと押し付け、振動板のように空間の波動を読み取る。尾先に微細な振動が伝わり、足跡の断片を拾い上げる。
「右側の通路は微細な足跡……しかし、一部は消されている。誰かが意図的に痕跡を隠したな」
尾先の震えが微妙に伝わる。誰が、何のために――ルルカの頭の中に疑念が膨らむ。もし、この痕跡が罠なら、油断は命取りになる。
ミミは耳を最大限に立て、空気の震えを解析する。
「……ナナシ、プルリ、ルルカ、全員、警戒しろ。二の牙はここに潜むかもしれない」
声には微妙な震えが含まれ、緊張がほとばしる。互いを信じるしかないが、同時に警戒の目を解くことはできない。
*******
影狼の気配は森の暗闇に潜む獰猛な息吹となり、四人を取り囲むように
迫る。
ナナシは一歩一歩慎重に足を置く。剣先で結界の微細な歪みを感じ取り、
障害物や隠れた敵を読み解く。
「……ここを抜ければ、一旦は安全圏……か」
プルリは触手を周囲に巡らせ、光を瞬間的に散らして影狼の侵入を防ぐ。
「……でも、油断はできない……まだ全員じゃない」
結界の暗闇は深く、いつ牙が再び飛び出すか予測できない。
ルルカは尾を前後に振り、地面の微細な振動から影狼の位置を割り出す。
「……追ってくる気配……だが、こちらも痕跡を見逃せない」
影狼の咆哮が遠くから響く。振動が結界全体を伝わり、全員の神経が研ぎ澄まされる。逃げながらも、常に攻撃の可能性を意識し、二の牙の痕跡を最短距離で追う必要がある。
朽ちた岩壁、瘴気で霞む森の床、擦れた尾跡、微かな魔力の残滓――ナナシたちは見逃さず拾い上げる。
しかし、それぞれの動作の裏には、互いへの疑念が潜む。
ナナシはふと、ルルカの尾先の微細な振動が、自分の動きを先読みしているかのように感じた。
「……ルルカ、何を考えている……?」
少しでも油断すれば、立場は逆転する。剣の振りよりも鋭く、心理の駆け引きが心を刺す。
プルリもまた、ナナシの目つきの冷たさに気づく。
「……やはり、全員、警戒している……でも、あえて素早く動かないと、二の牙に先を越される」
ルルカは尾先でわざと微細な振動を混ぜ、他の二人の意図を探る。
「……ナナシ、プルリ、反応はどうか……少し探ってみる」
尾の振動は微妙にずれ、疑念と信頼の狭間を測る心理戦だった。
ミミは耳を尖らせつつ、二の牙の残した魔力痕を読み取る。
「……あの符号……意図的に残されている……?」
残された痕跡は、「追え」と囁くようでありながら、同時に罠の匂いも含んでいた。
影狼の遠吠えが暗闇に響き渡る中、四人は互いの動作、呼吸、視線を微妙に読み合う。
誰が先に二の牙に辿り着くのか――知りたい、しかし知られてはならない。
ナナシは内心で計算する。
「……プルリは光で敵を欺く……でも、俺を欺く可能性もある……」
プルリは思う。
「……ナナシは剣の振りで判断する……尾の動きで揺さぶるか……」
ルルカは尾の微細な振動に混じる心理を読み取りつつ、自身の疑念を巧妙に隠す。
「……誰が本当に味方で、誰が先に動く……?」
ミミは耳を澄まし、他の三人の呼吸や視線を解析する。
「……見極めなければ、二の牙に先を越される……」
信頼と疑念が混ざり合う微妙な空間で、互いを試しながら、確実に前へ進まねばならない。
*******
赤黒い月光が揺れる結界の中、四人の影と足跡が交錯する。
影狼の気配は迫り、二の牙の痕跡は揺らぎ、信頼と疑念は複雑に絡み合う。
ナナシたち《無銘の牙》は互いの一瞬の視線で意思を確認し、刹那の呼吸で次の行動を選ぶ。
影狼が迫る中、二の牙の謎は深い。しかし追跡の手は止められない――
四人の心理戦は、戦闘よりも鋭く、密やかに空間を切り裂いていた。
森の影、瘴気、微かな魔力の残滓――それらは、戦いを終えたはずの四人に、さらなる試練を与え続ける。
刹那の沈黙の中、微細な足音、尾の触れ合い、呼吸の変化――全てが意味を持つ。
互いを試し、騙し合いながらも、目的は一つ。二の牙に辿り着き、結界の支配を取り戻すこと。
赤黒い月光の下、《無銘の牙》の追跡は、静かに、しかし確実に続いていた。
――続く――
ここまでお読みいただきありがとうございます!
さらに加速する“牙の伝説”をどうぞお楽しみに!
次話の投稿は、明日夕方17時10分の予定です!('ω')ノ
引き続き『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』
略して『ナナクラ』をよろしくお願いいたします(^^)/