第44話 「影葬の追跡 当日の朝」
お疲れ様です!
さあ!
「影葬の追跡」の本番当日の朝を迎えました!
彼らの牙の誇りを!牙の威力を魅せるとき!
また、頭の中でイメージしながら読み進めると物語とシンクロして面白いですよ(^^♪
最弱と呼ばれた従魔たちがどこまで進化するのか――
牙の刻が、これからも続いていきます!
――空気が澄んでいる。
夜の闇を押しのけるように、朝の光が村を包んでいた。
鳥の囀りはまだ控えめで、静寂の中にわずかなざわめきが混ざり始める時刻。
「影葬の追跡」の当日が、こうして訪れた。
ナナシはいつもの癖で、人より早く目を覚ましていた。
体を起こし、窓の外に視線をやる。薄明の空に浮かぶ星はもう淡く、代わりに朝日が地平を染めていた。
深呼吸を一つ。冷たい空気が肺を満たし、体を引き締める。
(――さて、そろそろあいつらを起こすか)
そう思い、立ち上がりかけた瞬間――ふと気配を感じて足を止めた。
*******
いつもなら、布団に潜り込んでゴロゴロしているはずの三人。
だが今朝は違った。
まず、プルリが音もなく布団から滑り出す。
小さな身体をぴんと引き締め、ぷるんと震わせて形を整えると、透き通る体をきらきらと光に揺らしながら立ち上がった。
その姿には、もう「怠けスライム」の影はなかった。
続いてミミがむくりと起き上がる。
普段なら「うぅ〜ん、あと五分……」と布団にしがみついて離れない彼女が、今朝は違う。
耳をぴんと立て、尻尾を小さく揺らしながら素早く身支度を整える。
まだ不安はある。けれど、その表情は恐れを超えて「戦士の顔」になっていた。
そして最後に、ルルカが目を開いた。
もとより彼女は寝起きの良い方だったが、今日の目つきは一層鋭い。
爬虫類の瞳が冷たい光を宿し、気配そのものが戦場を見据える戦士のものへと変わっている。
――三人は、もうナナシに起こされることなく立ち上がっていた。
その光景を見て、ナナシは思わず口の端を緩めた。
(……やるじゃねぇか、お前ら)
これまで何度も、彼が起こさなければ朝が始まらなかった。
布団にしがみついて眠気と格闘するのが日常だった彼女たち。
それが今、誰一人として遅れを取らず、静かに戦支度を整えている。
その姿は、まぎれもなく「牙を磨いた戦士」そのものだった。
「お前ら……今日は俺の出番がないらしいな」
ナナシがからかうように声を掛けると、三人は同時に振り返った。
「ふふん、当たり前!」ミミが小さく胸を張る。
「……今日は、ちゃんと戦士だから」プルリも照れながら頷く。
「油断するな。これからが本番だ」ルルカは短く言い切った。
そのやり取りに、ナナシは心の奥から満ちる誇らしさを噛みしめる。
恐怖も不安もあるだろう。それでも、彼女たちは自分で立ち上がり、歩き出そうとしている。
――それが、何よりの成長の証だった。
*******
身支度を終えると、四人は食堂へ向かった。
ナナシは鍋に火を起こし、用意していた干し肉と野菜を刻んで煮込む。
そこに卵を割り入れ、最後に塩と香草を加えれば、香り高いスープができあがる。
プルリが器用にみょ~んと体を伸ばして器を並べ、ミミがパンを切り分ける。ルルカは調味料の分量を正確に量り、ナナシに渡す。
――手際の良さもまた、これまでの訓練で自然と身に付いたものだった。
「よし、できたぞ。今日は特別に多めだ」
ナナシがスープをよそいながら言うと、三人の顔がぱっと明るくなった。
湯気の立つ皿を前に、四人はしばし黙って手を合わせる。
そして一口、スープを啜ると、体の芯まで温かさが広がっていった。
「……おいしい」プルリが小さな声で呟く。
「うん、なんだか体が元気になる!」ミミが尻尾をぱたぱたと振る。
「うん……温まる」ルルカはわずかに口元を緩めた。
食卓を囲む時間は、束の間の安らぎだった。
明日など来なければいいと願った夜もあった。
だが今は違う。明日が来ることを恐れるより、その時に備える心で満ちていた。
食事を終えると、四人はそれぞれの装備を整えた。
ミミは短剣を腰に、プルリは体を包むように魔道布を纏い、ルルカは愛用の剣を背に背負う。
ナナシは外套を羽織り、背中に大剣を負った。
玄関に立ち、ドアノブに手をかける。
まだ朝の光は柔らかい。だが、その一歩の先には――「影葬の追跡」という試練が待っている。
ナナシは振り返り、三人を見つめた。
「――行くぞ。《無銘の牙》」
三人は強く頷き、その瞳に迷いはなかった。
プルリの瞳は柔らかな光を、ミミの瞳は小さな炎を、ルルカの瞳は鋭い刃を宿していた。
四人の気配が揃った瞬間、玄関が開かれる。
新しい朝の風が彼らを迎え、戦いの始まりを告げるように吹き込んできた。
――「影葬の追跡」決戦の舞台へと、彼らは歩み出した。
――続く――
ここまでお読みいただきありがとうございます!
さらに加速する“牙の伝説”をどうぞお楽しみに!
次話の投稿は、明日夕方17時10分の予定です!('ω')ノ
引き続き『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』
略して『ナナクラ』をよろしくお願いいたします(^^)/




