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『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』  作者: 焼豚の神!
第2章:『雷牙の狩場 ―覇雷獅王との邂逅―』
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第40話「違和感の刃――四拍子の稽古」後編

お疲れ様です!


今回から最終調整日の《無銘の牙》の鍛錬回のお話に入ります!

「影葬の追跡シャドウ・レクイエム」の本番前の最終調整回を是非お楽しみください!


頭の中でイメージしながら読み進めると物語とシンクロして面白いですよ(^^♪


最弱と呼ばれた従魔たちがどこまで進化するのか――


牙の刻が、これからも続いていきます!

「午後はミニ・シナリオで詰める。題は『木を隠すなら森の中、人を隠すなら人の中』」


 集落の路地へ移動する。行き交う人、人。

 ナナシは小声で告げた。「二の牙は“近くで見る”癖がある。見晴らしの良さより、視線の回転数を好む。角、曲がり、出入り口、**“半歩だけ視界が切れる場所”**を巡回する」



 ルルカが即答。「角、段差、ひさし。陰と陽の境目」

 ミミは屋根を仰ぐ。「煙突の風向き。煙が歪む位置」

 プルリは地べたに目をやる。「人の足跡じゃない“薄跡”……」



 ナナシが頷く。「三線で“待ち伏せ線”を引け。俺が路地を一周する。三人は二の牙なら“ここに居たい”地点を選んで待て。見つけるのではない、見つけさせる」




 しばらくして——

 角の庇の下、逆光で顔が見えにくい場所にミミ。

 段差上の影にルルカ。

 井戸脇の、声が集まって散る位置にプルリ。



 ナナシが何気ない通行人として一周、二周……三周目で足を止める。

 足が止まる瞬間、三方向から**“違和感の矢”**が同時に刺さる。

 ナナシは思わず笑った。「“近くで見る”俺を、近くで待ったな」


 ミミが鼻を鳴らす。「二の牙、こういうの好きでしょ?」

 ルルカの尾が揺れる。「視線の回転を、こちらが制御した」

 プルリは胸を張る。「ぼく、まんなかで待ってた!」


「合格だ。これで“人の中の違和感”にも手が届く」







■小休止と内観


 日が少し傾き、井戸端の影が伸びる。

 水を分け合って喉を潤したあと、ナナシは短く目を閉じた。全員の呼吸が揃っている。午前と違い、拍は静かに、深くなった。


(——伸びている。だが、まだ足りない。二の牙の反応速度は、この倍速い。肝は迷わないことだ)


「最後、もう一つ。“迷いの殺し方”を仕込む」


 三人が顔を上げる。




「違和感は仮説だ。仮説は裏切る。だから最後に一手だけ、約束を決める」


 ナナシは地面に小さな×印を三つ描いた。「ミミ、“音が消えたら半歩前”。ルルカ、“影が詰まったら右回り”。プルリ、“空気が冷えたら中心へ入る”。——この三つ、迷ったら必ずやる。理由は後で良い。身体が先」


 ミミが握り拳。「了解!」

 ルルカが頷く。「身体の先行権」

 プルリが深呼吸。「ぼく、できる」


 最後のセット。風鈴、布幕、雑踏、路地の角——今までの要素を全部混ぜる。

 ナナシは“虚”と“実”の違和感を高速で織り交ぜ、三人の仮説を揺さぶる。

 だが、次の瞬間——


 ミミが半歩前へ。

 ルルカが右回りに踏み込む。

 プルリが中心を取る。


 三つの約束が三角を描き、空間の逃げ道を塞いだ。

 布が大きく沈み、杭が一本、きぃ、と悲鳴を上げる。


「——決まった」



 ナナシの低い声と同時に、三人の肩がほどけた。

 ミミは目尻をぬぐい、「いまの……迷わなかった」

 ルルカは肩で息をしながら、「約束の一手で、思考の渋滞が消えた」

 プルリは満面の笑み。「ぼく、まんなか“に居られた”!」


 ナナシは三人の頭に順に手を置いた。

「よくやった。違和感=成長を、武器に変えた。四拍子、二段拍、連、約束。——お前たちの“牙”は、もう“見えない相手”に届き始めてる」








■夕暮れの仕上げ――模擬・影葬一〇分戦


「締めるぞ。模擬・影葬。刻限は一〇分。俺が“一と二の牙”の“気配だけ”を再現する。目的は“捕捉ではなく、逃がさない”感覚を体に焼くこと」


 空が橙に染まり、長い影が丘を這う。

 合図——


 風が切れ、布が揺れる。

 ミミの耳が鳴り、音片が飛ぶ。

 プルリの触地図が開き、冷えの点が浮く。

 ルルカの陰矢が走り、交点が刺さる。


 三人の動きはもう“手探り”ではない。拍で生き、約束で迷いを殺し、連で重なる。

 ナナシの“虚”は三度三度、辛うじてすり抜ける。

 が、八分目、路地の角で——


「そこ」

 三つの声が重なり、逃げ道の三角が再び閉じた。

 ナナシは一歩、わざと遅らせ、布幕を押し下げる。合図の代わりだ。


 静寂。

 呼吸だけが聞こえる。


「終い」



 三人の膝が同時に抜け、土の上に座り込む。汗、熱、痺れるような達成感。

 ミミが笑いながら倒れ込む。「はぁ……“見えない”のに、“掴めた”」

 プルリが胸に手を当てる。「ぼくの“ぷるぷる”、役に立った」

 ルルカが空を仰ぐ。「四拍子が、骨に入った気がする」


 ナナシは夕陽に目を細めた。

(間に合う——いや、間に合わせる。ここまで来たのなら)








■翌日への橋


「今日はここまで。体を冷やすな。帰ったらストレッチ、湯、飯。飯は牙の源だ。忘れるな!」


「「「了解!」」」


 丘を下る足取りは、朝よりも軽い。

 通り過ぎる草が三人の膝に触れ、その触感すら彼女たちには**“違和感”の学び**に変換されていく。

 風が鳴り、布の残り香が夕空にほどける。

 四人の影は長く、しかしぶれずに伸びていた。


 違和感は恐れではない。研ぎ澄まされた“はじまりの鈴”だ。

 それを合図にする術を、彼らは今日、確かに自分のものにした。


 明日——《影葬の追跡シャドウ・レクイエム》最終日へ。

 “視えない牙”に、彼らの“連ねた違和感”が届くかどうか。

 勝負は、もうすぐそこだ。




――続く――



ここまでお読みいただきありがとうございます!


さらに加速する“牙の伝説”をどうぞお楽しみに!


次話の投稿は、明日朝6時30分の予定です!('ω')ノ


引き続き『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』

略して『ナナクラ』をよろしくお願いいたします(^^)/

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