表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』  作者: 焼豚の神!
第2章:『雷牙の狩場 ―覇雷獅王との邂逅―』
59/130

第35話「影を斬るために ― 情報整理と特訓」

お疲れ様です!


今回から、また《無銘の牙》の鍛錬回です!

頭の中でイメージしながら読み進めると物語とシンクロして面白いですよ(^^♪


最弱と呼ばれた従魔たちがどこまで進化するのか――


牙の刻が、これからも続いていきます!

夜が明けきらぬ静かな時間。

 クランハウスの談話室に、四人の影が集っていた。

 テーブルには昨夜から片付け損ねたランタンが灯っており、淡い光が彼らの表情を浮かび上がらせる。


 その表情は、どれも疲れと緊張に彩られていた。



「……あれが、《二の牙》」

 最初に口を開いたのはルルカだった。

 真剣な眼差しを伏せ、組んだ指先に力を込める。



「声だけかと思ったら、姿も……いや、“姿のようなもの”が見えた。でも、見たのに掴めなかった。あんなの、今までの敵とはまったく違う」



 ミミは尻尾を丸め、肩をすくめながら吐き出した。

「う、うん……目で追ってるのに、すぐ霞んじゃうの! 影なのか霧なのか、わたし……怖くて……」


 プルリは珍しく、明るさを見せず黙っていた。

 おずおずと手を上げると、小さな声で言う。

「でも……あの時、ナナシがちょっと前に出たとき、二の牙……“ビクッ”ってした気がする」


 その言葉に、視線が自然とナナシに集まった。


 ナナシは静かに頷く。

「……ああ。俺もそう感じた。ほんの一瞬だけだが、確かに目が合った」



「目が……合った?」

 ルルカの瞳が大きく開かれた。


「奴は、自分の姿を掴ませない。だが、ほんの刹那、俺には“視線を返してきた”気配があった。見られた、じゃない。確かに――“見合った”んだ」



 ミミがごくりと唾を呑む。

「じゃあ……ナナシは、二の牙のことをちゃんと見たの……?」



「いや、輪郭を掴んだとは言えない。だが、手応えはあった。つまり、絶対に斬れない相手じゃないってことだ」


 その言葉に、沈んでいた空気がわずかに持ち直した。








■ 二の牙の情報整理


 ナナシは、机の上に羊皮紙を広げ、短くまとめ始めた。


「情報を整理しよう」


声:男にも女にも聞こえる。不明瞭。


姿:見ているのに脳が理解できない。霧や影に近い。


接触:実体感はないが、視線だけは確かに存在する。


行動:『今日はたまたま』『あと二日ある』と発言 → 期限に拘束されている?


感情:愉快そうに語るが、底には冷たさがある。



「……こうして書き出してみると、正体不明だけど、不死身とか不可能ってわけじゃない気がするな」


 ナナシは淡々と語るが、その声の奥には熱が混じっていた。

 プルリも身を乗り出す。

「ナナシが見えたなら、みんなで協力すれば、ぜったい“捕まえられる”よ!」


 ナナシは深く息を吸い、仲間を見渡した。

「そうだ。だからこそ……次の二日間で、影を掴む訓練をする」







■ 特訓開始 ― 消える相手にどう挑むか


 その日の訓練は、談話室から続く広い中庭を使って始まった。


 ナナシは仲間たちの前に立ち、刀を構える。

「俺が“消える”役をやる。……とはいえ、二の牙ほどじゃないがな」


 そう言って気配を殺すと、瞬く間にナナシの姿はぼやけた。

 呼吸を抑え、足音を消し、影の間を移動する。

 仲間たちにとっては見慣れた“隠行”だが、あの《二の牙》を意識しての動きは、さらに鋭さを増していた。


「右だ! ……違う、後ろ!」

 ミミが叫ぶ。

 プルリはきょろきょろと目を動かし、必死に追おうとするが、すぐに見失う。

 ルルカは剣を握り、呼吸を整えて待ち構えていた――が。


「……!」

 ナナシが影から一歩抜け出した瞬間、彼女の前をすり抜けてしまう。


「まだまだだな」

 ナナシの声が後ろから響く。


 ルルカは悔しげに歯を噛んだ。

「見えているのに、斬れない……!」




 繰り返すほどに、失敗が積み重なっていく。

 ミミは次第に声を荒げ、

「もう! どこ行ったの!? これじゃ絶対無理だよ!」

 と地団駄を踏む。


 プルリは唇を噛みしめ、

「うぅ……ぼく、役に立てないのかな……」

 と小さくつぶやいた。


 ルルカは黙り込み、ただ剣を振るい続けていた。

 だが、確かに疲労と苛立ちが溜まっているのが分かる。



 ――そんな中でも、ナナシは目を細めた。

「いい兆しだ」


「え……? どこが!?」とミミ。


「お前たちは今、“悔しい”と感じている。

 それは、掴み損ねた何かがあった証拠だ。

 二の牙に届かなくてもいい。だが、その一瞬を繰り返し感じ取れば、必ず見抜ける」



 その言葉に、三人の胸に再び火が灯る。


「……次は、絶対に見つけてやる」ルルカ。

「ぜったい捕まえる!」プルリ。

「今度は見逃さないんだから!」ミミ。



 額の汗は止まらず、喉も渇き切っていたが――誰一人として、諦めようとはしなかった。





――続く――


ここまでお読みいただきありがとうございます!


さらに加速する“牙の伝説”をどうぞお楽しみに!



次の投稿は、明日の夕方17時10分の予定です!('ω')ノ



引き続き『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』

略して『ナナクラ』をよろしくお願いいたします(^^)/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ