表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』  作者: 焼豚の神!
第2章:『雷牙の狩場 ―覇雷獅王との邂逅―』
57/122

第33話「地下空間の邂逅 ― 二の牙とその残響」

お疲れさまです!


今回は、《二の牙》の回です!

頭の中でイメージしながら読み進めると物語とシンクロして面白いですよ(^^♪


最弱と呼ばれた従魔たちがどこまで進化するのか――


牙の刻が、これからも続いていきます!


※冒頭のお話は前回のエピソードの最後の文章を模写しています。先に進みたい方は、スクロールして飛ばして頂いて全然大丈夫です!('ω')ノ



****************



地下の回廊は、ひたすらに冷たかった。

 水滴がぽたり、ぽたりと響き、石壁に反響するたびに心をざわつかせる。


 ナナシたちが一歩踏み出した瞬間――炎が揺らいだ。

 松明の火が風もないのに震え、その隙間に“声”が忍び込んだ。


「……そんなに怯えなくていいだろう?」


 その声は低くも高くもない。

 男の声のようでもあり、女の声のようでもある。

 耳に届くのに、方向が分からない。

 どこからともなく滲み、まるで闇そのものが語りかけてくるかのようだった。


「まだやらないさ。一の牙が言ったろう? あと二日あるんだ」


 その言葉に、プルリの小さな身体がびくりと震える。

 ミミは歯を食いしばり、尾を膨らませて警戒した。

 ルルカは唇を結び、指先に冷たい汗を感じていた。



 ナナシは一歩前に出る。

 気配を探ろうとする。

 ……だが、そこに「居る」と分かっているのに、目に映る輪郭が形を結ばない。


 黒い影が人の形を取ったかと思えば、風が集まり人影を形作ったかのようにも見える。

 確かに目で捉えているのに、頭がその全体像を理解できない。


 その異様さに、誰も言葉を発せなかった。


 影の存在は、沈黙を楽しむように間を取り、笑った気配を漂わせる。


「ふふ……楽しみを奪ったら、面白くないだろう。今日は――たまたまだ」


 その声は軽く、冗談めいていた。

 だが、底には一切の温度がなかった。

 人の情を拒絶する“無機質な虚無”だけが響いていた。


 次の瞬間、影は霧のように崩れ、跡形もなく掻き消えた。









■一の牙の声 ― 雷の煽り


 静寂を破ったのは、重々しい轟音だった。

 雷が遠くで鳴るような響きが、石壁を震わせる。


「……ほう、珍しいな」


 白雷の大銀狼が現れ、巨大な狼が地下を圧する。

 《一の牙》――ヴァルグ・ゼオグレイン。

 その金色の眼光が、影の消えた闇を愉快そうに射抜いていた。


「いつも興味なさそうにしているお前が、自ら出向くとはどういう了見だ?

 興味でも出たのか? んん〜?」


 挑発的な声に、空気がざわめいた。

 ほんのわずかに、残り香のような気配が影から返る。


「……お前に言われる筋合いはないさ」


「筋合い? くく、まぁいい。だがどうした?

 いつもの冷めたお前なら、こんな小僧どもを覗く真似はしないはずだが」


「ただ……ほんの少し、見てみたくなっただけだ」




 ヴァルグは口の端を吊り上げた。


「見てみたくなった? ふん、らしくもない。

 さては――怯えたか? それとも……惹かれたか?」


 挑発する狼に、影の牙はしばし沈黙し、淡々と答えた。



「怯え? 違う。惹かれた? それも違う。

 ……ただ、“この影を斬れるかもしれない”と思ったのさ」






■二の牙の内心 ― 揺らぐ影


 姿を消したその奥で、《二の牙》は独りごちていた。


(……彼らは未熟だ。脆い。

 だが……一瞬、確かに私を“見る”視線があった)


 誰も触れられない。誰も気づかない。

 存在を掴ませぬことは、呼吸と同じ――自分の宿命。


 だからこそ、誰かに“見られる”などあり得ないことだった。


(ナナシ……あの人間、いや半獣人なのかあ奴は。フム...。。。。あの瞳、ほんの刹那だけ、私を捕らえたな。――それが、どうしようもなく胸をざわつかせる)


 心臓が軋む。

 それは恐怖ではない。

 だが、欲望とも違う。


 理解できない熱が、胸の奥に灯っていた。


(くだらない……私は試練。牙そのもの。

 彼らが強くなるために立ちはだかる“影”でしかない。

 だが――もしも、もしも……)


 その思考は、口にすることさえ憚られた。

 だが二の牙は、確かに感じていた。


 孤独に沈む己の奥底に、

 初めて“期待”のようなものが芽生えていることを。



――続く――



ここまでお読みいただきありがとうございます!


さらに加速する“牙の伝説”をどうぞお楽しみに!



また次の投稿は、明日朝6時30分の予定です!('ω')ノ



引き続き『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』

略して『ナナクラ』をよろしくお願いいたします(^^)/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ