第31話「地下に潜む影 ― 牙との遭遇」
お疲れ様です!
今回も、《二の牙》の回です!
頭の中でイメージしながら読み進めると物語とシンクロして面白いですよ(^^♪
最弱と呼ばれた従魔たちがどこまで進化するのか――
牙の刻が、これからも続いていきます!
夜の鐘が街に鳴り響くと、昼間の喧噪はすっと姿を消した。
市場の露店は閉ざされ、石畳の通りを行き交う人影はほとんどない。かわりに、風が路地を吹き抜け、木箱や紙屑をかさりと揺らす音だけが支配していた。
宿の一室で、四人は卓を囲んでいた。
中央には、昼間ギルドで受け取った依頼の紙。
「市場地下に潜む影を調査してほしい」とだけ書かれた、妙に簡潔な依頼文だ。
ナナシは静かに仲間を見渡した。
「準備はできているな。今日の探索はここからが本番だ」
ミミの耳はぴんと立ち、ルルカは唇を噛みしめて頷く。プルリはいつものにこやかな表情を浮かべていたが、その瞳には冷えた光が宿っている。
彼らは決意を胸に立ち上がり、街の暗がりへと歩み出した。
■ 市場の地下口
昼間は活気に溢れていた市場も、今は静まり返っていた。
石畳に残る香辛料の匂い、魚の名残り、果物の甘い香り。すべてが夜の闇に沈み、異様な空気を纏っている。
「ここだな」
ナナシが指さしたのは、市場の端にある倉庫の裏口。木製の扉には鍵がかかっていたが、すでに錆びついており、ナナシが力を込めると簡単に開いた。
軋む音を立てて開かれた先には、地下へと続く石造りの階段が口を開けていた。
ひんやりとした風が吹き上げ、湿った土と鉄の匂いが鼻をつく。
「……におう」
ミミが耳を伏せ、低く唸る。
「獣のような、でも人とも違う……。牙のにおいがする」
その言葉に、ルルカとプルリも無言で身を固めた。
■ 影の気配
四人は慎重に階段を降りる。
壁に灯された松明の炎が小さく揺れ、石造りの通路を不気味に照らし出す。
「足音を消せ」
ナナシが低く囁くと、三人は頷き、それぞれの動きを抑えた。
通路は入り組み、いくつもの分岐があった。
どこも同じように湿って暗い。だがナナシは迷わず進む。
「気配が……ある」
耳を澄ませれば、確かにどこかで水音のような、しかし規則性のある音が響いていた。
カツ、カツ、と石を叩くような響き。まるで「こちらへ来い」と誘うように。
ルルカは思わず囁く。
「罠かもしれない」
「それでも、行かねばならん」
ナナシは迷いなく答える。その背は鋭い刀のように揺るぎなく、三人はただその背を追った。
■ 不自然な静けさ
やがて広い空間へ出た。
そこは市場の地下倉庫だった。木箱や樽が積まれ、ところどころに食材や古びた道具が散乱している。
しかし、異様なのは――足跡だった。
砂埃の上に無数の足跡がついている。だが、いずれも途中でぷつりと途切れているのだ。
「消えてる……?」
ミミが尻尾を膨らませ、周囲を見渡す。
プルリがしゃがみ込み、指先で足跡をなぞった。
「……これは意図的。踏んだ痕跡を、どこかで上書きしてる。普通の人間にはできない芸当だよ」
ナナシは目を細める。
(やはり……“気配を断つ者”。二の牙に繋がる存在か)
緊張が空気を締め付ける中、ルルカが震える声で告げた。
「……見られてる」
■ 牙との遭遇
次の瞬間、空気が揺れた。
暗がりの奥から、ひときわ冷たい気配が流れ込んでくる。
「――ッ!」
ナナシが咄嗟に刀を抜いた。
刃が炎の光を反射し、闇を裂く。
そこに現れたのは、漆黒の影。
人の形をしているが、輪郭が溶けるように揺らぎ、目の部分だけが獣のようにぎらついていた。
「牙……」
ルルカが息を呑む。
影は音もなく動いた。まるで霧が流れるように四人を取り囲む。
ミミが跳び退き、プルリはすぐに魔法陣を描く。
「やっぱり、出てきたね……!」
プルリの声は震えていたが、その瞳は恐怖ではなく高揚に輝いていた。
ナナシは刀を構え、仲間たちの前に立つ。
「牙を見せろ……。俺たちがどれだけ研いできたか、試してやる」
影の牙が静かに口を開けた。
鋭い音もなく、ただ世界そのものを削るように――。
空気が凍りつき、四人の背筋に冷たい電流が走る。
戦いは、すでに始まっていた。
――続く――
ここまでお読みいただきありがとうございます!
さらに加速する“牙の伝説”をどうぞお楽しみに!
また、明日は脂が溜まってエネルギー満タンなので朝から投稿します。('ω')ノ
朝6時30分投稿予定です!
引き続き『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』
略して『ナナクラ』をよろしくお願いいたします(^^)/