表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』  作者: 焼豚の神!
第2章:『雷牙の狩場 ―覇雷獅王との邂逅―』
54/122

第30話「二日目の街 ― それぞれの足跡」

お疲れ様です!


今回は、《二の牙》の対策回です!

頭の中でイメージしながら読み進めると物語とシンクロして面白いですよ(^^♪


最弱と呼ばれた従魔たちがどこまで進化するのか――


牙の刻が、これからも続いていきます!

朝の鐘が鳴り響くと同時に、石畳の通りが一気に色を取り戻した。

 露店の軒先に吊るされた果物や布地、香辛料の匂いが風に混ざり、人々の掛け声が連なる。


 ミミは耳をぴんと立て、尻尾を振りながらその喧騒に飛び込んだ。

 「お魚屋さん! あ、パンの匂い! あっちはお肉!」

 彼女の動きは猫そのもの。興味の赴くままに駆け回り、露店の品を覗き込んでいく。


 しかし彼女の目的は食材ではない。

 「昨日、街で騒ぎがあったって聞いたんだけど……」

 耳をそばだて、通りの噂話を拾い集めるのが役目だった。



 老婆が「夜の鐘のあとに、不審な影を見た」と話している。

 商人が「倉庫から少しずつ物資が消えている」とぼやいている。

 若者たちが「裏路地で武装した連中を見た」と囁いている。



 それぞれは断片的で信ぴょう性に乏しい。だがミミは感覚で「危ない匂い」を嗅ぎ分けることができた。

 (……やっぱり、裏の動きがあるんだ。ナナシが言ってた“牙を隠す影”って、きっとここにも潜んでる)


 足を止め、彼女は露店の端で耳をそばだて続ける。

 群衆のざわめきの中から、次の手がかりを探して――。








■文献調査 ― プルリの静かな時間


 一方、街の中央にある古びた文庫。

 厚い扉を押し開け、ひんやりとした空気に包まれながらプルリは中へ入った。



 高い本棚が整然と並び、窓から差す光が埃をきらめかせる。

 「ぷる……」

 声を潜め、プルリは自分の体を椅子に沈めた。柔らかい身体はじわりと広がり、本と机に馴染む。



 彼女の目的は古い記録の中から、街に潜む「異変」の兆候を探すこと。

 積み重ねられた日誌をめくると、数年前から倉庫荒らしや失踪事件がぽつりぽつりと記されている。

 「……ふむ。最近だけじゃなくて、もっと前から“何か”はあったみたい」



 さらに古文書を読み進めると、ある言葉が繰り返し登場する。

 ――「牙持つもの」

 それは盗賊か、獣か、あるいは人の暗喩か。記録は曖昧で、真相をつかませない。



 プルリはページに指を滑らせながら、ぽつりと呟いた。

 「ナナシが言ってた“牙”……偶然じゃないかも」


 頭の中で点と点が結ばれ始める。だがまだ線にはならない。

 「もっと調べなきゃ……」

 彼女はさらに深い棚へと進み、埃まみれの記録を抱えて席に戻った。








■ ギルドでの情報収集 ― ナナシの歩


 重厚な扉を押し開くと、冒険者ギルドの喧騒が広がった。

 酒場を兼ねた大広間には朝から武装した者たちが集い、情報と依頼が飛び交っている。


 ナナシは人々のざわめきに惑わされることなく、静かにカウンターへ歩み寄った。

 「街で最近起きていることを知りたい」

 受付嬢の目を真っ直ぐに見据え、低い声で告げる。


 彼の名はすでに知られていた。剣の冴えを目の当たりにした者もいる。だからこそ、受付嬢は一瞬ためらったが、やがて小声で答えた。


 「……裏路地で、武装集団が暗躍しているという噂があります。ただ……誰も正体を見たことがない。足跡も消えてしまう」



 さらに別の冒険者が口を挟む。

 「俺の仲間も、夜に影を追ったが……気づけば後ろを取られていた。あれはただの盗賊じゃねえ」


 ナナシは眉をひそめる。

 (やはり、“気配を断つ者”が潜んでいる……)


 情報を聞き出すだけでなく、ギルドの掲示板にも目を向ける。そこには失踪や物資盗難の依頼が並んでいた。その中に一枚だけ、違和感を放つ依頼があった。


 ――「市場地下に潜む影を調査してほしい」


 ナナシはその紙を手に取り、静かに息を吐いた。

 (……地下、か。昨日ルルカが予想した通りだな)









■教会 ― ルルカの探求


 白い尖塔の教会は、朝日を浴びて神々しく輝いていた。

 ルルカは扉を押し開け、祈りの声に包まれた空間へ足を踏み入れる。


 修道女が優しく迎えるが、彼女はすぐに核心を突いた。

 「この街で最近、不審なことはありませんか」


 修道女は困ったように微笑む。

 「人々は恐れています。夜になると、街角で影を見たと……。ですが、私たちの祈りでは追い払えない」


 さらに奥へ進むと、古びた石碑があった。

 そこには「影に牙あり、影に呑まれし者は戻らず」と刻まれていた。


 ルルカは目を細め、静かに指先で石碑をなぞる。

 (影の牙……。まるで、ナナシの言葉をそのまま刻んだようだ)


 記録と伝承が重なり合い、何かが浮かび上がりつつあった。








■ 夕暮れの再会


 日が傾き始めた頃、四人は宿に戻った。

 それぞれが掴んだ手がかりを持ち寄り、卓を囲む。


 ミミは市場の噂を並べ立て、プルリは古文書の記録を広げる。

 ルルカは教会での伝承を語り、ナナシはギルドの依頼を卓上に置いた。


 四つの情報は不思議なほどに重なっていた。

 「影」「牙」「地下」「足跡を消す者」――


 静まり返る室内で、ナナシは仲間を見渡す。

 「……次の狩場は決まったな。地下だ」


 三人は息を呑み、やがて頷いた。

 橙色の光が窓から差し込み、四人の影を長く伸ばす。


 それはまるで、これから潜む“影の牙”に挑む覚悟を刻むようだった。





――続く――



ここまでお読みいただきありがとうございます!


さらに加速する“牙の伝説”をどうぞお楽しみに!


引き続き『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』

略して『ナナクラ』をよろしくお願いいたします(^^)/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ