第24話「街影に潜む牙 ― 隠す者たち」
お疲れ様です!
今回から鍛錬パートに入っています!
そしてナナシたちがさらに奮闘します!
最弱と呼ばれた従魔たちがどこまで進化するのか――
牙の刻が、これからも続いていきます!
昼下がりの陽光は、白い石畳の街を黄金色に染めていた。
市場のざわめき、行商人の呼び声、パンの焼ける香りと香辛料の刺激的な匂いが入り混じり、風に乗って流れてくる。
「じゃあ、やるぞ」
ナナシが広場の真ん中で《無銘の牙》の仲間たちを見渡した。
スライムのプルリは陽光を受けて透明な身体をきらきら輝かせ、コボルトのミミは犬耳をぴくぴくさせながらそわそわしている。リザードのルルカは相変わらず表情を変えず、尾を静かに揺らしていた。
「今日の訓練は“街かくれんぼ”だ。隠密と索敵の両方を鍛える。ルールは単純。隠れる側と探す側に分かれ、一時間以内に全員を見つけられたら探す側の勝ち。範囲は西門から東の商店街まで。街全体がフィールドだ」
プルリがぷるんと震えて手(?)を挙げる。
「勝ったら、晩ご飯のリクエストしていい?」
「いいぞ。ただし負けたら、後片付け担当な」
「うぐっ……やるしかない!」
ミミが鼻先をくいっと上げた。
「ふん、負けないからな!」
ルルカは短く「……勝つ」とだけ呟いた。
ナナシは腕を組み、わずかに口元を引き締める。
「じゃあ、最初は俺が鬼だ。三十数える間に散れ。……いーち、にー、さん……」
***
■ 三者三様の隠れ方
数え始めた瞬間、三人はまるで弾かれたように散った。
プルリは市場裏の細い路地へと滑り込み、古びた樽の並びの間にするりと入り込む。身体の色を樽と同じくくすんだ茶色に変化させ、光の反射も抑える。
ミミは屋根へ飛び移り、瓦の上を音もなく駆ける。煙突の陰にしゃがみ込み、耳を伏せて息を殺す。
ルルカは人混みの中へと消え、商人の荷車の影を利用して移動する。尾を服の下に巻き込み、ただの通行人のように紛れた。
「……二十七、二十八、二十九、三十」
ナナシが目を開け、広場を出る。
(まずは匂いと音……)
ナナシは路地へ入り、耳を澄ませた。遠くで金槌を叩く音、猫の鳴き声、そして――微かに、水面が震えるようなリズム。
(呼吸……か)
古びた樽の並びに近づき、指で軽く叩く。
「見ーつけたぞ、プルリ」
「ひゃっ!? なんでバレたの!? 色も変えてたのに!」
「色は完璧だった。だが、お前の体がほんの僅かに脈打ってた」
「……息止めてたのに〜!」
「止めるだけじゃダメだ。全身の揺れまで消せ」
しゅんと萎んだプルリは広場へ戻っていった。
***
次にナナシは空を仰ぎ、屋根の縁を追った。
(……影が、風で揺れない)
音を立てず壁を駆け上がり、瓦の上に出る。
「そこだ、ミミ」
「うわっ、はやっ!」
ミミは即座に逃げ、屋根から屋根へ飛び移る。風が耳をかすめ、瓦が足の下で鳴る。だが、その足音こそが居場所を知らせていた。
「お前、速さは十分だが……風の切れ方で足の運びがわかる」
「……そんなの気にしたこともないよ!」
捕まったミミも広場へ戻る。
残るはルルカ。ナナシは市場へ向かい、人波を観察する。
(……人混みの中、動きが一つだけ不自然だ)
果物屋の脇、止まっているはずの荷車がわずかに揺れた。普通なら風だと見過ごすだろう。だが、車輪の傾きがほんの一瞬だけ変わった。
「……そこだ」
ルルカは荷車の下からするりと抜け出し、人混みに紛れる。
しかしナナシは即座に追いつき、肩を軽く叩いた。
「見事だった。だが……俺からは逃げられねぇ」
ルルカは小さく頷き、広場へ戻った。
――続く――
ここまでお読みいただきありがとうございます!
さらに加速する“牙の伝説”をどうぞお楽しみに!
引き続き『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』
略して『ナナクラ』をよろしくお願いいたします(^^)/




