表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』  作者: 焼豚の神!
第2章:『雷牙の狩場 ―覇雷獅王との邂逅―』
41/118

第17話「静けさの牙」

おはようございます!

朝からありがとうございます!


さあ、これからグリス率いる【無銘の牙】たちの試練が待ち受けています!

そのためには、特訓あるのみ!!

ですが、特訓するにも、疲れていては話になりません!

今日はリラックス回です!



最弱と呼ばれた従魔たちがどこまで進化するのか――


牙の刻が、これからも続いていきます!

――闇が、音もなく閉じていった。

 ヴァルグ・ゼオグレインの巨躯を包み込んでいた影は、まるで沼地そのものに吸い込まれるように消えていき、そこにはただ、湿った夜気と月明かりだけが残された。

 最後に聞こえた低い声も、今はもう耳の奥に残響としてこびりつくだけだ。


 ナナシは、数瞬その場から動けなかった。

 姿が見えなくなっても、あの銀狼の気配は簡単には消えない――そう、思っていた。

 だが今、目を閉じて全神経を研ぎ澄ませても、何も感じられない。

 音も、匂いも、圧力のような存在感も、すべて霧のように消え去っている。





***



「……完全に、いなくなったな」

 自分の声がやけに大きく感じられた。


 その瞬間、背後からどっと力の抜ける音が響いた。

 振り向くと、プルリ、ミミ、ルルカの三体が、地面に吸い寄せられるように倒れ込んでいる。


「つ、疲れたぁ〜……」

 ミミが両手両足を投げ出し、泥を気にする余裕もなく仰向けになる。

 沼地の湿った匂いに、彼女の荒い息が混じった。


「ぷる〜……生きてるぷる……」

 プルリは体表のゼラチン質をゆるめ、べちゃりとした音を立てて広がる。体全体から安堵が滲み出ていた。


「ふぅ……心臓が……まだバクバクいってる……」

 ルルカは長い尻尾をだらりと垂らし、両腕で膝を抱え込むように座り込んでいる。鱗の間にうっすらと水滴がにじんでいた。


 三者三様の「生き延びた実感」がそこにあった。


 ナナシも、正直なところ、膝の力が抜けそうだった。

 銀狼の前で一瞬でも気を緩めれば、そのまま魂ごと呑まれていたかもしれない――その緊張が、背骨に張り付いていた。

 ふと、自分の手のひらを見れば、じっとりと冷たい汗で濡れている。


「……はは、流石に……緊張と疲労感がヤバイな」

 小さく笑って、深呼吸をひとつ。

 しかしその次の瞬間、ナナシは表情を引き締めた。


「でも……油断はできない」

 仲間たちの視線が、同時にこちらを向いた。


 ナナシは一拍置き、低い声で続けた。

「ヤツは言った。また三日後に会おうと。……あれはただの脅しじゃない。試練の告知だ」


「……」

 三体の間に、少しの間、沼地の湿った夜風だけが通り過ぎた。





***





「三日後まで、俺たちは生き延びるだけじゃ足りない。あの《影葬の追跡》で勝つための準備をしなきゃならない」

 ナナシは立ち上がり、月光を背にして仲間たちを見下ろした。

「特訓と対策――この三日間は、それにすべてを費やす」


 ミミが眉をひそめる。「特訓って……また無茶する気じゃないよね?」

「無茶じゃない。必須だ」

 ナナシは即答した。

「《ニの牙》は気配を断ち、姿を消す権化のような獣らしいからな。普通に探しても無駄だ。……だが、そいつは必ず近くにいる。性質を読めば、逆にこちらから誘き寄せられるらしい。」


「ぷる〜……誘き寄せるって、危なくないぷる?」

「危ない。でも、あいつの目を引ければチャンスもできる」

 ナナシはそう言いながら、頭の中で既に作戦の骨組みを組み立てていた。



「【二の牙】に関して、何か情報がないか明日ギルドにも問い合わせてみよう。後、文献なんかも探してみるか。」




 ルルカが長く息を吐いた。「三日……短いな」


「だからこそ、一刻も無駄にできない」

 ナナシの視線は、闇に沈む沼地の奥へと向いていた。


 ――そこには、何もない。

 はずだった。


 だが、ほんの一瞬、風と一緒に湿った葉擦れの音が届いた。

 仲間たちは気づかなかったようだが、ナナシの耳にはそれが確かに残った。

 誰かが、いや、“何か”が、暗がりで動いたような――。


 ナナシは何も言わなかった。

 その場でそれを口にすれば、せっかく安堵しかけた仲間たちの神経をまた極限まで張り詰めさせることになる。

 今は休ませるべきだ。


「……とりあえず、今夜は休もう。明日の朝から動く」

「う、うん……」

 ミミが立ち上がり、ルルカとプルリを促して歩き出す。


 月光に照らされた沼地の水面が、かすかに揺れた。

 その波紋が、仲間たちの背を見送るように広がっていく。


 ナナシは一歩遅れてその後を追いながら、心の奥で固く誓った。

 ――三日後、絶対に負けない。

 そのためなら、この夜の静けさすら、俺は武器にしてやる。


 闇は、何も答えなかった。

 ただ、遠くで水音がひとつ、静かに消えていった。




――続く――




ここまでお読みいただきありがとうございます!


やがて誰もが振り返る伝説の一頁が続きます!('ω')ノ


さらに加速する“牙の伝説”をどうぞお楽しみに!



さて、今日は気分がいいので、もう数本投稿しようと思います!

2回目の投稿は、いつもの時間17時10分を予定しています!


引き続き『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』

略して『ナナクラ』をよろしくお願いいたします(^^)/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ