表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』  作者: 焼豚の神!
第2章:『雷牙の狩場 ―覇雷獅王との邂逅―』
40/180

第16話「雷牙と影牙の遊戯(シャドウ・レクイエム 前奏曲)」

こんばんは!

本日3回目!

夜はすでに深く、沼地の空気は湿りを増していた。風は冷え、闇は水面を黒く塗り潰すように広がっている。

 その中心――銀白の巨躯が悠然と立っていた。白雷の大銀狼ヴァルグ・ゼオグレイン。その毛並みは月光を弾き返し、尾はゆるやかに揺れている。だが、その周囲にまとわりつく闇は、ただの夜陰ではなかった。まるで生き物のように蠢き、足元から肩口までを這い上がり、時折脈動している。


 ナナシは仲間たち――スライムのプルリ、コボルトのミミ、リザードのルルカ――と肩を並べ、その異様な存在を見据えていた。

 ここに来るまで、幾度も試練の名を耳にしてきたが、それをこうして正面から突きつけられると、空気は言葉を失い、緊張だけが残る。


 ヴァルグは尾をゆるりと振り、その双眸を細める。

「――これより話すは、《影葬(シャドウ)()追跡(レクイエム)》についてだ」


 その声は雷鳴の前触れのように低く、湿地の奥まで響いた。





***




■ 影葬の追跡のルール


「まず第一に、制限時間は一刻――、いや一刻では貴殿らもきついか。では、我が主の三柱にちなんで、三刻を制限時間としよう。現世で言うところの三時間だ。その刻限のうちに、《ニの牙》を見つけ出し、名を呼び、存在を暴けッ!」


 ヴァルグの視線は一人ひとりを順に射抜く。


「ただし、その間に我、あるいは我が影の分身に捕まれば試練は即座に終わる。触れられた瞬間、お前らは“影の口”に飲まれ、即時退場だ。肉体は無事だが、魂は雷の狭間を漂うことになる」



 プルリがぷるぷると震えた。

「ぷ、ぷる……それって……痛い?」


「痛みよりも、帰還までの時間がもったいなかろうな。あれは退屈で長い、雷鳴の中の眠りだ」

 ヴァルグの口元に、楽しげな牙の笑みが覗く。


「第二に、《影》に触れられたら失格だ。影は我が分身であり、爪牙そのものだと思え」

 ルルカが小さく唸る。「影が分身……面倒な相手ね」


「第三に、《ニの牙》は気配断ちの権化のような獣だ。我でも、見つけ出すのが苦労する。目で見ようとするな、匂いを追おうとするな。やつは森に溶け、群れに紛れ、姿を幻のように消す」


 ミミの耳がぴくりと動いた。「つまり、探すのはほぼ無理ってこと?」


「普通のやり方ではな」ヴァルグは頷く。


「第四――やつを見抜く唯一の手段は、性質を読むことだ。やつはひねくれ者。必ず近くで見ている。木を隠すなら森の中、人を隠すなら人の中。つまり、やつはお前たちのすぐ傍らに潜み、息を殺して見下ろしているはずだ。現に、お前たちが集落で救った村人にも化けていたぞ?」



「な……!」

「うそっ……」

「そんな……!」


 プルリ、ミミ、ルルカの3体は驚愕していた。



 そして、ナナシはその言葉を胸に刻んだ。――すぐ傍に、必ずいる。


「最後に、逃げ切るだけでも勝ちは勝ちだ。ただし、《ニの牙》を暴けなければ勝者は我が牙だ!」






***




■ 《ニの牙》の危険性


 ヴァルグは低く笑い、その銀の尾を一度だけ払った。


「《ニの牙》は、斥候と搦手を得意とする。敵陣の心臓を抉ることを何より好み、見つけた獲物は決して逃さぬ。我でも、一度見失えば探すのは至難の業よ」


 声に混じるのは、恐れではなく誇りだった。


「だがな……もう一度言う。やつは、性根がひねくれておる。獲物の近くで息を潜め、見守るのが趣味だ。お前たちの焦りや恐怖を観察する……それこそが、あやつの楽しみなのだ」





***




■ 駆け引きの始まり


 ヴァルグは突然、足元の影を広げた。


「だが、この試練――夜中にやってしまえば、我らに有利すぎて話にならぬ。明日では対策のしようがなく、お前たちにとってもつまらぬだろう。ゲームバランスが崩れて面白みに欠ける」



 巨狼の瞳が細く輝く。


「ゆえに、心優しい我から提案だ。三日後――明々後日の昼刻近く、十一刻から十三刻にかけての三時間を使って、この《影葬の追跡(シャドウ・レクイエム)》を開始しよう。これなら貴殿らも英気と策を練れるであろう!」



 ルルカが眉をひそめた。「三日後……ずいぶん余裕をくれるじゃない。」


「クカカ♬存分に対策せよ!」


ヴァルグは牙を光らせる。「我はそれを正面から噛み砕く!」



 ナナシが慎重に問う。「もし、その提案を断ったら?」


 ヴァルグは口角を吊り上げ、「それなら今すぐ挑むがよい。我の白雷の養分となるのみだ! フハハハハ♬」





***





■ 念話の伝達


 ナナシは即座にミミへ視線を向けた。「ミミ……あれを使えるか?」


 ミミは一瞬だけ迷ったが、うなずく。「まだ完全解除してないけど……やってみる!」


 次の瞬間、ミミの耳が青白い光を帯びた。彼女の種族固有の未解放能力――《電気パス廻廊》。

 微弱な雷気を利用し、仲間同士の脳へ直接思考を届ける念話だ。


 ――(聞こえるか? プルリ、ルルカ、ミミ)

 ――(ぷる……聞こえるぷる)

 ――(ええ……大丈夫よ)

 ――(うん、問題ないよ)




 ナナシは念話で簡潔にまとめた。


 ――(今は夜中だ。ヴァルグの力が最も強まる時。即決すれば、全滅は必至。三日後の昼間なら影の勢いも幾分か落ちる)


 ――(つまり……提案を受けた方が有利ってことね)ミミの声が届く。


 ――(そうだ。それまでに《ニの牙》の探し方を詰める。あいつは必ず近くにいる。その癖を利用する)


 ――(ぷるりも賛成ぷる!)

 ――(私も異論はないわ!)

 ――(ミミも異論はないよ!)


プルリ、ルルカ、ミミが短く答えた。





***




■ 受諾と別れ



 ナナシは念話を切り、ヴァルグに向き直った。

「……その提案、受けよう」



 ヴァルグは満足げに鼻を鳴らす。

「では決まりであるな! 今日はもう休め。つかの間の平穏を味わい、さらに牙を研げ!」


 銀狼の尾が一閃。闇が彼の体を包み込み、輪郭を曖昧にする。


 「では三日後、再び会おうぞ?牙の子らよ!フハハハハハ♬」


 低い声が残響し、ヴァルグの巨体は影に溶け、夜そのものへと還っていった。



---


 沼地には静けさが戻った。

 だが、三日後の昼、牙と牙が交わる“遊戯”が待っている。

 その時、勝つのは雷牙か、無銘の牙か――。



---


――続く――



ここまでお読みいただきありがとうございます!


今日はもう打ち止めです!

また明日よろしくお願いいたします!('ω')ノ

明日も朝6時30分から投稿予定です!



さらに加速する“牙の伝説”をどうぞお楽しみに!


引き続き『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』

略して『ナナクラ』をよろしくお願いいたします(^^)/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ