第6話「刻を刻む旅立ちへ」
お疲れ様です!2回目の投稿です!!
前話を読んでない方はバックバックです(/・ω・)/
ナナシたちの時間軸では、まだ陽が登り切る前――新たに結ばれた「牙の誓い」を胸に、ナナシと三姉妹は今日も動き出します。
最弱と呼ばれた従魔たちがどこまで進化するのか――
牙の刻が、始まります。
まだ陽も昇りきらない灰色の空を、
わずかに金の筋が裂いた。
街を包む石壁の中は、
深い夜の余韻と、かすかな朝靄がまだ残っている。
ナナシの家の窓からは、
ほんのりとした光と、
肉とスパイスの匂いが漂っていた。
――
■ 目覚めの刻
「――おい、起きろ。」
ナナシの低い声に、
小さな寝息が順に止まった。
毛布の中から、
プルリが甲皮をぱちりと鳴らし、
ミミが耳をピンと立て、
ルルカが影の隙間からするりと顔を出した。
「ぷる……おき……」
「ミミ……はや……」
「ルルカ……まだ……」
「まだじゃねぇ。もうだ。」
ナナシは鉄鍋を火にかけ、
干し肉と山菜を煮込んだスープをかき混ぜる。
香草の匂いが湯気と共に立ち上り、
三姉妹の瞳が一斉に輝いた。
「ぷる……たべ……」
「ミミ……たべ……」
「ルルカ……たべ……」
「言われなくても食わす。」
ナナシは鍋から木椀にスープをよそい、
小さな塩パンを添えた。
「今日は遠いぞ。腹に詰めろ。」
三姉妹は木椀を両手で抱え込み、
熱々のスープをふーふーと冷ましながら、
一心不乱に啜った。
――
■ ナナシの味
ナナシは自分の椀にスープを注ぐと、
香りを嗅ぎ、舌先で味を見た。
(……まぁ悪くない。
干し肉の脂が出てるから、塩を足すのはこれくらい……
あとは山菜の苦味がちょうどいい。
……腹持ちもする。)
「ぷる……おい……!」
「ミミ……あつ……!」
「ルルカ……ずず……!」
三姉妹が小さな口でスープを啜る音が、
朝の静寂にやけに心地よく響いた。
ナナシはパンを割り、
スープに浸して口に運ぶ。
(……こいつらの口に合うのが一番だ。
食えなくなったら、戦えなくなる。)
――
■ 身支度
食べ終わると、
ナナシは腰の装備を点検し始めた。
鞘に収めた短剣の刃をわずかに抜いて、
研ぎ具合を確かめる。
ガロンに研がせた刃は、
月光のように白く光を返した。
「……上出来だ。」
背中には、ロンバァの店で詰め込んだ保存食と水筒。
プルリたちの小型防具も、
それぞれの身体にぴったりと装着されている。
プルリは甲皮の隙間に小さな鉄板を仕込み、
ミミは耳元を保護する革製のイヤーガード、
ルルカは影に溶ける軽装のケープを羽織っていた。
「ぷる……かた……」
「ミミ……おと……」
「ルルカ……かく……」
「違和感があればすぐ言え。」
ナナシは三姉妹の装備を一つずつ撫でて確認した。
――
■ 出発前の息抜き
準備が整うと、
ナナシは肩をぐるりと回し、
狭い部屋の真ん中で剣を一閃した。
ヒュン、と空気が鳴る。
「……体も錆びちゃいねぇな。」
プルリは剣の軌跡を目で追い、
ミミはその音に耳を澄ませ、
ルルカは影の奥から目だけを輝かせた。
「ぷる……すぱ……」
「ミミ……きれ……」
「ルルカ……ぴか……」
ナナシは笑った。
「俺だけ切れてもしょうがねぇ。
お前らも忘れんなよ、牙と爪の使い方。」
三姉妹は一斉に姿勢を正した。
――
■ 城門へ
朝靄の中、
街の石畳を歩く一行の影が伸びる。
まだ店も半分以上は眠っている時間帯、
吐く息だけが白く煙った。
城門前に近づくと、
すでに数人のギルド関係者が待っていた。
ギルドマスター《クラリッサ・ハーシュ》。
黒衣に深い紺のマントを羽織り、
金糸の刺繍が朝日にかすかに煌めく。
その隣に受付嬢の《ルーシャ》。
書類を抱えて、小さな眼鏡を直している。
そしてナナシの同期であり、
腐れ縁の剣士。
肩に大剣を無造作に担ぎ、
口元にはいつもの軽い笑みを浮かべていた。
――
■ 見送り
クラリッサが一歩前に出る。
「――ナナシ。
高ランククエスト……いや、《邂逅》だな。
本当に行くのか?」
「行くさ。
この街に帰る理由を、こいつらに刻ませる。」
クラリッサは目を細め、
三姉妹を順に見た。
「プルリ、ミミ、ルルカ。
あなたたちは……ただの魔物じゃない。
自分で選んだ牙を証明しなさい。」
三姉妹は同時に小さく吠えた。
「ぷる……やる……!」
「ミミ……やる……!」
「ルルカ……やる……!」
クラリッサは小さく笑い、
ルーシャに視線を移す。
ルーシャは震える声で書類を抱え直した。
「無茶はしないでください……!
ナナシさん、あなたがいないと……
ギルドの苦情処理が増えるんですから……!」
ナナシは肩をすくめた。
「……心配してんのか? 俺のこと。」
ルーシャの頬が赤くなり、
バズが後ろから肩を叩いた。
「おーおー、色気の欠片もないこいつに、
そんな殊勝な心配するなっての。
ナナシは馬鹿だからさ、
死にかけてもケロッと帰ってくる。」
ナナシはバズを睨んだ。
「馬鹿は余計だ。」
バズは大笑いした。
――
■ 最後の問い
城門の前に立つと、
朝靄の向こうに広がる森の気配があった。
遠くで獣の鳴き声が木霊し、
乾いた土の匂いが鼻を掠める。
ナナシは三姉妹を振り返った。
「お前ら――準備はいいな?」
プルリ、ミミ、ルルカは顔を見合わせると、
同時に息を吸い込んだ。
「「「がう!!! 大丈夫!
全員で帰ってきて証明するの!!!」」
ナナシは口角を上げた。
「……そうか。
じゃあ、気負い過ぎずにやり切るぞ――お前ら。」
城門がゆっくりと開く音が、
空気を押しのけて響いた。
――
■ 背中を見送る者たち
三姉妹がナナシの背を追って一歩踏み出す。
門の外には、
昨日とは違う刻が息づいていた。
クラリッサは小さく呟いた。
「……行ってしまったか。」
ルーシャは胸元の書類をぎゅっと抱きしめた。
バズは腕を組み、
開けた門の向こうの小さな背を見つめる。
「帰ってきたら――
あいつら、見違えるだろうな。
牙を研いで、爪を磨いて、
全部噛み千切って帰ってくる。」
クラリッサはわずかに笑った。
「その時、この街も……
もう一度刻を刻み直すだろうね。」
白んでいく空に、
三姉妹とナナシの影が、
静かに溶け込んでいった。
――刻は回る。
牙を抱いた小さな旅団が、
新たな《邂逅》の扉を押し開けた。
(つづく)
ここまでお読みいただきありがとうございます!
遂に、モンスター三姉妹がクラン内で認められ始めました!
今回は、その第一歩です。(^^♪
小さな一歩ですが、やがて誰もが振り返る伝説の一頁になります。
さらに加速する“牙の伝説”をどうぞお楽しみに!
引き続き『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』
略して『ナナクラ』をよろしくお願いいたします(^^)/




